【念願の】物産展に行ってみたらコラボだった件【コラボ】

上位チャット:ごきげんよう

上位チャット:初見です

上位チャット:初見さんいらっしゃい

上位チャット:コラボ楽しみにしてた

上位チャット:ユーリくんちゃんも大きくなって

上位チャット:対戦よろしくお願いします

上位チャット:始まるー!


 アドバルーンの浮かんだ大きなビルを前に、短い赤色の髪をツインテールにした、ロングスカートのメイド少女が立つ。彼女は、スッと片手を上げた。


「おっす、ごきげんよう!」


 元気よく挨拶する声は──男性のものだった。


上位チャット:ごきげんよう

上位チャット:ごきげんよう~

上位チャット:6

上位チャット:男!?

上位チャット:バ美肉勢だぞ

上位チャット:4

上位チャット:3

上位チャット:P

上位チャット:K

上位チャット:どうも~


「乙女ゲームの世界に転生したけど、配役は悪役令嬢付きのメイドだし、実はスピンオフの格ゲーだったしで散々な異世界転生系Vtuberの、駒入コマイリ・イチフレ・ユーリでーす! おっすおっす!」


 赤髪メイド──ユーリは雑に挨拶をする。


上位チャット:ラノベのタイトルかな?

上位チャット:8

上位チャット:1F有利w

上位チャット:かわいい

上位チャット:いい声してる

上位チャット:対よろ

上位チャット:K


「今日も生配信にたくさんのお嬢様方が来てくださり、あざーす! 精一杯お給仕しますんでよろしく!」


上位チャット:よくてよ

上位チャット:初見です、よろしくおねがいします

上位チャット:1

上位チャット:P

上位チャット:俺はお嬢様だった……?


「コメントあざーす! うん、それじゃ早速ゲストを紹介します! 今日は何とコラボだぞ~! まずはこの方! 美しいお嬢様系Vtuber! どうぞ!」

「あ、どうも」


 ユーリに呼びかけられて、白いブレザーの制服を着た少女が歩いて画面に入ってくる。


「こんにちは」


 独特の声音で言い、長い金髪を振って頭を下げる。


獅羽来しばらいアテミです」


上位チャット:かわいい

上位チャット:キター!

上位チャット:ボイチェン?

上位チャット:6

上位チャット:アテミちゃんはおじさんだけど女の子だぞ

上位チャット:P

上位チャット:当て身?


「よッ、アテミ様~!」


 ユーリは拍手をしながら近づく。


「いや~、やっぱ名前が縁が近い気がして! ずっとコラボしたかったんすよ~」

「いえそんな、こちらこそ。それと、その、これ」


 アテミは懐から──札束を取り出し、深々と腰を折りながらユーリに差し出す。


「コラボ代です」


上位チャット:!?

上位チャット:草

上位チャット:ATMちゃん!

上位チャット:4

上位チャット:札束wwwwwww

上位チャット:あっ……


「いやいや!? こっちが誘った側だからね? それにほら、僕たち友達でしょ?」

「あッ……はい」


 アテミは、もう一束を追加する。


「友達代です」

「そうじゃないんだよなあ!?」

「まあまあ、受け取ってください」

「こいつッ、僕の体の中に!?」


 アテミはユーリの体の中に札束を突っ込むと、何も持っていない手を引き出した。


上位チャット:wwwwwww

上位チャット:アテミちゃん面白いなwwww

上位チャット:無理矢理体内に!?

上位チャット:友達代の請求とか幻滅しましたメンバー抜けます

上位チャット:5

上位チャット:K


「悪質ゥ……!」

「あ、迷惑料」

「いいから!? はい、次! ゲスト待たせてるからね!?」


 ユーリはアテミから距離を取ると、咳払いする。


「はい。では次はビッグゲスト! 大調和弊国だいちょうわへいこくよりこの方だ!」

「ほっほっほ」


 穏やかな笑い声と共に、白いローブを着た禿頭の老人。二重丸の白く濁った瞳の怪僧。


「ご紹介にあずかりました。大調和弊国でポンペ教の司教をしております、ナイ司教ですぞ」


上位チャット:キター!

