【雪山女子会】山頂に向かっていざ出発!【#01】
青空の下、雪の積もった山のふもと、オレンジ色のテントの前にスキーウェア姿のトーカが現れる。
「こんにちは、人類。彩羽根トーカです」
コメント:こんにちは!
コメント:トーカちゃんこんにちは!
コメント:雪山だああああ!
「いやー、この光景、懐かしくないですか?」
コメント:親の顔より見たベースキャンプ
コメント:もっと親の顔見て
コメント:The 雪山だ
「そう、あのガブガブゲームスの傑作、『The 雪山』が、ついにバーチャルラウンジに移植! VRモードで遊べるようになったんです! というわけでこの! 動いている私は! 本当にゲーム内にいるわけですね」
よっ、ほっ、と軽やかに体を動かすトーカ。
コメント:スノーウェアトーカちゃん好き
コメント:かろやか
コメント:トラッキング良好!
「さらに、バーチャルラウンジからこの『The 雪山』スペースにアクセスできるということは! そう、マルチプレイに対応したんですね。神アプデですね。だって、人類、一緒に登山したいですよね?」
コメント:したい!
コメント:結構です
コメント:普通の山なら……
コメント:やったけど辛いぞ……
「はい。というわけで、今日は一緒に登山してくれる仲間を連れてきました。それでは自己紹介お願いします!」
「いぇーい! 見てるー!? ミチノサキだよ!」
コメント:見てるー!
コメント:見てるぞ!
コメント:スノーウェアだ!?
コメント:新衣装じゃん!!
決めポーズをしたサキは、「きゃっほーぅ!」と叫びながらトーカにくっつきに行く。
コメント:アッ
コメント:ウッッッ
「雪山、めっちゃ楽しみにしてた! トーカの動画見たけど面白いね!」
「でしょ!? 絶対みんなでやったら楽しいと思って!」
「んふっ! 誘ってくれてありがと! やっぱり持つべきものは友達だね!」
「おっ、う、ウン」
サキの問いかけに、トーカはしどろもどろになる。
コメント:おいおい死んだわ俺
コメント:照れてるトーカちゃんかわいい
コメント:時代はサキトカなんだよなあ
「ん~?」
「近い近い」
「いいじゃんいいじゃん」
「よくない」
ぽつり、とつぶやいた中性的な声が、トーカの背後からくっつく。
「ひゃあ、モチちゃん!」
「ズドラーストヴィチェ。北方少女モチです」
コメント:モチーチカ!
コメント:かわいいよモチちゃん!
コメント:Здравствуйте!
トーカに抱き着いたままモチがカメラの方を向く。
「寒いところはモチの場所。任せて」
「それどうやってるんです?」
スタスタと歩いて大きな三つ編みをなびかせながら、リリアがフレームに入ってくる。
コメント:りっりあちゃん!
コメント:リリアキター!
コメント:全員スノーウェア!?
コメント:これはこれで
「それぞれ別の空間から入っているから、物理的に接触していませんわよね? それでよく、くっついたようになりますね?」
「トーカの動きを予測して動く。余裕」
「怖いよモチちゃん!?」
コメント:モチちゃんwww
コメント:すげえ離れない
コメント:ラグ込みで動いてる……
コメント:オフじゃないの? マジ?
「ああ、申し遅れました。ごきげんよう。みなさまを天に導く、神望リリアですわ」
コメント:ごきげんよう!
コメント:導いて!
コメント:昇天するわ
優雅に一礼する。その横でトーカとモチが体を動かして攻防を繰り広げていた。
「お二人とも、よろしいんですか? 最後の一人がお待ちですよ」
「あっ、そうでした!」
「ごめん」
トーカとモチが離れて並び立つ。
「それでは最後の仲間です! どうぞ!」
「はーい」
のたのたと、ややがに股でドラゴン娘がやってくる。
コメント:来たぞ!
コメント:四天王揃った!!!
コメント:うおおおおおお!
「おはようございまーす。バーチャルぽちゃロリドラゴン皇女Youtuberおじさんの、ドラたまです」
「ドラちゃん!」
「あ、どうも、どうもー」
ぺこぺことおじさんは頭を下げる。
コメント:腰の低いおじさん
コメント:おじさん……?
コメント:おや……?
