【実質コラボのできるゲームでコラボ!】マルチプレイで国を救う!【ドラゴンスケイル戦記マルチ#1】

上位チャット:待機

上位チャット:待機

上位チャット:カウントダウン音クソでかい

上位チャット:プレミア公開助かる

上位チャット:来るぞ!


 白い空間に大きなリボンを下げた少女が入り込む。


「こんにちは、人類。彩羽根トーカです」


上位チャット:こんにちは!

上位チャット:トーカちゃんキター!

上位チャット:マルチ待ってた!


「今日はですね! あの! バーチャルぽちゃロリドラゴン皇女Youtuberおじさんのドラたまさんの作った! ドラゴンスケイル戦記第一章が! バーチャルラウンジに対応したのを記念して! マルチプレイをやっていきたいと思います!」


上位チャット:めっちゃテンション高くて草

上位チャット:嬉しそう

上位チャット:マルチ対応したのか


「最大プレイ人数は5人なんですけど、5人目は司令官補佐的な立場で直接操作できないので、4人でやりますね」


上位チャット:把握

上位チャット:誰かな

上位チャット:5人目は冬月ポジだからな……

上位チャット:誰が来る?


「というわけでさっそく、遊んでくれるメンバーを紹介します!」

「みんなー! 見てるー!? ミチノサキだよ!」


上位チャット:うおおおおおおお!

上位チャット:見てるー!

上位チャット:サキちゃんだ!

上位チャット:やったぜ


「もー、楽しみにしてた! 一人でもやったけど、難しくてクリアできなくてさー……でも今日はトーカと一緒だから、いける!」

「マルチプレイ向けに難易度調整してるらしいから、がんばろうね?」

「うん!」


上位チャット:おっ分かってないぞ

上位チャット:サキちゃんのプレイ動画はね……

上位チャット:ガチめのゲームだからね仕方ないね

上位チャット:トーカちゃんいれば余裕でしょ

上位チャット:ドラスケプロがいればね


「はい、では次の方お願いします!」

「はいっ!」


 大正時代の女学生風の衣装を着た、長い髪の少女が画面に入ってくる。


「こんにちは! バーチャル帝都所属、穂之木ほののぎクヌギです!」


上位チャット:おお!

上位チャット:局長!

上位チャット:帝都メンバーか!

上位チャット:ほののぎくん!


「こういうゲームはあまり得意じゃないんですけど、初プレイでもやれるってところを見せていきたいな、っと思います! よろしくお願いします!」

「クヌギちゃ~ん! 今日もかわいー!」

「あっ、あはは……ど、どうも~」


 サキにくっつかれて、クヌギは両手をあげて後退る。


上位チャット:てぇてぇ

上位チャット:あら^~

上位チャット:実際かわいい


「はいはい、困らせないでくださいねー」

「えー、ヤキモチ?」

「知りません、次」


上位チャット:ウッッッ

上位チャット:トーカちゃん?

上位チャット:ははーん分かっちゃった

上位チャット:知りませんかわいい


「ズドラーストヴィチェ。北方少女モチです」


上位チャット:Здравствуйте!

上位チャット:モチちゃんきた!

上位チャット:経験者なら安心

上位チャット:めっちゃうまかったもんなー

上位チャット:モチちゃんもなかなか


「モチーチカ!」

「うわあ~、小さい!」


上位チャット:わちゃわちゃしてる

上位チャット:たすかる


「今日は、ゲーム。負けない」

「対戦ゲームじゃないからね?」

「無様なところは、みせられない」

「モチーチカやる気だね!」


 ふんっ、とモチは気合いを入れる。


上位チャット:かわいい

上位チャット:かわいいが?

上位チャット:シベリア組でよかった


「うわかわ……ンッン。はい! というわけでこの4人でドラゴンスケイル戦記に挑戦します!」

「がんばるぞー! おー!」

「お、おー!」


上位チャット:トーカちゃん?

上位チャット:トーカwwwww

上位チャット:漏れてるぞ魔王

上位チャット:草

上位チャット:局長遅れてて草


 場面が変わり、青空の下にそびえる砦のてっぺんで、4人が席に座る。サキ、モチ、クヌギは前方の低い席に。トーカは一段高い席でその後方に。


「はい、というわけで早速戦闘シーンからです! あの、本当はストーリーもあるんですけど、それはちょっと長いので。でもとても面白いので、ぜひ実際にやってみて体験してくださいね!」


上位チャット:把握

上位チャット:マルチで見るのはちと長いしな

上位チャット:残念

上位チャット:見たい人はトーカのシングルでやってる動画見ればいいよ

上位チャット:話も面白いんだけどな


「それじゃスタートで……」

『軍師どの~!』

「んフッ!」


 おじさんの声がし、サキが早くも噴き出す。カメラが自動的にサキの左手に現れたドラゴン皇女を映していた。トーガ風ミニスカ腹出し衣装のいつもの姿、いつもの声。


上位チャット:出たwwww

上位チャット:草

上位チャット:おじさん!

上位チャット:実質コラボ

上位チャット:誰でもおじさんとコラボできる神ゲー


「わっ、ぽちゃロリさん!?」

「ナビゲーター兼、強力なユニットとして、このゲームではドラゴンスケイル帝国皇女のココア・イースとして登場するんですよ。CVはご本人です!」

「本人! す、すごいですね」

「声優を入れるって呟いたら大反対されてましたからね。私とかから!」


上位チャット:草

上位チャット:そらそうよ

上位チャット:おじさんにCVつくとか許せないんだよなあ

上位チャット:お前がかよ!!

上位チャット:局長は初めてかこれ

上位チャット:クヌギちゃんの反応が新鮮


「セリフ送るまでゲームの進行止まってるので安心ですね。じゃあセリフ送ります。よっ」

『敵軍が国境線を超えたとの情報が入ってきたのだぞ!』

「ンハッ! あはははは!」

『まずは偵察隊を派遣して、敵の位置を把握してほしい、のだだぞ!』

「あっはっはっは! ひぃー!」

「サキちゃん笑いすぎ! ふふっ」

「いやー、本人ボイス、とても助かりますね!」


 トーカは腕を組んで頷く。


上位チャット:たすかる

上位チャット:安心する

上位チャット:サキ笑いすぎだろwww

上位チャット:おじさんの絶妙な棒ボイス

上位チャット:がんばりは感じる


「では作戦開始です! サキちゃんは西、モチちゃんは北、クヌギちゃんには東方面を担当してもらいます! 三人とも、さっそく偵察ユニットを出発させてください!」

「了解っ!」

「騎竜を派遣する」

「よーし! やるぞー!」

「各自、偵察ユニットの視界をモニターに表示!」


 三人が手を動かし、彼女たちの横に半透明のモニターが表示される。


上位チャット:おおー

上位チャット:これがかっこいいんだよなあ

上位チャット:VRならではって感じ

上位チャット:エヴァ味ある

上位チャット:北方方面モチ


「うわ~、すごい、SFっぽいですね!」

「視界共有魔法って設定ですね。いちおう、ドラゴンスケイル帝国は剣と魔法と竜の国なので」


上位チャット:これで視点複数確保するのが面白い

上位チャット:目が忙しいゲームやな


「モチちゃん、工兵部隊を預けるので防衛線の構築を」

「任された」

「各自、敵発見次第、カットインボタンを押して報告をお願いします」

「わかりました……あっ!」


 クヌギがモニターを見て、数秒迷いながらボタンを押す。


 するとトーカの目の前に、良い感じの斜め後ろからの角度で映されたクヌギが表示された。


「わっ」

「クヌギちゃん、こっち振り向く感じで!」

「こ、こう!? あ、かっこいい!」

「ですよね!」


上位チャット:アニメみたい

上位チャット:魅せカメラいいぞ

上位チャット:カッコイイボタン北

上位チャット:ナデシコ感ある

上位チャット:配信映えの考えられたゲームよ

上位チャット:ナデシコは古くない……?


「かっこいい感じで報告お願いします!」

「了解!」


 スゥ、とクヌギは息を吸う。


「トーカ隊長! 東方面偵察隊、敵影を捕捉しました!」

「おぉ~」


 モチがパチパチと手を叩く。


上位チャット:鳥肌

上位チャット:やっぱ声がいいわ局長

上位チャット:さすが局長

上位チャット:俺もここに混じりたい


「了解、モニターをこちらに回してください」

「えっと、こうかな……えいっ」


 トーカの目前に、クヌギが見ていたモニターが転写される。有機的な金属鎧を身に着けた歩兵の群れ。


「ヴァーミリオンフェザー魔導王国の歩兵ですね。こちらも歩兵を出してください!」

「りょ、了解! えっと、えっと」

「カットイン中はゲーム時間止まってるから、ゆっくりで大丈夫ですよ!」

「あっ、そうなんだ?」

「その代わり回数制限があるので、ここぞっ、という時にお願いしますね」

「わかりました! ……歩兵、敵歩兵の迎撃に向かいます!」


上位チャット:めっちゃアニメみたい

上位チャット:配信向けだよなあ

上位チャット:こんなオペレーターが欲しい……欲しくない?


 クヌギが操作すると、ゲーム内の時間が動き出す。がすぐに。


『おおっ、敵を見つけたのだな!』

「ンフッ!」


 おじさん――がCVをしているココア・イースがカットインで喋りだす。


上位チャット:草

上位チャット:草

上位チャット:サキちゃんwwww

上位チャット:突然のおじさんはね


『おのれ~、ヴァーミリオンフェザー魔導王国め! きゃつらはこの砦を狙ってくる! 軍師どの、兵を派遣し、防備を固めるのだぞ!』


上位チャット:おのれ~(棒

上位チャット:がんばりは感じる

上位チャット:真剣さは評価する

上位チャット:普段より設定守ってる


「大丈夫。陣地構築は始めている」

「今回は東方面から攻めてくるみたいなので、そろそろ部隊編成を――」


 カッ! という効果音と共に、サキの顔がどアップで映し出される。


上位チャット:!?

上位チャット:サキちゃん!?


「トーカ!」

「どうしたの!?」

「これめっちゃカッコイイね!」

「………」


 間。


上位チャット:おい

上位チャット:草

上位チャット:貴重な回数がwwww

上位チャット:まあカッコイイボタンだからな


「……え、敵を見つけたとかじゃないの?」

「あたしもこれやりたくって!」

「ふぅー……」

「あ、待って待って! それもなんだけど、なんか変で!」


 サキは手を振って説明する。


「偵察のモニターが消えてなくなっちゃったの! なんで?」

「え? 敵発見の合図もなしに?」

「うん、たぶん?」

「モニターが消えるってことは、視界共有魔法がかかってるユニットが倒されたってことだけど……」


 トーカはユニット一覧を操作する。


「は!? 飛竜が死んでる!?」


上位チャット:あーwwww

上位チャット:やってたな

上位チャット:やっちまったぜ

上位チャット:なんで飛竜?


「もしかしてサキちゃん、飛竜を偵察に……?」

「うん。あれ、遠くまで見えて便利だよね!」

「んあああ……!」


 トーカは頭を抱えて悶えた後、深呼吸をする。


上位チャット:トーカ司令の苦悩

上位チャット:初心者あるある

上位チャット:初見殺しだからなあ


「……飛竜は強いけど、砲兵にすっごく弱いから、砲兵がいるところだとすぐ死んじゃうんですよ」

「えっ、そうなんだ。ご、ごめーん!」

「いえ、私も言わなかったので。それに、分かったこともありますから。敵発見前に倒されたということは、おそらく普通の砲兵じゃなくて」

「飛竜狩りがいる」

「飛竜狩り、ですか?」

「飛竜を一撃で倒せる専用の大砲を持ったレンジャーで、飛竜からは見つけられないんです」


上位チャット:飛竜狩り許せん

上位チャット:卑劣な飛竜狩りを許すな

上位チャット:輜重部隊焼きに行って返り討ちとかあるある


「その代わり移動力が遅くて、飛竜以外には攻撃手段がない。なので――」

「捕まえれば、倒せる」

「サキちゃん、歩兵を派遣して、飛竜が倒されたあたりで山狩りを!」

「うん、わかった!」


 サキが操作し、ゲームの流れが戻る。


上位チャット:サキちゃんがんばれ!

上位チャット:まあまだ飛竜出すコストはある

上位チャット:このステージは飛空船も出ないしね


「どうやら今回は東、西からの二方面作戦っぽいですね。飛竜狩りは1ユニットしか出てこないので、北、東方面では飛竜の使用を許可します。砲兵には気を付けて!」


上位チャット:北は来ないね

上位チャット:モチちゃんの陣地構築速い

上位チャット:まあ飛竜狩り特定できたと考えればね


「東方面、歩兵、接触します!」

「側面から援護」

「さらに後方に砲兵を確認!」


 モニターに銃で武装した部隊が表示される。


「地竜を向かわせてください。あれなら銃弾を弾き返せるので、それを盾にして接近を」

「敵って銃を使うんですね。車も見えます」

「火薬とかガソリンじゃなくて、魔法で動かしてる設定ですね。魔導王国はそういう技術の国なので」


上位チャット:魔法(物理)全振りの国

上位チャット:FFみある

上位チャット:帝国との技術力の差がきつい


「敵、本隊を確認」

「構築した陣地まで引きずり込みましょう。さあ本番ですよ」


 砦へと攻めかかる魔導王国と、トーカたちの指揮する帝国がぶつかり合う。戦闘が続くうちに、モニターだけでなくトーカ達のいる砦の上からも、戦闘の様子が見えるようになった。


上位チャット:迫力ある

上位チャット:Fog of Warって感じするんだよなあ

上位チャット:一人だとモニタ監視つらい

上位チャット:トーカちゃんソロプレイの時10窓とか開いてたのは草

上位チャット:部隊編成がうまい

上位チャット:目立たないけどトーカの後方支援うまいわ

上位チャット:トーカは最高難易度クリアしてるから

上位チャット:これはマルチの方が楽しそう


 戦いは激化する。


「――敵、補給部隊を発見!」

「砲兵は処理してますね。では飛竜を向かわせてください!」

「了解!」


上位チャット:ヒャッハー! 食料・弾薬は消毒だー!

上位チャット:燃やせー!

上位チャット:クヌギちゃんもようやっとる


「はい、はい!」


 サキの顔がカットインで割り込む。


「飛竜狩り、やっつけたよ! やっと見つけた!」


上位チャット:でかした!

上位チャット:やっとか

上位チャット:山狩りはけっこうムズいからな


「意外と粘られましたね」

「それでねー、後ろになんかすっごい大きいのがいる!」

「モニター回してください」


 転写されたモニターに映っているのは、巨大な機械式のゴーレムだった。


上位チャット:ゴーレムか

上位チャット:硬いヤツ

上位チャット:これが飛竜狩りの後ろにいるのズルでしょ


「おお、最大戦力はやっぱりそっちから来ていましたか」

「たぶん3体いるよー!」

「どうする?」

「最大戦力には最大戦力! ココア・イースちゃんの出番です!」


上位チャット:来るぞ!

上位チャット:おじさん!


 トーカが手元を操作すると、時折『がんばれ、がんばれ』などと言って応援してくれるだけだったドラゴン皇女が動き出す。


『うむ、わかったのだぞ! ついに我の出番ということなのだな!』

「ンフフフッ……」


上位チャット:サキちゃんwww

上位チャット:草


『いくぞー! 巫女竜の力を見せるのだ! ドラゴン・チェンジ!』


 ドラゴン皇女が砦から飛び出すと、緑色の巨大なドラゴンに変身して飛んでいく。


上位チャット:おおー

上位チャット:いつ見ても力の入っている変身シーン

上位チャット:愛の詰まったドラゴン形態


『うおおおおー!』

「かわいー! ドラちゃんかわいいねえ!」

「ぽちゃロリさん」


上位チャット:モチちゃんがガチトーンなの草

上位チャット:棒たけび


 緑色のドラゴンが大空を飛び、急降下してゴーレムとぶつかる。爪でひっかき、炎のブレスを吐き、あっという間にゴーレムのHPを削っていく。


上位チャット:つええええええ!

上位チャット:さすが帝国の剣にして盾

上位チャット:ブレスが尻から出ないバグ直して


「やった、ドラちゃんがゴーレム倒した!」

「この調子で奥のゴーレムもやりますよ! 前進!」

『わかったのだだぞ! 巫女竜の力を見せるぅ!』


上位チャット:声ひっくり返ってて草

上位チャット:見せるぅ↑


「ゴーレムを処理できれば、そろそろ敵も撤退を――」

『あーッ!』


 カットインが発生する。プレイヤー側の操作ではない。緑色の巫女竜の顔がアップになる。


上位チャット:あっ

上位チャット:あー

上位チャット:wwww

上位チャット:?


「えっ?」

「ああっ!? しまった!?」

『てっ、鉄のうろこのヤツ!!』


 巫女竜が指すのは、ゴーレムの後ろにいた魔導王国側の補給部隊……の中にある、一台の魔導自動車。


上位チャット:おっと?

上位チャット:やってしまいましたなあ

上位チャット:え、何?

上位チャット:草


『あっ、ああっ、すごい、ドキドキする、のだ~』

「んはッ! うはははは!」

『あァ~! あらがえない~!』


 のしのしと、他のユニットを一切無視して魔導自動車に近づいた巫女竜は、後ろからのしかかる。


上位チャット:wwwwwwww

上位チャット:あらがえない^~、じゃあないんだよwwww

上位チャット:草

上位チャット:確認不足ですな


『はうー。だ、だめ~。見ないで、欲しいのだだぞ。く、くやしい~!』

「だっはっはっはっは!」


上位チャット:草

上位チャット:おじさんのくやしい助かる

上位チャット:こんなんプレイできなくなるwww

上位チャット:カメラはやく回して!


 サキが笑い転げてひっくり返る。ゲームが進行し、残り2体のゴーレムが痴態を無視して進軍した姿を最後に、巫女竜からのモニターは砂嵐になった。


「中央、突破された」

「ああっ、や、ど、どうしようかっ?」


 戦況が悪化し、アタフタとトーカが操作をする。サキは笑っていて使い物にならない。


上位チャット:戦線大崩壊

上位チャット:引き撃ちですかねぇ

上位チャット:おじさんさあ


 混乱の中――クヌギはぽんっ、とカットインボタンを押して、カメラに顔をアップにして、言った。


「これはひどい」


上位チャット:草

上位チャット:確かにwww

上位チャット:局長がんばって


「じゃなかった。どうしますか、トーカさん!?」

「むぐぐ……ッ……ふぅ」


 トーカは深呼吸をして、目を開く。


「コスト的にゴーレムをあと1体倒せば撤退に持ち込めそうです。モチちゃん、クヌギちゃん、本拠地と東方面はお任せします。耐えてください」

「りょ、了解!」

「トーカは」

「サキちゃんと一緒にゴーレム狩りです! 失態は取り返してみせます!」


上位チャット:流れ変わったか?

上位チャット:ここからゴーレムは無理じゃね?

