私と推したちのステージ~Vtuber Fes~(4)

「はい~」


 トコトコと画面奥から出現してくる、角と尻尾の生えた少女。


「おはようございまーす。バーチャルぽちゃロリドラゴン皇女Youtuberおじさんのドラたまです」


コメント:おじさん!

コメント:たまニキ歌えるんかワレェ!

コメント:声がいい

コメント:ぽちゃおじ好き


「ドラたまさん! 出演ありがとうございます!」

「いえいえ、その、こちらこそね、こういう、おじさんに出番をいただいてその~、感謝してます、はい」

「今日はぜひ、ドラたまさんの歌を披露していただきたいなって!」

「あ、はい~。がんばります」

「いっそデュエットしていいですか?」

「いっそでやるものなんです!?」


コメント:草

コメント:トーカちゃんwwww

コメント:やりたくなったんだな


「やりましょうやりましょう! それではドラたまさんと彩羽根トーカで! 『うろこていこくさん』!」


 ステージにかわいらしい文字でタイトルが表示される。


「──……

 人間いろいろ バーチャルいろいろ

 国もお里も違うけれど


 そんなの関係ないよね 繋がる技術は同じだもん!


 ゆーにーてぃー! (ゆにゆに)

 ぶれーんーだー! (ぶれぶれ)


 理想の体を作って生きたい!

 ……──」


コメント:どういう歌だよw

コメント:ゆーにーてぃー、は草

コメント:いい曲じゃん

コメント:おじさんをよくトーカがフォローしてるな

コメント:なあこれ1番で終わるよな?

コメント:2番はまずいですよ!

コメント:おい待て2番はやめろォ!


 トーカとドラたまは──ノリノリで歌い続ける。


「──……

 趣味はいろいろ 性癖いろいろ

 えろえろえっちなおじさんだけど


 だって仕方ないよね みんな魅力的なんだもん!


 うーろーこー! (つるつる)

 しーっーぽー! (すべすべ)


 ぽっちゃりお腹をもみもみしたい!

 ……──」


コメント:おいwwwwwwwww

コメント:草

コメント:イヤホンで聞いてて助かった

コメント:どうして

コメント:だもんじゃないんだが

コメント:センシティブですよ!


 後半になるにつれて過激でギリギリになっていく歌を、二人は笑顔で歌いきった。


「あーっ、楽しい! ドラたまさん、ありがとうございました!」

「あっ、はい、またね~、のだだぞ~」


コメント:ひどかった(誉め言葉)

コメント:トーカが歌うとなんか納得するのムカつくwwww

コメント:歌唱力によるゴリ押し

コメント:これもファンメイドの曲よなーすげーなー


「いやー、ヒトの欲望って果てしないですね、人類? 次にお呼びするのはヒトじゃありませんけどね! それではお願いします、にわとりのトッポリさん!」

「オッス!」


 渋い声をした巨大なニワトリが登場する。


コメント:トッポリきちゃー!

コメント:農家のおじさん!

コメント:でけえ


「オラ、にわとりのトッポリ! 今日はトーカさんのためにがんばっぞ! けぇてくれ! 『農業は楽しいだ』!」


コメント:あれか

コメント:ファンメイドの曲が続くな

コメント:ありがとう……ありがとう……

コメント:すごい文化だよなあVtuber……

コメント:自分の作った曲を歌ってもらえる文化


「──……

 米食いてえか オラは食いてえ

 だって日本ゲフゲフにわとりだかんな


 そんじゃいっちょやってみっか?

 自分で育てた米はうんめえぞ!


 種は塩水選 苗は育苗箱

 田起こし しろかき (ハイハイハイハイ!)


 田植機使うか? それとも手作業か?

 植えれば 腰痛 (フゥフゥフゥフゥ!)

 ……──」


コメント:合いの手すごいwwww

コメント:農業って辛いわ

コメント:米作りってホント大変なんだな……

コメント:ためになる曲

コメント:演歌バージョンも聞きたかったなあ

コメント:見える……米が……

コメント:白米が見える……

コメント:収・穫・だー!


 観客たちはいつの間にか黄色と緑のサイリウムを振っていた。


「トッポリさん、ありがとうございました! さあさあ続きましては、ポテトの国よりこの方です!」

「食卓の上からこんにちは! お料理Vtuberの、ポテト☆サラでーす!」


 白いワンピースのドレスに、赤や黄色、緑の星をつけた全体的に白い女の子が手を振りながら現れる。


コメント:サラちゃん!

