第17話.怪しい雲行き
リュートがストーンたちの養子になって3年が経ち、リュートとは18歳になっていた。王宮騎士団の任務もそつなくこなせるようになり、特攻隊でも少しづつだが頭角を現し始めていた。
「よぅリュート調子はどうだ?」
そう言いながら声をかけてくるロベルト。ロベルトは弱干21歳でありながら、もうすでに守備隊の次期後継者と言われている。
「まぁまぁかな、ロベルトの方はどうだい?」
「俺の方か、俺の方が今の所何の問題もないな?」
「でも、ロベルトは本当にすごいよ。俺と同じ時期に入ったのに、もう既に守備隊の次期後継者って言われてるんだから」
「はは、まぁ俺の場合は体が恵まれてるってのもあるけどな?こんな重い装備でこんなでかい盾を持って走らなきゃいけないんだ、やっぱ体がでかいのは有利だろ?」
そう言いながら、自分の身体ほどある盾を軽々と振り回すロベルト。ロベルトの言う通り、身体の大きさは守備隊として必要項目と言っても過言ではない。
「そんなことより、リュート最近東の盗賊が暴れまわってる話を聞いたか?」
「うん。」
「1時期は大人しくしていたが、ここ最近妙に話を聞く機会が増えたと思わないか?」
「確かにここ数ヶ月の中でちょくちょく名前を聞くようになったね」
「あぁだから、お前も気をつけておけよ。いつその任務が当たるか分からないからな」
ロベルトの顔が厳しくなる。それもそのはずだ東の盗賊の頭であるホークはロベルトの村を滅ぼした張本人である。リュートの村を滅ぼしたヴォルグに関しては西の盗賊として名をはせている。くしくも両者の村を滅ぼした張本人が東と西の大盗賊となって名を轟かせているのが現状だ。お互いの宿敵の話がちょくちょく耳に入るのは気分的には良くはないが、今は自分たちの事よりこの国の民が優先だ。
「まぁでも焦らず自分たちの出来ることを少しずつやっていこう。」
「ほぅ、あのリュートがいっちょまえの事言うようになったな?」
「やめろよ、ロベルト」
先程まで険しい顔してたロベルトが笑いながらリュートに話しかける。それをまた照れくさそうな顔で変えすリュート、たわいもない話をしながら、各自の部隊所に戻っていった。
「リュートここにいたのか?」
「どうしたんだい、父さん?」
リュートを探していたらしく、ストーンはリュートを見かけると声をかけてきた。
「いや、王から直々にお呼ばれがあってな」
「えっ王様から直々に?」
「あぁ、だから王宮まで一緒に来てもらって構わないか?」
「わかったよ父さん」
ストーンと2人で王宮に向かうリュート、王宮に向かう途中でロベルト連れた守備隊隊長のハウルと出会う。
「これはこれはストーン様。もしや、ストーン様も王からの命で?」
「ああ、私だけでなくハウルも呼ばれることを考えると嫌な予感しかしないな…」
「ははっ確かに…」
口ではマイナスのことを喋っているが2人ともとても笑顔だ。自分たち2人が揃えば敵はいないことをこの2人は自負しているのであろう。実際にこの2人がいて負けた戦など1度もない。
「よぅ、リュート」
「まさかロベルトも一緒だとはな」
「そうだな、初めて2人一緒の任務がかなり厳しいものになりそうだな」
「なぁに、私とストーン様がいるんだ何の問題もない」
「こら、ハウル。過信は良くないぞ」
「ハッ!」
ストーンに喝を入れられ気を引きしめる一同。確かに任務の概要は何一つ知らされていない。そもそも部隊長が同時に呼ばれるということは、それだけ厳しい任務のはず。任務内容を聞かずにリラックスすること自体が間違っているのだ。1度気を入れ直し、王宮へ向かう。
「皆の者すまない。実は早急に対応してもらいたいことがあってな…」
「いえ、滅相もございません。して今回のご要件は?」
ネメシスとの挨拶も早々に用件を聞き出すストーン。
「うーん、それなのだが、本人から話を聞いた方が分かりやすいと思うので、まず本人を呼ぼう」
パンパン!
「ハッ、失礼します。」
ネメシスが手を叩くと、新人の隊員であろうものが顔を出す。装備からして後方支援隊の部隊の者のようだ。
「お初に目にかかる方もいらっしゃいますので、自己紹介させていただきます。わっ私は今期、後方支援隊に配属されました、ポルカと申します。」
やはり後方支援隊のようだ。ポルカは簡単な自己紹介が終了した後、今回の件に関して話し始めた。
「先日、私が任務をしていた時なのですが、盗賊の痕跡を見つけその痕跡の後を付けながら調べていた時なのですが、たまたま東野盗賊の隠れ家の一部と思われるものを発見しました。」
新人の隊員をとてつもないことを話し始めた。ホークは盗賊の割に疑り深く隙を見せないことで有名だ。そのホークの隠れ家を発見したとなれば、とてつもない事だ。
「ポルカ、その情報は確かなのか?」
その情報にストーンが飛びつく。
「ハッ、ストーン様。絶対だとは私も言えないのですが、ただその洞窟に入る前の盗賊自身がホークの名前を出していたので、ホークがいるかどうだかは別としてホークと関係のある洞窟であるとは思います。」
ポルカはたどたどしい声出そう、ストーンに説明した。
「もしこれが本当にホークの隠れ家だったとしたら、すごいことになるぞ」
「確かにそうだが、その場合だとどういう対処をするべきかが重要になるな…」
ハウルの答えにストーンがそう返す。
「そうなのだ。だから思い切って少数精鋭で調査に行ってみてはどうだろうと思い。お主たち2人に声をかけたのだ。」
「私達の部隊だけでということですか?」
ネメシスの問いにストーンが返す。
「いや、正確にはお主達の部隊とハリーを含めた後方支援隊の3部隊だ。」
「3部隊ですか…」
「そうだ。お前たち部隊長3人とお前達が選んだパートナーを含む6人で調査をし、もしホークの隠れ家だった場合は、再度全部隊での突入を考えておる。」
「全部隊での突入ですか…」
ネメシスの話を聞き険しい顔つきになるストーン。全部隊での突入になると王都が空になってしまう。仮に敵がホークだった場合なら、その方法でも問題はないが、盗賊は他にもたくさんいる上にそれだとヴォルグへの対応がなくなってしまう。さまざまなことを想定し、考えているストーンに対し、ネメシスが話しかける。
「まぁ、あくまで全部隊と言ってもホークがいればの話だ。まずはそれをお主達に調べてきてもらいたいと思っておる」
「そうですね。まずはそれがホークの隠れ家がどうだかを調べてまいりましょう。」
「そうか、ではよろしく頼むぞ」
「ハッ!」
ネメシスに敬礼する一同。このままホークの隠れ家に進むのかと思いきや、まずは作戦会議をすることということで3部隊長が王宮の会議室に向かった。リュート達はその間休憩ということで、各々に休み始める。
「俺たちも一緒に作戦に加わるのに、なんで俺達は会議に出られないんだ。」
ふてくされながら不満を爆発するリュート。
「いや、この場合の作戦というのは本来の作戦と少し違うのだと思う。」
「どういうことだ?」
「本来の作戦時は、我々は別行動だ。特攻隊は特攻隊、守備隊は守備隊、後方支援隊は後方支援隊の別々に行動していると思う」
「うん」
「だから、その時は特攻隊は特攻隊の中での作戦があるのだと思う」
「いや、わかってるよ。だからこその会議に参加できないことに対して不満なんじゃないか?」
「違う違う、今は話してる作戦はその前段階の作戦さ」
「前段階って?」
「今話してる作戦は各部隊がどういう動きをするべきなのかの話し合いをしているだよ。そこで作戦が決まってから、我々は我々でどういう風に攻め込むかの作戦をまた部隊ごとにするんだよ」
ロベルトはさすが次期リーダーと言われるだけあってリュートのような一介の騎士だと知らないことを知っている。リュートも少しずつ頭角を現してきてるとはいえロベルトには及ばないようだ。
