【ハシノスミ誕生祭】子供の頃の夢って聞いてたんだけど?【先輩と祝う】
英文のエラーメッセージウィンドウをたくさん張り付けた背景に、黄色髪の褐色学ランギャルが一人。
「ようお前ら生きてっか? 実行時エラーは叩いて直す!
コメント:直らんが
コメント:ナオランガー!
コメント:直らん定期
コメント:てっぞ!
「んでもって、あの端っこの隅にいるのが、ダチのハシノスミな。おーい、スミー」
ノトの呼びかけに、画面の端、空間の隅にいた緑色が動き出す。緑色の長い髪、緑色のジャージ。
コメント:新鮮なスミノトだ!
コメント:たすかる
コメント:初見です! 期待
コメント:いつものポジション
コメント:苔ポジ
「毎度だけどなんか言えよなー、今日はスミが主役だぞ?」
「えっ?」
慌てたように手を振る緑色の少女――ハシノスミ。身動きするたびに、汗のエフェクトが飛び散っていた。
コメント:汗かわいい
コメント:ノトちゃん手作りの汗……ッ!
「え、じゃねーよ、最初に説明したろ?」
「なんか、その、ふへっ、たっ、食べ物が食べられる企画って……」
「そうだよ。なんの為の企画だと思ってんだよ」
「……な、なんのため?」
「お、ま、え、の! 誕生日企画だろ!」
ノトは部屋の隅に向かって大声で言う。
コメント:草
コメント:スミちゃん自分の誕生日ぐらい覚えて
コメント:食欲にすべてが負けた
「はっ、はぇっ、ひっ!? 誕生日……!? え、誰……?」
「スミのだよ! 設定したろ、てか今日だろ? なあ?」
「アッアッ、う、ウン、え、ま、マジか……(小声)」
コメント:マジだよ
コメント:設定は草
コメント:設定の誕生日でも祝うノトちゃんてぇてぇ
「おし、じゃあ今日は隅じゃなくてこっちこいこっち。もっとだよ! 隣まで!」
スミはソロソロと足を伸ばし、ノトの隣に立つ。
「つーわけで、またせたな! 今日はアタシのダチのハシノスミの誕生日企画だ!」
「ぃ、ぃぇー」
スミは声を絞り出して、ヘロヘロと腕を上げた。
コメント:力なくて草
コメント:誕生日おめでとう!
コメント:スミちゃん誕生日絵描かなきゃ……(宣言)
「誕プレ悩んだんだけどよ。昔お前言ってたことあったじゃん。プールいっぱいのゼリー食べたいって」
「あ、う、ウン」
「その夢を叶えてやるぜ!」
バチッ、とウインクしてノトは親指を立てる。
「それが誕生日プレゼントな! 見ろよ、ゼリーめっちゃ作ってきたかんな!」
「ぉ、おぉー……」
「なんだよ反応薄いな! もっと喜んでいいんだぜ?」
「……プリンとか……ケーキの方が好き……」
コメント:おいwwwwwww
コメント:草
コメント:言っちゃった
コメント:かわいらしい夢だねってコメントしようとしたらwwww
「……お、おう……」
ノトが言葉に詰まる。と、スミは汗を振りまきながら。
「あ、う、ぜ、ゼリーも好き」
「いやー、まあ、ガキの頃の話だしな……なんか悪かったよ」
ぽりぽり、とノトは頭をかく。その背中に。
「た、食べたい!」
スミは、精一杯の声量で呼びかける。
「食べたい、ノトの作ってくれたゼリー……」
「お、おう。んじゃやるか!」
「うん」
コメント:スー(昇天)
コメント:はい納棺された
コメント:俺も食べたい
コメント:ノトちゃん料理できるんだな
コメント:ゼリーは料理ですか?
「んじゃー、スミはVRのヘッドセットつけろよな」
アイキャッチが入り、場面が切り替わる。中央にはスミだけ。ノトはワイプ枠にいた。
「つ、つけたよ」
「よしっ。んじゃ今回作ったスペースに移動してもらいたいわけだが、ここでちっと問題がある」
「え、な、何が?」
「アタシはスミにゼリー食わせる係をやらねえといけねーんだけど、そうなるとVRの方のオペレートができないんだよ」
ワイプ内のノトが大きなボウルを抱え、スプーンを持つ。
コメント:あっこれオフ?
コメント:スミちゃんはノトんちで撮ってるからそらそうよ
コメント:デカい
「うん」
「んだから、ここで助っ人に来てくれるゲストを紹介するぜ! 来てくれ先輩!」
「はーい」
声とともに、スミの隣にアバターが出現する。赤い大きなリボンを頭の後ろに下げた少女。
コメント:来た!
コメント:うおおおお!
コメント:待ってました
「こんにちは、人類。彩羽根トーカです!」
コメント:こんにちは!