「はい。というわけでこの、この五人で……うッ、こ、コラボ……初めて、全員そろって……ぐすっ」
「えっ、あっ、あれー?」
「トーカちゃん泣いてる!? だ、大丈夫だよー!」
「すっ、ずびばせん。ちょっと感極まって」
「感慨深いものはありますが、泣くほどでもないでしょうに」
コメント:トーカちゃん……
コメント:俺も泣きそう
コメント:この五人がいなければ今はなかった
コメント:魔王の下に今!
コメント:歴史的瞬間
リリアが呆れながらも、咳払いして進行役を引き受ける。
「というわけで、この五人でバーチャルラウンジの無料! コンテンツ、『The 雪山VR』を遊んでいこう、という企画ですわ」
「女子会だね、女子会!」
「えっ。えっと~」
「ドラちゃんも女の子だもんね!」
「そっ、そっ、そう! 女の子のおじさんなので! 女子会だ、やったー!」
「ンフッ! うはははっ! やだ面白い!」
サキが爆笑して地面に転がり、雪だらけになっていく。
コメント:女子会は草
コメント:やったー! じゃないんだよおじさん
コメント:女子はおじさんしかいないからね
「うはははは! すごい! 雪! 雪が!」
「トーカさん、戻ってきていただけませんか? わたくしだけではちょっと」
「ずびっ」
コメント:お鼻助かる
コメント:切り抜かれてから鼻ミュートしなくなったなあ。いいぞ
コメント:サキちゃんが雪だるまになっていく
場面が切り替わり、五人が一列に並ぶ。
「はい、落ち着きました。ということでね、五人で楽しく登山です!」
「いぇーい! ねえ見て見て! おそろい! おそろいなの!」
「いやー、作るの楽しかった!」
トーカ、サキ、モチ、リリアが腕を広げたり、背中を見せたりしてスキーウェアを披露する。
コメント:尊い
コメント:てぇてぇ
コメント:おそろいっていいよね……
コメント:待ってトーカが作ったの? 相変わらずこいつはwww
「おそろい、嬉しい」
「いいですわよね。ところで……」
四人が揃っておじさんの方を向く。
「ドラさんは寒そうですわね」
コメント:一人だけいつもの
コメント:めっちゃ寒そう
コメント:おじさん?
「どうしたの、紅一点のドラちゃん!」
「あ、えーと、その」
一人だけいつものトーガ風の腹出しミニスカートで、しっぽを揺らしながらおじさんは手をわちゃわちゃする。
コメント:四天王の紅一点
コメント:セクハラされる側のおじさん
コメント:いちばん下ネタが苦手なおじさん
「いや、わざわざね、作ってもらうのもあれなのでぇ……自分で用意しようと思ったんですけど、ちょっと、その……次回! 次回はちゃんとあったかくしてきます!」
「期待してます! いざとなったら頼ってください!」
「はっ、はァーい!」
コメント:声裏返ってて草
コメント:ぽちゃロリさんは忙しいからね……
コメント:コラボの他に本業のゲームもあるからね
コメント:作ってもらえよおじさん!
コメント:遠慮しいなおじさんが好き
コメント:はやく準拠モデル作るんだよォ!
「それでは雪山……雪山女子会の記念すべき第一回です! 山頂を目指して頑張るぞー!」
「おー!」
「初級者向けの山はお喋りしながら歩くのにも最適ですわよね。いくつかありますが、ここは何の山ですか?」
「デスマウンテン」
「は?」
リリアが固まる中、トーカは真顔で繰り返し宣言した。
「ここは、デスマウンテンの麓です」
コメント:wwwww
コメント:草
コメント:ま た か
コメント:どうして
コメント:デスマウンテン 超上級者向け 最高死亡率
「ちょ、ちょっと!? 最難関の山をなぜ!?」
「そこに山があるからです」
「あっ、かっこいー!」
「いえ格好いいとかじゃなくてですね!?」
「ソロで登頂した雪山プロの私に任せてくださいよ」
トーカはドンと胸を叩く。
コメント:お、おう
コメント:うん? うん……
コメント:まあいちおう登頂はしたし……
コメント:帰りは死にかけながらヘリを呼んだ人ー?
