第3話:戦線が動く
<光秀視点です>
「(斎藤)利三。元親殿が押されているな」
利三の所縁の娘が元親に嫁いでいる。
その縁で、此度の合戦に参加してもらう事が出来た。
「御意。越後の龍が本気になれば一両具足では敗走でしょう」
そこまではならぬか?
ここで総攻撃をするはずがない。まだまだ織田軍が無傷で控えている。
だが。
それもあと半刻後には……
「準備は良いな」
「しかし殿。あまりにも無謀にて」
「くどい! この時を逃して、あの第六天魔王をいつ倒すのじゃ」
この戦。ワシが動かす。
天下を取ることは二の次。
帝と公方様の下で天下を静謐にする。
今はこれだけじゃ。
そこからワシの天下取りは始まる。
◇ ◇ ◇ ◇
<秀吉視点です>
「おんみゃあ、起きて大丈夫だぎゃ?」
先ほどまで寝ていた半兵衛が少しだけ明るい顔になって儂のもとへ近づいてくる。
(方言省略w)
「はい。このおかげで命永らえておりまする」
半兵衛が茶色い小瓶を差し出す。
見知らぬ文字が書いてあるが、仮名文字はチオビンタAと見える。
あの異形の医者が置いて行ったものだ。
「エナドリ」とか言うておった。
「そうか。無理をするな。こちらは官兵衛がいる故、ゆっくりしておれ」
「ありがたきお言葉。されど風がにおいまする。それも二つ」
「なんじゃ?」
半兵衛は上杉武田勢の方と、松尾山の明智勢を指さす。
「このまま無策であの二人の英雄が、消耗戦をするとは思えませぬ。必ずや手を打ってくるかと」
「どんな手じゃ?」
「某の考えるには、島津の得手、釣り野伏」
ははぁ。あれにはしてやられたわ。
織田家の別動隊がこてんぱんにやられた。
「それでどうするよ?」
「義弘殿に使いを。あれを破る手はあの方が一番よく知っておりまする故」
「そうじゃな。それが一番よ。で、もう一つは?」
「光秀殿の謀反」
なるほど。
ここでやるか?
わしはもう少し、自分が天下を握れる機会が少しでも多い時にやると思っていたが、私事よりも公を選んだか。
あいつらしい。
「半兵衛。ここで明智勢への備えを。市松(福島正則)や虎之助(加藤清正)はいるか?」
「いえ。かの者は大事な旗本。殿のおそばに。ここは宮部殿と蜂須賀様に任せて、精鋭をもって無傷の北条勢に向かうのが上策」
では島津勢の出方次第か?
「ところで官兵衛。東の毛利勢はどう動く?」
中国方面に詳しい黒田官兵衛に聞く。
「多分動きませんな。日和見です。吉川勢だけ戦わせ、西軍に恩を売り、本来なら東軍の後方を衝けるのにそれをしなかったことで、東軍に恩を売る」
元就の奴。
噂通りの汚ねぇ奴だ。
地図です。
https://kakuyomu.jp/users/pon_zu/news/16817330652491162284
◇ ◇ ◇ ◇
<信長視点です>
「申せ!」
「はっ。
やはり荷が重すぎたか。
まあよい。少しでも上杉勢の勢いを削げたのなら意義はある。
「後退して馬防柵の中へ。後退支援を秀忠と勝家に伝えよ」
「申し上げます。羽柴様より言上が」
「なんじゃ?」
「敵に釣り野伏の兆候ありと」
眼下の戦場を見る。
その様なものは見当たらん。
だが!
元親の奴、付け入られたか!
後退に合わせて越後勢が前へ出て、敵味方入り乱れる。
長柄など関係ない。
手槍と太刀のみの戦い。
ぱんぱんぱん!
?
上杉勢、手筒を使いおるのか!?
一気に長曾我部勢が崩れた。
そのまま馬防柵へ突進する上杉勢。
北の立花勢に少数の手当をして、わが本陣へ突っ込んでくる。
ええい、味方が邪魔で鉄砲が撃てぬ。
「義弘に伝えよ。南から横槍。上杉勢を押し戻せ」
◇ ◇ ◇ ◇
<島津義弘視点です>
越後のもんはようやる。
薩摩ほどではないにせよ、死をもいとわぬ戦いぶり。誠に天晴じゃ。
可愛いのぅ。
付け入り方もうまい。
噂にたがわぬ采配ぶり。
だが織田の火力の前で、どれだけ立っていられる?
薩摩も火力と兵力に屈した。
九州の東西から攻められ、どちらへ戦力を向けても別の軍勢が前進してくる。
兵力が圧倒的なるは奇道に勝る。
此度も三万の本陣を抜くことは出来まい。
さてこちらはどうする?
「義弘さま。織田殿と羽柴殿の使いが」
ふむ。
織田殿からは多分、上杉の左翼を衝けであろう。
では羽柴殿は?
文と言上を聞く。
釣り野伏を仕掛けてくるか。
この上杉勢の猪突猛進はこれが狙いか。
吉川勢も後退して、武田に付け入られ始めた。
全戦線が動いた。
南では羽柴勢と北条勢がぶつかり始めたな。
ここで火力にひるんで後退した上杉武田をお味方が追い始めると危険だな。
だがそこがこの戦を決定づける機だともいえる。
「豊久。お主に
大事な打ち合わせじゃ。
この程度の仕事は豊久だけで十分じゃ。
薩摩勢の半数、五〇○○が上杉勢の左翼を衝いた。
完全に上杉勢の前進を止めたのはそのすぐ後だった。
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