EXEC Devstream #32(後)
『こんにちは、プレイヤーの皆さん。EXEC開発チームです』
サーバー全体に赤文字のチャットメッセージが流れる。
『本日はこのスペシャルマッチのためにお集まりいただきありがとうございます。予定通り、ひととおり新キャラクター、彩羽根トーカのスキルのお披露目は終わりましたので』
「……ん?」
『ここから先は手加減無用で、彩羽根トーカを狙ってください! それでは、健闘を祈ります』
「はい!?」
上位チャット:WTF!?
上位チャット:何のことだ?
上位チャット:やったぜ情報公開! イエーイ! 見てるかお前ら! トーカとプレイしてるぜ!
上位チャット:同じメッセージが裏で見ている配信で流れているんだけど?
トーカと視聴者が混乱する中、ケヴィンの音声が戻ってくる。
「いやー、トーカさんお待たせしました」
「あの、ケヴィンさん? 何かアナウンスが流れていたんですが……」
「いやぁ、実はEXECをプレイしてくれているストリーマーの皆さんに声をかけていましてね。みなさんトーカさんと遊べるならぜひ、ということで快諾していただきまして」
「え……は?」
「つまりこのマッチは、開発チームとではなく、実はトーカさんと招待プレイヤーのスペシャルマッチです。ここから先はガチでやりあっていただきます」
上位チャット:まじかよ!?
上位チャット:うらやましい
上位チャット:俺にはそんなオファーこなかったぞ!
上位チャット:本当だ、何人か同じマッチでやってるっぽい
上位チャット:見に行かなきゃ!
上位チャット:HAHAHA
「え、何!? ドッキリですか!?」
「そういうことですね! それではトーカさん、頑張って最後の一人を目指してください!」
「お、おぉ……いや、やりますけど、私あんまりうまくないですからね!? 勝利できたことないですからね!? これプロモーションできる保証ないですよ!?」
「トーカさんなら、視聴者に情報公開するために勝利してくれると信じてますよ!」
「根拠が行方不明!」
そんなことを言い合いながら、トーカは今までの余裕を失ってプレイを続ける。
「ぎゃあ、撃たれた! 2方向、2人来てる!? ダウンしちゃった死ぬ! ……ん!? あ、やり合い始めた!? よしよし、争え争え! 今のうちに這って移動、ドア貫通で家の中に逃げて……早く、早く回復して……よし、ダウン状態から復帰! 退避ー!」
不死の特性で傷を癒し、他のプレイヤーがやりあっている間に逃げるトーカ。
「うぉああああ、逃げてたらエリアの端にいたあああ! 時空嵐が追いかけてくるー! 間に合え、間に合えー!」
斜面をスライディングで滑り降り、岩をパルクールで乗り越え、何とか時空嵐に飲まれることなく移動を完了する。
「はー、はー……なんとか年代ジャンプを乗り越えました」
「近現代、日本だと明治維新から大戦前という感じの装いになります。衣装を見せたいので、服を探してください」
「そういう余裕があればですけどね!?」
「ハハハ」
上位チャット:LOL
上位チャット:トーカがんばれ
上位チャット:ポンコツトーカ、愛してる
上位チャット:開発、よくやった!