「マルチプレイなら物資を運ぶ量も増えて余裕! それじゃあさっそく出発です!」
「しゅっぱーつ!」
「先が思いやられますわね……」
五人はトーカを先頭に歩き出す。
コメント:すでに楽しそう
コメント:並んでるだけで微笑ましい
「まずは森林限界を抜けますよ。森の中は熊の遭遇率が高いので」
「へぇー! 熊さんいるんだ!」
「襲ってくるから、見つけたら逃げますよ」
「倒したい」
「モチちゃん、猟銃とかはこのゲームないからね」
「無念」
「モチーチカなら倒してくれそ――あだっ!」
ゴンッ、という音がしてサキがひっくり返る。
コメント:好戦的なモチちゃん
コメント:!?
コメント:どうした?
コメント:なんで転んだ
コメント:痛そう
「えっ。だ、大丈夫ですか!?」
「サキさん!?」
「あいたたた~……壁にぶつかったんだけど!」
「もしかしてサキちゃん、コントローラーじゃなくて自分で歩いた……?」
「え、そうだけど?」
「いやそうしたら壁にぶつかるのも当然でしょ」
「え、じゃあみんなどうやって歩いてるの!?」
「だから……――」
コメント:サキちゃん?
コメント:サキちゃん……頭が……
コメント:それだけリアルってことか
場面が切り替わり、五人が一列になって歩くところを映す。
「いやー、はっはっは! これは楽ちんだ!」
「自分で歩きたいって気持ちはわかるんですよね~。ある程度は動けちゃいますし」
「あの、あのーあれ、Virtuix Omniが欲しくなりますね、これ」
「あー! 確かに!」
「ヴぁ、ヴぁー、何? 何の話?」
「Virtuix Omniっていう……ランニングマシーンを円形にしたみたいな? デバイスがあって。特別な靴を使ってVR空間を歩けるようになるんですよ」
「へー! すごいね!」
「買おうかなあって思ってるんですけどねー……結構なお値段するのと、あと、腰の位置がね、固定だから……」
コメント:イキイキしてきた
コメント:いいぞオタク
コメント:あれは雪山とはちょっと……
コメント:トカぽちゃ
「止まって」
モチが合図を出し、ぱらぱらと足を止める。
「どうしたの、モチちゃん」
「何か、森で動いた」
「あら、わたくしたちの他にも誰か――」
「逃げて!」
「は?」
トーカが叫んだ瞬間、森の中からラッセル車のように雪をかき分けて黒い巨体――熊が突進してくる。
コメント:熊キター!
コメント:はっやwwww
コメント:草
コメント:こわ
コメント:にげてにげてー!
「バラバラに逃げて!」
「こ、これわたくしが狙われてます!? どうしたら!?」
「ごめんデスマウンテンの熊からは逃れられない」
「は!?」
「リリア。尊い犠牲」
「はいいい!?」
悲鳴を上げながらリリアが画面外へと逃げていき、熊がそれを追いかけていく。
コメント:リリアちゃん……
コメント:いいやつだったよ
コメント:これソロじゃ無理じゃんwwwwww
コメント:遭遇率はそんな高くない(森林限界以降は)
コメント:崖とか段差使えば逃げられなくもないが序盤はね
場面転換して、動画冒頭で映っていたテントの前。
「はい。迎えに戻ってきました」
「た、ただいまでーす」
「リリアちゃん、久しぶり!」
「ええ……お久しぶりですわ」
「いやー、マルチプレイだと一人を犠牲にすると熊から逃げられるんですね! ……その、ごめんね?」
「……いえ、狙ってきたのは熊ですから、そこは仕方ありませんわね」
コメント:しゃあなし
コメント:難易度高すぎない?
コメント:あれ?
「リスポーンに戻ったから、ポイントもらった。物資が潤う」
「モチさんはマイペースですわね……ところで」
リリアはきょろきょろと首を回す。
「ひとりいないようですが……サキさんは?」
「熊から逃げた後に合流はできたんですけどね……ここに戻ってくる間にいつの間にか……」
「つまり?」
「迷子」
コメント:サキちゃん……
コメント:草
コメント:どうして帰りで迷子になるのか
「……さあ、サキちゃんを捜索しにいきましょう!」
「お、おお~!」
「先が思いやられますわね……」
ここから映像がダイジェストになる。
「トーカあ゛ぁ゛ぁ゛! 会い゛たかったよ゛ぉ~! あいた!」
「バーチャルだから支えられないから! ちゃんと立って!」
コメント:飛び込んでて草
コメント:バーチャルにも当たり判定はやく
コメント:ささえてあげたい
「この斜面に沿って進みますけど、斜面に足がかかると滑るのでまっすぐ歩い──」
「あぁぁ~!」
「ドラちゃん!?」
コメント:草
コメント:秒でフラグ回収して草
コメント:即落ち二コマ
コメント:これ上の方の斜面でも滑って下に落ちるんだよなー……
コメント:滑落していくおじさん
「目的地まであと少しですよ!」
「ここまで長かったですわね……」
「ここからしばらくヒドゥンクレバスがある地帯なので、ピッケルを使いながら進みますよー」
「ひどん?」
「氷の割れ目みたいなやつで、ここは雪が積もってて見えなくなってるんですよ。まだ序盤だから範囲は狭いのですぐに──」
「あの~、トーカさん。モチちゃんさんが目の前で消えたんですけど」
「モチちゃん!?」
コメント:モチちゃん無言で消えて草
コメント:この山殺意が高すぎる
コメント:これでも安全なルートなんだよなあ
コメント:これ本当にゲーム?
