【ホワイトデーコラボ】カフェ・電脳兎の夢【装いを変えて】

「みなさま、ごきげんよう。本日はよくぞお越しくださいました」


 ウサギマスクの頭部にスーツ姿の体の男性が、腹に手を当てて会釈する。


「私はカフェ・電脳兎の夢のオーナー、アバタと申します」


コメント:キター!

コメント:コラボだ!!!

コメント:四天王コラボ助かる

コメント:アバタおるやん

コメント:出番 あれ

コメント:いつものじゃない……!?


「本日、カフェではホワイトデーイベントを開催中。みなさまをもてなす店員が特別な装いで待っております。さあ今日限りの夢のイベントをお楽しみください」


コメント:ホワイトデー!

コメント:ありがとうございます

コメント:特別な装い?


 アバタが招き入れるように腕を動かすと、カメラがそれにつられて動き、町中にたたずむ、一軒のカフェが映し出される。その入り口で箒を構えていた小さな姿が、カメラの方を振り返った。


「いらっしゃい」


 北方少女モチ。しかし今日はトレードマークのダッフルコートではなく、短パンにサスペンダーと少年らしい装いをしていた。


コメント:うおおおおおおお!

コメント:かわいい

コメント:Здравствуйте!

コメント:サスペンダーとかエッ

コメント:新衣装!!!!


「約束、来てくれた。嬉しい」


 モチは後ろ手に隠していた袋を差し出す。


「これ、クッキー」


コメント:やったあああああああああああああ

コメント:モチちゃんから……!

コメント:うれしい


 渡して――モチは首を振る。


「お店のやつ」


コメント:はい

コメント:それでもうれしい!!!

コメント:知ってた

コメント:はい……


 そしてモチは、そっと近づいて声を潜める。


「モチのは、帰りに」


コメント:!?!?

コメント:うおおおおおおおおおおおおおおお

コメント:はい優勝

コメント:ありがとうございます!!!!


 モチに手を振られて、カメラはカフェの扉を開いて中へ入る。すると次に待ち受けていたのは


「あら、いらっしゃいませ」


 執事服に身を包んだ神望リリアだった。長い髪は後ろで一つに結んでいる。


コメント:きたああああああ

コメント:リリア様!

コメント:男装リリアちゃんキター!

コメント:え、かっこよ


「ふふふ、いかがですか、今日の装いは? 張り切って準備したのですよ?」


 リリアが微笑む。その笑顔から――カメラは不意に胸元を見る。


「あら、どうなっているか気になります?」


コメント:エッ

コメント:アッッ

コメント:カメラこいつ(いいぞ!)


 平坦な胸元から、カメラが慌てて上を向く。いたずらめいた笑顔を浮かべるリリア。


「ふふふ、どうでしょう。バーチャルですからね」


コメント:胸板もいいね

コメント:さらしかな?

コメント:この中に詰まっている……!?


「さ、あまり悪い子だとプレゼントはなしですよ? ……ふふ、良い子ですね。はい、来店記念のクッキーです」


 モチが渡したのと同じ小袋を手渡す。


「わたくし個人から? まあ、欲張りですね。自分からおねだりするなんて浅ましいですよ? ……ふふ、でも正直者は嫌いじゃありません。考えておきましょう。さ、テーブルへどうぞ」


コメント:ありがとうございます!!!

コメント:男装喫茶ってこんなにいい物だったんだな……

コメント:天に導かれたわ


 カメラが移動して、テーブルの側の椅子に座る。と。


「やっほー! 来てくれたんだ、嬉しいな!」


 短い金髪に、青い薔薇のピアスをした、整った顔の執事服を着た青年が慌ただしく入ってくる。


コメント:!?

コメント:お!?

コメント:え


「え、誰かって? やだなー! 今日はサキヤって呼んでよ!」


コメント:サキちゃん!!!

コメント:サキヤ?

コメント:誰このイケボ

コメント:かっこいい

コメント:え、何これ新髪型に新衣装に

コメント:心臓がもたない


「あはっ、びっくりした? いいよ、どんどん見て? いいでしょ、この体?」


コメント:イケメン

コメント:サキヤ君!!!

コメント:これマジでサキちゃん? イケボすぎるんだけど


「えへへ、喜んでくれるかなって! もちろん君が来てくれてボクも嬉しいよ! やった! って思った! ホントだよ?」


コメント:アッアッ

コメント:はい……

コメント:サキちゃんのイケボよすぎる

コメント:サキヤくんイケメン……


「ほらほら、クッキー食べよう!? なんかね、今日はクッキーたくさん食べれるんだって!」


 サキヤは袋を取り出すと、ザラザラと中身を皿の上にぶちまけて口に運ぶ。


「うーん、おいしい! 君も食べる? あーん、する? へへへ」

「こらこらサキヤ、人類が困ってるじゃないか」


 サキヤが笑っていると、その横からいつもより髪を短くし、赤いリボンの代わりに後ろ髪に赤いメッシュを入れ、赤い羽根のピアスをした執事服の青年が現れる。


コメント:キターーーー!

コメント:魔王!

コメント:執事トーカちゃん!

コメント:うおおおおおおおおお


「ま、その困り顔も見ようによってはカワイイよね」


 青年は笑顔を浮かべる。


「改めまして、いらっしゃい、人類。彩羽根トールだよ」


 笑顔にキラキラとしたエフェクトが発生する。


コメント:トールくん!?

コメント:気合入ったコラボだなあ

コメント:青と赤のピアスとかもうね


「隣を失礼」


 トールが芝居がかった動きで隣に座る。


「人類が来てくれて嬉しいよ。今日のクッキーは俺も焼くのを手伝ったんだ」


コメント:お、おう

コメント:なんだろうちょっと鼻につくなw

コメント:貴重なオレ

コメント:トーカちゃんの方がいいな

コメント:もどして


「もちろん、愛情はたっぷり詰めておいたからね。よく味わって食べてくれよ?」


 トールはニコリと笑う。


コメント:かっこいいけどなんか

コメント:童貞臭がする

コメント:これは絶対童貞

コメント:トーカちゃんの中のイケメンがこれ……?

コメント:所作が童貞


「あ、あの~」


 背後から声がして、カメラか振り返る。そこにいたのは――


「お茶を用意した、のだです」


 ダボダボの執事服に身を包んだ、薄紅色の髪の角の生えた少年。長いジャケットの裾からは竜の尻尾が姿を見せる。


コメント:ぽちゃおじ!

コメント:ドラたまちゃんくん!?

コメント:は? かわいいが?

コメント:かわよ

コメント:一番かわいい

コメント:のだです!?


「お熱いので気をつけてくださーい。それではー……」


 ティーカップを置いて、ドラたまはぺこりとお辞儀して踵を返す。カメラはその後ろ姿を見送ると、カップに視線を戻し……その陰にキャンディーが置かれているのに気づく。


コメント:ウッッッ

コメント:ドラちゃん……!

コメント:は、乙女か?

コメント:おじさんが一番乙女じゃん?

コメント:おじさんの男装が一番かわいいな(??????


 そのキャンディーの形がぼやけるように、画面がホワイトアウトしていき、姿の見えないアバタがナレーションする。


『一日限りのホワイトデーイベント。お楽しみいただけたでしょうか? カフェ・電脳兎の夢は皆様のまたのご来店をお待ちしております』

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