3-2
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一ヶ月のお休みはあっという間に過ぎ去っていった。
久しぶりの学校。一番初めの行事は、なんと『海水浴』だった。
海は危険な場所であると長年伝えられてきたが、近年、海水浴は健康及び魔力の増進にいいという研究結果が発表され、海の
長期休暇の間に
港町から帰って来たばかりなのに、また海に向かう蒸気機関車に乗ることになるとは。とはいえ海は海でも、私の家とは方向が逆だった。私が住んでいる港町は
一時間ほど汽車は走り、海水浴場のある駅に
魔術学園が所有している海岸の小屋の中で、学校指定の水着に
私は普段下ろしている髪も泳ぎやすいようにひとつにまとめて上で
男子は
私はその光景を見てハッとした。
(……殿下……。まさか、この水着にマントをつけてくるのでは……!?)
海パン姿の男子たちを見て、水着マントの殿下をサッと想像してしまった。殿下はいつだって堂々としていて格好いい人だけどさすがに水着マントはダメな気がする。
ハラハラした気持ちで殿下を探す。全学年合同行事だからどこかにいるはずだ。殿下は目立つからすぐに見つかるはず。別に水着マントの殿下がいたところで私に何ができるというわけでもないけど、つい、気になって探さずにはいられない。
「……何をやってるんだ、貴様は」
「はっ、でっでで、殿下!」
背後から声をかけられ、必要以上にビクリと飛び上がってしまった。振り返ると呆れ顔の殿下と目が合う。心配していた殿下の
「パ、パーカーお似合いですね。殿下」
「フン、当然だ」
そうだよね、さすがに、水着マントじゃないよね。当然だよね。私はハラハラしていた胸をホッと
殿下が腕を組み直すと、聞き慣れたジャラ、という音が聞こえた。よく見ると、パーカーの
「……貴様は……」
殿下の視線がサングラス
「えっ、ええと」
またもパァンと破裂音が続く。
「そんな水着を着ていてどうする!?」
「学校指定の水着ですけど!?」
夏の日差しのせいか赤らんだ頰の殿下ががなった。
「魅了魔法の効き目が強くなる格好をするな! これでも着てろ!」
ばふっ、と顔に
「俺の予備のパーカーを貸してやる。泳ぐ時以外は着ていろ。少しはマシだ」
「は、はい。ありがとうございます……?」
殿下サイズのパーカーは私には大きすぎた。
「殿下、大きいからブカブカですね」
「……」
袖から手が出てこないまま口元に手をやってフフッとはにかむ。
するとパパパパパパァンと殿下のパーカー下から連続で破邪グッズが
「なんだ!? 今の音! 花火か?」
「えっ、まだ昼間じゃん」
近くにいた生徒たちがキョロキョロとあたりを見回す。先生が「今日は花火大会の予定はないぞー!」と声をかけていた。不思議そうに首を傾げるみんな。
「ど、どうして!?」
(わ、私、いまそんなに制御失ってた……!?)
「……今日は、あまり俺はそばにいないようにするから適当におおいに遊べ! じゃあな!」
「……変な殿下……」
……いや、でも、いつもあんな感じかな……?
「──まあ、みっともない。なんて格好をしていますの?」
去りゆく殿下を見送って間も無く、麗しい声がかかる。
「あっ、イレーナさん」
わあ、スタイルがいい! 同じ指定の水着なのに全然違うものを着ているみたい。出るところは出ていて、お
「? あれ、この人は……」
「学園外での活動ですからね。念のために護衛を連れてきておりますの」
イレーナさんの後ろに
(学園にいるときはいないから、学園の中ってやっぱり安全ってことなのかなあ?)
殿下も普段はジェラルドさんを連れていないし……。私のせいで大人もみんなポンコツになっている現状を見ていると本当に学園内の安全は保障されているのか? というのはやや疑問だけど。なんでもジェラルドさんは転移魔法の使い手だから呼び出されればいつでも殿下のそばにすぐ行けるらしいけど、この護衛さんはどうなんだろう?
