第100話 ドラグーン(後編)
---三人称視点---
飛龍部隊が混乱する中、
竜騎士団の指揮官シュバルツ元帥は冷静に戦況を見据えていた。
「どうやらあのグリフォンに乗る二人組が大暴れしているようだな」
「ええ、恐らくあの少女のどちらかが
青い飛龍に乗った副官エマーンがそう答える。
「嗚呼、それは間違いないだろう。
だがあの二人は両方とも非常に優れた魔法の使い手だ。
恐らくもう一人の方も
「そうですね、基本は
魔法攻撃の方もかなりのものですね。
連中をこのまま放置しているのは危険です」
「分かってるさ、エマーン。
だからこの俺が奴等の相手をしてやる」
「……元帥自ら相手にするのですか?
ですが相手は二人ですよ?」
エマーンの心配は妥当であった。
だがシュバルツ元帥は余裕ありげな表情で微笑を浮かべた。
「確かに地上戦なら俺も奴等の相手はせぬ。
だが空中戦においては、俺に――
「しかし万が一の事があります」
「分かっている、だから奴等に一騎打ちを申し込む。
もし奴等がそれに応じれば、お前等はしばらく静観していろ!
但し周囲の敵の動向には目を離すな。
連中が妙な真似をすれば、お前等も遠慮なく参戦しろ!」
「分かりました!」
「その前に奴等の
我が守護聖獣ドラーガよ。 我の元に顕現せよっ!!」
シュバルツ元帥もそう叫んで、自分の守護聖獣を召喚した。
すると彼の左肩にポンという音を立てて、
守護聖獣である漆黒の
「ガアオオンッ!」
ドラーガの体長は七十セレチ(約七十センチ)前後。
ドラゴンにしては、かなり小さくて、見た目も可愛らしい。
そしてドラーガは両翼を羽ばたかせて、
シュバルツ元帥の近くを飛んでいる。
「ドラーガ、あの前方の二人組を
「了解、でも二人居るから少し時間がかかるよ?」
「構わん」
「なら行くよ、――
ドラーガの両眼が目映く光る。
数十秒後、分析を終えたドラーガが分析結果を述べた。
「元帥、まずはあの黄緑髪の女エルフの能力値を伝えます。
あの女、
「成る程、
そしてシュバルツとドラーガの意識が共有化されて、
グレイスの能力値の数値が露わになった。
---------
名前:グレイス・エストラーダ
種族:エルフ♀
職業:
力 :2153/10000
耐久力 :2461/10000
器用さ :1297/10000
敏捷 :2304/10000
知力 :2390/10000
魔力 :2346/10000
攻撃魔力:2445/10000
回復魔力:2422/10000
---------
「レベル53の
こうして数値で見るとその強さが際立つな」
「元帥、あの金髪の女ヒューマンの
「嗚呼、頼む」
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名前:リーファ・フォルナイゼン
種族:ヒューマン♀
職業:
力 :1215/10000
耐久力 :1960/10000
器用さ :1005/10000
敏捷 :1637/10000
知力 :2210/10000
魔力 :3626/10000
攻撃魔力:2245/10000
回復魔力:2242/10000
---------
「成る程、やはりあの女が
この数値を見る限り、その実力は本物のようだ。
ベルナドットやネイラールがやられたのも頷ける話だ。
「元帥、本当にあの二人を相手に戦うの?」
ドラーガの言葉にシュバルツは大きく頷いた。
「嗚呼、ここで奴等を叩けば、我が軍も勢いに乗る。
だからここはあえて奴等に一騎打ちを申し込む」
「了解です。 元帥、頑張ってください」
と、副官のエマーン。
そしてシュバルツ元帥が乗った漆黒の飛龍は、
「ガルウッ!」と一声吠えながらながら、
両翼をはためかせて前へ出た。
そしてシュバルツは手にした漆黒の
「そこのグリフォン乗りよ。
私は『
やや大仰な口調でそう問うた。
周囲の部下や敵もしばしの間、沈黙していたが、
グリフォンに乗った二人組――リーファ達は、
愛獣グリフォールをやや前方に進ませて――
「ふうん、その元帥が何の用かしら?」
そう一言だけ返すグレイス。
その言葉を聞いたシュバルツ元帥は微笑を浮かべた。
どうやらこいつはプライドの高い奴みたいだ。
あるいは
俺の長年の経験でなんとなく分かる。
と、竜人族の元帥はある種の確信を得た。
「見た所、貴様等はかなり強そうだ。
だが俺も帝国軍の元帥だ。 どうだ?
