【コラボ配信】ゲームをして遊ぶのわよ【バーチャルラウンジ】(前)

「辺獄からごきげんよう」


 カツカツと、広い黒い部屋の中から一人の女性が歩み出る。金と黒のメッシュの髪を背中でドリルにした、黒と赤を基調とした和ゴス、そして血走った目と片方にはドクロの眼帯。


辺獄りんぼシビアわよ」


 美少女は男性の声で言った。


上位チャット:キター!

上位チャット:ごきげんようわよ

上位チャット:わよ~!


「ワテクシ、今日は何とコラボに誘われたのわよ。バーチャルラウンジで遊ぼうということで、この特設のロビーで待ち合わせているのわよ」


上位チャット:コラボ嬉しい

上位チャット:誕生企画以来だよな?

上位チャット:初手トーカ&リリアは強すぎる

上位チャット:まあ今日は気楽よ


「それではコラボ相手を紹介するのわよ。どうぞ~」


 ガラガラガッシャン!


「……は?」


上位チャット:!?

上位チャット:なんだ?


 突然上空から降ってきた檻に囚われて、シビアは口をぽかんとあける。その様子に──


「オ~ホッホッホ! まんまとひっかかりやがりましてね! 辺獄シビア!」

「哀れ、哀れですわ~!」


 いくつかの声が降り注ぐ。


「え? え? は?」


上位チャット:???

上位チャット:なんだこれ

上位チャット:誰だ?


「ヨウセイちゃんとのコラボというのは真っ赤な嘘なのだわ!」

「そうっ! 辺獄シビア! お前は俺たちを怒らせた!」


 カッ! 黒い部屋が光って白くなり、四つの人影が姿を現す。


吉兆院きっちょういんアワビでしてよ!」


 草冠にサザエさんのごとくの米俵風ロール、小判のイヤリング。笹色のフリルワンピースドレスに、福袋のポーチ。金色の扇を構えて名乗る女性──しかし声は男性。


雷小路らいのこうじ雷乃ライノですわ~!」


 白いモコモコのドレス。ロングの金髪の頭頂からは稲妻型のアホ毛を生やし、声高に名乗る女性──しかし声は男性。


赤鳥あかとり辛子カラコなのだわ!」


 四人の中で一番背の低い、赤い帽子に白い花を挿し、耳から鷹の爪のイヤリングを下げた、赤いミリタリードレスの幼女──しかし声は男性。


「そして俺がっ! 大台ケ原おおだいがはら鈴木権左衛門スズキゴンザエモン!」


 トゲトゲしたウルフヘアに学生帽を載せ、長袖の学ランをマント代わりに羽織り、豊満な胸筋をパツパツのドレスに包み、大股を開いて立ち男らしく名乗る男性──声も男性。


「我らオジょう様連合! 辺獄シビアに勝負を挑むッ!」みましてよ!」むのですわ!」むのだわ!」


 語尾は揃わないものの、四人はビシッとポーズを決めた。全員男性の声だった。状況が呑み込めないシビアは、きょろきょろと辺りを見回す。すると、天井から声がする。


『さあ突如現れたオジょう様連合! 果たして辺獄シビアはこの挑戦を退けられるのか! 実況は九から六に飛んで九六はなぬき曜星ヨウセイがお送りします!』

「待って」


 コラボ相手のアナウンスに、シビアは待ったをかける。


「……ヨウセイさん? これはなんなのわよ?」

『アッ、ハイ』


上位チャット:それな

上位チャット:マジで何なんだよwwww

上位チャット:ヨウセイとのコラボを見に来たら知らないゲストばっかりの件

上位チャット:連合じゃねーか!


『えーオジょう様連合から依頼を受けまして、まあ簡単に言うとドッキリ企画です。今日は天の声をやらせていただきます! よろしくお願いします!』

「そ、そう……まあ、それは分かったのわよ。それで……」


 シビアはポーズを決めたまま動かない四人に顔を向ける。


「オジょう様連合……って何わよ?」

「よくぞ聞いた!」


 ガチムチドレス男が応じる。


「俺たちオジょう様連合は、Vtuber界のバ美肉お嬢様の集まり! バ美肉お嬢様というパワーワードを武器に、じわじわと人気を得ていく目的で結成した連合!」


上位チャット:素直な理由で草

上位チャット:オジ連好き

上位チャット:知らないけど笑う


「お嬢様……」


 シビアは四人を見渡す。


「お嬢様わよ?」

「もちのロンでしてよ」

「こっちもお嬢様」

「あったり前田のクラッカーですわ!」

「赤いけどお嬢様」

「赤こそお嬢様色なのだわ!」


 三人の女性に確認し、シビアは最後の一人に問う。


「……お嬢様?」

「オウ! もちろん、俺もお嬢様だ!」


 大台ケ原鈴木権左衛門は腕を組み大きな声で答えた。


「そ、そう……」


上位チャット:wwwwwww

上位チャット:草

上位チャット:嘘だッ!

