【夏だ!】みんなで海に遊びに行きました【コラボだ!】

 青い空、さんさんと輝く太陽。繰り返し波の寄せる白い砂浜。


コメント:!?

コメント:ここは……!?

コメント:もしかして


 そこに赤い大きなリボンを頭の後ろに下げた少女がやってくる。


「こんにちは、人類」


コメント:こんにちは!

コメント:こんにちは~

コメント:うおおおおお……お?

コメント:トーカちゃんのみず……

コメント:みず……ぎ……?


 トップスは長袖パーカーのラッシュガード。ボトムスはフリル付きのショートパンツとラッシュトレンカ。いつものブーツはなく、裸足で砂を踏みしめて。


「彩羽根トーカです。いやー、いい天気ですね。ついに夏、到来!」


コメント:あ、はい

コメント:うん

コメント:水着……?

コメント:お前ら喜べよ素足だぞ!!

コメント:露出率変わらなくね?

コメント:夏だなあ(遠い目)


「バーチャルならね、四季は自由自在ですが、やっぱり期間限定イベントって大事ですよね? というわけで今日はバーチャルラウンジにて、バーチャル海開きがされたスペースにお邪魔しています! 見てください、ほら、水面がリアルですよ!」


コメント:綺麗な海だな……

コメント:そうだな……

コメント:砂浜もサンゴとか埋まっててリアルだね……


「砂浜もね、バーチャルなら熱くないので踏んでも平気です。日焼けだって気にしなくてオッケー。思いっきり夏を楽しめるというわけですね。こちら期間限定のオープンとのことですので、体験するならお早めに!」


コメント:バーチャルラウンジは無料!

コメント:日焼け……日焼け?

コメント:ぜったい日焼けしなさそうな格好だが?


「というわけで今日は! この海岸で遊んでいこうと思います。それじゃあゲストをご紹介しましょう。ミチノサキちゃん!」

「みんなー!」


 ずざーっ、と。走り込み、砂を巻き上げて止まって、青いフロントレースアップのビキニを着た少女が挨拶する。


コメント:うおおおおおお!

コメント:来たあああああああああ!


「見て見て! ミチノサキだよ! どうどう、水着! かわいいでしょ!」

「はーかわ……かわいい……」


コメント:見てるぞ!

コメント:かわいい

コメント:これだよこれ!

コメント:胸元あみあみでえっち

コメント:新衣装じゃんヤッター!


「いえーい! でもでも! あたし納得してない! トーカの水着おかしくない!? いつもと全然変わらないじゃん!」


コメント:そうだ!

コメント:そうだそうだ!

コメント:言ってやれサキちゃん!


「えぇ……いや、でも水着だしコレ……」

「おっぱい見えないじゃん!」

「えぇ……」

「胸はともかく」


 おっぱいおっぱい、とサキが連呼する後ろから、フリル付きのワンピースタイプの水着を着た少女がやってくる。


「わたくしもさすがにそれはどうかと思いますわ。──ごきげんよう。みなさまを天に導く、バーチャルYouTuberの神望リリアですわ」

「ウッアッ……」


コメント:美しい

コメント:昇天する

コメント:ごきげんよう

コメント:お嬢様って感じする

コメント:トーカwwww

コメント:こっちも新衣装!

コメント:気合入ってるじゃん


「せっかくの海なんですから、それに己が映える姿をされては?」

「だよねだよね! もっとこう、夏! 海! って感じにしようよ!」

「というか、トーカさんのことですから、一枚ぐらい脱げるギミックを入れているのでは?」

「なっ、う……」

「ホント!? 見たい! 脱いでトーカ!」


 トーカはサキとリリアの顔を交互に見て──「ぐぐぐ」などと言いながら胸元に手をやって操作した。するとパーカーが消えて、トップスがタンクトップの水着になる。


「こ、これで」

「かわいー! おっぱいは見えないけど! でもかわいいからヨシ!」

「及第点としましょうか」


コメント:脱いでは草

コメント:やったあああああああああ!

コメント:うおおおおおお!

コメント:うなじ! 鎖骨! 肩! 脇!

コメント:かわいいじゃん

コメント:童貞みたいな隠し方するよね

コメント:サキちゃんナイス!


「はいはい、次! 次です! モチちゃん!」

「ズドラーストヴィチェ」


 トコトコ、と小さな銀髪の少女がやってくる。


「北方少女モチです」

「ってちょっとちょっと!」


 トーカはモチの水着を指す。それは──平坦な体のほとんどを覆っていた。長袖のパジャマを肘と膝で切ったような白黒ボーダー柄の水着。


コメント:草

コメント:おいwwwwwww

コメント:白黒映画かな?

コメント:囚人服じゃん?


「これ!」

「シマウマ水着」

「あ、そういう名前なんだ……じゃなくて! これはいいんですかサキちゃん、リリアちゃん!」

「モチーチカならかわいいからヨシ!」

「モチさんはそれでいいのではないですか?」

「えっ」


 サキとリリアが肯定し、トーカは固まる。そんな彼女に。


「ぶい」


 モチはブイサインを突きつけた。


「どうして」


コメント:モチちゃんだし

コメント:これはこれで

コメント:かわいいからオッケー!