上位チャット:え、怖

上位チャット:うおおおおお大調和弊国だ!

上位チャット:3

上位チャット:司教ー!

上位チャット:珍しいなあ


「いや、ユーリ殿にアテミ殿、二人も美人がいるところに拙僧がいるのは多少場違い感がありますなあ」

「そんなことないですって。ねえアテミ様」

「あっ、なるほど」


 アテミはポンと手を叩き──札束をナイ司教に差し出す。


「ユーリが失礼しました。コラボ代です」

「ちょっと!?」


上位チャット:草

上位チャット:6

上位チャット:支払っていくぅ!


「ほっほ。寄進はいつでも歓迎しておりますぞ」


 ナイ司教は札束を受け取って素早く懐に収める。


「いや、拙僧にふさわしい場に招待していただきましたな」

「言わせた感出ちゃったんだけど!?」

「ごめんね」

「いやだからお金はいいから!?」


 ユーリは差し出された札束から距離を取る。


上位チャット:ワロタ

上位チャット:生臭坊主wwwww

上位チャット:さすがATMちゃん、キレッキレやでぇ……

上位チャット:P

上位チャット:登録してこよ


「じゃあ最後のゲスト! すごいぞ、またもビッグゲストだからな!? どうぞ!」

「はい~」


 ユーリに促され、すこしがに股で少女がやってくる。小さな王冠を載せ、角を生やした頭。薄紅色のポニーテールが揺れ、額の赤い紋章がぼんやりと光る。ぽっちゃりしたお腹を出したトーガ風の衣装に、太くて長い尻尾。


上位チャット:うおおおおおおお!

上位チャット:キターーー!

上位チャット:ぽちゃおじ!

上位チャット:好き

上位チャット:ありがとう


「えー、おはようございまーす。バーチャルなんちゃらおじさんの、ドラたまでーす。どうも~」

「うおー! 本物だ! あざっすあざっす!」

「いえーい、おっすおっす~」


 頭を下げるユーリに、ドラたまは雑に両手を上げて返す。


上位チャット:なんちゃらwwwwww

上位チャット:挨拶が雑ゥ!

上位チャット:平常運転で安心した

上位チャット:2

上位チャット:ユーリくんちゃんとぽちゃおじが並んでる……嬉しい


「これはドラたま殿。お久しぶりですな」

「あ、どうもでーす。呼ばれてきました~。えーと、アテミさんも初めまして」

「アッアッ、ハイ!」


 声を揺らがせながら、アテミは札束を差し出す。


「ファンです! 生きててくれてありがとうございます!」


上位チャット:草

上位チャット:発言と行動の差ァ!

上位チャット:ATMちゃんはぽちゃおじガチ勢だからね……

上位チャット:K

上位チャット:てぇてぇ

上位チャット:現金芸が冴える


「あ、えっと。はい」


 ドラたまは少し左右を見回してから札束を受け取り──


「じゃあ、はい」

「ほっほ」


 ナイ司教に渡した。素早く司教のローブの内側に消えていく札束。


上位チャット:wwwww

上位チャット:渡したwwwwww

上位チャット:宗教法人は税金がかからないからね

上位チャット:そういう理由?wwww

上位チャット:6


「神の加護がありますぞ」

「ありがとうございます!」

「生々しいな、やりとりが! えーと、ドラたま様、コラボあざっす!」

「いえいえ、あのーね、ユーリさんには前から注目してたんで。ほら、このコメント欄とかね」


上位チャット:6

上位チャット:6

上位チャット:見てるー?

上位チャット:K

上位チャット:さっきから数字なんなの? スパム?

上位チャット:P


「独特っていうか、あのーこれ仕組みがあるんですよね。このコメントの」

「はい、そうなんすよ! 僕、格ゲーのシステムがある世界にいるんで。コメント欄でコマンド入力が成立すると必殺技が出ちゃう体質なんすよね。ほら、お嬢様方! 今だよ!」


上位チャット:5

上位チャット:へえー!

