暗黒期
第12話 2011年 おじさん、始める
【2011年3月18日】
「こちらです」
車を降りた俺は、不動産屋の人間に案内されて足を進めた。
周囲を木々に囲まれて孤立した丘の上は、もう建築現場と言う言葉は相応しくなくなっていた。切り開かれた場所に建つ一軒の家と、それに併設された倉庫、そして箱型の建物。
俺の家……彩羽根トーカのスタジオだ。外からは出来上がっているように見えるが、内装がまだ終わっていない。今日はその進捗を見にきた。
「こちらでも先日、一通り検査はやり直しましたが」
不動産屋の営業は、ぐるりと建物を周りながら説明する。やたらと設計に口を出したからか、扱いが丁寧なんだよな……ちゃんと金は出してるから、上客だと思われていて欲しい。クレーマーだと思われていたら嫌だ。
「ハスムカイ様が耐震性にこだわられておりましたので、そちらが功を奏した形ですね。どこにも問題は見つかっておりません。頑丈なものですよ」
「……そうですか」
確かに建物や基部にひび割れは見当たらなかった。
「ただ家には問題がないのですが、スケジュールがですね……」
「おう、お嬢さんがこの家の施主か?」
一周し終わると、営業が歯切れ悪く何かを言い出し始めて……言い切る前に、髭面のおっさんが近づいてきた。
「そうですが、あなたは?」
「ああご紹介します。内装工事を担当されている会社の現場監督で――」
「クマガイだ。よろしくな」
髭面のおっさん――クマガイはニカッと笑う。
「いやぁ、こんな家を建てるからどんな変わりもんかと思ったが、かわいい嬢ちゃんじゃないか」
「クマガイさん、そういうのは……」
「ははは、ちと顔色が悪そうだけどな。しかしね、仕事を受けたときは心配性が過ぎると思ったが、実際に起きてみると備えて悪いこたないなと思ったよ」
クマガイはしみじみと言う。
「東北であんなことがあっちゃなあ……」
2011年3月11日。東日本大震災。それからまだ1週間。
「こんな個人宅に自家発電装置なんて必要か? と思ったもんだが……あのレベルの地震がここを直撃したら、何があるか分からねえもんなあ」
人々は口を開けば地震の話をする。
「ま、この家はしっかりしてるし大丈夫だ。あの日もここで仕事してたけど、怪我人は出なかったしな。念のため引き上げたが、そのまま仕事を続けても良かったかもしれねえ」
「クマガイさん、その話ですが、スケジュールは……」
「おう、優先してやってっからよ。ちゃあんと引き渡し日には間に合うように仕上げるぜ」
営業が露骨にホッとした顔をする。
「ところでよ、お嬢さん。ここは何かのスタジオなのかい? やけに立派な設備を揃えているが……あんな広い防音室とか初めて見たぜ」
「あぁ……えっと」
またか。まあ気になるだろうが……あまりここで何かの収録をしていることは公にしたくない。なのでこういうときのために言い訳を用意している。
「実は……弟が精神を病んでいまして。音に敏感なんです。だから外の音に影響されずに、大声を出してもいいように……――」
◇ ◇ ◇
【2011年4月】
「これで、晴れてここは私の家ってわけだ」
不動産屋から受け取った書類や鍵を机の上に放り出し、俺は椅子に座る。
真新しいダイニングに、真新しい家具。いかにも新築って感じだ。これで俺も一国一城の主ってやつか……。
「なんか、不動産屋の人が僕を見る目がおかしかった気がするんだけど?」
「気にするな」
初めて顔を合わせた悪魔に、不動産屋の営業は可哀想なものを見る目をしていた。まあ、俺の容姿でこの言動だもんな……完全にどこか病んでると思われただろう。うん、カモフラージュは完璧だな。
「まあいいけど。やあ、それにしても顔を合わせるのは久しぶりだねえ」
悪魔は気持ち悪い笑顔を浮かべる。
「しばらく見ない間にずいぶん……ボロ雑巾に似てきたじゃないか」
「うるさい」
誰が机の奥に仕舞われてる腐った雑巾だ。くそ……そっちは血色がいいし、シャレた服に着られてるじゃないか。こっちのくたびれたスーツと交換するか?