「うう、けれど私だってお披露目したい気持ちはあるんですよ。とにかく進んでいきましょう。近現代マップになると、だいぶ町並みも背が高くなってきますが、一部で地形が均されたりしていて、そういう違いを見るのも楽しいですよ」
上位チャット:マップをゆっくり探索したいよ
上位チャット:いいか、これが自然破壊だ
上位チャット:作り込みがすごい
上位チャット:この時代が進むシステムを愛してる
「とりあえず手頃な家で物資を漁りましょう。この時代からは銃が出てくるんですよね。まだ単発式がメインなので、英雄にとってはそこまで脅威じゃないんですけど……あ、スナイパーライフル」
家の中に入って二階に上がり、アイテムボックスを漁るトーカ。
上位チャット:いいね
上位チャット:ボルトアクションだし、精度悪いから嫌いだ
上位チャット:この時代で許せるのはリボルバーのみ
上位チャット:もう弓は出ないし、持っておいてもいい
上位チャット:弾がないからいらない
「これモチちゃんが使うと強いんですけどね……私は無理……あっ、マップにすごい反応ある!?」
マップを確認し、トーカは窓から外を見る。そこには。
「あっ、古代服のままのバーサーカーさん!」
毛皮の服を着た、屈強な長髪の男がのしのしと道の真ん中を歩いていた。
「うわー、めっちゃ噂されててマップ上で位置がすごい分かりますね……」
呟いた瞬間、銃声が鳴り響く。ふらりと膝をつくバーサーカー。
「あっ、撃たれた。ダウンしてる……けどめっちゃ復帰早い! あれ、だいぶ力を取り込んでますよ!?」
むくりと立ち上がったバーサーカーは、明後日の方向を向いて指をさす。するとバーサーカーを囲う大きな白い円が地面に描かれた。
「あっ、宣誓打った! あれはですね、『英雄の宣誓』です。宣誓された対象と決着がつくまで、一定範囲内……『死のサークル』からお互い出れなくなるし、剣しか使えなくなるやつです。英雄なら誰でも使えるんですが……私は逃げられないのがやだなーって、使いこなせていないですね」
上位チャット:宣誓嫌い
上位チャット:誘いが上手いな
上位チャット:使うと逃げられないから、俺は使わないな
「あっ、宣誓された相手が出てきてチャンバラが始まり、早い! え、めちゃくちゃ強い! あの古代服バーサーカーさんヤバいですよ!?」
バーサーカーは斬りかかってきたキャラを大剣でいなし、あっという間に体勢を崩して首をはね、天に向かって光の柱が立ち上る。
上位チャット:強い
上位チャット:ウソだろ
上位チャット:さすが有名ストリーマーだな
上位チャット:バーサーカーはあの服だと強化されるパッシブを持っているが、それにしてもパリィが上手かった
「うわ、見てる場合じゃない。噂と死亡エフェクトで人が集まってくる! 早くここから離れないと……あ、服があった! セーフ!」
「大戦時の日本の女性兵士の服をモデルにしました」
「スキンによってはね、ハイカラさんな感じの服もあるのでお楽しみに! じゃなくて、逃げるんですよォ!」
兵士の服を着たトーカはバーサーカーのいない方向のドアを開けて駆け出し、町を離れる。走りながら移動先を探してきょろきょろと視点を動かすのだが、よさそうな場所が見つからない。
「うわ、あっちの方めっちゃ死んでる……激戦区じゃないですか、ヤダー! 私は安全に逃げて物資を、あっ!」
ピタリ、とトーカは走るのをやめる。
「あの湖の上、棺が浮いてる! 時空嵐に飲まれた人だ!」
「お、いいですね、回収しましょう」
「何かいいのあるといいんですけど……」
トーカはプカプカと浮かぶ棺に向かって泳いでいき、中身を確認する。
「うーん、シミターとスリング……うわ、エッセンスがいっぱい。アイテム回収に夢中になって、時空嵐に間に合わなかった感じかな?」
「ルーンを充填できるエッセンスは古代でしか手に入りませんからね、ラッキーです」
「インベントリがいっぱいだ。矢は捨てたほうがいいですか?」
「弓は近中世までのドロップですから、捨てましょう」
上位チャット:HAHA、俺もよく棺になるよ
上位チャット:スリングは捨てないの?