「……気を取り直して! 最後はこの方です!」

「どうも~」


 多少がに股で、頭から角の生えている少女がやってくる。


コメント:よっしゃああ魔王と四天王コラボだ!

コメント:たすかる

コメント:ありがたい……

コメント:あっ

コメント:エッ


「バーチャルぽちゃロリドラゴン皇女Youtuberおじさんの、ドラたまでーす」

「ドラちゃんかわいい!」

「あら、大胆ですね」


 尻尾の生えたドラゴン娘の水着は──クロスデザインのマイクロビキニだった。


コメント:エチチチチチ!

コメント:これはwwwwwww

コメント:えっろ

コメント:煩悩の塊

コメント:歩くスケベ

コメント:このタイプのスリングショットとはおじさん……

コメント:自らの体を売るおじさん


「ぽちゃロリさん、かわいい」

「あ、ど、どうも~、なのだぞ」

「お腹と太ももがいい感じですね! けど──」


 トーカは全員を見渡して言う。


「……おじさんが一番大胆、っていうのも、なかなかですね! 大丈夫ですかドラたまさん! いろいろはみ出そうですけど!?」

「あー、まあ、まあまあ、ほら、バーチャルならね、ポロリはありませんから」

「なるほど、確かに!」


コメント:なるほどじゃないんだよwwwww

コメント:まあ描かなきゃポロリしようもないわなw

コメント:尻尾でいい具合に隠れてる

コメント:ほらトーカちゃんもさあ!


「それでは全員揃ったところで! 海で遊んでいきましょう!」

「やったー! 突撃ー!」

「ぽちゃロリさん、行こう」


 ここから動画はダイジェストで五人が遊ぶ様子を映す。


 ビーチパラソルを立てるトーカ。砂に埋められるドラたま──に目隠しをして棒を持って近づいていくモチ。に駆け寄るサキ。海底を歩いて散策するリリア。リリアを審判に行われるビーチバレー。砂を巻き上げて走るビーチフラッグ。


コメント:ポチャおじwwwww

コメント:おじさん逃げて!

コメント:お約束

コメント:リリア様うつくしい

コメント:バーチャルならではの海

コメント:トーカの反応が速すぎるwwww

コメント:トーカだし

コメント:モチちゃんも上手いな

コメント:おじさんヨタヨタで草


 海岸にラクガキをするドラたまとモチ。波が寄せて消える。海の家で食事する一行。サキとリリアに挟まれて挙動不審なトーカ。そして夕焼けの中、全員で砂の城を作り始める。


「できたーっ! 完成!」

「おー」


 城の中庭に立つサキが宣言し、モチがぱちぱちと拍手をする。


「なかなか手こずりましたね。ちょっと触ると崩れてしまいますし」

「重量制限のあるマインクラフトって感じでしたね。水分量多いブロックの使い方がキモで」

「緩い斜面になっているのもポイントでしたね!」


 堀や城壁、塔まで備えた大きな城を前にして、トーカは満足げに頷く。


「記念撮影、する」

「お、いいですね! それじゃあ並んで並んで!」

「わかりましたわ」

「はーい」

「やったー! 撮影……ん」


 トーカが呼びかけて城の前に集まろうとし──サキが止まる。


「……あ、あれ? ねえ、これどこから出たらいいの!?」

「あ」


 城の中庭にいたサキは──城壁と堀に取り囲まれ、一歩も動けないでいた。


コメント:草

コメント:やらかしたwwwwww

コメント:あーあー

コメント:あるある


「あら、困りましたわね」

「サキ。ジャンプ」

「無理じゃないかな!?」


 モチの無茶振りに、サキは足元を見て首を振る。とてもじゃないけれど一跳びで飛び越せる壁と堀ではなかった。


「トーカ、どうしよう~……」

「うーん、正面から撮影するから、後ろの方なら崩しても……」

「リスポンすればよくないですか? そしたら初期位置に出ますし」


 トーカが唸り悩んでいると、ドラたまがぽつりと言って──全員が動きを止めた後、それもそうだと頷いた。


コメント:それはそう

コメント:さすがゲーム作ってるだけあって機転が利く

コメント:むしろトーカは気づけよw


 パシャリ、と5人の集合した写真が表示される。


「はい、ということで! バーチャルラウンジの海岸スペースで遊んでみました!」

「バーチャルラウンジは無料っ、ですわよ~。あっはっは!」

「サキさん?」

「あは、あははは……」


 リリアに見られて、サキはジリジリとトーカの後ろに隠れようとする。


「えっと、期間限定ぃ……なので、あのこういう限定体験って特別だと思うので。ぜひ、みなさん遊んでみてくださ~い」

「楽しかった」


コメント:眼福だった

コメント:いいコラボでしたね

コメント:雪山以降、五人でコラボする機会増えて嬉しい

コメント:無料だし行ってみるか……

コメント:秒でできる聖地巡礼

コメント:パブリックに行くとかわいい水着の子いっぱいでいいぞ!

コメント:海の家で汎用の水着衣装も売ってるしね

コメント:なお中身

コメント:おじさんだからエッチなんだろうが!


「それでは人類、また次の動画でお会いしましょう!」

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