「この5年、どこで何してたんだい? 生存報告のメールはもらってたけどさ……社宅、とかいうボロアパートからはいつの間にかいなくなってたし、両親も心配してたよ」
「……ブラックを舐めてたよ」
2006年、俺は前の世界と同じ会社に同じルートで入社した。なるべく世界に影響を与えたくない……という理由もあったが、もう一つの打算もあった。
人生2周目なら、ブラック企業でも余裕じゃね? と。
実際、最初の頃はよかった。会社から近いボロアパートに強制的に引っ越しさせられると分かっていれば事前に準備もできるし、上司の罵倒のレパートリーを覚えていれば心に余裕もできた。仕事内容だって同じようなことをするなら楽勝だと。
実際楽勝だった。特に新人研修という名の洗脳ブートキャンプは実にうまくやり過ごせたと思う。前の世界ではうまくいかなかったが、今回は鍛えた演技力でうまく洗脳されたフリができたし。
ところが、仕事を始めてから少しずつ目論見通りにいかなくなっていく。俺の要領がいいのが分かるとさらに業務をぶち込まれるようになり、パワハラだけじゃなくセクハラもされるようになり……トドメは住宅ローンを組んだことがバレてからだな。
「ローンがあると分かったら、各地を転々と転勤させられたんだよ。いろんな現場に放り込まれて……見ず知らずの人間に罵倒されながら仕事して……一週間で3回転勤したこともあったな……分かるか? 週に3回の引っ越しだぞ?」
「なるほど、ボロ雑巾になるわけだねえ」
「ああ、思い知らされたよ……私なんて根っこはただの暗くてなんの役にも立たないおじさんなんだって……学生時代も単に年下相手にイキってただけのコミュ障陰キャだったんだなって……」
「そんなに?」
準備してきたのは芸能関係のスキルと、Vtuberに特化した技術だけだからな。ブラック企業の仕事にはなんの役にも立たん。むしろ前の世界と同じようなミスをしそうになったりして、中身なんにも変わってないなと実感した。
「これまでに勉強したスキルを活かす仕事をすればよかったのに」
「……Vtuberとしてデビューした後に、そのスキルでの経歴を漁られて身バレしたら元も子もないだろ……」
「……そこはずっと徹底しているんだねえ。ある意味頼もしいよ。それじゃあ、ようやく動き始めるのかい?」
「ああ……ちゃんと退職できたしな、後顧の憂いはない」
まあ退職したの今日だけど。引き継ぎはちゃんとやったぞ? あのブラックで引き継ぎちゃんとやったの俺だけじゃないか? 頑張れよ、後任……今にもやめそうな顔してたけど……。
「スタジオ兼自宅は用意した。まだまだローンの支払いは残っているが……とにかく、状況は整いつつある」
ブラック企業に忙殺されていただけじゃないんだ。バーチャルYouTuberになるための材料は揃いつつある。
「まずは既に作り上げている、メインの3Dモデルアバターだ」
これは無料の3Dモデリングツールなどを使用し、仕事の合間を縫って作った。有料のソフトを使っても良かったんだが……維持費が高いので、気合を入れて食らいついた。いいんだ。後世では超有名アニメスタジオも採用するんだし。
「3Dモデルを作るのは時間がかかるからな……別衣装とか小物とか、たっぷり用意しようと思ったんだが……まあ、それは追々なんとかする」
月月火水木金金のスケジュールでは、なかなか時間がとれなかった。まあ、三日ぐらい寝なくても人間死なないことは知ってるから、なんとかなったが。
「アバターを動かす仕組みにはKinectを採用した」
去年末に発売されたXbox 360の拡張機器、Kinect。深度センサー付きのカメラを使い、プレイヤーの動きを取り込んでゲームに反映する機械だ。当然Xbox 360専用機器だが、これをハッキングしてPCで使う試みがすでにネット上のギークどもによって成されている。
まあ来年まで待てばマイクロソフトが正式にSDK、ソフトウェアデベロップメントツールを出して開発をサポートしてくれるんだが……それじゃ間に合わないので、ド深夜にヒイヒイ言いながらハッキングに勤しんでいた。最近何とか形になり、アバターが動かせるようになった。
――実は夏まで待てば同じ機能を持ったソフトも有志によって開発・公開されるのだが、やっぱりそれも間に合わないので自作だ。未来を知ってるが故のフルコミットでズルして先に行った感じだな。
「アバターの表情の切り替えだが、FaceRigという人の表情を読み取ってアバターに反映するソフトは3年後ぐらいからなんだ。だからスイッチを使って切り替えるしかない」
「何かしらで操作するってこと? で?」
「この時代でもBluetoothの無線コントローラーは色々あるんだが、ここは先人にあやかってWiiリモコンを使う」
任天堂のWiiは2006年発売だけあって、すでにリモコンのPC利用に関する知見は得られている。軽い片手用のコントローラーとして考えるととても優秀なデバイスだ。
「そしてアバターが動いている画を作り出すのが、Unityだ。後年になればそういうアセットも増えて行くんだが、今私のやりたいことを実現するためには自分でコードを書く必要があった」
個人利用なら無料のゲーム制作汎用エンジンのUnity。来年のバージョン4が待ち遠しい。
「君がプログラムの才能が欲しいって言ってた理由ってわけだ」
「2017年とは状況が違うからな……Ami Yamatoが2011年に出てこないならもう少し待ってもよかったんだが」
「Ami君も似たようなシステムを組んでるんだ?」
「いや、彼女は厳密にはVtuberじゃないし、どちらかというと3Dアニメーションの技術なんだ。おそらくだがモーションは手付けで、リアルタイムに取り込んでないぞ」
表情とかもな。アートって感じだ。
「……それなのに彼女より先に?」
「やれるなら、何事も一番乗りの方がいいだろ?」
材料は揃っているんだ。
「カメラもマイクもある。ゲーム実況がやりたきゃキャプチャボードだってある。動画編集ソフトももちろんある。アバターを動かす仕組みも作った。動画サイトやTwitterのアカウントも確保した。バーチャルYouTuberは2011年から始められる!」
「いいねえ」
悪魔はキザったらしくゆったりとした拍手をする。
「それじゃ、早速始めるのかい?」
「……いや。もう少し待つ」
「ええ? なんでさ!?」
「……時期が良くない」
気が重い。空気が重い。2回目だというのに。
「震災があったろ。報道もまだそれが中心だし、今はそういうムードじゃない」
「ああ、そんなこともあったねえ」
「……気楽でいいな、お前は」
俺は……別に直接的に被害にあったわけでも、知り合いが被害に合ったわけでもない。前の世界と同じで、関わりは少ない。だが、前と違うことといえば……知っていたことだ。
「地震が起きるのを知っていて、それを見ているしかなかった。……分かってるんだ。それは別に私の役目じゃないと。知っていたところで何ができる? 地震の未来予知でも主張するか? 上手くいくわけがない」
「いきっこないだろうね。君の話なんて誰も信じないし、被害の起きた地域からすべての人たちを避難させるなんてことも不可能だ。単純に数が多すぎるからね。もしかしたら被害は減らせたかもしれないけど、あくまで減らせた、だ。ゼロにはならないよ」
「分かってる。そんなことしたらバーチャルYouTuberの親分なんてやってられなくなることも。だから……忙しさを理由にして忘れてた。忘れるようにしていた」
けれど陰キャのおじさんは考えてしまうんだ。突然天からすごいアイディアが降ってきて、未来の知識で何もかもうまくいくなんていう妄想を。
「……私は……私にできることをやる。私がやりたいことをやる。私が……」
俺がVtuberに救われたように、誰かの光になるんだ。それが俺のやることだ。
「……デビューは5月の連休中だ。その頃なら不謹慎とも言われないだろう。それまでは……もう少しモデルとか、あとは曲も作っておくか。待機画面用の」
「5月ね……」
悪魔はスマホをいじる。