上位チャット:スリングは全時代で使えるからね
上位チャット:市街地だとリロード遅いから、スリングは使わないかな
「あっ、急回復のルーンは美味しいですね。よし、移動しましょう。パワーがほしいので、なんとかもう少し敵を倒せるといいんですけど……」
「索敵しながら移動していきましょう」
マップを見つつ、トーカは敵を探して探索を続ける。しかし、そう簡単にうまくはいかない。
「うわー、最後の年代ジャンプ来ちゃった! 結局ここまで2キルしかしてない! もうちょっとパワーないとつらいですよね? うう、倒したい……安全に倒したい……」
上位チャット:LOL
上位チャット:トーカ、かわいい
上位チャット:パワーなんて飾りだよ
「しかもエリア外! 時空嵐に捕まらないように移動しないと……」
「おっ、トーカさん、同じ境遇の人がいますよ」
「あっ、本当だ!」
次のエリアに向かって走っていると、前方に同じ方向に向かって駆けていくキャラクターを発見する。
「あーでもあれは──」
「これはチャンスですね!? 後頭部に投石をシュー!」
トーカがスリングで投げた石が、敵の頭に当たり──
「よしスタン、あれぇ!?」
体勢を崩した敵が、ぼんっと煙を吐いて消え、大きなコウモリが飛び出す。
「ヴァンプのコウモリ化ですね」
「卑劣な術ぅ! って、あれ」
コウモリが飛行して逃げようとし、空中で弾かれる。地面に表示されている白い円の淵で。
「宣誓された!? 死のサークルが……え、ヴァンプさん? 逃げるのでは?」
「いや、宣誓は……バーサーカーからされてますね」
「へあ!?」
トーカが振り返ると、そこには──毛皮の服を着た、屈強な長髪の男。
「げ! 古代服バーサーカーさん!?」
「宣誓でできた死のサークルに3人で入っていますので、ここでバーサーカーとヴァンプを倒さないといけませんね」
「嘘でしょ時空嵐も来てるのに!?」
上位チャット:LOL
上位チャット:ピンチだ
上位チャット:逃げろおおおおおおおお!
上位チャット:逃げられないっての
上位チャット:ヴァンプは卑劣
上位チャット:許してやれよ、あれしかろくなスキルがないんだ
「えっ、誰から倒すべきこれ? ってヴァンプこっち向いてる!?」
「バーサーカーに気づいてないかもしれませんね」
「待って待って手を組もうヴァンプおじさん! あのバーサーカーさんはやばいって!」
トーカは後ろ向きに走って距離を取る、がヴァンプもそれを追ってきた。死のサークル内に入っている高い崖の壁に追い込まれるトーカ。ヴァンプが剣を構え──
「ほァ!?」
その後ろにバーサーカーが立つ。大剣によりあっという間に叩き伏せられ、首をはねられるヴァンプ。
「ヴァンプおじさーん!」
「あー、アルティメット使う暇もなかったですね」
上位チャット:RIPヴァンプ
上位チャット:ヴァンプにはバフが必要
上位チャット:コウモリ化は強いだろ
上位チャット:トーカかわいい
「さあトーカさんとバーサーカーの1対1です」
「無理でしょあんな上手いの!? えーとえーと……あッ!」
トーカは周囲を見回し──覚悟を決める。
「よし、アルティメット! オーバーヒート発動!」
『私は……ここで負けたりなんかしないッ!』
トーカの関節から煙が噴き出し、その姿が変わる。
上位チャット:来た!
上位チャット:オー!
上位チャット:原作通りだ!
上位チャット:これを見に来たんだ!
「めっちゃ格好いいこと言ってるけどやるこたァ決まってるんですよ!」
眼を赤くし白い髪を振り立てて、トーカは──くるりとバーサーカーに背を向けて、そびえたつ崖に向かって駆け出す。
「強化されたジャンプ、アンド、パルクール! 届けぇぇっ!」
ジャンプし、岩肌に張り付いて這い上り──トーカは崖の上に立つ。時空嵐の範囲外、死のサークルの端っこに。
上位チャット:LOL
上位チャット:えぇ……
上位チャット:これはいい判断だ
上位チャット:マップをよく見たな、偉いぞ!
「よし範囲外! あとは射撃を警戒すれば!」
トーカは身をかがめて崖下をうかがう。そこには──
「ひっ」
ダッシュし、ジャンプして、崖を這い上り──まるで届かずに落ちていくバーサーカーの姿があった。
「……あ、危なかった」
「おお、いい逃げですね。スキルのいいアピールありがとうございます」
崖の下から、バーサーカーはトーカを見上げる。背後から迫る時空嵐。もう崖を迂回する道はない。
そしてバーサーカーは──
「あ」
トーカを見上げたまま高速で屈伸し始めた。
上位チャット:LOL
上位チャット:バーサーカー?
