【一周年記念企画】謁見の間【特別版】
上位チャット:待機
上位チャット:一周年おめでとうございます!
上位チャット:陛下に謁見できるってマ?
上位チャット:概要欄参照
上位チャット:待機
上位チャット:緊張してきた
上位チャット:始まるぞ
スルスルと赤い緞帳が開かれると、豪奢な調度品が飾られた部屋の一枚絵が現れる。中央に立つのは、豪奢な金髪と氷の瞳を備え、詰め襟の軍服を着たイケメン。
「皆のもの、大儀である。余はヨルニナルト・ヘガデル。
上位チャット:陛下!
上位チャット:へ以下!
上位チャット:キター!
上位チャット:馳せ参じましたぞ!
「今日は余の活動一周年記念企画を執り行う。いつもは謁見の間へ来賓を
上位チャット:ありがとうございます!
上位チャット:おめでとうございます!
上位チャット:一 般 参 賀
上位チャット:もんこが開かれちゃうんだなあ……
上位チャット:もんこもんこしてきた
上位チャット:今日は2Dなんだ
上位チャット:マイク買ってきた
「余への謁見を希望する者は、概要欄にあるDiscordのチャンネルで待機してもらおう。余は弊国民を
上位チャット:了解
上位チャット:すでに待機人数がやばいwwww
上位チャット:ちらほらVtuberがいてすごい
上位チャット:抽選当たってほしい……
「また多くの弊国民に参加してもらうため、余も今日は装いを
上位チャット:なるほど
上位チャット:3Dモデルじゃないのはそのせいか
上位チャット:一年前を思い出してエモ
上位チャット:2Dの陛下も好き
「弊国民の
上位チャット:拝聴しました!
上位チャット:仲よく並べ
上位チャット:あれもしかして最初のひとは一人?
上位チャット:何それ羨ましい
上位チャット:逆に緊張しそう笑
「それでは最初の弊国民を抽選しよう……──」
(中略)
「陛下、名残惜しいですが、そろそろお時間では?」
「ム、そうか。話が
赤髪の軍服の男が時を告げ、ヨルニナルトは名残惜しそうに言う。
上位チャット:タイムキーパー兵士長
上位チャット:有能
上位チャット:えらい
「最後に
「あっ、ただの一般弊国民なので大丈夫です~。あの、お二人と話せて
「余も満足である。では、
「はい! 失礼します~」
ヨルニナルトの隣に並んでいたTwitterアイコンが消える。
上位チャット:好調であれ!
上位チャット:一般弊国民ネキよかったな……
上位チャット:貴重な女性弊国民だった
上位チャット:アサカラ兵士長と一緒でうらやましい
上位チャット:弊国民みんな礼儀正しくてうれしい
上位チャット:やっぱ陛下なんだよなあ……
「陛下、押しかけておきながら申し訳ないのですが、自分も急用が入りまして……」
赤髪の軍服の男──アサカラ兵士長が言う。
上位チャット:え
上位チャット:おっと?
上位チャット:あーフル参加できないって言ってたな
上位チャット:それでも抽選にならぶの愛国心強いわ
上位チャット:あの倍率で当たるのも運が強い
上位チャット:待機所仕切ってるアツベ局長が来てくれないかなあ
「であるか。大儀であった。後のことは気にせず行くがよい」
「ハッ! 失礼します! 大調和弊国に栄
アサカラの立ち絵が消える。
「さて、次に呼ぶ者が最後であったのだが、最後がひとりだけというのも興がない。もう一人追加で抽選することとしよう」
上位チャット:おっ
上位チャット:やったー!
上位チャット:ラスイチじゃなかった
上位チャット:もう最後か……
「まずは次の者を謁見の間に通す。……うむ。なるほどな。問題ない。では、入るがよい」
ヨルニナルトがそう言うと──
その背後に、謁見の間を覆いつくさんほどの立ち絵が表示された。
上位チャット:!?
上位チャット:なんだ!?