「ま、僕は12月までは勉強の日々だからね。ネット上から見守っているよ。たまには顔を見に来るけど」
「来なくていい、来なくていい。さっさと帰れ」
「いや、さすがに今日は泊めていってよ……ここ、僕の家でもあるよね……?」
◇ ◇ ◇
【2011年5月】
「おおい、生きてる?」
勝手に玄関の鍵を開けて中に入ってきて、電気がつけられる。
「うわっ、こんなとこにいたの。何やってんのさ、君」
「……べつに」
俺はダイニングのテーブルに貼りついていた頬を剥がして、身を起こす。
「なんだっていいだろ。お前こそ、なんで来たんだよ?」
「もうゴールデンウィークも最終日なんだけど?」
「それが?」
「デビューだよ、デビュー! 君のYouTubeチャンネル、全然動きがないじゃないか。それで心配して見に来たっていうのに……何やってるのさ?」
悪魔はずかずかとこちらに寄ってきて、テーブルの上のノートPCを開く。
「あれ? なんだ、準備できてるじゃない」
「……撮影も編集も終わってる」
初回の自己紹介動画も撮ったし、毎日投稿するための一週間分のストックもできている。準備は万端だ。
「この自己紹介動画を公開したら……始まる。バーチャルYouTuber彩羽根トーカとしての活動が」
「それじゃあなんで公開しないんだい? 連休中に始める予定だっただろう?」
俺の指はあとワンクリックで動画を公開するところで止まっていた。
「さっさとやろうよ。ずっと待ってたんだからさ」
「……公開したら、もう後戻りはできない」
指が動かないんだ。
「………」
「何をためらっているんだい?」
「……嫌だ」
「は?」
「嫌なんだよぉ!」
画面がにじむ。
俺はノートPCを乱暴にどけると、感情のままに机を叩いた。
「えぇ……? 何が?」
「何が、じゃあない。私はVtuber全推し勢だぞ! Vtuberが好きだしずっと応援してきてた! Vtuberたちの輝きや尊さといったら……それが……それが」
分かっていた。そうすると初めから決めていた。でも――いざとなると、嫌なんだ。
「私が出てくることで、推しの運命が変わってしまうんだぞ……?」
Vtuberになることで夢をかなえた人がいる。Vtuberになることで幸せになった人がいる。新しい関係が生まれて、出会うはずのなかった人たちが友達になって。それが……私の出現ですべて狂ってしまうのだ。そのうえ。
「私の好きなものがもう二度と見られなくなるんだ。これ以上悲しいことなんてあるものか。親分四天王岩本町芸能社にじさんじ天魔機忍verGメディカルテットばかよしホロライブENTUMアイドル部upd8個人勢企業勢全部全部全部だ!」
「後半のは何かの呪文かい……?」
「もう見れないんだ……推したちのてぇてぇコラボも、未来永劫実現しないんだ……」
「……えーと、そんなに嫌なら」
悪魔は引き気味に言う。
「そういう人たちが出てきてから混ざりに行ったら? 正直あと6年も待つのは退屈だけど、ここまで待ったなら別にいいかなって思うよ」
「推しの間に割り込むモブになんてなれるかよ! 関係性を台無しにする気か!」
「えぇ……?」
はぁ。この悪魔は何も分かっちゃいない。
「……Vtuberを始めるならもう、今しかない。私の推しがVtuberを始めようなんて思うよりも前に」
「よく分からないけど、やるならさっさと始めなよ」
「分かってる」
やると決めたときに決別は済ませた、はずだった。
これは最後の愚痴だ。……まったく人生二周目なんてやるもんじゃない。
「分かってる……大丈夫だ、やるさ、私は。そもそも私だって普通の人間だからな。ようやく作品を世に出せるのだと思ったら喜びもある」
人並みに自己顕示欲は持っているのだ。絵だって訓練のために数え切れないほど描いてきたが、前世特定を避けて何一つ表に出して評価を得ることはなかった。それが、これからは人の目に触れるようになるわけだから……緊張するな。
「普通の人間ねえ……まあ、やる気になってくれたようで何よりだよ。やっと進展するわけだ」
