第15話 戦乙女(ヴァルキュリア)の盟友


---主人公視点---



 シャーバット公子の後をついて行き、駐屯地の広場に到着。

 さあ、ここからは戦乙女ヴァルキュリアの盟友選びの時間ね。

 これはなかなか重要なイベントよ。


 そう思いながら、私は盟友となるべき周囲の兵士達の品定めをする。

 男女の比率はちょうど五分五分という感じだわ。

 種族に関してもまばらね。


 ヒューマン、エルフ族、犬族ワンマン猫族ニャーマン兎人ワーラビットなどの獣人の姿もあった。私が品定めしていると、派手な赤い軽鎧ライト・アーマーを着た猫族ニャーマンの猫騎士と眼が合った。


「こんにちニャンッ!」


「……こんにちは!」


 そう云って眼前の猫族ニャーマンはウインクをする。

 私はそれに対して、笑顔で返すが内心ではウンザリしていた。

 何というか私は根本的に猫族ニャーマンが好きじゃないみたい。


 彼等の「自分は愛されて当然」という態度がなんか気に入らないのよね。

 後、実家に居たときに、

 自分の花壇にウンコされたのが猫嫌いの要因の一つかもしれないわね。


 そう言うわけで猫族ニャーマンは仲間にする対象外だわ。

 でもヒューマンもあまり仲間にしたくはないわね。


 ここに居るヒューマンの大半は、

 王国騎士団の騎士か、冒険者、傭兵の類いでしょう。

 王国騎士団の騎士を仲間にすれば、

 ラミネス王太子殿下がその仲間に干渉してくるのは明白。


 あの王太子殿下と敵対するつもりはないけど、

 必要以上に彼と交流を深めるつもりはない。

 少なくとも共に行動する仲間が彼の臣下兼監視役という状況は避けたいわ。


 エルフ族はさっきあの女の子――エイシルの同行が決まったからもういいわね。

 となると選ぶならば犬族ワンマンか、兎人ワーラビットね。


 そう思いながら周囲に視線を向けたら、

 猫族ニャーマン犬族ワンマンは露骨にこちらをジロジロ見ているけど、

 兎人ワーラビットはおどおどした表情でこちらをチラ見しているわ。


 そういえば聞いた事があるわ。

 兎人ワーラビットは元が兎という事もあり、かなり臆病らしい。

 性格的には控えめで周囲の和を乱す事はないけど、

 決断力や行動力が乏しい種族、という噂は私も聞いた事があるわ。


 となると消去法的に選ぶのは、犬族ワンマンになるわね。

 犬族ワンマンかあ、まあ猫族ニャーマンよりかはいいかな?