上位チャット:お前のようなお嬢様がいるかwwwww

上位チャット:ドレスの女装以外は何もお嬢様じゃないが?

上位チャット:そもそもどこで苗字と名前区切るんだ

上位チャット:鈴木権左衛門が名前やぞ


「それで、勝負を挑む……というのはどういうことわよ?」

「まぁ~、しらじらしいですわ!」

「俺たちオジょう様連合はじわじわとVtuber界のお嬢様の座を制していく予定だった」


 シビアの問いに、鈴木権左衛門が答える。


「しかし! そこに現れたのが辺獄シビア! あっという間にお嬢様のスターダムをのし上がっていったお前だ!」

「バ美肉お嬢様キャラでやっていくのに、ライノさまたちオジょう様連合に挨拶もなしとはめちゃ生意気ですわ~っ!」


 ですわですわ、とライノが地団太を踏む。


上位チャット:いや草

上位チャット:まあ確かに

上位チャット:シビア様一気に増えたもんなwwwww

上位チャット:そりゃ生まれがそうだもんよ


「そこで今日! 俺たちオジょう様連合は辺獄シビアに、お嬢様力を賭けて勝負を挑むッ!」

『えー、いわゆる格付けってやつですね、はい』

「な、なるほど……えぇ……お嬢様力……?」


 シビアは首をひねりながらも頷く。


「……ちなみに、勝負を拒否したらどうなるのわよ?」


 シビアが問うと──四人は顔を見合わせた。


「いやまぁそれは……」

「急な話だし……」

「断られても仕方ないよなとは……」

「話もちゃんと通してないわけで……」


上位チャット:おいwwwwww

上位チャット:やりきれよwwwww

上位チャット:こいつらw

上位チャット:意外と常識的で草

上位チャット:常識……?

上位チャット:中身がおじさんなんだなとよく分かる


「んんっ」


 シビアが咳払いすると、どうするどうしよう? と相談していた四人が顔を向ける。


 シビアは──ドクロの眼帯に左手を当てた。


「この辺獄シビア! 神望リリアという高い頂を越えるまで、誰にもお嬢様力で負ける気はないのわよ!」

「おぉ……!」


 パチパチパチ、と四人が拍手する。


上位チャット:さすが

上位チャット:やっる!

上位チャット:シビアちゃんいい人だわ


『ありがとうございます! いやー、本当ね、断られたら企画終了だったんで。ビデオレターも無駄になるところでしたし』

「ビデオレター……?」

『あ、それじゃ再生しまーす』


 ヨウセイの操作により虚空から液晶テレビが発生し、動画を流し始める。


『みなさま、ごきげんよう。みなさまを天に導く、バーチャルYouTuberの神望リリアですわ』

「は!?」


上位チャット:!?

上位チャット:リリア様!?

上位チャット:ゲストが豪華すぎるwwwwww

上位チャット:ヒェ


『今日は辺獄シビアさんがお嬢様としての力量を競うと伺っています。まあ、まさか? わたくしの座を狙っているシビアさんが、そこらの木っ端お嬢様に負けるわけがありませんよね?』


 リリアは微笑んで、小首をかしげる。シビアは硬直した。


『それではみなさん、応援よろしくお願いいたしますね』


 ビデオメッセージが終わる。


『はい、神望リリアさんからのビデオメッセージでした! どうでしょう、シビアさん! やる気が出たんじゃないでしょうか!』

「……っ、と、当然わよ」


 シビアは──ごくりと喉を鳴らしながらも、言い切る。


「この辺獄シビアに土をつけられると思わないことわよ!」


上位チャット:はい

上位チャット:そりゃあねえ

上位チャット:リリア様の手前負けられませんな

上位チャット:推しからかけられるプレッシャーwwww

上位チャット:シビアちゃんがんばって


『はい、それではさっそく勝負を始めていきましょう! ここからシビアさんに、オジょう様連合の四人がそれぞれ得意分野で挑戦します! 勝負に賭けるのはお互いのお嬢様力!』