上位チャット:3

上位チャット:そういうのあるんだ

上位チャット:4

上位チャット:9

上位チャット:↓\→+P

上位チャット:P


「ほらっ、今! 今やれ! 出すんだよ! なんか恥ずかしいだろっ!」

「あ~、なかなかうまくいかないんですね」

「連続して猶予時間内に入力しないと成立しないようにしているから、今日みたいにコメントが多いとちょ『ガトリングスロー!』」


 突然、ユーリは叫びながらロングスカートの中からガトリング砲を取り出し、前方に向かって投げる。


「出た! 出ました! どうで『ガトリングラリアット!』」


 再びロングスカートからガトリング砲を取り出し、ぶんぶんと振り回して少し前方に移動する。


「いやもうい『ガトリングキック!』」


 ロングスカート内のガトリング砲を踏み台に高くジャンプして蹴りを放つ。


上位チャット:wwwwwwwwwwww

上位チャット:草

上位チャット:めっちゃコマンド出るやん

上位チャット:ガトリング……?

上位チャット:ガトリングぜんぜん撃ってなくて草

上位チャット:どういう格ゲーなんだよwwww

上位チャット:トンファーキック!

上位チャット:対空性能よさそう


「いいから! もういいから! なんだよ急に連帯感を見せてお嬢様方はさあ!」

「お~」


 画面に向かってユーリが怒ってみせる。その後ろで、三人が拍手をした。


上位チャット:面白れぇwwwww

上位チャット:いいなこれ

上位チャット:めっちゃコマンド入力増えて草

上位チャット:コメント速すぎるwwww


「いや~、いい仕組みだなって思います。コメント盛り上がりそうですね」

「あざっす! いや、だいたい数字とアルファベットしかコメントされないんすけどね!」

「あのこれ投げ技とかはどうなるんです? あります?」

「あ、投げられるキャラが出てきます。僕のお嬢様なんですけど」

「なるほど~」


上位チャット:投げられるためだけに登場する原作お嬢様

上位チャット:お嬢様を投げるの……?

上位チャット:ユーリくんちゃんにほとんどの技で打ち負ける雑魚お嬢様だぞ

上位チャット:見たい

上位チャット:一回転Pだからなかなかね


「とにかく、自己紹介が終わったので、さっそく企画に入っていきたいと思います! 今日僕たちがやってきたのはこちらの巨大デパート!」

「立派なデパートですなあ」

「ここでは~、何をしてるのかなぁ~?」

「振ってくれてあざっす! いやアテミ様はお金渡さないでいいから! えー、これはっすね、『バーチャル物産展チャレンジ』というゲームができるスペースです」


 ドラたま経由でナイ司教に札束が渡る中、ユーリは説明を続ける。


「このデパートは今物産展中でお客様が殺到しているんですね。お客様には当たり判定があるのでなかなか思った通り進めないんすけど、そこをなんとか進んで名産品をゲットするゲームです」


上位チャット:へえ~

上位チャット:どういうゲームだよ

上位チャット:物産展にどういう想いがあって作ったんだ

上位チャット:これやったけど当たり判定ひどいぞw


「今日はこのゲームを遊んで、入手した名産品で豪華なランチメニューを組み立てる勝負をします! 制限時間は10分! どのランチが良かったかは、ナイ司教に判定してもらうっすよ~!」

「ほっほ。ゲーム中のカメラ係も担当させていただきますぞ。みなさんのセンスあふれる献立を期待しております」


上位チャット:なるほど

上位チャット:献立勝負いいね

上位チャット:物産展とか駅弁しか買ったことない

上位チャット:駅弁を買うイベントじゃなかったのあれ

上位チャット:そもそも行ったことないな

上位チャット:お嬢様方もうちょっと出かけて?