コメント:ポテサラきたー!

コメント:ポテトマーチくる!?


「私も楽しい曲をお届けしたいと思います! それでは聞いてください、『ポテトマーチ』!」


 かーん、かーん、ごーん。てててててててててて~……と鐘とファンファーレが鳴る。


コメント:あっ

コメント:ちょwwwww

コメント:ヤバいですよ!

コメント:あれこれキテレツ


「──……

 いーざ すぅ……ぃいん撃するぞ、野郎どもーッ!

 ……──」


 サラが叫び、アニメっぽい曲調が一転してヘビーなロックに変わる。


コメント:草

コメント:はい

コメント:ひどいwwwww

コメント:フェイントはズル


「──……

 ポテト ポテト ポテト!

 たとえひと花咲かせようとも


 ポテト ポテト ポテト!

 欲されるのはこの身一つだけ


 薄刃で脱がされ火照らせて

 ……──」


コメント:ポテトポテトポテト!

コメント:かっこいい

コメント:こっからだぞ


「──……

 ポテトを──潰せ!


 つーぶーせー! つーぶーせー!

 ツーブーセー! TU BU SE!


 ポ テ ト を TU BU SE!

 ……──」


コメント:デスボイスwwwwwww

コメント:ひぇ

コメント:怖

コメント:すげぇ!

コメント:ポテサラさん推します


「ポテトは皆潰しだー!」

「ヒャッハー!」


 曲が終わり、サラとトーカは二人で叫んでバーチャルなハイタッチを交わす。そのまま、サラは手を振って消えていった。


「いやー、ポテトの皆さんいかがでしたか。サラちゃんはかっこいいですね! でもでも、バーチャルにはかっこよくてかわいい子は他にもいますよ! お呼びしましょう──北方少女モチちゃん!」


コメント:キターーー!

コメント:四天王全員出演!

コメント:ありがとう……ありがとう

コメント:モチちゃん!

コメント:アイドルきた!


「ズドラーストヴィチェ」


 びゅう、と雪が風に舞い、その中からもこもこダッフルコートを着た銀髪の小さな少女が現れる。


「北方少女モチです」


コメント:Здравствуйте!

コメント:ずぼらーびちぇ!

コメント:かわいい


「トーカはズルい」

「いきなり批判された!?」

「ドーム、モチが先に借りたかった」


コメント:草

コメント:モチちゃん単独ドーム公演待ってます!!

コメント:モチちゃんwwww


「モチもまだまだ。ここは、素直に胸を借りる」

「ドンと来いです!」

「一緒に歌う」

「歌いましょう!」


コメント:おっ

コメント:デュエット!?

コメント:やったあああああああああ


「それでは北方少女モチと彩羽根トーカで、『かがみびらきっ!』」


コメント:!?

コメント:ファンメイドのやつ!

コメント:うれしい

コメント:マジか


 和の楽器を使ったアップテンポな曲が流れ始める。トーカとモチは、一糸乱れぬダンスと共に歌い始めた。


「──……

 君からもらった この気持ち

 いますぐ答えちゃ もったいない


 次に会う その日まで

 十日後のお楽しみ

 ……──」


コメント:すげ

コメント:MMDで見た

コメント:ダンス完全再現

コメント:モーションじゃなくて?

コメント:この二人がそゆことするとでも?


「──……

 そっと触れて確かめて

 このざわめき止められない


 さあ会おうよ 想い込めて

 全身全霊 全力のっ


 かーがみびーらーきーっ!


 はじめまして こんにちは!

 ……──」


コメント:うおおおおおおおお!

コメント:こんにちは!

コメント:割れたwwwwww

コメント:餅割れたwwwwwww

コメント:草


「いやー、楽しい! モチちゃんありがとう! さすがアイドルだね!」

「トーカもなかなかやる」


 モチはぐっと親指を立て──


「でも、まだモチのターン」


 親指を自分の胸に向ける。


「トーカが新曲なら、モチも」


コメント:おっ!?

コメント:来る!?

コメント:新曲マジ!?


「歌う。『北方発砲サイレンス』」


 モニタの中が一瞬にして吹雪く森の中になる。その中で、銀髪の少女は歌った。


「──……

 深い森の中で あなたは息を殺し

 雪の陰に隠れ 震えて待っていた


 凍りついた吐息は 粉雪を散らして

 時を止めた空気に 揺らぎを生み出す

 ……──」


コメント:かっこいい

コメント:うんうん……うん?

