【行商人は】陸路を進んでいくゲーム!【足が資本!】
白い空間の中に、赤い大きなリボンを頭の後ろに下げた少女が一人。
「こんにちは、人類。彩羽根トーカです」
コメント:こんにちは!
コメント:かわいい
コメント:ゲーム実況だ!
「人類って荷物の持ち運びはどうしてます?」
トーカはそっ、とカメラに寄って見上げてくる。
「そっちは物理法則が厳密だから旅行の時、どんな物を持って行こうかとか、入れ物はどうしようかとか、大変みたいですね?」
コメント:アッ
コメント:はい
コメント:荷造り嫌い
コメント:旅行は手ぶらで行くわ
コメント:お土産持ち帰るのがヘタクソでつらい
「こっちはね、バーチャルなので。気にするのはせいぜいデータ容量とデータ形式ぐらいですよ。はっはっは。ほらほらほら」
体内や虚空から様々なアイテムを取り出しては画面外に投げていくトーカ。
コメント:投げるなw
コメント:ドラえもんかな?
コメント:バーチャルはいいなあ!
コメント:懐かしいアイテムが混ざってるw
「でもですね。制約があるってそれはそれで楽しそうだなって思うんですよ」
コメント:制約がある方がゲームとしては面白くなるよね
コメント:ワイは四次元ポケットがほしいよ……
「というわけで今日プレイするゲームはこちら! 『
ゲームのタイトル画面が大写しにされ、トーカが画面端のワイプに収まる。
コメント:リクロー!
コメント:海外ゲーだ
コメント:陸郎じゃん。センスいいな
コメント:何これ……?
コメント:トーカちゃんのリクロ!? やったーー!
「これはですね、中世風世界の行商人になって村や町を移動して商売をしていくゲームです。ストーリーモードではとある目的地からお宝を故郷に持ち帰るんですが……ネタバレになっちゃうので、フリーモードをやりますね!」
コメント:へ~
コメント:面白そう
コメント:配慮助かる
コメント:中世ヨーロッパ風西遊記ゲーなのよな
コメント:シルクロード
「はい、ということでフリーモードでゲームを開始しました。ここが旅の始まりの村です! いやー、アバター対応なので私も世界に入り込めていいですね」
キャラクターのステータス画面に、旅装姿のトーカが表示されている。
コメント:はいかわいい
コメント:やっぱアバター使えるとやる気出るわ
コメント:対応ゲーム増えてきたよなあ
コメント:これ新衣装?
コメント:前の配信で使ったはず
「フリーモードは特にミッションもないですし、地形が自動生成されているので、ネタバレもなし! 早速遊んでいきたいと思います!」
トーカは村の施設が書かれた簡素なUIを操作していく。村の中は3Dではなく、2Dのアクセスメニューで操作するタイプのゲームのようだった。
「フリーモードは何をしてもいいんですけど、何をしてもいいとは言っても、食料がなければ飢えて死んじゃいますのでお金は稼がないといけません。というわけで、RIKUROHらしく行商人として商売を始めましょう」
コメント:死んじゃうのか……
コメント:あっさり死ぬゲームだぞ
コメント:慣れないうちはまず金欠で死ぬからな
「商売人の基本は、安く仕入れて高く売る! ということで村の市で、売れそうな商品を仕入れないといけないわけですが──商品を買うより先にすることがあります。それは……情報収集!」
トーカはメニューを操作する。
「これから村を出て、他の村や町に商売をしに行くわけですが、目的地が分からないと準備もできないですからね。メニューから聞き込みコマンドで……よし、成功したみたいですね。なになに? 最近他の商人が、東の方向から山一つ越えてやってきた……その村の周辺には岩山があり……と。うんうん」
トーカは首をひねる。
「うーん、日数が分かりませんが、言わないってことはせいぜい一泊ですかね? よしよし、それじゃ荷造りを始めましょう。ということで、人類! 見てください!」
でん、と空っぽな袋の中が映し出される。
コメント:?
コメント:何の画面だ?
コメント:大きな袋だね
「これがインベントリ画面です。そう、立派な背負い袋ですね? これはですね、例えば干し肉の包みを買うと……」
干し肉の包みが袋の中に現れ、マウスカーソルに従ってススッと移動する。
「こう……端っこに入れてと。次は水袋を横にして、と。どうですか、人類? 掴んできたんじゃないですか?」
コメント:配置するのこれ?