「それじゃあ準備はいいっすか~? 僕も実は評判は聞いてるんすけど、初見なんで楽しみです! じゃ、デパートを開店時間にしま~す!」


 ユーリが手元で操作した次の瞬間──


「おおっ」

「わっ」


 ドドドドド……と店の入り口に同じ姿をしたオバサン型のNPCが殺到する。それは衝突しながらデパートに吸い込まれて行き──詰まった。


「えっ」


 詰まっていた。立ち尽くす三人の前で、次々に現れるオバサンたちが群れていく。


上位チャット:草

上位チャット:なんだこれ

上位チャット:安っぽいおばさんがwwww

上位チャット:一気に重くなってて草

上位チャット:いや詰まるんかい!

上位チャット:全員同じアバターでこわい


「え、これを入っていかないといけないやつ?」

「みたいですね。行ってみましょうか」

「ほっほ。がんばってくだされ」


 三人はオバサンの群れに向かうが、ぶつかって進めない。


「これ前入力しぱなっしだけど進めないっすね~」

「これでどいてもらえませんか? ダメ?」


 アテミが札束をオバサンに渡そうとするが見向きもされない。その間にもオバサンは追加でやってきて取り囲まれていく。


上位チャット:金でどうにかしようとしてて草

上位チャット:ATMちゃんいいぞ

上位チャット:所々でオバサンがプルプルしてるの草

上位チャット:オバサンがスタックしてる笑


「う、うごけない~」

「あ~、これ手でかき分けると少し進めますね」

「なるほど!?」


 平泳ぎするように手を動かすドラたまが、少しずつ前に進む。


「あっ、半身になって手をワキワキさせても進む! これか!」


上位チャット:お~

上位チャット:なるほどね

上位チャット:そういう感じのゲームなのか

上位チャット:めっちゃ体力使いそう


 エッサエッサ、と三人はオバサンをかき分けてデパートの中へ。


『チョット!』『ナニスンノヨ!』『イタイワヨ!』

「めちゃくちゃ文句言われて草ですね」

「ごめんなさいごめんなさいお金払います!」

「うおー、どの店も混んでる! 案内表示も見づらいんすけど!」


 デパートの中もオバサンたちで溢れかえっていた。わずかに人の流れがあり、その間隙に空白がある。


「とりあえず横に向かって出て……お、抜けました~」


 いち早くオバサンの塊から抜け出したドラたまが両手を上げてアピールし──


「あ、ドラたま様危ない!」

「え」


 ドドドドドドド──と。地響きを立てて走ってきたオバサンの群れに、ドラたまが飲まれる。


「あ~れ~」

「ドラたま様ー!」


 両手を上げたままドラたまは群れに強制移動させられ、デパートの奥へと運ばれて行った。


上位チャット:ぽちゃおじー!

上位チャット:草

上位チャット:あーれー、じゃないんだよwwwww

上位チャット:これほど悲壮感のない悲鳴があっただろうか


「くっ、ひどいトラップだ。これは出て行く場所も慎重に見極めな『ガトリングラリアット!』」


 コマンドが成立したユーリが、ガトリングを振り回しながら前進する──と。


『キャー!』『ナニスンノヨ!』『ワー!』


 オバサンたちがガトリングに弾き飛ばされて飛んでいく。


上位チャット:!?

上位チャット:技出た

上位チャット:ひどいwwwww

上位チャット:おばさーーーーん!

上位チャット:おばさんうるせえwwww

上位チャット:ええ……


「おお!? やった! なるほどこういうゲームだな!? よし、お嬢様方頼むぞ~!」


上位チャット:なるほどね

上位チャット:6

上位チャット:よし

上位チャット:K

上位チャット:4


「ああ~、いいなあ。ええと」


 攻撃により空いたスペースに進んでいくユーリを見て、アテミは──パンチを繰り出す。


「えいっ」


 ぽす──という音がしそうなほど、それはか弱いパンチだった。オバサンはびくともしない。


上位チャット:かわいい

上位チャット:弱くてかわいい

上位チャット:おじさんかわいい

上位チャット:ATMちゃんは女の子やぞ

上位チャット:女の子おじさん


「ダメ? ダメか~? うーん……あっ」


 アテミは札束を持つ。


「えいっ」


 バシーン!


