NRTALs 2020【4日目】(前)
リアルタイムアタック、あるいはスピードランと呼ばれるゲームの早解きを披露するオンラインイベント、NRTALs(Nippon RTA Live streams)。
ゲーム画面、タイトル、プレイヤー名、タイマーのみが表示された配信画面で、今一つのゲームがエンディング画面を迎えた。
コメント:うおおおおお!
コメント:キターーーー!
コメント:俺の知ってるラスクロじゃない……
コメント:gg!
「はい、以上です。世界は救えないけどゲームはクリアで。えー、タイムは……1時間5分32秒、ちょっと遅かったですね。いやあ、コントローラーが引っこ抜けなければワールドレコードだったんですけど」
スタッフロールが流れる中、プレイヤーが視聴者に話しかける。
コメント:すごかった
コメント:無線使えよwwwww
コメント:次はUSB接着剤でくっつけといて?
コメント:あんなタイミングよく抜けるもんなの?
「いやいやホントですって。まあ今回はオンラインイベントで、僕もカメラつけてないから証明できないんですけど! はい、というわけでね、ラストクローマ紅ルートany%はこれで終了です! ご視聴ありがとうございました。引き続き
早々に終了を告げ、配信画面が待機中のサムネイルに変わる。
コメント:いやーよかったわ
コメント:死にゲーなのにあんなにスルスルいくとは思わなった
コメント:白エンドルートも見たい
コメント:次なに?
コメント:!schedule
コメント:待機
コメント:待機
コメント:トーカちゃんから
コメント:ここかな?
コメント:応援しにきました!
コメント:トーカちゃんから来ました
コメント:RTAってイベントあるんだ
コメント:急に視聴者増えた
コメント:がんばれー!
コメント:トーカってVtuberか
コメント:VがRTAとかできんの?
コメント:待機
コメント:そろそろかな?
コメント:始まってないのにコメントの量がやばい
コメント:クソダサTから来ました
コメント:始まる!
コメント:キター!
「あ、映りましたね?」
ゲームタイトル、Psyber Cosmic Wars。any%。
プレイヤー名、彩羽根トーカ。
ゲーム画面の部分には――満員の会場の様子。たくさんの様々な3Dアバターの観客に見守られた、トーカともう一人、土曜日と書かれたTシャツを着た男性アバター。
コメント:!?
コメント:こんにちは!
コメント:なんだこれ!?
コメント:オフイベだったっけ?
「こんにちは、人類。彩羽根トーカです! そしてお隣は!」
「解説およびリアクション芸人をやらせていただく、九から飛んで六と書いて
コメント:こんにちは!
コメント:こんにちはー
コメント:トーカ……頑張れよ(全人類面)
コメント:ヨウセイ君がんばって!
「いやートーカさんの隣で解説するとかすごい緊張するんですが」
「よろしくお願いします!」
「アッ、ハイ」
コメント:草
コメント:容赦のない圧
コメント:おうがんばれよ
「えーと。今日はですね、NRTALsのイベントにお邪魔しているんですが、あ、そうですね、この会場の説明から、はい」
「いやー、やっぱりRTAのイベントといったらこういう、走者がいて、後ろのソファーに応援する人がいる、って感じじゃないですか」
トーカが背後のソファーに向かって手を振り、座っているアバターたちが手を振り返す。
「でもNRTALsはオンラインイベントなので会場カメラがないと。ならバーチャルたる私たちこそ会場カメラを使うべきでは? っていうことで、バーチャルラウンジにNRTALsを視聴できるスペースを作っちゃいました!」
コメント:なるほどね
コメント:よく見てるじゃん
コメント:めっちゃオフ版のやつっぽい
コメント:バーチャルラウンジから投稿!
「さっきのラストクローマもみんなで応援してましたよ! いやーあのゲームも私好きなんですよ。最後のパリィ決めたところとか大盛り上がりでした!」
コメント:珍しく生放送してたゲームだよなラスクロとサイコミ
コメント:パリィ熱かったわー
コメント:まさか兜の脳天にコリジョン抜けがあって致命入るとはね……
「NRTALs開始からスペース開いていて、もうずっと満員みたいな感じですよね」
「みんなで応援していると楽しいですからね! バーチャルラウンジは無料なので、Twitchでご覧の方もぜひ導入してみてください!」
コメント:バーチャルラウンジは無料!(ダイマ)
コメント:へー
コメント:いいのか流して?
コメント:運営から許可は取ってる
「さてトーカさん、今日はサイバーコズミックウォーのRTAということですが、どうしてこのタイトルを? ていうか、RTAできるんですね!」
「いやー配信もしましたけど本当にこのゲーム楽しくて! 自分でやるだけじゃなくて他の人の動画も見ていたらRTAがあって、あれ、できそうだな? って思って練習してみたらなかなかいいタイムが出たので、そこからやり込んでみた感じです!」
コメント:やり込む時間あるのか
コメント:いつ寝てるんだwwwww
コメント:サイコミ配信は盛り上がりましたね
「あとはそう、これVRゲームじゃないですか。だったらVtuberたる私がやってみせるのが一番かなって思って応募しました! いやー、抽選通って良かったです!」
コメント:確かに
コメント:応募があるとは思わなった(運営談)
コメント:VRゲーなんだこれ。どうりで聞かないタイトルだと思った。
「なるほど。えっと、それではそろそろ準備の方お願いします」
「はい!」
トーカは椅子から立ち上がり、椅子を消すと、何かを身につける動作をした。
「えー、ではその間に簡単にゲームの紹介をいたします! 本作、サイバーコズミックウォーはSFのVRゲームなんですが、特徴の一つとしてフルトラッキング対応、というところがあげられます。フルトラッキングというのはですね、えーと普通のVRゲームはヘッドセットと両手のコントローラーだけで遊ぶんですが、これはモーションをトラッキングする箇所が増やせるんですね。今トーカさんがトラッカーという装置を装着していますが、両肘、両膝、両足、それからお腹。これに頭と両手のコントローラーで、ゲーム内に反映できる体の動きが最大の10箇所になるわけです」
コメント:へー
コメント:なるほど
コメント:トラッカーひとつ1万ちょっとします
コメント:金かかりすぎワロタwwww
「でこのゲームには格闘戦もありまして、普通だと両手を使ったパンチしかできないんですが、フルトラすることで蹴りも使えるようになるという仕様です」
コメント:あー、なるほどね
コメント:普通は超能力と銃で戦うゲームです
「他にも様々な利点があってフルトラでの操作を選択したと聞いていますが、そこはプレイ中に伺いましょう! さてそろそろ準備はよろしいでしょうか!」
「はい!」
画面が切り替わり、ゲームのタイトル画面が大写しになる。トーカを映す会場カメラの画面は小さくなって端に行った。ぐいぐいと腕の筋を伸ばして、トーカが手を上げる。
コメント:いよいよか
コメント:トーカちゃんがんばれ!
コメント:世界獲ってくれー!
「それでは321スタートで始めたいと思います! タイマー係の人よろしいですか? はい、それでは! 3、2、1、スタート!」
「いきます!」
トーカが操作し、ゲームはロード画面になる。
コメント:GL
コメント:gl
コメント:8888888888
コメント:はじまる!
「はいさっそくオープニングムービースキップで最初のエリアにやってきました、敵軍の基地の中です。主人公はここに捕まったふりをして潜入しているんですね。ここから脱出するのが最初のミッションで、はい始まりました」
トーカが空中でグーパーしながら腕を動かすと、ゲーム内の部屋の中で物が飛び交った。
コメント:!?
コメント:はやいwwwww
コメント:ガコンガコンガコン
「はいこれはね、サイコキネシスです。主人公は超能力者なんですね。素手状態で遠くのものを掴んだり引っ張ったりできます。これはガラクタを積んで窓から部屋の外に出るところですが、おっとこれで段差は足りるのかー!?」
壁の近くに積み立てられた長方形の箱は、本来なら横に置くのであろうものが縦に積まれている。キャラクターの身長以上ある、明らかに登れそうにない構造物の前で、トーカは立ち位置を調整し――
「せいっ!」
ジャンプし、手を伸ばす。ゲーム画面で急加速したキャラクターが箱の上に立って窓から飛び出した。
コメント:!?
コメント:なんだ!?
コメント:急に画面が
「出ました! ダブルジャンプ成功です!」
ぱちぱち、と観客が戸惑いながらも拍手する。
「えー、ジャンプボタンとほぼ同時に自分もジャンプすると倍の高さを飛べるというフルトラでのみ出せるバグ技なんですが、これを使って箱の端を掴んで乗り越えたんですね」
コメント:へえー
コメント:どういう原理なんだ?
コメント:ジャンプボタンの上加速とフルトラ時のジャンプの反映が重なるタイミングがあるらしい
コメント:解説たすかる
続いてトーカはぴょんぴょんと片足ずつ跳ねていく。大股なスキップのように。
「ほっ、ほっ」
すると上下するゲーム画面がだんだんと前への加速度を増していく。
コメント:なんだこれwwww
コメント:草
コメント:動きが気持ち悪いwwwww
コメント:速い速い
「はいこれも成功です! リアルバニーホップというバグ技でこれもフルトラでのみ使用できます。えーFPSゲームでタイミングよくジャンプと移動を組み合わせることで高速移動できるよくある技ですが、このゲームではこのように辛い運動を強いられます。これね、トーカさんがうまいだけでめっちゃ難しいから。自分も挑戦したんですけど10秒ぐらいが限界でしたね、足の」
コメント:マジか
コメント:マジだぞ。バニホなんてリアルでやるもんじゃない
コメント:このゲームのRTAに必要なのは脚力だからな……
「はいここです! 壁蹴りでコーナリング、うまい! 減速せずに突き進みます!」
ぱちぱち、と拍手が会場から起きる。
コメント:うめえ
コメント:あれ? ガチか?
コメント:そりゃトーカちゃんはいつもガチよ
「えー本来ならE反応、超能力の使用に気づいた敵と交戦するチュートリアル的な戦闘があるんですけど、敵を置き去りにしたので発生してません。はい速い。いまチラッと見えたのも敵です。こんな感じで最初のステージは戦闘をせずに駆け抜けていきます」
コメント:ガバガバ警備
コメント:NPCフラグあるところまで行かないとアクティブにならないんだよね
コメント:敵カワイソス
「はい格納庫に近づいてきました、ここでこの壁のくぼみを利用して!?」
「すぅー……ハッ! ホッ! ハッ!」
「キター!」
ぐるぐるとその場を回転しながらローキックを繰り出すトーカ。するとゲーム内のキャラクターは上昇していく。
コメント:!?
コメント:なんだこれ!?
コメント:は?
「タツマキウォールジャンプ成功! 一気に格納庫の上までショートカット! 壁蹴りジャンプできるのもフルトラならではです! 背面に振り向く操作はないので自力で回転しての連続キック! きちんと壁の位置で蹴るのがコツとのことですがとても人間業じゃない!」
コメント:マジ人間業じゃないwwwww
コメント:88888888
コメント:やれと言われてもできないぞこんなの
コメント:竜巻旋風脚かな?
「さあ格納庫の狭いキャットウォークをリアルバニーホップで加速して、端っこでダブルジャンプ! 格納庫で待機してる戦闘機の操縦席にシューッ! 決まった!」
すぽん、と大ジャンプを決めたキャラクターが宇宙戦闘機の操縦席に収まり、発進のムービーが始まる。会場が拍手と歓声で湧いた。
コメント:うおおおおおおおおお
コメント:すげえええええ!!
コメント:あの狭い鉄骨飛び跳ねていくのかwwww
コメント:すっぽり入ったの草
コメント:敵誰も気づいてないの笑える
コメント:会場の盛り上がりいいなあ。行きたい
コメント:おいでよ!
「さあムービーをカットして始まりました次のステージ」
戦闘機で降り立った惑星で再びトーカが跳ねながら突き進む。近未来的な街の中を、ぴょんぴょんと。
「ちょっとした都市のオープンフィールドなんですが、はいそうですね、広くて空が見えるということはリアルバニーホップとダブルジャンプで目的地まで一直線です」
コメント:天井がないのが悪い
コメント:壁がないのが悪い
コメント:悪いのはプレイヤーなんだよなぁ……
「いちおう事件の調査的なフェイズなんですが、はい時折無線通信が入ってるのがね、速すぎて全部聞けませんがまあ調査の相棒的なやつです。フラグは全く立てていませんが目的地まで行けば大丈夫なので無視ですね」
コメント:相棒……
コメント:相棒元気出せよ
コメント:会話は飛ばすもの
「ここで道端に放置されてるレーザーライフルを取ります!」
「はい速すぎて見えませんでしたがギャングのアジトを通り過ぎるついでに武器をサイコキネシスでぶんどってます。ギャングが追いかけていますがさあ追いつかれるかどうか!?」
コメント:めっちゃ警告マーカー出てて草
コメント:こえええ
コメント:撃たれてる撃たれてる
コメント:銃取るの早すぎるw
「さあ目的地のビルが見えてきました。このビルの最上階にいるターゲットを締め上げるのがこのステージの最終目標です。普通なら1階の入り口から入ってエレベーターをいくつか乗り継いで行きます。入り組んでいて避けられない戦闘も多く、時間がかかるんですが――」
トーカはビルの周辺でサイコキネシスを使い、大きなゴミ箱を集め始める。
「積みまーす」
「ここで唐突に積み木タイムです! とある技の下準備ですね」
コメント:あっ
コメント:悪いことし始めたぞ
コメント:物理エンジン先輩対戦よろしくお願いします
「崩れないように積む必要があるんですが、時間をかけすぎるとギャングに追いつかれ、さらにE反応を感知してビルから警備のエスパーも出てきて大混戦になります。うまく物理を制することができるか!?」
トーカは慎重にゴミ箱を高く積む。出来上がる2つのゴミ箱の塔。
「よし!」
「さあできたようです! ここで失敗だと戦闘が始まって大幅タイムロスですがどうだ!?」
「とう!」
「ダブルジャンプ成功、上に立ちました」
コメント:おおお
コメント:うんま
コメント:すげーな
「しかしまだ、ここからです。サイコキネシスでもう片方の、二段になったゴミ箱の下段を掴み垂直に上に投げ、空中にある間にダブルジャンプで乗ります……成功! すかさず先程乗っていた方のゴミ箱で同じことをやります――行けました!」
宙に浮くゴミ箱に飛び移り、さらにゴミ箱を浮かせて飛び移り、徐々に高度を上げていく。観客がどよめき拍手を送る。
コメント:うおおおおおお!!!
コメント:は?
コメント:何が起きてるのか解説ないとさっぱりわからんwwwww
コメント:空を飛び始めるのは3Dゲーでよくあること
コメント:なにこの沈む前に足を上げれば水の上を歩ける理論的な
「えー解説しますとサイコキネシス使用時の移動方向を4方向に固定するキーがあるので、それでうまく垂直に持ち上げられるわけで――」
「あ、そんなキーあるの?」
「フリーハンドでやってるの!? 化け物かな!?」
くるくる回りジャンプし腕を上下に振るという忙しい動きをしているトーカに、ヨウセイはツッコミを入れる。
コメント:化け物wwwww
コメント:ひどい言い草で草
コメント:えぇ……あれフリーハンドで積んでるの?
「なんかすごい事実を知ってしまいましたがその間にも高度は上がっていく! そろそろ目標地点です。はい見えてきましたね、周囲を飛んでいる飛行船です。あれの上に、はい飛び乗りました! 拍手!」
観客が拍手する中、トーカは少し息を整える。飛行船はゆっくりと目標のビルを周回する。
コメント:88888888888
コメント:えぇ……
コメント:途中で崩れたらリカバリ効かないだろうによくやる
「さあここから取り出したのは先程奪った武器、を投げ捨ててサイコキネシスでキャッチ! うまく飛行船の先端に引っ掛けて下に潜り込ませますが……カメラには映らないので操作感で位置を推測するしかないとのこと。トーカさん、どうですか?」
「うーんと……多分、入ったかな? 引き上げまーす」
ぐい、とトーカは手を引っ張る。ビルに目を向けると、その窓ガラスに映る姿から――飛行船が、徐々に高度を上げているのが分かった。
「やった! 成功でーす!」
トーカが宣言し、観客から再び拍手があがる。
コメント:おおー
コメント:すごいな
コメント:やったことないけどすごいことは分かる
コメント:チャンネル登録したわ
「トーカさんここまで見事なプレイでした! この後は目的地、ビルの屋上に行くまでしばらく遊覧飛行と聞いていますので、インタビュータイムに移行します!」
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