「ふん、そんなのんびりしたこと言えなくなるぞ」
俺はフンッと胸を張る。
「自分で言うのもなんだが、彩羽根トーカは可愛いからな。すぐに人気が出て、バンバン後続が出てきて、コラボとか案件とかの調整で忙しくなる。前々から言っていた通り、リアル側での打ち合わせはお前の仕事だからな」
彩羽根トーカの中の人を知られるわけにはいかない。
当初の計画通り俺が完璧な女声の出せる男だったら、正体を隠しつつ自分でマネージャーもできたんだが……女になってしまったからな。
「ああ、そういう話もあったね」
「お前な」
「わかってるよ。そいつは僕のうっかりだからね、それぐらいの仕事はするよ。苦労に見合う内容だといいけど」
「なーに、金ならすぐに稼げるようになるさ」
先月、YouTubeは広告収入をチャンネル所有者が得られるパートナープログラムを一般開放した。彩羽根トーカならすぐに登録者数も集まって、審査にも通るだろう。
「初期のパートナープログラムは払いが良かったと聞くし、ローンもすぐに返済して新しい機材とか設備投資ができるようになるに違いない。ゆくゆくはVtuberイベントの遠征費用にグッズ費用、スパチャ代……懐を気にせずバンバン赤スパ飛ばせるぞ!」
「景気がいいねえ」
「覚悟は決めた。さあ……やるぞ!」
俺はマウスを引き寄せ、指をかける。
ポイントオブノーリターン。クリックボタンが重い。だがもう、引き返さない!
「彩羽根トーカの新章の始まり、そしてバーチャルYouTuberの夜明けだ!」
◇ ◇ ◇
【はじめまして】彩羽根トーカです、よろしくね【自己紹介します】
「こんにちは、人類。
真っ白い背景に現れる、一人の少女。短い髪を頭の後ろで大きなリボンでまとめたその姿は、前から見るとまるでリボンがインナーカラーのようにみえる。やや明るめの黒髪に、見る角度によって紅から赤に色を変えるリボン。
「彩る羽根に、カタカナでトーカです。今日はぜひ、人類に名前を覚えて欲しいなって思います」
ふわりとした動きで、後ろ手に手を組む。体の線に合うように拵えられた衣装は、スラリとした印象を与える。
「私はリアルにいる人類と違って、バーチャルの住民です。これまでそちら側に干渉するすべがなかったんだけど、技術の進歩によって、こうして挨拶できるようになりました」
にこり、と表情がかわる。
「これからどんどん、動画を投稿していきますね。つまり私はうぷ主? YouTuber? うーん、こうして素顔を晒しているわけですから、YouTuberの方が近いかもしれませんね。バーチャル世界のYouTuber、バーチャルYouTuber!」
両サイドの頬にたれた髪は蝶の羽根をモチーフにしたリボンが上の方についている。左側だけ髪が編み込まれていた。
「なんで私が動画を投稿するかというとですね。まずはじめに、人類に知ってもらいたかったからです。バーチャルのこと、私のことを」
ぴったりとした長袖のカットソーにスリーブレスのパーカーを重ね着、右手首には羽根をモチーフにしたリストバンド。
「そして次に、こんな可能性があるんだぞってことを伝えたい。バーチャルだったらいろいろできるぞって」
ハーフパンツの下にニーソックス、絶対領域は見えない位置に。靴はハイカット、靴紐が羽根のようなブーツ。
「そして最後に、同じバーチャルの友達がほしいんです。だってほら、ここ、白い! 何もない! ねえ! 手抜きじゃないんですよ、スペック、電脳世界のスペックがね、重くなっちゃうからなんですけど」
ぐるりと回って全身を見せつつ、主張する。
「とにかく、この私がいる空間に、バーチャルの友達を呼ぶこと──それが最初の目標です!」
控えめに主張する胸に手を当てて、トーカは言う。
「あっ、もうこんな時間。私を見つけてくれてありがとう、人類。チャンネル登録してくれると嬉しいです。それじゃあ、次回の動画でまた会いましょう!」
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