コメント:様子がおかしいな?

コメント:獲物が追い詰められてませんか?

コメント:ハンティングかな?


「──……

 北方発砲サイレンス 音のない弾丸で

 北方発砲サイレンス 沈黙へ送り出して

 ……──」


コメント:ヒェ

コメント:後ろのモチちゃんの絵こわい

コメント:狙撃手モチ


 曲の終わり、モチは指で拳銃の形を作り──


「………」


 無言のままそれを跳ね上げた。


「ウッッッ!」


コメント:トーカwwwww

コメント:かわいい

コメント:死ぬなトーカwwww

コメント:死なないで


 トーカが胸を押さえて悶える中、モチは手を振って雪の中に消えていく。


「はー、ダメダメ無理無理かわいいよモチーチカ……ふう。これは熱を冷まさないといけませんね」


 トーカは氷袋を手に呼び出し、頭の上に載せる。


「はい、じゃあ次の人~」

「フッ、いいだろう」


 雑に呼ばれたにも関わらず、喜色を浮かべた声で応じて、包帯を巻いて宙に浮いたリーゼントな犬がやってくる。


コメント:犬!

コメント:犬やんけ!

コメント:イヌビス様!

コメント:めっちゃ尻尾振ってるのが見えるわ

コメント:俺にも見える


「ファンもよくオレのことを理解している。いいだろう、歌ってやる。トーカに捧げよう! 『愛の忠犬』!」


コメント:でたよwwwwww

コメント:何歌うのかと思ったらwwwww

コメント:アレかよwwww

コメント:草生えるわ

コメント:トーカちゃん耳ふさいでるwwww

コメント:ファンメイドの多くて嬉しい

コメント:ついに犬だって認めたね……


 ドラムがカウントを取り、ロックな曲が始まる。イヌビスは包帯でマイクを持ち歌い始めた。


「──……

 君を一目見て気づいたんだ

 確かな未来を感じたんだ


 そう これは 新しい始まり

 新時代の幕開けだと

 ……──」


コメント:いい声

コメント:歌えるじゃん

コメント:社長だし歌うまいし石油王とかズルない?

コメント:いちアシスタント(棒)だぞ


「──……

 君を支えるためなら 何だって捧げるよ

 名前も姿も何もかも 君のために差し出すよ


 愛の忠犬 愛は忠誠 君の言葉を聞きたいよ

 愛の忠犬 愛は忠心 君の姿だけを見たいよ


 君が輝くため 支えていくよ

 この白い空間を 未来を

 ……──」


コメント:愛が重いわ

コメント:本人歌唱は本当に草

コメント:これリリア様に向けた歌だと思ってる自分は邪道?

コメント:どう考えてもトーカでしょ


「フッ。トーカよ、しかと──」

「ちょっと待ったー! デスよ! HAHAHA!」


 曲が終わり、トーカに向かってイヌビスが語りかけようとしたその時、どすどすと緑色の肌のオークがやってきて間に入る。


「My goddessへの愛ならワタシも負けまセンが?」

「なんだと、キサマ」

「証明しまショウ! オークのルグロズで、『Dear my goddess』!」


コメント:ひどい茶番だwwww

コメント:ルグロズここでかw

コメント:トーカ呆れてて草


 ルグロズは胸に手を当て、神に誓うように厳かに歌う。


『──……

 真っ白な仮想の世界に彼女は立つ

 その輝きは人々を新たな地に誘う


 サイバーネットに羽ばたく女神の膝元に

 すべての生命は集い物質を創り始める

 ……──』(英語)


コメント:バーチャル国歌かな?

コメント:訳詞助かる

コメント:翻訳ありがたい

コメント:いい声してるなあ


『──……

 おお我が女神よ あなたの導きがあって我々は存在します

 この愛をどうか御身の器に注ぎ満たさせてください

 ……──』(英語)


コメント:仰々しくて草

コメント:こっちも愛が重いよ!

コメント:トーカも大変だな


 曲が終わり、ルグロズはトーカの方を向いて跪く。


「My goddess! この哀れなオークに愛を!」

「ふざけるな、オレこそが──」

「はい、次は虚空送りの達人! 世界初男性バーチャルYouTuberマネージャーアバタさんです!」

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