ダイジェストが終わって狭い平地に五人が集う。
「──ここをキャンプ地とする!」
「いぇーい!」
「ようやくですか……ところで」
リリアは辺りを見回す。
「聞いていた話では、キャンプ地はもっと広くて開けた場所だったような?」
「うーん、地図がVR版では違うんですかね?」
「トーカさん、もしかして……」
コメント:トーカ……
コメント:トーカちゃん……
コメント:やっぱりか……
コメント:方向音痴は健在だったか
「……一定の広さがある平面なら設置できるから! 大丈夫です! もう時間ないからここで! はい、足場を固めるためにそのへん一緒に歩きますよ!」
「えっ、そういう……えっ、リアルですね~、これ」
「並んで歩こ~! わっせわっせ! あっはっは!」
倍速でキャンプ設営の様子が流れる。「完成でーす」の唱和とともに集合写真。
コメント:尊い
コメント:泣きそう 泣いた
コメント:かわいい
コメント:楽しそう
場面切り替わり、ランタンの灯るテントの中。
「はい、というわけで雪山女子会の記念すべき第一回でした!」
「めちゃくちゃ歩いた~! ダイエットした気分になる!」
「訓練にいい」
「関連会社ながらどういうゲームを作ったのかと思いますわ」
コメント:本当にね
コメント:草
コメント:買ったけどひとつも登頂してない
コメント:歩いてるだけで楽しいからいいけどね
「私はこういう芯の通ったゲーム好きですよ!」
「あらあら。伝えておきますね」
「うっ……そ、それよりドラたまさんはいかがでしたか?」
「いやー、なんというか、思ったよりストイックで、あの、もっとゲームって、そう、ゲームらしくする方法あると思うんですよ。でもそこをあえてしないのがこれの肝だと思うんですけどそれを通すのってやっぱり普通の会社じゃ難しいと思って。そこがね、トーカさんのいう芯の通ったところっていうか」
「そうそうそう!」
コメント:早口www
コメント:トーカちゃん激しく同意
コメント:おじさんさすが
「ねーモチーチカー、またトーカとドラちゃんがオタクしてるー」
「トーカ、ずるい」
「モチちゃんその顔は怖いよ!?」
コメント:モチちゃんの病み顔
コメント:病み顔好き
コメント:ヒェ
「いやーでも本当に、今日はみんな忙しいところありがとうございます」
「トーカと遊べるんだもん! 全然予定あけちゃうよ!」
「ありがとう。でもね、やっぱり5人ってなかなか難しいなって」
「でも、トーカとなら」
「そうですね、またご一緒したいですわ」
「あっ、自分も、はい」
「う゛ッ! ……うん……あっ、ありがと……」
「泣かない~!」
サキが笑いながら背中を叩く仕草をする。
コメント:トーカ……よかったな(後方人類代表面
コメント:やっぱこの5人は何か違うわ
コメント:てえてえ
コメント:もっとこの5人が見たい!
「そ、それじゃ、次回はね、このキャンプから続きになります!」
「次で頂上いっちゃう!?」
「いやまずは第一キャンプを作って物資の輸送からですね。次は第二キャンプ、第三と……」
「関連会社の正気を疑いますわね……ゲームですよ?」
「いちおうゲームっぽく、謎の地下古代遺跡とかありますけどね」
「えー!? なにそれ面白そう!」
「ゾンビ、いる?」
「まあまあ、まずは頂上に登って無事生還してからですよ!」
トーカはニコリと笑う。
「この5人で、頂上から新しい景色を見ましょうね!」
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