「殿下からパーカーを
ジロリとイレーナさんはサングラス越しに私を睨む。なにと言われると……困るな。大絶賛魅了魔法でご
「まさかあなた、殿下のことまで
(そ、それもこれも全部、魅了魔法のせいなんだよなあ)
イレーナさんの言葉には
「……なんて
「えっ、え、す、すみません」
桜色の
はあはあと何かと戦ったみたいに息を
「手が出ていないと危ないでしょう。あなた、海水浴は初めて?
「は、はい」
イレーナさんの白魚のような手がテキパキと私のだぼついたパーカーの袖を捲っていく。肌にわずかに
「ありがとうございます、イレーナさん」
「ふんっ、みっともなくて見ていられなかっただけよっ!」
イレーナさんはフンっ、とそっぽを向くと
「……ク、クラウディアさん。大丈夫? ベルクラフト公爵令嬢に絡まれていたみたいだけど……」
「あっ、はい。袖を捲っていただきました」
イレーナさんの姿が見えなくなったらどこからともなく人がヒョコヒョコ集まってきた。私の経験則上、ヤバい予感がする。
「それだけ? 心配だなあ、彼女は結構アタリがきついって評判だからさ……ところで、よかったら俺と一緒に泳がない?」
「オイ、オレが先に声かけようと思ってたんだぞ!」
お約束のやつだ! これ以上人が集まってくる前に逃げよう! 殿下のように『姿消し』の魔法は使えないけれど、代わりに下位
(今度、『姿消し』の魔法も教えてもらおうかなぁ。でも、あんまり私、適性がないんだよなぁ。アレもすでにそこにいるんだってバレてると効果ないし……)
とにかく
さて、私が逃げ回っているうちに、生徒のみんなたちは海水浴を楽しむスタイルを
そんな中、ふと遠くで泳いでいる殿下の姿が目に入る。遠目でもやっぱり殿下は不思議と目立つ。どうやらご学友と遠泳対決をしているらしい。
つい夢中になって見ていると、ブイにタッチした二人が
(殿下、がんばれ!)
こっそりと心の中だけで
(あ)
ジーッと見てたら、
(殿下、カッコよかったです!)
そんな気持ちを込めながら大きく手を振る。殿下は私を見つめ、そしてややあってから海に
「「「殿下ーッ!?」」」
私の心の声と周囲のみんなの声が重なる。
海に
どうしよう、駆け寄っていきたいけどこれだけ人がいると魅了魔法を
(……あっ!)
ハラハラしている私の視界にキラキラと
「……いや、まっさか主人が海で溺れかけて呼ばれるとは思ってなかったっすわ……」
「溺れかけたわけではない……!」
地を
いやしかし。護衛対象のご本人がいない間の護衛騎士が何をしているかというと、もっぱら騎士団内のこまごまとした仕事をやったり、訓練室で訓練していたり。緊急の呼び出しにいつでも行けるようにしているので、軽い仕事しか回ってこないなかなかラッキーな役職だと思っていたんだが。
「生まれて初めての主人の危機による強制
「コレとはなんだ、コレとは」
海で泳いでいた殿下は護衛騎士であるオレの『座標』になっている
「や、本気で海でなんかして溺れて呼ばれるとかはわかるんすよ? でもさあ、その溺れた理由ってのが……クラウディアちゃん?」
「この無防備な状態で魅了魔法を放たれたんだぞ!
「そんなに弱いの!? クラウディアちゃんの魅了魔法に!?」
「まかり間違っても未来の王たる俺がアイツの魅了魔法にかかるわけにはいかんのだ……!」
グッと殿下は
とりあえずまあ、やることはやった。主人の危機は救った。海から引き
「大丈夫そうなんでオレ帰りますね。水着の生徒たくさんの砂浜に騎士服のお兄さんがいるのも浮いてるんで」
「……ああ、すまなかったな。呼び出して……」
「全然。ガチの緊急事態じゃなくてよかったっすよ」
ふうんと鼻を鳴らして、グルリとあたりを見回す。パラソルの周りには心配そうに殿下の様子を
「オレ、せっかくだからクラウディアちゃんに挨拶してから帰りますね。殿下はここでごゆっくりー」
殿下が眉を
「いやいや心配しなくてもオレ年下はナイですし。水着も学校指定のヤボいやつじゃないすか。殿下が心配するようなことないですよ」
まあ、前科持ちだけど! あの時はずいぶん長い間そばにいちゃったせいであって、ちょっと話すくらいなら平気なはず!