コメント:荷物テトリス
コメント:なるほどね
「そう、『RIKUROH』は荷物に重量と体積が設定されていて、荷袋の中身をしっかり管理しないといけないゲームなんですよ!」
コメント:へー
コメント:え、大変そう
コメント:これ適当に詰めると詰め直しが大変なんだよな……
コメント:プレイ時間の3割は荷造りしてるわ
「ポーションを99個持っていたり、やくそう8枚で持ち物がいっぱいになるなんて不思議のないリアルなインベントリ管理がウリのゲームということです!」
コメント:こらwwwww
コメント:薬草だけに草
コメント:全アイテム99個は基本的な遊び方だろ!
コメント:まあリアルに考えたらおかしいけどね笑
「ということで食料品と日用品を買って……お財布も中に入れてと。それで空いたスペースがこれだけ。うーん、持っていける商品が少ない! この村、特産品っぽいものもないですからねえ。あ、高品質の靴がある! これは自分用にも購入して、何足か商品用に仕入れましょう!」
コメント:お、いいやん
コメント:高品質の靴!? いいシード値引いたなあ
コメント:全然荷物の空きがないじゃん
コメント:お、靴はいいぞ
コメント:こんなに持てないものなのか
コメント:あっ
「あとは隙間を適当に埋めて……よし。準備OK! 出発しましょう!」
ぎゅうぎゅう詰めになった袋が閉じられ、ゲーム内のトーカが背負う。
コメント:めっちゃ荷袋パンパンで草
コメント:荷袋の方がでかいwwwwww
コメント:これは荷袋が本体かな?
コメント:教科書で見たことある気がする
コメント:戦後の行商のおばちゃんだ……
「さあ村の外に出ると3Dですよ。ここからは歩いて山向こうにあるらしい村を目指します」
画面が切り替わり、草原に立つ3Dのトーカの背中が映る。
「さあ、そして人類。気づきましたね? ミニマップはありません。そして……地図もありません! 方角も、時間も分かりません! そう!」
ワイプ画面でトーカはグッと拳を握る。
「隣村までの道は自分で切り開く必要があるわけです!」
コメント:あっ
コメント:あっ(察し)
コメント:地図なしかあ
コメント:雪山のトラウマが
コメント:測量用のアイテムとか売ってたりするんだよなあこのゲーム……
「まあさすがにね、東が村の出口から見てどっちかは分かっているので、進んでいきましょう。このゲームでは交易路の情報も重要なんです。確実に行きたければ、他の行商人の後をつけていけばいいんですが……バレると殺されちゃうんですよ。商売のネタは教えないぞ、という競争の激しい世界です」
トーカは歩きながら語る。
コメント:そうなの?
コメント:飯のタネだからな
コメント:ストーキングが確実ではあるけど失敗するとやばい
コメント:攻略サイト見ると面白味がなくなるゲームなんだよなあ
「なのでストーリーモードをやるとね、道順のネタバレになっちゃうので、フリーモードにしたという理由もあります」
コメント:なるほどね
コメント:配慮助かるわ
コメント:ランダム生成だから変な位置に村あったりするけどね
「さ、というわけで正々堂々、自分で道を開拓していきましょう。UIに各種パラメーターがあるのが見えますね? 食料、水、体力が3大要素です。移動と時間経過で減っていきます。これが尽きないうちに目的地にたどり着かなければなりません! 特に水が曲者ですね。かさばるし重いくせに消費は激しいので、なんとか途中で水場も見つけたいところです」
コメント:ふむふむ
コメント:餓死・脱水症は初心者あるある
コメント:水袋が蒸発しないのだけがこのゲームの良心だよ……
「あとは服ゲージと靴ゲージがあるところがユニークですね。やっぱり旅をすると服も靴も磨り減るんですよ。壊れる前に新調しましょう。そして、高品質の靴は体力消費を下げてくれる神アイテム! 幸先良いですよ!」
コメント:なるほど
コメント:これはガチ
コメント:服は体温にも関係するからな
コメント:靴が壊れて素足になるとめちゃくちゃ体力減るからね……
トーカは草原の中を進む。
「いやー天気もいいし風景も良くて気持ちいいですね、人類。ちなみに経過時間はリアルタイムです。ちゃんと歩くとリアルで移動に1日かかっちゃうわけです。ですが、ご安心を! 倍速機能があります! ある程度の障害物は自動で避けてくれるので……一気に10倍速で前進!」
トーカが、風が、加速する。ガサガサガサ、と道なき道を高速で突き進む。
コメント:はやwwwww
コメント:はっや
コメント:時間かかりそうだと思ったらwwwwww
コメント:ガサガサガサガサガサ!
