【今日は何の日?リレー】2月25日
「みなさま、ごきげんよう」
茶髪の大きなおさげを背にしたワンピース姿のお姉さんが、カメラに向かって手を振る。
「みなさまを天に導く、バーチャルYouTuberの
上位チャット:ごきげんよう!
上位チャット:リリアちゃん!
上位チャット:お嬢様(真)キター!
上位チャット:昨日との温度差がひどいwwww
「というわけで今日の企画は──」
「待て待て待て待て! 今回はオレも参加するのだろう!?」
「あら、そうでしたっけ。急にスタジオに入ってきて何事かと思いましたわ」
どたどた、という音と共に。包帯でぐるぐる巻きにされた犬の頭のようなものがやってくる。
「それで今日の企画ですけど」
「自己紹介からだろう!?」
「朝の雑談配信と、映画の同時視聴を主にしていますわ。それで企画──」
「アシスタントのイヌビスだ! たまにこうして手伝ってやっている!」
上位チャット:草
上位チャット:wwwwwwwww
上位チャット:あたりが強いwwww
上位チャット:犬久しぶりだなw
上位チャット:社長お疲れ様です
「まあ。そんな気持ちでこの企画に参加を? トーカさんに何て言いましょう」
「なッ……もちろんトーカの企画とあれば喜んで参加する! 当然だろう!?」
「さて建前を聞いたところで……」
「本音だぞ!?」
上位チャット:必死だなwwww
上位チャット:どうした今日は
上位チャット:ラブコールは控えてもろて
「今日、2月25日は──プリンの日ですわ」
「むっ……? それでいいのか?」
リリアが言うと、イヌビスがぐるりと体を傾ける。
「確か、プリンの日は毎月25日だし、かなりどうでもいい理由の記念日だから、他の日にしようという話だったと思ったが」
「ええ、そうですね。わたくしも夕刊紙の日にしようと思ったのですが……」
リリアは頬に手を当てて、ほう、とため息を吐く。
「今日、スタジオに来て、収録まで時間があるからおやつにしようと思って冷蔵庫を開いたところ、あるものが消えていまして……」
「……ん?」
上位チャット:ん?
上位チャット:?
上位チャット:なんだ?
上位チャット:もしかして
「……んッ……いや……えッ……──プリンの話、か?」
「ええ」
固い声のイヌビスに、リリアはゆっくりと頷く。
「なぜか、なくなっていました」
「いやその……それは、企画のネタ出しでスタッフが買ったやつで……ボツになったから不要になって……撮影では使わなくなったよな?」
「ええ」
リリアは、静かに頷く。
「しかし、わたくしはきちんと『後で食べます』と言いました。同席したスタッフの証言もありますが……聞こえませんでしたか?」
「………」
上位チャット:Oh
上位チャット:アウトです
上位チャット:これは許されない
上位チャット:万死に値する行為
「よし、動画を締めよう。それから話し合おう。そうだな、リリアよ?」
「ええ、もちろん」
リリアはニコリと笑顔を浮かべた。
「それでは皆様。明日の動画もお楽しみに。……コレに明日があるかどうかも、お楽しみに」
「ヒュッ」
上位チャット:草
上位チャット:犬……(合掌)
上位チャット:犬、許されません
上位チャット:プリン楽しみにしてたリリアちゃんかわいすぎない?
上位チャット:犬には高級プリンを買ってもらって
上位チャット:どういう声だよwwww
上位チャット:社長だよな……?
上位チャット:犬だよ
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます