第14話 作戦会議


---三人称視点---



 翌日の6月12日の正午過ぎ。

 リーファ達は作戦会議を行う為に、

 作戦司令部代わりの大きなテントの中に集結した。

 テントの大きさは直径8~10メーレル(約10メートル)前後。


 テントの入口を入って正面の中央に炉があり、

 その奥に小さな机と椅子があった。部屋の端にベッドがあり、

 テントの構造自体は、他の一般兵が寝泊まりするテントと大差はなかった。


 テント内にはラミネス王太子とそのシャーバット公子。

 それとエルフ族の騎士団長エルネス。

 猫族ニャーマンの司令官ニャールマン、

 兎人ワーラビットのジュリアス将軍との姿もあった。


 更には艶のある黒髪のショートカットの10代半ばと思われるエルフ族の少女が

 騎士団長エルネスの左隣に立っていた。


 大きな緑の瞳。 

 顔は美人というより、可愛いという表現が似合う美少女だ。

 淡い水色のローブに高価そうな両手杖を背中に背負っていた。 


 そしてラミネス王太子とそのシャーバット公子がテントの奥の椅子に座り、

 騎士らしき護衛が王太子と公子の傍に陣取り、

 他の者は中央の炉を囲むように立っていた。


 少々男臭いわね。

 まあでも戦場だから仕方ないわね。

 リーファはそう思いながら、

 周囲の者に「どうも」と綺麗なお辞儀をして、

 彼等と同じように炉を囲むように立った。


「では諸君、連合軍の今後の戦いについて語りたいと思う」


 ラミネス王太子がそう云うと、周囲の空気が少し張り詰めた。


「現在、我が連合軍は、パルナ公国の古都パールハイムを拠点する帝国同盟軍と交戦中だが、両軍決め手が欠き硬直状態が続いている。 この状況を打破したい為に 

 私はリーファ嬢、戦乙女ヴァルキュリア殿を前線に配置して攻撃の要にしたいと思う」


「うむ、でもリーファ嬢、戦乙女ヴァルキュリア殿の力は未知数だワン」


 シャーバット公子が慎重論を唱えた。

 すると他の種族の司令官や代表も「確か」に相槌を打った。

 彼等の反応は無理もなかった。


 実際、リーファ自身まだ自分の力を把握しきれていない。

 正直、最前線に放り込まれて戦う自信もない。

 だが彼女も伊達や酔狂でこの場に居る訳ではなかった。

 そんな彼女の表情を見据えながら、ラミネス王太子が言葉を続けた。


「皆様がそう思うのも無理はないでしょう。

 ならばこの場は実際に戦乙女ヴァルキュリア殿に戦ってもらい、

 その実力を我々の目で確かめようではありませんか?

 ……リーファ嬢もそれで構わないかな?」


 こう言われてたら、リーファとしても賛同するしかない。

 そして彼女は臆する事なく、凜とした声で返事する。


「はい、私もそれなりに覚悟を決めて、

 戦乙女ヴァルキュリアになりましたわ。

 ですから王太子殿下のお言葉に従い前線で戦わせて頂きます。

 但しその際には、私の従者であるアストロスの同行を求めます」


 リーファはそう云って、自分の左隣に立つアストロスに視線を向けた。

 すると周囲の者達もそれに釣れるようにアストロスに視線を向ける。


「うむ、彼がリーファ嬢の従者ですか?

 しかし見た感じかなり若そうですが……」


 騎士団長エルネスがそう云って、

 値踏みするようにアストロスを凝視する。

 あまり愉快な状況ではないが、リーファは平静を保ち反論する。


「アストロスは王立幼年騎士養成学校を飛び級かつ主席で卒業している秀才です。

 冒険者ランクもBクラスで魔法剣士のレベルは30を超えてますよ」


「ふむ、それが事実なら大したものニャン」


「ええ、それなら彼も前線で戦えるでしょうね」


 司令官ニャールマンとジュリアス将軍が満足げにそう口にした。

 その様子を見ていたラミネス王太子は「ふむ」と頷いて、

 この場の主導権を握るべく、新たな提案をする。


「とりあえずこの場は彼女の、戦乙女ヴァルキュリア殿の要望に応えませんか?

 ただ二人では心許ないのも事実。 なので連合軍の中から彼女に同行する者を

 選んで貰う、というのはいかがでしょうか?」


「成る程、それは悪くない提案だワン」


 と、シャーバット公子。


「ウン、ボクも賛成ニャン」


 と、司令官ニャールマンも同意する。

 周囲の意見がまとまりかけた所で騎士団長エルネスも意見を述べた。


「それでしたら、ここに居る我が軍の賢者セージエイシルを

 リーファ嬢の仲間として同行させますよ。

 彼女はまだ十代半ばですが、天才的な魔導師まどうしです。

 彼女ならばきっとリーファ嬢、戦乙女ヴァルキュリア殿のお役に立つでしょう」


 騎士団長エルネスがそう言うと、

 エルフの少女――賢者セージエイシルが一歩前へ出た。


「どうも、ボクは、私の名はエイシル・クインベールと申します。

 賢者セージのレベルは28ですが、

 水属性、風属性、光属性、念動属性、無属性の五属性が使えます。

 強化法や回復魔法、結界魔法も使えるので、

 戦乙女ヴァルキュリア殿のお邪魔にはならないと思います」


 エイシルは簡単に自己紹介を終えて、

 リーファの顔を見ながら、綺麗なお辞儀をする。

 その態度にはリーファも好感を抱いた。

 それ故に彼女の同行をリーファも望んだ。


「エイシル……さん、私に力を貸してください」


「はい、私で良ければお力になります」


「ええ、共に帝国同盟軍と戦いましょう」


「はいっ!」


 こうしてエイシルはリーファに同行する事になった。

 周囲の者達も特に反対する理由がなかったので、

 リーファが彼女と同行する事に異を唱えなかった。


 とはいえ彼等にも面子がある。

 エルフ族だけに戦乙女ヴァルキュリアの同行者を任せれば、

 彼女達が活躍した時に、エルフ族の発言権と影響力が増す。

 その事を危惧したシャーバット公子が――


「だが付き人が二人では心許ないだろう。

 今から駐屯地の広場に各種族の兵士を集めるから、

 その中から一人か、二人。 同行者を決めてたまえ!」


「はい、了解しました」


 とりあえずリーファとしては肯定するしかない。

 とはいえ種族間の面子争いに巻き込まれるのは御免だ。

 だから仲間を選ぶ際には慎重になろう。


 そう思いながら、

 リーファはシャーバット公子の後をついて行った。



---------


 名前:アストロス・レイライム

 種族:ヒューマン♂

 職業:魔法剣士レベル31


 能力値パラメーター


 力   :469/10000

 耐久力 :730/10000

 器用さ :454/10000

 敏捷  :832/10000

知力  :469/10000

 魔力  :1289/10000

 攻撃魔力:653/10000

 回復魔力:211/10000


 ※他職のパッシブ・スキル込み


 魔法  :各種エンチャント、アクセル、フライ

      ウインドカッター、ワールウインド、

      ブレードカッター、アイスバルカン、

      ウォーター、アクア・スプラッシュ、シューティング・ブリザード


 スキル :結界、対魔結界、魔法剣、

      魔力マナパサー、魔力吸収マナ・アブソーブ

      

武器スキル:ピアシング・ドライバー、ヴォーパル・ドライバー

      ダブル・ドライバー、トリプル・ドライバー、

      クロス・スラッシュ、プロセクション・ドライバー

      

 能力  :属性強化、属性変化、属性破壊


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