「賭ける対象が謎なんだけど……とにかく全勝すればいいのわよ?」

『お嬢様力の判定はオジょう様連合が行うとのことで……具体的な基準は分からないんですがね、まあ勝てば文句はないでしょう!』


上位チャット:それはそうだがw

上位チャット:お嬢様力とは


『さあ、準備も整ったようです! それでは、先鋒!』

「あぁしでしてよ!」


 前に出てきたのは、吉兆院アワビ。


「この吉兆院アワビ、またの名を物理演算お嬢様! 辺獄シビア! あぁたにはバーチャル木製ブロック積みゲームで挑戦しましてよ!」

「バーチャル木製ブロック積みゲーム!?」


 シビアは驚愕し──


「……とは?」


 訊いた。


「まあいわゆるジェンガなんだけど商標があるので、このバーチャルラウンジ内のアイテムとして販売しているのは『木製ブロック積みゲーム』という名前なんでしてよ。ちなみにあぁしが作りましてよ」


上位チャット:いや草

上位チャット:商標に配慮するお嬢様

上位チャット:あー買ったことあるわ

上位チャット:この人が作ってたのか

上位チャット:これ出来がいいよね


 二人の間にテーブルと、その上に組みあがった木製ブロックのタワーが出現する。


「勝負内容はシンプル! 18段のタワーから1本のブロックを抜き、最上段に積み上げることを交互に繰り返し、先にタワーを崩した方が負けッ! 先攻はあぁしがもらいましてよ!」


 アワビは中ほどのブロックをつついてずらし、つまんで引き抜くとタワーの上に積んだ。


「さあ、あぁたの番でしてよ!」

「えーとこれは……あぁ、手を近づける方向によって持ち方が変わって……細かいのわね」

「フフッ、お褒めになっても何もでなくってよピィーーーーーーー!」

「は?」


 タワーに手を近づけて操作を確認していたシビアは、急に甲高い音を出したアワビの顔を見る。


上位チャット:なんだ?

上位チャット:いや笑うわ

上位チャット:ピィー!


「あら、ごめんあそばせ。お茶を飲もうとしてお湯を沸かしてたのを忘れていてよ。ちょっとお茶を入れてくるから、じっくりと仕様を把握してらっしゃい」


 ぐで、とアワビが両手首をそろえて倒れ込む。


上位チャット:草

上位チャット:ハンコン置いて行ったw


「ここを……こう。よし、乗せたのわよ」

「お待たせ、あら、あぁしのターンね。少々お待ちあそばせ?」


 アワビの体に芯が戻る。


「フッ、お嬢様たるもの、優雅にお茶しながらジェンゲフゲフ木製ブロック積みゲームをたしなみましてよ。うーんお茶のいい香り熱ッ、アッチィエ!」


 ガタン! ビシャ! ガチャン!


「アツッ、アッチッ! アアアアアアア!」


 アワビは飛びあがるとバタバタと暴れながら転がった。


上位チャット:草

上位チャット:あーあーあー

上位チャット:これはひどいwwwww

上位チャット:大惨事


「ちょ、ちょっと、大丈夫……!?」

「フゥー、フゥー……!」


 ごろごろ転がっていたアワビは、なんとか息を整えて立ち上がる。


「……フッ、かろうじて致命傷でしてよ。ズボンを脱いだのでもう平気、下半身すっぽんぽんお嬢様でしてよ!」

「それはどうなのわよ」


上位チャット:なんて?

上位チャット:すっぽんぽんお嬢様!?

上位チャット:あの動きズボン脱いでたのかw

上位チャット:もう無茶苦茶だよwwwww


『えー、アワビお嬢様。大変なところ申し訳ないんですが、ジェンガ──木製ブロックのタワーがですね』


 ヨウセイが天から指摘する。アワビは机の上に目を向けた。


「……崩れていてよ?」

『アワビさんの振り回した腕に接触して崩れたんですよ』

「あ……あぁ~……」


 崩れた木製ブロック積みゲームの残骸を、アワビとシビアは静かに見つめた。


「……やり直し……?」

「……いえ。負けは負けでしてよ。それに」


 アワビは優雅に立ち、シビアに背を向ける。ドレスの背には真っ赤な鯛が描かれていた。


「けっこう火傷が痛いんでしてよ。ちょっくら離席して冷やして参りましてよ」

「あ、はい」


 アワビはスン……とログアウトしていった。


上位チャット:体張りすぎだろwwww

上位チャット:お大事に


『……はい、というわけで! 初戦はシビアさんの勝利です! そしてアワビお嬢様お大事に! みんなもヘッドセットつけたまま飲食するんじゃないぞ!』


上位チャット:それな

上位チャット:めんどくさがってやるとかなりアレになるので

上位チャット:さすがに熱湯のお茶ではやらないよ!