 犬族ワンマンは元が犬だから、兎に角、主従関係を大事にするらしいわ。

 戦闘力も高く、集団行動も得意とし、決断力も行動力もある、との話ね。


 ……そうね。

 ここは無難に犬族ワンマンを選び――


「ニャー、ニャー、お嬢さん、ここはボク達、猫族ニャーマン

 選ぶべきニャン。 ボクらは魔法には滅法強いし、連れて行って損はないニャン」


 ……。

 灰色のローブを着た魔導師らしき猫族ニャーマンが話掛けてきた。


「……でも犬族ワンマンといっても色んな品種が居るわね。

 小型犬か、中型犬、大型犬と幅が広いわね」


「ニャー、ニャー、お嬢さん! ボクの話、聞いているニャン?」


「御免、聞いてないわ。 というか聞くつもりもないわ」


「ニャァッ!! な、何? 感じ悪いニャン!!!」


 ……こういう馴れ馴れしい所が好きになれないのよ。


「……私も遊びで盟友選びをしているわけじゃないわ。

 だから私が誰を選ぶかは私の自由、この意味分かるかしら?」


「……ニャ、わかったニャン」


 そう云って灰色のローブを着た猫族ニャーマンは不機嫌になり、この場を去った。これで私の印象は猫族ニャーマンの間では最悪になったわね。

 でもそんな事は気にならないわ。

 むしろこれで彼等の相手をしなくていい、と思うと気が楽になったわ。


 さて、そういう事だから犬族ワンマンを品定めするわよ。

 大型犬ではゴールデンレトリバー辺りが可愛いわね。

 中型犬ではコーギーなんかが好みだわ。


 そう思っていると、小型犬の犬族ワンマンと目が合った。

 体長は40セレチ(約40センチ)くらい、毛色は白と茶色。

 絹のような長毛で手足が細いわね。

 耳と尾には長い飾り毛があり、大きな立ち耳も特徴的ね。

 確かこの品種は……パピヨンだった筈。


戦乙女ヴァルキュリアのお姉ちゃん。オイラはパピヨンのジェイン。

 ジェイン・ステアーズ。 職業はこう見えて上級職ハイクラスのハイ・レンジャーだよ」


「……」


 ……物怖じしない子ね。

 というか私をお姉ちゃん呼ばわりするとは良い度胸してるわね。

 でもそこが気に入ったわ。


 とはいえある程度の戦闘力はないと困るわ。

 ここは分析眼を使って能力値ステータスを見ましょう。


(……ランディ、聞こえてるかしら?)


(ああ、聞こえているよ)


(アナタを召喚しなくても、分析眼を使えるよね?)


(ああ、守護聖獣は基本は霊体化して、周囲に姿を見せない。

 戦闘中に召喚された時だけ実体化するが、

 自分が霊体化してる時でも君は同じ力を使えるよ)


(成る程、情報ありがとう)


(……気にする事はない)


 とりあえずジェインの能力値ステータスを見てみましょう。

 どれ、どれ……。


 

---------


 名前:ジェイン・ステアーズ

 種族:犬族ワンマン

 職業:ハイ・レンジャー レベル33


 能力値パラメーター


 力   :145/10000

 耐久力 :230/10000

 器用さ :831/10000

 敏捷  :1594/10000

 知力  :421/10000

 魔力  :1467/10000

 攻撃魔力:836/10000

 回復魔力:1274/10000



---------


 能力値ステータスはなかなか高いわね。

 でも魔法やスキル、能力アビリティが見えないわ。

 すると私の頭に再びランディの声が聞こえてきた。


(残念ながら自分の分析眼では、

 魔法やスキル、能力アビリティといった項目は見えないんだ。

 まあこれらの項目は、冒険者達にとって非常に重要だからな。

 だからおいそれと覗き見は出来ないようになってるんだよ)


(……了解、補足説明ありがとう)


 ある意味仕方ないわね。

 魔法やスキル、能力アビリティの保有数や保有能力に関しては、

 冒険者としても死活問題に関わる重要事項。


 それ故においそれと見れないのは、

 自分が能力を他人に覗き見されないという利点もある。

 まあいいわ、とりあえず能力値ステータスが見れるだけでも

 ある程度の目安にはなるわ。


 そして私は周囲の犬族ワンマン能力値ステータスも測る。

 ……こうして見ると、他の犬族ワンマンと比べても、

 ジェインの能力値ステータスはかなり高い方ね。


 これなら十分に戦力になるわね。

 そしてここはこのコを選ぼう。


「ジェイン、アナタの力を貸して欲しいわ」


「やったー! お姉ちゃん、ありがとう! オイラ、頑張るよ!」


 こうして戦乙女ヴァルキュリアの盟友が正式に決まった。

 ヒューマンの魔法剣士アストロス・レイライム。

 エルフ族の賢者セージエイシル・クインベール。

 そして犬族ワンマンのハイ・レンジャーのジェイン。


「どうやら盟友選びも終わったようだね。

 とりあえずその三人の盟友に加えて、私が戦乙女ヴァルキュリア専属の

 護衛部隊をつけるから、君達は彼等と協力して帝国同盟軍と戦ってくれたまえ!」


「はいっ! 王太子殿下のご期待に添えるように尽力したいと思います」


「うむ、では戦闘の準備に入ろう!」


「ははっ!」


 こうして私こと戦乙女ヴァルキュリアと帝国同盟軍の戦いが始まった。

 公約通り帝国同盟軍と戦って、皇帝ナバールを倒して見せるわ。

 だけど私は教会や王族の道具では終わるつもりはない。


 この戦いに勝って、地位と領土を貰い、

 アストロスとミランダと一緒に悠々自適の生活を送ってみせるわ。

 でもその前に戦果を上げないとね。

 

 とりあえずは目の前の仕事をきっちりするわ。

 ……とりあえずはね。

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