「……」
その例の前科のことを持ち出してきて引き止めてもいいところ、なぜか殿下は押し黙った。付き合いの長いオレだからわかるが、どことなく気まずそうな雰囲気から、殿下的には学校指定の色気のない水着も『アリ』だったんだろうなと
まだふらふらしている殿下をパラソルの下に
(クラウディアちゃん……君は殿下にとっての夏の海の魔物だよ……)
潮風にふかれながら思いを
さて、クラウディアちゃんはというと早々に発見することができた。というか、クラウディアちゃんの方から手を振って駆け寄ってきてくれた。
「ジェラルドさーん!」
薄緑色のパーカーの裾を揺らしながら駆けてくるクラウディアちゃんの姿を認めた
(あのパーカー、殿下のやつじゃん!)
ブカブカのオーバーすぎるサイズのパーカーの裾からのぞく
殿下のパーカーを着ているってことは、殿下的にクラウディアちゃんの水着姿がヤバかったから殿下が予備のやつをクラウディアちゃんに着せたってことなんだろうけど。
(……オレの主人、バカかもしんない……)
あの人なにやってんだろう。自分のパーカー着せて攻撃力高めさせてどうするんだ? バカなのか? 自分を追い詰めるのが
「ジェラルドさん。殿下……大丈夫でしたか?」
思考が宇宙に飛んでいきそうだったオレの意識をクラウディアちゃんのかわいらしい声が引き戻す。
「あー、うん。大丈夫だよ、さすがにちょっと水飲んだっぽくてケホケホしてたけど元気元気」
「よかった……心配だったんですけど、殿下、今日はあまりそばにいないようにするって仰ってたから……。ジェラルドさんが召喚されてくるのも見えてましたし、ここで見守ってたんです!」
「ああ……それは
しみじみと頷く。クラウディアちゃんが殿下が心配なあまり駆け寄っていたらとうとう殿下は魅了
やっぱり緊急事態は正しく緊急事態だったのだ。オレが呼び出されたことでオレはまさしく殿下の危機をお救いしたのだ。よかった。
「まあ、今はまだちょっと休んでるからそっとしておいてあげて」
「はい!」
素直に答えるクラウディアちゃんはかわいい。パラソルの下で休んでいる時にこの笑顔でやってこられたら多分殿下は死ぬだろう。
「今日も魅了魔法撒き散らしてる?」
「ええ、まあ……。逃げ回って今はこうして一人離れたところでみんなを見守っています……」
「いやあ、こういう行事めちゃくちゃ
「はい……」
しゅん、とクラウディアちゃんは頭を下げる。かわいらしくアップスタイルでまとめた髪は全く濡れていない。かわいそうに、せっかく海に来たのにまだ全く海に近づけていないんだろう。今日に関しては殿下も役立たずだ。ちょっとでも泳げると結構気持ちいいんだけどな。
(……しかし、オレの見立てだと、クラウディアちゃんはだいぶ魅了魔法制御できるようになってると思うんだけど)
少なくとも、オレは今現在、彼女の魅了魔法にかかりそうな気配はない。前回会った時よりも、魅了魔法の
(海! 水着! プラスオンだぼだぼパーカー! で効果上がっちゃってるのを
彼女のことを遠目からぽーっとした顔でチラチラと見ている男子らを眺めながら思う。前に視察で見たときほどの
(──やっぱ殿下、クラウディアちゃんの魅了魔法にかかりやすすぎなんだよな……)
控えめに言っても、ちょっと気になるかわいい女の子どころじゃない、なんて思うのだが。
(……殿下、もうクラウディアちゃんのこと好きになっちゃってない?)
そんなことを考えながら、オレは転移魔法で王宮に帰っていくのだった。
──そういえば私、泳いでいない!
西日の
(コソコソするのに集中してて忘れてた!)