上位チャット:相手視点が見たいよ
上位チャット:オジギ
「これは……」
「まあ、これは時空嵐に飲まれるしかないですからね」
「……ちょっとかわいいですね」
バーサーカーは屈伸したまま時空嵐に飲み込まれていき、ダウンして、やがて姿を消した。
「時空嵐でリタイアしたので、トーカさん一人が残り、死のサークルが解除されますね」
「助かった……」
上位チャット:RIPバーサーカー
上位チャット:あれが世を儚むとは思えない
上位チャット:人に歴史ありってことさ
「さあトーカさん、最後の年代、近未来になりますよ。ここまで来たらThe Last One Standing(最後の一人)を目指してください」
「ラスイチ、獲りたい! 一度も獲れてないので……!」
上位チャット:トーカ、がんばれ!
上位チャット:今だいたい同じマッチにいる配信を見てきたけど、大方本気でトーカを狙いに行っていたよ
上位チャット:この状況では無理じゃないか?
「と、私の事情は置いておいても、勝ち残りボイスはお披露目したい! 今回のためにレジェンダリーのボイスをセットしてもらっているので! 頑張りますよ!」
「まずは服を確保しましょうか。近未来はインターネットが整備されてスマートフォンが普及し、SNSが登場していますからね。時代に合わない服を着ているとすぐに位置がバレます」
「逆に言うと年代ジャンプ直後はみんな位置が分かるんですよね。マップは……うん、なるほど。近くに敵はいない! あと少し!」
「服を確保した後は──」
「その後の戦略は決まってます!」
トーカはグッと拳を握る。
「あの古代服バーサーカーさんの棺探しです! 絶対いいアイテム抱えてる!」
上位チャット:LOL
上位チャット:HAHA、ナイス
上位チャット:棺探しは難しい
トーカは行動を開始した。運よく手近な建物で服を確保し、いつもの普段着姿になると、パルクールを駆使して建物の陰から陰へと移動しながら棺を探す。
「近未来は山とか丘が崩されて、平坦な都市が広がっているのが時代の流れを感じさせますよね。銃も性能が高いものが出るようになっているので、狙われやすい平地には行きたくない……えーと、棺のポップする場所は……」
「地下室とか、ゴミ集積場などですね。手近なところから案内していきましょう」
「さすが開発者! お願いします!」
「ははは、まあ全ポイントすべて皆さんに解析されていますからね、今更隠すことはないですよ」
トーカはケヴィンの案内に従って棺の探索を続ける。時折遠くで銃声がし、英雄が首をはねられたエフェクトが天に立ち上るのを見ながら。そしてついに。
「あった、ありましたよ人類! 古代服バーサーカーさんの棺! いやー、噴水の下を壊すと出てくるとかどこの市長なんだって話ですけど! とにかく漁りましょう」
上位チャット:いいぞ!
上位チャット:よくやった
上位チャット:ここにあるなんて知らなかった
上位チャット:棺があるときしか壊せないぞ
「うわ、グレートソードレベル4! これ、ロングソードから持ち替えたほうがいいですか?」
「グレートソードを使い慣れているなら──」
「やめときましょう!」
上位チャット:LOL
上位チャット:グレートソードは適性がないと難しい
上位チャット:俺もグレートソードは苦手
上位チャット:俺なら交換する
「矢避けのルーンレベル3はありがたいッ。奥義のルーンも不動のルーンもあるし、エッセンスもおいしいおいしい。よし回収完了!」
「残り人数が少ないし、次の時空嵐も近いですから、そろそろ戦闘に行った方がいいですね」
「ううッ。怖い。けど戦わなければ勝利はない! 行きます!」
トーカは次のエリアになる場所に向かって移動し始める。
「この時空嵐からは範囲が狭くなるだけなので、急いで移動しますよ! うーん、街にいるかな? 高所から移動していって……」
上位チャット:トーカのバフ希望
上位チャット:壁を登る距離が増えてるから強いよ
上位チャット:二段ジャンプできるセンセイの方が強いね
上位チャット:あれはクールダウンがあるだろう?