『それでは次鋒、前へ!』

「ライノさまはアワビと違って簡単にはくたばらないのですわ!」


 ザッ、と踏み出したのは白いもこもこドレスのお嬢様。


「雷小路雷乃! 二つ名はギャンブルお嬢様!」

「ギャンブルお嬢様……」

「そう! 辺獄シビア! 酒クズギャンブルお嬢様のあなたとキャラ被りしているのですわ!」


上位チャット:草

上位チャット:そういえばそうだなwwww

上位チャット:酒(水)飲み配信してるもんな

上位チャット:忘れ去られた初期設定


「悔しいッ! ライノさまの方がデビュー早いですのに!」

「それはなんか……申し訳ないわよ? いや、ていうかそれはあくまで設定の話であって?」

「問答無用!」


 びしり、とライノはシビアを指す。


「ライノさまはあなたにポーカーで勝負を挑むのですわ! 内容は、テキサスポーカーによるヘッズアップ!」

「てきさす……?」

『はい説明します! テキサスポーカー、正確にはテキサスホールデムポーカーは、各プレイヤーに2枚の手札が配られ、場に置かれる共有カード5枚と手札を組み合わせて役を作るゲームです!』


上位チャット:へー

上位チャット:難しそう

上位チャット:ポーカーといえば世界的にはこれ

上位チャット:そうなんだ


『シビアさん、ポーカーはご存知ですか?』

「まあ、役とベットとかレイズぐらいは……ゲーム内のカジノとかで……」

「なら、後はやりながらでわかるのですわ」

「わかったのわよ」

『いいのかな!? まあ場のカードが共有だということさえ分かっていればなんとかなる!?』


上位チャット:ヘッズアップならまあ

上位チャット:多人数だと考えること増えるけどね

上位チャット:大丈夫じゃないかな


「ヘッズアップ、お互いのチップは1000枚、スモールブラインドは50枚、相手のチップをすべてもぎ取ったほうの勝ちですわ!」

『はいスモールブラインドというのはですね、席順によって支払う参加料のようなものです! ヘッズアップは1対1、2人のみなので、スモールブラインドの50枚、そしてビッグブラインドの100枚が毎回自動的にベットされると思ってもらえれば!』

「なるほど……」


上位チャット:なるほど分からん

上位チャット:お互い1ゲームごとに50枚と100枚を交互にベットしてからスタート

上位チャット:BTNとSB、BBは慣れるまで分かりづらいね

上位チャット:ヘッズアップはBTNがSBになるのとかもな


 楕円形のテーブルが出現し、シビアとライノが向かい合って椅子に座る。


「ライノさまがボタンでスタートですわよ! つまりライノさまがスモールブラインド、あなたがビッグブラインドですわ!」

「100枚ベットする……と」


 ライノとシビアは手元のチップの山を操作して、お互いにチップをベットした。


『さあ互いに手札が2枚配られます。アクションはこのゲームはボタンのライノさんからです。この時点でベットするかどうかを判断してもらい、お互いコールしたら次は3枚共有カードをめくります。そのゲームからはシビアさんからアクション、お互いコールしたら4枚目をめくり次のゲーム……という感じで、チップを賭ける場面が4回あるイメージです!』

「この回は手札だけで判断するということわよ? ふむ……」


上位チャット:へえー。一回賭けてチェンジして賭けてじゃないんだ

上位チャット:共有コミュニティカードを見て読み合うのが楽しいんだ

上位チャット:時間はかかるけど楽しいよ


「フフフ……下手の考え休むに似たりですわよ」


 手札を見て考え込むシビアに、ライノはほくそ笑み──宣言した。


「ヘッズアップはアグレッシブにが鉄則! ライノさまはオールインですわ~ッ!」

『おーっと! ライノお嬢様、初手オールイン、全賭けだ! 全チップの1000枚がテーブルの上に!』


 ドンッ、と、ライノのチップがすべて場に出される。


上位チャット:おお

上位チャット:オールインキター!

上位チャット:あるある


「フッ、考えたのだわライノ」

「ああ。初手オールイン、相手はブラフかどうか読む必要があるが、ヘッズアップの場合の勝率は手札にクイーン以上が一枚でもあれば約50%を超える。ブラフでない可能性も十分に高いからな」

「そこ! うるさいですわ! 上のお口を縫い付けてあげてよ!?」

「あ、コールで」

「はっ?」


 ドンッ、と。ライノが外野にツッコミを入れて目を離した瞬間──シビアのチップがすべて場に出される。


『おーっと、ここでシビアさんはコール! 同じく1000枚が賭けられます!』


上位チャット:受けたか

上位チャット:ブラフと読んだか?