太陽が水平線に沈みかけてようやく気がついた。今日、学校行事で海に来たのは海で泳いで心身と魔力の調子を整えるためなのに。私はというと、みんながいる白い砂浜から離れた岩場で一人ぽつんと
ジェラルドさんと別れてからも、砂浜にはなかなか近づけないままフラフラしているうちにやっと見つけた
寄せては返す波を見ているだけでだいぶ精神的には整った気がするけど、一応行事の目的は果たしておいた方がいいだろう。あと、
「よぉーし、海、入るぞーっ!」
殿下が着せてくれてイレーナさんが袖をおりおりしてくれたパーカーを
ワクワク半分、ビクビク半分、意気込んで海水に足を入れた、その
──海面から
(違う、これは……)
突然の目の前の
「ク、クラーケンだーっ!」
海岸に悲鳴が
「こんな季節外れに……」
「生徒諸君は急いでこの場を離れて! 小屋まで避難しなさい! ここは我々で食い止める!」
「自分は戦えると思っていても逃げなさい! まともに戦う相手じゃない!」
教員はクラーケンと
クラーケンは本来、寒い冬の時期の魔物である。夏の陽気は彼らの生態に適しておらず、冷たい水温の深海に
突然の事態に混乱しつつもそこはさすがに魔術学園に通う生徒たちだ。教員の指示に従って速やかに避難行動をとっている。
集団をサングラス越しに目を
(……クラウディアがいない!)
予想通りといえばそうだった。彼女が人のいる場所を避けているだろうことは想定の
人のいる場所を避けていたとしてもあまりにも遠く離れたところにまでは行っていないだろう。身を隠しやすそうな岩場にあたりをつけて駆けつけた。
(いた!)
思った通りの場所に彼女はいて、そしてクラーケンに囲まれていた。小さな手のひらにバチバチと火花を散らせているのが見えた。
クラウディアの魔力量は多く、放たれる魔法の
(だが、数が多いな!)
「風よ!
このデカブツを
「──殿下!」
バッ、と振り向いたクラウディアの安堵した表情と共に彼女の魅了魔法が胸に
「無事か!」
「は、はい! なぜか突然、クラーケンの群れが!」
魅了魔法が人間以外にも効くという話は聞いたことがないが。まさかな──とふと思う。砂浜に現れたのは二体のクラーケン。クラウディアに迫っていたのは四体。こちらのが数が多い。それはまあいい。なぜ真夏の海にクラーケンが出現したかを解明するのは学校教員らの仕事だ。いち生徒に過ぎん俺の仕事ではない。
触手を切り落とされたクラーケンは
「コイツらを一気に落とせる大規模魔法を使う。その間、
「わかりました!」
クラウディアの返事は心強かった。魅了魔法でトラブル続きのせいか、クラウディアはなかなか
「神の
右手に魔力を集中させながら
目で合図すると、クラウディアは察したようでさっと俺の後ろに控えた。三体のクラーケンは今が好機だとばかりに
「……雷撃、グングニル!」
三体をまとめて
身体を貫かれたクラーケンは海に沈んでいった。かかった飛沫を手で払い、高笑いをあげる。
「フハハハハ! 俺の敵ではないわ!」
「でっ、殿下、すごい!」
クラウディアから当然の称賛を受ける。
「貴様もよくやったな。いい働きだっ、た……」
白い頰を赤く染め、クラーケンと対峙した
「殿下! ありがとうございます!」
「!?!?!?」
目を
(ば、ばかもの!)
なぜ抱きついてくる? 心の中でクラウディアをなじるくらいしか
「──殿下! ありがとうございます!」
私はほとんど無意識に殿下に抱きついていた。耳元で殿下が息を
(殿下、すごいカッコよかった……)
さすがに突然のクラーケンの群れは怖かった。殿下が来てくれたときに心底ホッとした。頰に触れた殿下の体温が
だけど、殿下の大きな手のひらが私の肩を
「あ。ごめんなさい、私、つい……」
嬉しくて、安心して、甘えてしまった。ちょっとはしたなかったな、と今更頰が
「……」
殿下の顔がめちゃくちゃ怖い。え、なんでだろう。さっきまでクラーケンとバチバチやってたから? でも、つい何秒前かは気持ちよさそうに高笑いしてたのに?