上位チャット:それにしても静かだな
「なんか残り4人なのに銃声も聞こえないし!」
「トーカさんを探しているんじゃないですかね、ハハハ」
「なるほどね!? もう緊張しっぱなしなんで来るなら来てくれませんかね!? 私はここだぞ!」
上位チャット:LOL
上位チャット:トーカ以外との戦闘を避けていそうだな
上位チャット:トーカかわいい
建物の屋上をトーカは行く。と──
「あっ、一人下にいる! 後ろ向いてるしやるしかない! スリングで投石!」
背中を向けて道端のアイテムボックスを漁っている学ランのキャラに、トーカは投石を試みる。石が飛び──次の瞬間、派手なエフェクトと共に石が刀で弾かれた。
「はい矢避けのルーンですよね知ってました! ギャア、間髪入れずに宣誓!? モモタロ先輩、対戦よろしくお願いします!」
学ランのキャラ──刀を持つモモタロ先輩がトーカを指し、宣誓。死のサークルが広がる。トーカはビルから飛び降りてモモタロ先輩に突撃し──
『これが最後の戦いですよ、人類! やってやろうじゃないですか!』
セリフと共に『FINAL BATTLE』と画面に表示される。
「んあ!?」
上位チャット:きた!
上位チャット:最終戦闘だ!
上位チャット:おおおおおおお!
上位チャット:トーカ、がんばれえええええ!
上位チャット:勝ってくれ!
上位チャット:トーカ、行けええええええええ!
「お、死のサークルに全員集まったみたいですね。これで勝ち残ればトーカさんの勝利ですよ」
「え、来たの、4人!?」
「トーカさんとあと3人ですね」
「ままま待って屋根登る屋根!」
トーカが小さな建物の屋根に上る。と、残り2人のキャラクターが見えるようになった。
「ミニスカ・スノウちゃんと、サラリーマン・グラディエーター!」
上位チャット:全員配信特定した
上位チャット:モモタロ先輩、スノウ後輩
上位チャット:グラディエーターはやばい
駆け寄る青い肌のミニスカ美女──スノウが、手を挙げて光をチャージする。
「ぎゃ、アルティメット! 凍る凍る!」
あたりが吹雪になり、地面が凍り、トーカはツツーと足を滑らせて建物から落ちる。凍った地面を意に介さず距離を詰めてくるスノウに、トーカはなんとか剣を向け──
「あ、左からモモタロ先輩も来た!?」
その間に割って入るようにモモタロが突撃し──
「ん?」
──ツルツルと滑って、スーツ姿のグラディエーターの方へ向かった。グラディエーターは懐から魚をかたどった兜をかぶり、モモタロに斬りかかる。
上位チャット:LOL
上位チャット:モモタロ先輩?
上位チャット:先輩スキンのモモタロ、叫びすぎ
上位チャット:アルティメットだ、気を付けて!
上位チャット:スノウのULTを俺は許せない
「なんか意図せずして1対1に持ち込んだ!? とりあえず、オーバーヒート!」
『オーバーヒートモードッ!』
「あ、いいですね。体幹が強化される効果があるので、凍った地面でも滑りづらくなります」
「勝たせてぇ!」
トーカはロングソードで、スノウはシミターで斬りかかる。
「ガードガード……ここッ! よしパリィとった! 吹雪も消えた! ダウン取る──ヒェ!?」
大振りの剣を弾かれ、トーカが大きく体勢を崩す。
「あっあっ」
慌てて回避してから斬りかかるも、パリィされる。長い硬直。スノウの振った剣が大きく体力を削り、トーカは地面に膝をつく。
「まずいダウン──やられる!」
ギィン!
「えっ」
間近で鳴り響いたのはパリィの音。スノウの追撃の剣を、学ランのモモタロが刀で弾く。
「モモタロ先輩!?」
上位チャット:モモタロ!?
上位チャット:モモタロ、お前……
上位チャット:トーカ、逃げろおおおおおおお!
上位チャット:やっぱりトーカはナーフしたほうがいいと思う。アルティメットで足場を軽減できるのはやりすぎだ
上位チャット:スノウは帰って
「あっちは決着がついたの!? とっ、とにかく急回復のルーン!」
スノウとモモタロが切り結ぶ間に、トーカはルーンを起動してダウン状態から復帰する。
「よし立った──あっ、スノウちゃん!」
スノウがモモタロに首をはねられる。
「ということはモモタロ先輩とのタイマン!」
トーカとモモタロが剣を向け合い──モモタロが膝をつく。
「あ!?」
背後から現れたのは、魚兜のサラリーマン・グラディエーター。
上位チャット:NOOOOOOOOOO!