『キャー!』

「あっ飛んだ」


 札束で叩かれたオバサンが軽快にすっ飛んでいく。


上位チャット:wwwwwwwwww

上位チャット:草

上位チャット:いや草

上位チャット:札束の威力じゃなくない?w

上位チャット:世の中金よ!


「これで進めそうですね。えいっえいっ」

「あっ、速い!」


 札束でオバサンを吹っ飛ばしながら進むアテミを見て、ユーリは焦りながらオバサンの海を泳ぐ。


「くっそ~。コマンド入力が成立しないと必殺技が出ないから……でも、大丈夫、このお店のやつ買えるぞ! お金の制限はないから購入ボタンを押すだけ!」


 オバサンの壁を抜け、ユーリは店員の前に立つ。


「よしっ、チーズケーキゲッ『ガトリング背負い投げ!』」


 ぽいっ、と。ユーリはガトリングを後方に投げ捨てて前に飛び出す。そしていつの間にか現れた金髪縦ロールのドレスの女性──お嬢様の腕を取ると足を払って背負い投げし、地面に叩きつけた反動で距離を取った。


『ワー!』『イタイワヨ!』『キャー!』


 余波でオバサンがまとめて吹っ飛んでいく。店から大きく離れたユーリは、崩れ落ちて地面を叩いた。


「なんで今だよッ!?」


上位チャット:草

上位チャット:ナイスタイミングw

上位チャット:ガトリング使えよ

上位チャット:コマンド暴発

上位チャット:あれがお嬢様かwwww

上位チャット:前方ダッシュからの投げて距離を取るとかいい性能してるじゃん

上位チャット:若干吸い込んでそうなの草

上位チャット:これは分からなくなってきたな笑



 (中略)



「──……はい、というわけで終了~、集合でーす」

「おっ」


 デパートの前に、全員が強制的にテレポートさせられる。


「ほっほ。みなさん、お疲れ様ですぞ」

「いや本当にね!? こんなに体力使うゲームだとは思わなかった! 二人ともお疲れ様っす!」

「お疲れ様です~」


 お互い頭を下げてねぎらい合う。


上位チャット:いや~大変だったな

上位チャット:お嬢様方のコマンド入力がひどかった

上位チャット:いいところで出るのなw

上位チャット:おじさんたちお疲れ様

上位チャット:ほぼカメラに映ってなかったぽちゃおじが何を買ったのか気になる


「えー、それじゃあここからは審査に移りたいと思います! 果たして僕らが買いそろえたランチとは! ナイ司教のお眼鏡にかなうのは誰か! それじゃあ……ドラたま様から発表をお願いします!」

「あ、は~い。えっと、このメニューから出す……と。はい」


 ドラたまが手元を操作すると、出現したのは──


「はい、駅弁でーす」

「おお、物産展の定番。……え、他には?」

「いやー駅弁しか買えませんでしたね」


上位チャット:草

上位チャット:たまに通り過ぎてたけどまじで通過してただけかwwww

上位チャット:一般通過おじさん

上位チャット:駅弁いいじゃん

上位チャット:普通にアリ


「ほっほ。いや、拙僧は駅弁好きですぞ。旅の途中に食べるという風情がいいですな」

「なるほど無難に高ポイント。それじゃあ、次はアテミ様!」

「はい。自分は~……」


 アテミはメニューを操作して、二つの物体を取り出す。


「鮭とばと……お酒です」


 パックに入った鮭とば。そして、一升瓶。


上位チャット:つまみかな?