なんで、どうして。困惑していると、パァン! と聞き慣れた破裂音が聞こえてきた。
(あっ、破邪グッズだ!)
その音が聞こえてきたことでむしろ安堵感のようなものを覚えていると、パン、パン、パンと控えめながらも連続で破邪グッズは破裂し続けていった。
「で、でんか、だいじょう……」
大丈夫ですか? と言いかけたところで、頭上からパリィン! と新しいバリエーションの音が聞こえてきた。
「きゃあっ!?」
殿下のキマっているサングラスが割れていた。殿下は
「そっ、それも破邪グッズだったんですか!?」
「マントに比べてコレでは
殿下はフハハハハ! と先ほどと同じような高笑いをした。
(なんか、ドキドキしてたけど……どっかいっちゃったな……)
なんだか、本当の意味で安心したって感じがする。
殿下はひとしきり高笑いを終えると、今度は切なげに目を伏せた。
「まさか、コレまで
割れたサングラスのつるを手に持ちながら殿下はため息をついた。
「……もう破邪の守りは
「は、はい。殿下」
なんだか殿下がすごいしょんぼりしている。いつも胸を張っている殿下の背が丸まっているとは。
「あの! 殿下……」
私は背を向けた殿下のパーカーの裾を摑んだ。この一言だけはちゃんと言いたくて。
「殿下、すごいカッコよかったです。……ありがとうございました」
「……」
殿下は振り向かなくて、無言だったけど、なぜか転移魔法でジェラルドさんが呼び寄せられてきていた。
「オ、オレ、これから先こんなことばっかで呼び出されんの? マジ?」
「二度目はない。二度目は……ないはずだ……、破邪の守りを
「夏の海ってこわ〜い」
二人の
「風か邪ぜ?」
「そ、そうなんですぅ~」
応接室のソファに座っていたヘンリーは訝いぶかしむように首を傾かしげた。
貞てい淑しゅくな貴婦人に『擬ぎ態たい』したアルマは、それを見てほほ、と口元を手で隠かくす。
だがその内心では、コンラートへの罵ば詈り雑ぞう言ごんを垂れ流していた。
(あんの『気弱閣下』ー! なんでもいいからとっとと出てきなさいよ! おかげで私一人で応対しないといけなくなったじゃないー!!)
今朝になって、コンラートにまたも新しい『人格』が発現した。
当人いわく――今度は『怯おびえ』の感情が人としての性格を持ったらしい。
それはいいのだが。
「分かりました、分かりましたから! とにかく早く準備をしてください!」
「む、無理です!! だって今来てるのって、ヘンリー叔父おじさんですよね!?」
「そうですよ。何回もそう言ってるじゃないですか!」
「むむむ、無理です!! こ、断ってくださいいいい!」
「はあー!?」
『気弱閣下』はそう泣きわめくと、毛布を被かぶって再びベッドに潜もぐってしまった。
執しつ事じ長ちょうらが手を貸してくれるも、力が強いのかびくともしない。
「いかがいたしましょうアルマ様。これ以上ヘンリー様をお待たせするのは……」
「……仕方ない。とりあえず私が出るわ」
かくしてアルマは今いちばん会いたくない人物と、たった一人で対たい峙じする羽目になったのである。
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【書誌情報】
≪「魅了魔法を暴発させたら破邪グッズをジャラジャラさせた王太子に救われました」 試し読みはここまで!≫
お読みいただき、誠にありがとうございました♪
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2月15日発売のビーズログ文庫
「魅了魔法を暴発させたら破邪グッズをジャラジャラさせた王太子に救われました」
(三崎ちさ イラスト/天領寺セナ)
をご覧ください!!
詳しくは、ビーズログ文庫の公式サイトへ♪
(※カクヨムの公式連載ページTOPからもとべます!)
https://bslogbunko.com/product/miryoumahou/322210000993.html
魅了魔法を暴発させたら破邪グッズをジャラジャラさせた王太子に救われました 三崎ちさ/ビーズログ文庫 @bslog
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