上位チャット:でか
上位チャット:でっっっっか
上位チャット:草
「発言を許す。名を名乗られよ」
「はい。では」
それは、巨大な体であった。全身灰色のもじゃもじゃの毛におおわれた、がっしりした体であった。
「吾輩は電脳世界のグレイテストダイモン」
一方で頭部は──しょぼくれた目をし、金色の髪から半ばで折れた羊の角が飛び出ている頭部は──ヨルニナルトより小さいサイズであった。
頭1に対し、肩幅が33はあった。
上位チャット:wwwwwwwwww
上位チャット:なんだよコレwwwwww
上位チャット:いや草
上位チャット:肩幅広すぎない?
上位チャット:キャプ翼の比じゃない
上位チャット:味のある絵してるなwwww
上位チャット:頭身がすごい
上位チャット:体に対して顔がかわいいなおい
「アバル=クタアである!」
上位チャット:誰だよwwwww
上位チャット:Vtuberいろんなのがいるな……
上位チャット:Twitterで見たことある
上位チャット:見たことだけあるな
上位チャット:ヘッダーがほぼ肩の人だ
上位チャット:声がシワシワで草
「人の子のヨルニナルトさんよ、初めまして、こんにちは」
「ウム、こんにちは」
上位チャット:礼儀正しくて草
上位チャット:尊大なのか腰が低いのかwwwww
上位チャット:人の子のヨルニナルトさんは草
上位チャット:声がなんかシワシワしてるな……
上位チャット:おじいちゃんかな?
「卿は……悪魔ということだろうか?」
「いや、吾輩はグレイテストダイモン。最もグレートな守護神である」
「そうか、神の方であったか。許せ」
「よく間違われるので構わないのである。あ、と、それよりも、活動一周年、大変おめでたい。おめでとうございます」
「ウム」
上位チャット:悪魔じゃないんだ
上位チャット:Daemonの方か
上位チャット:デーモン?
上位チャット:最もグレートとは
「まさか抽選されるとは思ってもいなかったので、とても緊張しているのである」
「そうか?
「いや、いかにグレイテストな吾輩といえども、人間界では知られていないので、こんなに人の子に見られているのは初めてなのである」
「なるほど」
上位チャット:草だわ
上位チャット:図体に似合わない臆病さw
上位チャット:なんだかわいいなおい
上位チャット:シワシワボイスも味がある気がしてきた
「それでは、さっそくもう一人呼んだ方が卿の負担も少ないであろう」
「あ、お願いします」
ヨルニナルトは何かを操作し──
「ム」
一回咳払いをする。
「あらかじめ断っておくが、抽選機による
「? はい」
「では、入るがよい」
「こんにちは、人類!」
パッ、と立ち絵が表示される。頭の後ろに大きな赤いリボンをさげた少女。
「彩羽根トーカです!」
「エッ!?」
上位チャット:!??!!?
上位チャット:え!?
上位チャット:トーカ!?
上位チャット:トーカちゃんだあああああああああ!
上位チャット:うおおおおおおおおお!
「陛下! 活動一周年おめでとうございます! お祝いするために待機してました!」
「ウム、大儀である」
上位チャット:マジかよwwwww
上位チャット:何しに来てるんですかあなたw
上位チャット:魔王降臨
上位チャット:トーカもよう見とる
上位チャット:予感はしてた
上位チャット:ディスコにいるのニセモノじゃなかったのかよwwwww
上位チャット:は? え? うそ? ああああああああ!? なんで!? なんで今!?!?!?!?
上位チャット:兵士長……
上位チャット:兵士長さっさと急用済ませなさい
上位チャット:兵士長が抽選に当たったのはそういう……
「そ、それから! グレイテストダイモンのアバル=クタア様! はじめましてこんにちは動画見てます推しです!」
「エッアッ、エッ、エエエエ!?」
アバルは声を裏返す。
「エッ、わ、吾輩のことを?」
「もっ、もちろん! ショルの守護神のアバル様のことならバッチリ知っていますよ! あやしいWebサービス導入実験動画とかトラブル続きでめちゃめちゃ面白いですけどやっぱり初心者向けにはサーバー構築動画がオススメですかね仮想サーバーを建てるところから丁寧にやっていてそれでいてネタも欠かさなくて私好きで」
「アッアッ、ウアアアァァ……」
語り続けるトーカを前にして、アバルは絞り出すような悲鳴を上げる。
「も、もう大丈夫、もういいです! 創造神からそんなこと言われたら汗の塩分で溶けてしまいます!」
上位チャット:草
上位チャット:トーカちゃん?