上位チャット:どうだろう

上位チャット:少なくともシビアちゃんの手はいいはず


「ふ……ふふっ!」


 ライノは──笑う。伏せていた顔を、ニヤァ、と歪めて上げる。


「これだから素人お嬢様は! ライノさまが安易にブラフに走るとでも思ったら甘い甘い、マックスコーヒーより甘いですわ~! ライノさまの手札は!」


 お互いがオールインを選択したことにより、手札が公開される。


「お嬢様にふさわしい、レディース! ポケットクイーンですわよ~ッ!」


 ライノ:♠Q、♣Q


上位チャット:おおおおお!

上位チャット:は? ズルか?

上位チャット:マズいぞ


『なんとライノお嬢様、手札はクイーンのペア! これはかなり強い手札だ!』

「レディースのヘッズアップでの勝率は79.9%! これはポケットエース、ポケットキングに次ぐ第三位の勝率ですわ! オ~ホホホホ! 吠え面かかしてさしあげるのですわ~っ!」

「え、そんなにわよ?」


上位チャット:ペアは強いってこと?

上位チャット:手札がペアなら共有カードと合わせて3カード、フルハウス、4カードが作りやすい

上位チャット:絶対ブタにならない時点で強い

上位チャット:Qペア以上はKペアとAペアしかないからな……


「フフフ、あなたの手札はなんですわ?」

「これわよ」

「……へぇ」


 シビアが公開した手札を見て、ライノが感心した声を出す。


『なんと、シビアさんはエースとクイーン!』


 シビア:♥A、♦Q


上位チャット:お?

上位チャット:エースあるよ!

上位チャット:AQoか……

上位チャット:マズいな


「やるなぁ、いい手じゃないか。だがこの場合の勝率は……シビアの手札の図柄スーツはそろっていないから、ライノの勝つ確率が約70%というところだ」

「やったのだわ、ライノ!」

「ふふん、それほどでもありますのですわ!」


上位チャット:そうなの?

上位チャット:例えば共有に残り1枚のQが来た時、相手は3カードだけど自分はペアにしかならないからね 

上位チャット:スートが合ってればフラッシュの可能性もあるんだけどそれもないから

上位チャット:勝つにはまずAが来ないとダメ


「安易なオールインを後悔させてやるのですわ! ディーラー! 一気にカードをオープンするなんて無粋な真似はせず、フロップ、ターン、リバーと進めてほしいのですわ~ッ!」

『あ、はい、了解です。それでは共有カードの3枚をまずめくります!』


 ヨウセイの言葉に応じて、場に配られた5枚のうち3枚がめくられる。


 内容は──ハートのクイーン、スペードのジャック、スペードのエース。


 ライノ:♠Q、♣Q

 シビア:♥A、♦Q

 共有:♥Q、♠J、♠A、?、?


上位チャット:うわ

上位チャット:エース来たじゃん!

上位チャット:やられた

上位チャット:オワタ


『シビアさんにエースとクイーンの2ペアが完成! しかし一方、ライノお嬢様はクイーンの3カード!』

「オ~ッホホホホ! ざまあお味噌の漬物ですわ! これだからギャンブルはやめられないのですわ~ッ!」


上位チャット:え? あ

上位チャット:そうなるのか……


「当然、3カードの方が2ペアより強いのだわ」

「ああ。ライノの勝率はこれで約90%まで上がった」

「さあディーラー! ターンを! 4枚目をめくるのですわ~ッ!」


 4枚目がめくられる。──スペードのキング。


『4枚目はキング!』


 ライノ:♠Q、♣Q

 シビア:♥A、♦Q

 共有:♥Q、♠J、♠A、♠K、?


「オ~ホホホホ! 勝率変わらずですわ~! むしろライノさま、はじめてロイヤルかませそうでテンション爆アゲですわよ~!」


 ライノは高笑いをする。


「最後の共有カードがスペードの10なら、手札のスペードのクイーンと合わせて、ロイヤルストレートフラッシュができるのだわ!」

「さすがライノ、ギャンブルお嬢様の名は伊達じゃないな!」

「く……」


 シビアは手を握る。


上位チャット:やべえ

上位チャット:まだ負けないパターンは5枚あるが……

上位チャット:44枚から5枚か

上位チャット:シビアちゃんがんばれ!


「さあトドメですわ! リバー! 5枚目をめくるのですわ~ッ!」

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