コメント:気さくな魔王来た
コメント:誕生日を祝いに来るVの魔王
「ひっ、ひゃっ、ひゃい!?」
その声と姿に、スミは取り乱し、その様子を見たトーカは――
「ああっ、すっすっ、スミちゃん! そのっ、誕生日おめでとうございますっ!」
同じぐらい挙動不審になった。
コメント:草
コメント:おいwwwwwww
コメント:限界バトル叩きつけていけ
コメント:い つ も の
「アッアッ、その、ありがとうござまっ……」
「あっかっ、かわいい、端っこ属性かわいい、おす、推してます。あのーノトちゃんのねお友達っていうことも尊くてスタンバってる間も何これてぇてぇなって感じで、でもなにが尊いかっていうと有り様というかやっぱり存在なんですよそうもういるだけで神部屋の隅に飾りたいすき」
「先輩落ち着いてくんね?」
「はっ」
コメント:早口で草
コメント:推すねぇ!
コメント:わかる(固い握手)
コメント:俺も部屋の隅にスミちゃん生やしてえなあ
「ご、ごほん。はいっ」
「つーことで、ゲストはトーカ先輩だぜ」
「がんばりまーす」
「あっ、あのその、えぇ、マジか……聞いてない(小声)」
「そりゃ誕生日パーティーにはサプライズがつきもんだろ?」
ノトはドヤァ……と口で言いながらふんぞり返る。
コメント:セルフSE
コメント:トーカから来ました
コメント:いろんなところで見かけるなトーカ
「そ、それはあるかも、だけど」
「ちなみにスペースの制作から手伝ってもらった!」
「やりました!」
「マジか……(小声)」
コメント:もうトーカなら驚かないわwwwww
コメント:推しを祝うためならやるよね
「んじゃさっそく、スミとトーカ先輩はスペースに移動してくれ!」
「はい、じゃあここからは私が案内します! バーチャルの方はまかせろ! では、スミちゃんを連れて移動っと」
「ア、ウ」
トーカの操作によりスペースが読み込まれ、スミとトーカは25メートルプールの上にかかる飛び込み台の上に現れる。
「うわ、高……」
「ようこそゼリープールへ! あの水面すべてゼリーですよ! といってもここからじゃよく分かりませんね。はっはっは。それじゃ――」
トーカはにこりと笑う。
「飛び込みましょうか」
「へっ!? え、えぇ、マジか……いやその、ちょっと……」
踏切板の上にいるスミは、もにょもにょ言いながらチラチラと下を見る。水面からの高さは約3メートル。足が動いていない。
その様子を見て、トーカは。
「スミちゃんなら渋ると思ってこの飛び込み台の踏切板、ワンタッチで消えるようになってます! ポチッとな」
にこりと笑ってボタンを押した。
「アアア!」
細い悲鳴を上げながらスミは落下し――ざばんっ、と水柱をあげる。
コメント:草
コメント:ひどいwwwwwwww
コメント:よくわかってる
コメント:これは英断
「はい、スミちゃん、目を開けてくださいねー」
「うぅ……はっ」
プールの底に着地したスミがあたりを見回すと、四方八方がゼリーだった。スミの着地で切り取られた縁が、ぷるぷると震える。
「おぉ……ゼリーっぽい」
コメント:うまそう
コメント:これはゼリー
コメント:腹減ってきた
「そこはトーカ先輩にやってもらったぜ。ゼリーシェーダーめっちゃリアルだろ。さすがにアタシ、シェーダーはわかんねぇけど、すごいのはわかる!」
「いえいえ、まだまだですよ。あっ、ちなみにゼリーの色はこのマスカット色でいいですか? 他にも変えられますよ」
「まあ今日作ってきたのはマスカットゼリーだし――」
「あっ、青いのが……あっ……えっと」
コメント:おいwwwww
コメント:草
コメント:スミちゃん食に関してはグイグイくるねぇ!
発言のかぶったスミは、汗を飛ばしながら言い直す。
「み、緑……緑がいいな」
「お前なー……いやでも、別にいけんじゃね? かき氷のシロップもあんま成分に違いなくて、香料と着色料だけが違うんだろ? ゼリーもだいたいそんなもんだし」
コメント:そうなの?
コメント:そうだよ
コメント:目隠ししたらほぼ分かんないらしいね
「VRで視覚が騙せるからいけるかもですね! それじゃ、一面ブルーハワイになーれ! ポチッとな」
緑色だったプールのゼリーが、一気に透明感のある青になる。
「わぁ……!」
コメント:はいかわ
コメント:かわいい
コメント:おおー、青い
「ウッ、かわよ……ゴホン。これでいいですか、スミちゃん」
「アッ、はい。あの、これ、もう食べても?」
「どうですか、現場のノトちゃーん」
「おう、準備できてるぜ!」
ワイプ枠で、ノトはスプーンを構える。
「それではお待たせしました! スミちゃん、大きく口を開けてかじりついてください。はい、せーの、あーん」
「あ、あーん、んむっ」
ぱくり、と口を閉じた途端、スミの顔の前にあったゼリーがごっそりと消える。
コメント:あーん!!!!