上位チャット:はい限界
上位チャット:これだからVのオタクはさあ
上位チャット:信頼のオタクすぎる
上位チャット:アンテナ高すぎるだろエベレストに立ててんの?
上位チャット:限界バトル叩きつけていけ……
上位チャット:守護神もたいがいだなw
上位チャット:あれ、いつの間にかアバゑもんがおるやんけ!?
「汗で溶けるとは、卿の生態がどうなっているのか興味が尽きないが……さすがトーカ、というところか。電脳世界の守護神にまで通じているとは」
「いやー、前々から注目してました古参です!」
「余は神に詳しくないのだが、ショルの守護神……とはどういう神なのか?」
「電脳世界を支えるすっごい守護神なんですよ。ねえ、アバル様」
「エッアッ、オ、ゴホン! そ、そうである」
アバルはシワシワな声を整える。
「ショルは奥深いところを守っているので、人の子に目にはつかないのである。ホイホイ名乗りだすメイラーなんかとは格が違うし、しょっちゅう過労死するアパッチとは違う優雅な暮らしをしているのである」
上位チャット:???
上位チャット:何のこと?
上位チャット:mailer-daemonか、なるほどね
上位チャット:シェルじゃないの?
上位チャット:ショルだぞ。なお詳細は不明
上位チャット:謎のデーモン、ショル
「フム。
「いやそれはもう、このVtuber界を作り出した創造神であると」
「いやいや私なんて、そんな大したものじゃないですから!」
「いやいやいやトーカさんがいなければこのグレイテストダイモンも存在しませんし」
「いやいやいやいやでも……うう……せめてもうちょっと格下げを!」
「えぇ……あ、う……じゃ、じゃあVの守護神ということでは?」
「う、うう……」
「余もトーカの存在は
「は、はい。すいません」
「いえ! 大丈夫です! アバル様にそこまで言っていただけるなら光栄です!」
上位チャット:限界オタクたちはさあ
上位チャット:陛下の大岡裁き
上位チャット:だな
上位チャット:トーカちゃんは自己評価低いからね……
上位チャット:陛下好き
上位チャット:まあお互い落ち着けってことだわw
上位チャット:これはファインプレイ
それから三人はしばらく、ヨルニナルトの一周年にちなんで思い出話に花を咲かせる。話しているうちにアバルの緊張も解けていき、いつもの個人配信での調子が出てきたようだった。
「──……ふぁっはっは。ありましたなあ、そんなことも。陛下のセンスには吾輩も脱帽です」
「ですよね! それが陛下の、ひいては大調和弊国の魅力だと思います! 配下がドドッと馳せ参じたのもわかるってものです」
上位チャット:わかる
上位チャット:解釈一致だわ
上位チャット:トーカちゃんのオタク語り助かるわ
上位チャット:守護神もなかなかの弊国民だな
上位チャット:コラボ相手を立てまくるオタクの鑑
上位チャット:陛下のいいところ一杯言ってくれて嬉しい
上位チャット:ここまで肩幅について誰も触れないの草
上位チャット:それな
「吾輩も一介の守護神でなければ、大調和弊国の守護を申し出たかもしれませんなあ。今からでもお願いして奉っていただこうかな?」
「弊国ではポンペ教に布教の自由を与えている、
「いえいえ、たわむれに言ったまでのことです」
「あっ、じゃあ私からアバル様にちょっとお願いがあって!」
「オッ、はい。なんですか?」
「その~、良ければ、アバゑもんと呼ばせていただいても……!?」
「お、おお、ふぁっはっは、もちろん! 親しみを込めて人の子からはそう呼ばれていますので」
上位チャット:アバえもんwwww
上位チャット:アバえもんもなかなかの弊国民だったわ
上位チャット:アバゑもんな
上位チャット:トーカちゃんブレないねえ!