ここはひとつ一騎打ちで勝負してみないか?」
「……こっちは二人乗りよ?」
「構わん、二人同時に相手にしてくれる」
「ふん、大した自信ね」
グレイスが柳眉を逆立たせた。
「ちょっとした余興さ。 オレも貴様等なら、
一騎打ちしてみる価値はあると思ったまでさ。
だが無理強いはせぬ。 臆したのなら、
無理せず周囲の仲間と共に攻めて来るが良い」
「誰も臆してないわよ! いいわよ。
アンタがどういうつもりか知らないけど、
その余興に付き合ってあげるわよ!」
「ほう、勝負を受けるというのか?」
「くどいわ! リーファさん、守護聖獣の召喚の準備を!
そしてアイツの分析が終えたら、
アイツは口だけではないわ、かなりの強敵よ!」
「王女殿下、了解です」
「貴様等の名を聞かせてもらえるか?」
「私はエストラーダ王国の第二王女グレイス・エストラーダよ」
「私はアスカンテレスの
「シュバルツ……元帥。 この勝負、封印結界は張るのかしら?」
「それは貴様等に任せよう」
「……」
シュバルツの言葉に押し黙るグレイス。
そしてグレイスは『
『リーファさん』
『はい』
『このような空中戦では封印結界を張った方が不利になるわ。
残念ながら空中戦では相手に分があるわ。
だからここは封印結界を張らずに戦うわ』
『私もそうすべきと思います』
『うん、じゃあ守護聖獣を召喚するわよ!
我が守護聖獣レッサンよ。 我の元に顕現せよっ!!』
『我が守護聖獣ランディよ。 我の元に顕現せよっ!!』
二人は同時に守護聖獣を召喚する。
すると二人の守護聖獣のレッサンとランディが「ポン」と音を立てて、
実体化して、彼女等の左肩の上に乗った。
『レッサン、アイツを分析して頂戴!』
「了解、――――
『ランディ、同様に分析をお願い!」
「了解した、
分析をする事、約三十秒。
レッサンとランディが分析結果を述べた。
「グレイスちゃん、
「リーファ殿、彼の言うとおりだ。 奴はかなり強い!」
分析を終えた守護聖獣達がそう告げる。。
そしてリーファ達と守護聖獣達ルの意識が共有化されて、
シュバルツ元帥の能力値の数値が露わになった。
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名前:アレクシス・シュバルツ
種族:竜人族♂
職業:
力 :2185/10000
耐久力 :2115/10000
器用さ :1125/10000
敏捷 :2069/10000
知力 :1537/10000
魔力 :1966/10000
攻撃魔力:1875/10000
回復魔力:1454/10000
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『確かに強いわね、流石は帝国の元帥だわ。
でもこちらは二人、だから負けるわけにはいかないわ。
リーファさん、「ソウル・リンク」と
「はい、ランディ、行くわよ! 『ソウル・リンク』ッ!!」
「了解、リンク・スタートォッ!!」
「レッサン、私達も行くわよ! 『ソウル・リンク』ッ!!」
「了解だよん、リンク・スタートォッ!!」
リーファ達は『ソウル・リンク』を発動させた。
そしてリーファ達と守護聖獣の魔力が混ざり合い、
リーファ達の
「『能力覚醒』っ!!」
リーファは間髪入れず
これで五分間はリーファの
リーファに続くように、グレイスも
「『
グレイスがそう叫ぶなり、
彼女の身体が
これによってグレイスの
更に攻撃力と魔法防御力も倍加された。
ちなみに『勇者の息吹』の発動時間は五分。
故に最初の五分間の戦いが重要となる。
そしてその勝負を有利にすべく、グレイスが先手を打った。
「――
グレイスが
これによってグレイスは約十分間、
無詠唱で魔法を唱える事が可能となった。
対するシュバルツ元帥も自身の能力を強化させる。
「ドラーガ、行くぞ! 『ソウル・リンク』ッ!!」
「了解です、リンク・スタートォッ!!」
シュバルツ元帥も『ソウル・リンク』を発動させた。
そこから間髪入れず、
「――
職業能力『
そして攻撃力と魔法防御力を一時的に倍加させる。
それに加えて五分間の
つまり
但し
それに故に連続して使用は出来ないが、
今回のような一騎打ちにおいては、
かなり重宝される
そしてシュバルツは研磨された針のような漆黒の
操る手綱を握ったまま、
「――行くぞ、
「来るが良い、帝国の元帥シュバルツよ!
この
そして帝国の元帥である竜人族のシュバルツ。
かつてない強敵との戦いが、今まさに始まろうとしていた。
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