コメント:これ今ノトちゃんがスプーンをスミちゃんに……
コメント:顔がニヤニヤする
「ん、んっ、むっ……」
もぐもぐと咀嚼するスミ。ごくり、と喉を鳴らして。
「……おいしい!」
コメント:かわいい
コメント:食べてるとこかわいいな
「はーてぇてぇ……ゴホン。いいですね! こんな感じでどんどんどうぞ!」
「いつでも来やがれ!」
「あーん、はむっ、むぐむぐ」
スミがかじりついた部分のゼリーが切り取られて消える。プールの中に、スペースが広がっていく。
「あーん」
続いて中腰になって、先程食べた部分の中程を。
「はむっ、むぐむぐ。あーん」
さらに床に手をついて、足元の部分を。
「はむっ、むぐむぐ」
食べている間に立ち上がり、スミはキョロキョロとあたりを見回す。
「アッ、ここおいしそう。あーん、はむっ、むぐむぐ。こっちも、あーん、はむっ、むぐむぐ。あーん」
「ちょっ、おま、速えって」
コメント:これ大変そうwwww
コメント:ペース早い
コメント:飲んでるのでは?
「はむっ、むぐむぐ。あーん!」
「待て待て待て待て」
「はむっ、むぐむぐ!」
「待てって! アタシが追いつかねえから!」
「あーん!」
「トーカ先輩ちょっと!」
「はぁー何これ尊い無理死ぬ」
「いやストッパーもやってくれよなトークとか挟んでさあ!?」
「あーん!」
「どんだけ食うんだよお前もぉぉ!?」
コメント:wwwwwwwww
コメント:サポートしろトーカwwwwwwww
コメント:魔王役に立ってなくて草
コメント:スミちゃんよく食べるねえ!
倍速でスミがプールのゼリーを全てくらい尽くしていく様子が流される。
アイキャッチの画像は、腕が疲労で死んでいるノトの絵。
画面が切り替わると、三人が横並びになっていた。
コメント:ノトちゃんお疲れ……
コメント:ノトちゃん! 腕が!
コメント:満腹感すごそう
「はい、ということで、ハシノスミちゃんのお誕生日企画でした!」
「うぷ。満腹です……ふへへ」
「作ってきたの結局全部食べやがってよ」
「あっはっは。途中から実体のゼリーなしでプールゼリーを食べてましたね!」
「あのその、美味しかったし、楽しかったので、つい」
スミは汗を飛ばしつつ頭をかく。
コメント:かわいい
コメント:スミちゃんに腹いっぱい飯くわせてぇ……
コメント:もしかして:ノトちゃんが一緒に食べる分
「まーいいけどよ、誕生日だしな」
「へ、へへ……明日も誕生日にならない?」
「ならねーよ!?」
「いやバーチャルな存在なら誕生日がいくつあっても……? 毎日誕生日系Vtuber……?」
「トーカ先輩もバーチャルならなんでも許されると思うなよ?」
コメント:どういうVだよwww
コメント:帽子屋さんかな?
コメント:ガバーチャル
コメント:バーチャル便利概念
「あっはっは、まあね。それよりスミちゃん、改めてお誕生日おめでとうございます!」
「アッアッ、ありがとうございます」
「ところで」
トーカはずいっとスミに寄り、スミは汗を飛ばす。
コメント:オッ
コメント:アッ
「この動画を見てくれるリスナーさんたちも、きっと祝ってくれていると思うんですよね」
「エッ、そ、そう、でしょうね、はい」
コメント:もちろん
コメント:おめでとうございます!!(遅)
コメント:めでたいことよ
「それではリスナーさんにはね、スミちゃんがお返しをするということで、ぜひ一曲!」
「はっ!?」
「おう、歌え歌え! アタシにここまで労働させた報いを受けろ!」
コメント:おっ!
コメント:やったぜ
コメント:残りの尺何するんだろうと思ってた
コメント:キター!
「は、えぇ、マジか……(小声)お腹いっぱいにするんじゃなかった……」
「ステージはもちろんここ! ゼリープール! ポチッとな」
トーカが操作すると、ゼリープールがライブステージに早変わりする。ゼリー状の観客がプールを取り囲み、ぷるぷると震えながら応援していた。
「わ……すご……」
「マジかよ」
「いやー、誕生日にって聞いててぇてぇなあって、テンション上がって作っちゃいました! 私からのプレゼントということで、遠慮なく!」
コメント:すっご
コメント:推しのために働くだけの女
コメント:プールのライブステージとか文化祭かな?
コメント:ゼリー人間かわいいな
「かなわねぇなぁ。ほらスミ、やってくれよ」
「わ……わかった」
プールの中のスミにスポットライトが当たる。そして音楽が流れ始めると、スミはこれまでのオドオドした様子を一変させ、伸びやかな声で歌い始めるのだった。
コメント:(天使の顔文字)
コメント:やっぱ歌いいわ~
コメント:スミちゃんの歌唱力ほんとすごい
コメント:ノトちゃんがバーチャルに連れて来てくれてよかった
コメント:ありがてぇてぇ
コメント:推します
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます