第42話 2016年 ミチノサキ
ミチノサキ 単語
ミチノサキ
ミチノサキとは、ミチノサキプロジェクトというVtuber事務所によって運営されるバーチャルYouTuberである。
|概要_____
金髪ツインテールに青バラモチーフのシュシュをつけた、パンクロック風のかわいい女の子。いろんなところがベルトで締めつけられているがたぶんMではない(ある)。ミニスカだったりノースリーブだったりと隙だらけの衣装だが最も隙だらけなのはおっぱい(本人談)。
|これまでのミチ_____
2015年1月8日に初動画でYouTubeデビュー。先駆者の彩羽根トーカ以来の3Dの美少女アバターを使ったバーチャルYouTuberとして注目を集める。しかしながら当時はトーカの二番煎じと評され、また独自性も出せていなかったためチャンネル登録者数は伸びなかった。
8月に同じ事務所からマネージャーのアバタ(別記事参照)が登場。この頃から動画にアドリブが増え、中の人の奔放な一面が垣間見えるというか丸出しになっていくようになる。そのハイテンションな動画がTwitterなどで拡散された結果、独自のファン層を獲得していった。
|コラボ配信のサキがけ_____
2015年12月18日、当時衝撃的なデビューを果たしたバーチャルぽちゃロリドラゴン皇女Youtuberおじさんと、動画内で通話によるコラボを実現した。バーチャルYouTuber同士のコラボはこの放送が初。攻めのサキとタジタジのおじさんの組み合わせに視聴者は大いに湧いた。
また2016年2月18日には同事務所のアバタと(ようやく)初コラボ動画を公開。ミチノサキの代名詞といえた「大丈夫? ヨシヨシする?」が、「大丈夫? おっぱい揉む!?」に進化した日となった(アバタは当然のようにスルー・虚空送りにした)。
|リアルとの融合_____
2016年4月16日には、ニコニコ超会議の企画「バーチャルトークタイム」に出演。並み居るVtuberの中でトップバッターを任され、話をしにきたファンにとにかくおっぱいを揉まそうとした(高価な透過ディスプレイはもちろんおさわり禁止である)。
そして2016年8月24日、ついにリアルの会場を押さえてのファーストライブを開催する。
|はじめての友達、彩羽根トーカ_____
「サキライブ2016〜この未知の先へ〜」と銘打たれたライブで、サキは圧倒的な歌唱力で観客を魅了した。司会にはアバタの中の人が兎マスクをかぶってアバターに扮して立ち、MCでは様々なVtuberたちからのお祝い動画が流れるなど、Vtuberファンにとって見所満載のイベントとなった。特に最後に他のバーチャルYouTuber四天王からの動画をまとめて再生したところは観客も大いに盛り上がる。しかし人類はまだ知らなかった。本当のてぇてぇはこれからだということを。最後の最後で彩羽根トーカのお祝い動画が再生されるも、何故か成立する会話。次の瞬間、トーカはステージに舞い降りた。
初めてのコラボとなる邂逅の中、二人はお互いの境遇を語り合う。バーチャルの世界で待っていたトーカが「友達になってくれる?」と聞き、サキは「友達になろう? (もう)なってるね!」と応え、ここにVtuberの友達が一組誕生した。トーカはお祝いにとライブの曲をピアノで弾き、サキがそれに合わせて歌うパフォーマンスを見せた。
|パーソナル_____
動画投稿を主として活動する。明るいゲラゲラ笑いと明るいシモネタが交互に飛んでくるスタイル。動画は企画系が主で、ゲーム実況は時々行うもののドがつく下手くそ。しかしながら負けず嫌いもあって、対戦には果敢に挑んでいく(そして負ける)。
特技は歌。趣味はアニメ鑑賞とエゴサ。ファンアートはかなりの高頻度で巡回している模様。たまにセンシティブなイラストにいいねを誤爆している様子が発見され、ファンに報告されている。
|関連項目_____
ミチノサキプロジェクト
世界初男性バーチャルYouTuberマネージャーアバタ 同僚
大丈夫?おっぱい揉む!?
バーチャルYouTuber四天王
:
:
◇ ◇ ◇
【2016年8月 ヴァレリー・ローズ・ムグラリスの視点】
トーカのピアノ伴奏をバックに歌いきり、トーカが去って、観客に最後の挨拶をして、システムが落とされて――ヴァレリーは暗い部屋の中で膝から崩れ落ちた。
「うぅ……うぇ゛っ……ぐすっ……」
「……ヴァレリーさん?」
マスクを取ったタスクが、汗だくのままヴァレリーの側による。
「ヴっ……あ゛ばだざん……」
「……ええと、何かあったんですか? 怪我、とか」
「ちが、違うの」
ヴァレリーは涙を拭って首を振る。けれど涙は次から次へと溢れてきた。
「うれしくて」
「……そうですか」
「みんなが、サキのことあんなに応援してくれて」
観客たちは手がちぎれんばかりにサイリウムを振っていた。ぜったいあれは筋肉痛になる。
「仲間だって、言ってくれて」
バーチャルYouTuberたちからの応援動画は、「同じVtuberの仲間が」とか「頑張ってきた仲間として」とか、サキを身内として祝ってくれた。
「それに、それに……」
トーカが、テルネだった。
やっぱりあたしの幼馴染の親友はすごい。何も教えていなかったのに、しっかり見守ってくれていた。
忘れられようとしていた不器用な優しさは、よく考えたら自分だって仕事を明かせなかったのだから一方的に言えたものじゃない。
それにそんなこともうどうでもいい。テルネとヴァレリーは、トーカとサキとしても友達になったのだ。普通の友達の2倍は強い。こんな関係、あたしとテルネだけの特別だ。
「あのー、サキちゃん。携帯なってるッスよ」
「あ、うん……はい」
スタッフがスマホを持って、困惑しながらやってくる。ヴァレリーはスマホを受け取り――知らない番号だったが出た。予感がしたのだ。
「もしもし! ヴァレリーです!」
『知らない電話番号に名乗って出るなバカ!』
ヴァレリーは涙を止めて、顔を輝かせる。
「アバタさん! ちょっと電話してくるね!」
「えっ、ちょっ、着替え」
「後でね!」
通話を邪魔されたくない。ヴァレリーはスキップしながら部屋から飛び出した。
「久しぶりだね――テルネ!」
◇ ◇ ◇
【2016年8月 西端匡の記録】
タスクがようやくヴァレリーに追いついたとき。
「……あの」
ヴァレリーは、スマホを前にして土下座していた。
「何してるんです……?」
「……反省……」
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