コメント:ちょっとキモイ
「おお、速い速い。そして各種ゲージもモリモリ減る! しばらく歩いたら休憩しましょうね」
ゲームの倍速にさらに編集で倍速を重ねて、かなりの距離を移動したところでトーカが立ち止まる。
「はい、食事休憩です。太陽が高いからたぶんお昼かな? だいぶ歩きましたね!」
見上げた空にはさんさんと照り付ける太陽。トーカはメニューを操作して食事をとり始めた。
「ところで人類。馬があればもっと早く移動できるんじゃない? って思いました? ところがこのゲームにはですね、荷物に重量と体積があるんですよ。馬に必要な水や食料も積むと、もう荷物の余裕がないっ、という感じなんです」
コメント:あー、そうなんだ
コメント:そこらへんの草食わせるとめちゃくちゃ時間かかるぜ!
コメント:人間がいかに長距離移動に適している動物かわかるよな
コメント:ロバに山盛り干し草載せて移動してるわ。なお人間は徒歩
「というわけで馬を導入するなら、交易路を確立して、水場も確保してから……とチュートリアルですごく警告されましたので! 人類も馬に無茶をさせないよう気をつけましょうね!」
コメント:ロバとかラバはいないの? そっちの方が運用楽そうだけど
コメント:いるぞ! 牛とか砂漠だとラクダも
コメント:凝ってるなあ
コメント:川があるなら水運は? 船とか
コメント:陸路オンリーです。リクロなので
コメント:海ないからなこのゲーム
「さて、情報では東から山一つ越えてきた村ということで……たぶんあの山かな? 越えていきたいと思います!」
トーカは距離を詰めて視界を占めるようになってきた山を指す。
コメント:あれか
コメント:山?
コメント:標高差100mぐらいかな
コメント:交易路なんだしこんなもんでしょ
「えーと……どこからかな? こっちかな?」
うろうろと歩き、けもの道を見つけて突き進み──
「うーん崖、行き止まりですね。引き返して……」
引き返しては分岐を見つけて進み、戻り、進んで──
「あ、川だ! 水は嬉しいけどこれは通過できない……引き返しましょう」
流れの急な川に阻まれて戻り──
「あれ? これさっきの場所じゃない? この山すごい難所だな……?」
コメント:せやろか?
コメント:トーカちゃん?
コメント:これだよこれ
コメント:予想通り!
コメント:迷いまくってて草
コメント:相変わらず方向音痴だなwwwwww
倍速に編集されてうろうろするトーカ。そして。
「はい。というわけで山頂に到着です! 見てください、人類!」
トーカがゲーム内のカメラを上空に向ける。
「満天の星空ですね!」
コメント:はい
コメント:綺麗だなー(棒
コメント:時間かかりすぎじゃね?
コメント:山頂につけただけ立派よ
「この世界はですね、地球と同じ星空をしているので、星座を見れば方角が分かるんですよ。えーと北斗七星は……あったあった。じゃあ北はあっちということで……明日の進路はあっちですね」
トーカは闇の先を指す。
コメント:へー
コメント:方位磁石をくれぇ!
コメント:そういうアイテムもあるぞ
コメント:細かいな
「さて、気温が低いと体力が減っちゃうので、火を起こして寝ましょう。山賊に見つかると行商人は追いつかれた時点でアウトなので、怖いですが……気づいて逃げられると信じて!」
コメント:このゲーム戦闘はできないからなあ
コメント:護衛雇っても接触したら判定して次の瞬間には勝ちか死ぞ
コメント:割り切ってんなあ
コメント:戦闘オミットしてるのか、なるほど
「周辺から薪集めのコマンドを使って……十分な量になったら、火起こしセットを使用して着火! 明るい、暖かい、おやすみなさい!」
ぎゅん、とゲーム内の時間が加速して──日が昇る。
「朝です! 見てください、人類。あっちの方向に岩山が見えますね? それに、煮炊きの煙も! 間違いなく目的地はあっちですね!」
山頂から見下ろすトーカ。岩山の影から煙が立ち上っている。
コメント:おお
コメント:おはよう!
コメント:あそこか
コメント:目的地発見!
「というわけで山を下ります。いやあ、降りるだけなら楽勝ですね!」
倍速での下山が始まり──
「楽勝だと思っていた時期が私にもありました」
やや日が傾いた画面で、トーカは神妙に言う。
コメント:草
コメント:トーカちゃん?
コメント:反省できて偉い
コメント:下山も意外と手間取るんだよな
「いちおう麓までは降りてきたんだと思うんですけど、東はどっちでしょうね……あっち……? と、とにかく岩山を探しながら行けばなんとかなるはず! いきましょう!」
木々や小さな丘に視界を遮られながら、倍速で歩いていくトーカ。そして──
「えーっと、そろそろだと思うんですけど……あっ、畑があった! これは村が近い! こっちかな?」
小麦畑が見えてきたトーカは、ウロウロと周辺を歩き回り──夕暮れになって村の入り口に到着する。
「はい、なんだか最後にかなり遠回りしちゃったけど、無事一つ目の村に到着です! いやー、間に合ってよかった! 食料はともかく、水が尽きてたので……!」
コメント:到着!
コメント:よかった
コメント:ギリギリだなwwww
コメント:最後めっちゃ遠回りしてて草
コメント:村の入り口が分からないのあるある
「こうして村から村に到着すると、交易路を固定することができるんですね。固定すると同じ時間・物資を消費したファストトラベルが解放されるし、さらに情報を売ることも可能です」
コメント:へー
コメント:売っても大した金にならないのが世知辛い
コメント:でも売らないと地域の交易レベル上がらないからなあ
コメント:独占して稼ぐか、共有して全体のレベルを上げるか……
「で、今回の結果ですが……えぇ……1日半かかって……馬・荷車での通行は不可……うん」
トーカは目を伏せて静かに頷く。
「固定せずに……次回もうちょっといい交易路をね……開拓していこうかなと思います」
コメント:はい
コメント:草
コメント:さすがに今回の道順は売られても困るだろw
コメント:一日で行けそうな感じあったしな
「それはともかく! お楽しみの商売の時間ですよ! ここで稼いで元手を増やしましょう! 特に高品質の靴は期待できますよ。さあさあ、わが村の靴職人の仕事はいくらになるかな?」
トーカは村の市のメニューを開き、インベントリ内の靴を販売しようとして──
「……ん? あれ? 安い……?」
手が止まる。
コメント:ん?
コメント:おや?
コメント:どうした?
「え? なんで? 高品質の靴ですよ!? 仕入れ値以下でしか売れないなんて……ん?」
ガチャガチャとメニューを行ったり来たり。そして市を改めて確認して。
「……市にめっちゃたくさん高品質の靴が売っている……?」
ぞろぞろと。出身の村以上に並んでいる高品質の靴。
コメント:あっ
コメント:???
コメント:はい
「しかもうちの村より安く売ってる……ま、まさか私が持ってきた靴の出どころは、この村……!? 商人が運んできたやつを……私が買って……生産地に戻し……!?」
コメント:はい
コメント:やっちまったwwwwwwwwww
コメント:無駄骨wwwwwwwww
コメント:トーカちゃん?
コメント:草だわ
コメント:ひどいwwwwwww
がくん、と首を垂れたトーカがワイプ画面から一瞬消え……のろのろと起き上がって帰ってくる。
「……はい。ということで皆さんはね……旅に出る前に、こうやって情報収集でね、現在地や既知の村の需要を知ることができるので……それを参考に仕入れをしましょう!」
コメント:はい
コメント:情報は金より重い!
コメント:マジ大事だよ情報。価格差で儲けないといけないし
コメント:まあ靴は腐らないし別のところで売れば……
「とりあえずこの村は他に石が特産品ということでね……重いからたくさんは持てないので、石細工の芸術品を仕入れてみました! いずれ好事家のいる町で高く売りたいと思います!」
コメント:あっ
コメント:芸術品はギャンブルだぞwwwwww
コメント:理解者がいないと売れないぞ!
コメント:価格変動が大きいし普通に下振れる芸術品……
コメント:地味に重量もあるしヤバいなw
コメント:これはトーカ行商人、餓死待ったなし
「そういうことで、今回の動画はここまでです! それでは人類、また次の動画で!」
コメント:お疲れ様でした!
コメント:おつ
コメント:面白かった。買おうかな
コメント:セールで買ったらいいよ。オススメ
コメント:ポンコツトーカちゃんかわいかった
コメント:陸郎、ここでは靴は売れないわ……次の村へ行きましょう
コメント:メーテル……?
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