上位チャット:物産展に迷い込んだおじさんチョイス

上位チャット:ATMちゃん……

上位チャット:昼から飲むのか


「……ランチっていうか、酒盛りじゃない?」

「とりあえずたどり着けたお店で買ったらこうなって。あっ」


 アテミは──札束を取り出してナイ司教に渡す。


「審査代です」

「おい賄賂じゃないか!?」

「ほっほ」

「受け取る方もな!?」

「いや、拙僧、鮭とばで一杯やるのはなかなかいいと思いますぞ」

「懐柔されてる!」


上位チャット:草

上位チャット:司教wwwwwwww

上位チャット:順位は金で買える!!!

上位チャット:この生臭坊主がよぉ


「く、しかし僕は勝つぞ。三品買えたからね!」


 ユーリはメニューを操作する。


上位チャット:うん……

上位チャット:まあ買えたね

上位チャット:買ってはいた

上位チャット:そうな


「さあどうだ!」


 ぽん、とアイテムがユーリの前に出現する。


「瓶詰の醤油いくら、タコ焼き、それからチーズタルト『ガトリングスロー!』」


 三品がガトリング砲と共にいずこへかと飛んでいった。


上位チャット:草

上位チャット:あー!

上位チャット:これはひどいwwwwww

上位チャット:どうしてコマンド入力してしまうのか

上位チャット:食べ物は投げるもの


「なんで今コマンド入力したのお嬢様方!? ねえ!?」

「ほっほ。ダイナミックですなあ。ご安心あれ、ユーリ殿。拙僧、きちんと三品チェックしておりますぞ」

「ナイ司教……!」


 ナイ司教はニィィと口を半月にして笑い、ユーリは手を組んで声を上げ──


「優勝はアテミ殿ですな」

「なんでだぁ~っ!」


 地面を叩く。


「普通にその三品の組み合わせが嫌だからですぞ」

「普通に!」


上位チャット:草

上位チャット:はい

上位チャット:いくらとタコヤキでタルトはちょっと

上位チャット:ATMちゃんおめでとう!

上位チャット:札束が効いたなw

上位チャット:ユーリくんちゃんのは単品でなら……


「ドラたま殿の駅弁と悩んだのですが、拙僧、今は酒盛りの気分でして」

「そうだね良い時間帯だもんね!? くぅ……!」

「ユーリさん。元気出して」

「アテミ様は現金出すのやめようね!?」

「ふふっ」


上位チャット:wwwwww

上位チャット:現金出しては草

上位チャット:まあ夜だしね

上位チャット:アテミちゃん面白いな

上位チャット:ぽちゃおじの素笑い助かる


 差し出された札束を拒否しながら、ユーリは立ち上がる。


「えー、はい。ということで企画も終わったので……締め、締めます! 三人とも、あざっした!」

「ありがとうございました」


 全員でぺこぺこと頭を下げる。


上位チャット:おつかれさまです!

上位チャット:サラリーマン仕草で好き

上位チャット:いい企画だった

上位チャット:楽しかった


「いやー本当に、アテミ様も、ナイ司教様も、ドラたま様もコラボに応じていただきあざっす! お嬢様方にね、いいお給仕をできたんじゃないかと思います」

「いえいえ、ちょうどね、タイミングがよかったっていうか」

「拙僧もそんな感じですな。おかげさまで懐が温かくなりましたぞ」

「うんアテミ様は無限に札束を突っ込むのをやめようか」


 せっせっせっせと札束を生成してはナイ司教のローブに突っ込むアテミに諭すように言ってから、ユーリはカメラの方を向く。


「それじゃあお嬢様方、またのお給仕の時間にお会いしましょう! それで『トーチャーガトリング!(ヒット音) さ~あお嬢様、お仕置きの時間ですよ! オラオラオラオラオラオラオラァ!(銃声)』」


上位チャット:いや草

上位チャット:ごきげん ええ

上位チャット:お嬢様ァー!

上位チャット:ガトリングで殴られたうえ、ケツに……!?

上位チャット:超必出た!

上位チャット:いい声してるわ

上位チャット:お嬢様ボコボコで草

上位チャット:いいカメラ演出

上位チャット:対戦ありがとうございました

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