「やったー! そ、それじゃあアバゑもん! もう一つ!」
トーカは興奮した声で言う。
「私、アバゑもんの肩に載せてもらってもいいですか!?」
「ふぁっはっは。なんともかわいらしいお願いですね」
ニコニコと上機嫌でアバルは応じる。
「吾輩の肩で良ければいつでも貸しますとも。ささ、乗ってください」
「やった! 陛下、いいですか!?」
「ウム。許す」
トーカの立ち絵がススッとアバルの肩へ向かっていき──急速に縮小される。
上位チャット:!?
上位チャット:ん?
上位チャット:ちっちゃ
上位チャット:いやいやwwwww
上位チャット:縮尺おかしくない?
上位チャット:ちっちゃくて草
上位チャット:どんだけアバエモンでかいんだよwwwwwwwww
上位チャット:陛下遊びすぎwwwww
「どうだ?」
「やったー!」
そして豆粒ほどになったトーカが、アバルの肩に乗った。
上位チャット:ちいせえ!
上位チャット:もはやトーカかどうかわからんwwwww
上位チャット:トーカがちっちゃいんじゃない。あばえもんがでっかいんだ
上位チャット:へいかwwwwww
「いやー、さすがグレートを超え、グレーターを超越したグレイテストダイモン! 大きいなー! 憧れちゃうなー!」
「ふぁっはっは、それほどでもないのである」
「すごくいい眺めですよ、人類!」
「ほう。その眺めには興味がある。アバルよ、余も肩に載せてもらえるだろうか?」
「ふぁっはっは、陛下を肩に載せられるなら光栄です」
「それでは」
ヨルニナルトはペイントツールを起動すると、直立ではなく椅子に腰かけた自身の絵を呼び出す。
そして椅子のレイヤーを消し、股間周辺部を消して透過し、保存した。
上位チャット:!?
上位チャット:エッ
上位チャット:陛下!?
上位チャット:あっ
「肩車してもらおうか」
「え?」
ヨルニナルトが立ち絵を股間部分を消したものに変えて──アバルの頭をちょうど股間にもってくる形で配置する。
「ほう、これは絶景だ」
「ん? え?」
上位チャット:あっ
上位チャット:あ
上位チャット:草
上位チャット:陛下でけえwwwwww
上位チャット:あっ
「あ、いいなー! 陛下、肩車だ! すっごい高い!」
「ウム。さすがグレイテストダイモン。
「あ、は、ふぁっはっは。であろう!」
「しかし」
ヨルニナルトはふと声を引き締める。
「高すぎて少し寒いな」
上位チャット:来るぞ!
上位チャット:ちょwwwww
上位チャット:陛下!? 初対面でマズいですよ!
上位チャット:油断してたwwwwwww
「ウッ! いかん……! 封印されし
「え!?」
「陛下! そんな至近距離で解放したらアバゑもんが!
「クッ!」
ブボン! ッスップーゥヮヮ~
奇妙な音が響き、画面が黄土色ににじんでいく。
上位チャット:やったwwwwwwww
上位チャット:やりやがったwwwwwwwww
上位チャット:ノ ル マ 達 成
上位チャット:いつものライブラリの30+112
上位チャット:特定班早すぎて草
上位チャット:高貴助かる
「え、え?」
やがてすべてが黄土色に塗りつぶされると──戸惑うアバルの声だけを残してアノテーション画面に移った。
上位チャット:終わったwwwwwww
上位チャット:終わりかよwwww
上位チャット:いい感じにオチたからね
上位チャット:お疲れ様でした! 弊国のますますの興盛を祈って!
上位チャット:また謁見の間公開してほしい
上位チャット:いい企画だった乙
上位チャット:いつものオチで安心した
上位チャット:次があればせめて抽選には……!
「──あ、何か
「え、この流れで!? え、えーと、人の子たちよ、吾輩のチャンネル登録をよろしくお願いします!」
「みんなアバゑもんのチャンネルもよろしく! この動画への高評価とかコメントもですよ!」
上位チャット:Cパート
上位チャット:草
上位チャット:アバエモン見に行くか
上位チャット:お疲れ様でした~
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