上位チャット:モモタロ先輩!
上位チャット:倒してなかったのかよ
上位チャット:HAHA、フィニッシャー入れてる
「ふエ! フィニッシャー入れてる!? いやいや格好いいけどその余裕は許しませんよ!? それには──」
トーカはダッシュでグラディエーターの背後に回り込む。
「──硬直があるんですからね! 首、首おいてけ首っ!」
フィニッシャーのための固有モーションで硬直しているグラディエーターの兜を、これでもかと斬りつける。そしてグラディエーターが格好良くモモタロの首をはね、剣を振り回し鞘に収めた瞬間──がくりと膝をついた。
「ダウンとったァァッ! みなさん、いきますよ!」
上位チャット:よしっっっ!
上位チャット:うまい、兜殴ったのはいい判断だ
上位チャット:こいっっ!
上位チャット:トーカ、愛してるぞ!!!
トーカがフィニッシャーを発動する。トーカが掲げた剣の上で、カッ、と空に稲光が走った。
『
上位チャット:LOL
上位チャット:ワオ!!
上位チャット:それ大丈夫!?
上位チャット:ハイランダー!
上位チャット:元ネタの台詞を言ってしまった、HAHA
上位チャット:このセリフ課金して買わなきゃ
トーカが剣を振り下ろし、グラディエーターの首をはねる。すると力の奔流がトーカに流れ込み……決めポーズをとったトーカのリザルト画面に移行する。
「ぃやった! やりましたよ、人類! 初めて最後の一人になりました!」
「おめでとうございます!」
上位チャット:おめでとう!
上位チャット:おめでとう、トーカ!
上位チャット:よくやった
上位チャット:グラディエーターは操作ミスだろうな
「いやーありがとうございます……って! ドッキリじゃなければこんなにハラハラすることもなくですね!?」
「ハハハ。いやー、やっぱりファンとしてはこういうトーカさんが見たかったので」
上位チャット:ケヴィン、よくやった
上位チャット:俺と開発の心は一つだ
上位チャット:開発はトーカを好きすぎるだろう
「ということで、実機プレイはここまでです。トーカさん、お疲れさまでした」
「とても疲れました。楽しかったですけどね?」
上位チャット:よくやったトーカ
上位チャット:トーカ、愛してる
上位チャット:トーカ大好き!
「ところでケヴィンさん。気になる私の実装時期なんですけど」
「もちろん、発表します」
ケヴィンはカメラを正面から見る。
「明日です」
「よしきた明日!」
上位チャット:YES!
上位チャット:知ってた
上位チャット:やった!
上位チャット:待って、金が足りない
上位チャット:嘘だろ? 明日? あと何時間だ!?
「というわけでね、これを機にまだEXECで遊んだことのない人類は! ダウンロードしてインストールしておいてください! 基本プレイは無料! 私を含めた追加キャラクターは……EXECコインでの購入が必要です! プレイしてランクを上げれば、1人分の解放に必要なコインはすぐに溜まるので、練習がてらぜひ! もちろん、課金して買ってもOK!」
「課金で買える、レジェンダリースキンと一緒になったパックも用意していますよ」
「お買い得!」
上位チャット:買うぞ!
上位チャット:全部買う!
上位チャット:今回ばかりは課金しそうだ
上位チャット:スキン全部当たるまで買う
「それでは今回のEXEC Devstreamはここまでです。ゲストは彩羽根トーカさん、バーチャルラウンジからお送りしました」
「一緒に遊べる日を楽しみにしてますよ、人類!」
上位チャット:サヨナラ!
上位チャット:トーカ、愛してる!!!
上位チャット:ありがとうトーカ
上位チャット:明日からは俺がトーカだ
上位チャット:トーカオンリーマッチ企画しよう
上位チャット:トーカを使ってくれるプロいないかな
上位チャット:日本からのプレイヤーも増えるだろう
上位チャット:モチーチカの配信は要チェックだ
上位チャット:ところでそろそろヴァンプをバフしてくれないか?
上位チャット:ヴァンプおじさん、お家に帰ろうね
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