「さすがロベルト!」
ロベルトの話に感心しているリュートの横からポルカが入ってくる。
「おお…」
初めて会うポルカのあまりの勢いにそう口ずさむロベルト。
「おいこら、新人、ハリーさんから何も習ってないのか?目上の者に対してお前を少し馴れ馴れしすぎるぞ?」
ポルカの馴れ馴れしさを注意しようとするリュート
「すいません。懐かしかったもんで、思わず…」
「懐かし?…」
ポルカの答えに考え込むロベルト
「えっ、なんだよロベルト僕のことわからないのかい?ポルカだよ?ポルカ、泣き虫ポルカ」
「なんだって!」
その答えを聞き、驚くロベルトとリュート、泣き虫ポルカといえばロベルトが騎士になることを最後まで泣いて止めていた男の子である。そう聞くと小さい体に女の子のような顔つき確かに面影はある…しかし、まさかあのポルカが王宮騎士団に入ってくるとは…
「あれ、リュートさんも僕のこと知ってるの?」
「あぁ、そっかお前達は知らないのか?リュートはハヤトだよ。ハヤト」
リュートの改名を知らないポルカにリュートのことを教えるロベルト
「えっ、ハヤトってあのハヤト?なんで名前が変わってるの?」
「いや、ちょっと色々あってな…」
ポルカの質問にどう答えていいのか悩むリュート。悩んでみたが、結局同じ王宮騎士団に所属してる以上いつかはバレることなので正直に話すことにした。
「いや、俺ストーンの養子になったんだよ。その時に名前を変えたんだ…」
「えっハヤトはストーン様の養子になったの?」
「うん。だからもうハヤトじゃなく、リュートって呼んでもらってもいいか?」
「うん。わかったよ。」
ポルカが知り合いだったことも分り、懐かしの面々で昔の会話をしていたその時、エリザ姫と侍女のサラが通った。
「あら、リュート様ご機嫌よう」
「ハッ、姫!」
エリザ姫に声をかけられ、敬礼する一同。
「まぁ、リュート様たら、もっと気楽に話してくれて構いませんのよ?」
「いや、姫。とは言っても私は一介の騎士です。」
「もうそんなかしこまった事言わなくても、昔はあんなに親しかったじゃありませんか?…」
エリザ姫も昔のリュートを知る1人である。昔のリュートは礼儀もクソもあったものではない。そのことを誰よりも分かってるリュートとは、昔の話をされることが何よりも苦手であった。
「もうストーン様の養子になってからそういう所までストーン様に似てしまって…」
エリザ姫に言われて初めて気づいたか、確かにリュートはストーンに似てきた。特に気まずいこと言われた時の苦虫を噛み崩した表情などは振り二つである。
「私が父さんに?!」
「あら、そっくりですわよ特にその表情?」
エリザ姫の問いに思わず笑いをこらえることができず、吹き出してしまうロベルト。
「ほら、お連れの方もそう思ってるらしいわ?」
「ロベルト…」
恨めしそうな目でロベルトを見るリュート。
「いやぁ、すまんすまん。姫の言ってたことが的確すぎて思わず…」
顔の前で手をつけ謝るロベルト。
「姫様…」
「分かりましたわサラ…それでは皆様ごきげんよう」
侍女のサラに促され進むエリザ姫。その時、ロベルトがサラにさりげなく手紙を渡すのが見えた。
「ロベルト、今何を渡したんだ?」
「なんだ、見ていたのか?」
エリザ姫がいなくなってから、ロベルトに質問するリュート。ロベルトは少し気まずそうにしながらも理由を教えてくれた。
「いや、実は俺、サラと付き合ってるんだよね。」
「マジか!」
あまりのことに驚き声を上げるリュートとポルカ。
「これ、お前達、何してるんだ!遊びに来てるわけじゃないぞ!」
それと同時にストーンからの喝が飛ぶ、どうやら作戦会議は終了したようだ。3人は気を引き締め、各部隊長に向かい歩いていった。
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