上位チャット:もうカットイン回数も残ってないしなあ


「サキちゃん、この歩兵部隊だけ任せます! ゴーレムと戦闘を開始したら、攻撃される前にすぐ撤退命令を出して、それからまた前進させるのを繰り返してください。撤退、前進、撤退、前進です!」

「わわわ、わかった!」


 ゲームの時間が流れ始める。


「えっと、撤退……で前進、わ、撤退! これ忙しい!」

「いいよ、がんばって!」


 サキがゴーレムを引き付ける後ろで、トーカが弓兵を動かして遠距離から攻撃し、後ろでバリケードを作り、そのさらに後ろで櫓を建てはじめる。


「飛竜のコントロールもらいます!」

「て、敵が多いっ」

「落ち着く。できる」


上位チャット:がんばれ!

上位チャット:操作量やば

上位チャット:間に合うか?

上位チャット:東への支援も切らしてないのすごい

上位チャット:手の動きがやばい


「あわわわわ、ごめーん! 殴られちゃった!」

「まだ大丈夫、落ち着いて!」


 ゴーレムに殴りつけられ、サキの歩兵の半分が吹き飛ぶ。その後ろから飛竜が駆けつけ、一発炎を吐いてから引いていく。弓兵が位置を取り直し、バリケードを作り終えた工兵が櫓の建設に合流する。


「地竜やられちゃいました!」

「トーカ、補充」

「ごめん、これ以上は回せない……なんとかならない?」


 東方面を支えていた地竜が倒れる。モチの要請にトーカが苦々しく首を振ると──モチは親指を立てた。


「任せて」

「うん、任せた!」


上位チャット:熱い

上位チャット:頼むぞモチーチカ!


 戦闘が続く。砦の眼前まで迫る敵軍を、モチとクヌギがなんとか戦線を支えて退け続ける。トーカがいくつもの画面を同時に操作して、そして──


「あっ、トーカ! ゴーレムが!」


 サキの歩兵に引きつけられながら遠距離攻撃を受けていたゴーレムが、ついに崩れ落ちる。


上位チャット:おおおおおお!

上位チャット:やったか!

上位チャット:すげえ

上位チャット:マルチならではの作戦


「やったー! 勝った!?」

「……まだです。もう少し敵軍を削らないと。サキちゃん、次のゴーレムも引きつけて!」

「わ、わかった!」

「モチちゃん、クヌギちゃん、そっちの援護に回ります! 撤退に追い込みますよ!」

「了解です!」


上位チャット:行けるぞ!

上位チャット:みんな頑張れ!

上位チャット:持ち直したのすげえ


 戦闘は激化する。サキは悲鳴を上げながら最後のゴーレムを引き付け、モチの指示を受けたクヌギが兵を動かし、トーカが支える。そしてついに──戦闘の流れが止まった。


『おおっ、やったのだぞ!』


 いつのまにか人間形態に戻っていた皇女が、カットインウィンドウを開く。


『敵国が引いていくのだ! 軍師どの、やったなのだぞ!』

「や、やったー! ひぇ~……」

「た、助かったぁ……」


上位チャット:やった!!!

上位チャット:おめでとう!!!

上位チャット:みんながんばった

上位チャット:これでステージ1という鬼畜さ

上位チャット:もしかして:トーカ、いつもの難易度選択

上位チャット:言わなかったけどたぶんハードだよこれ


 ぐったりとするサキとクヌギ。


 左右を見渡し、モチはトーカを振り返って、問いかけた。


「……次?」

「やりますか!」

「いやいやいや、もう無理、もう無理だからぁ!」

「せ、せめて休憩をお願いします!」


上位チャット:草

上位チャット:ガチ勢元気すぎwwww

上位チャット:もうサキちゃんのライフは0よ!

上位チャット:さすがに次回か

上位チャット:局長お疲れ様です!

上位チャット:次回に期待!


(後略)

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