第6話 変わらない一生懸命さ
名前は釜本司。不登校の児童。
原因は不明。とても活発だったのにある日突然来なくなってしまったという。
「楽しそうに演劇やってたんだけどね。」
きのっぴはとても残念な表情で下を向く。
「他の子に聞いても知らないって言うし、本人に会いに行っても理由を言ってはくれないんだよね。」
「そっか・・・。」
東京の劇団でいじめや不登校を扱った題材を書いたことはあったが、こうして現実で触れるのは初めてだった。
「だからね、もしトウ君が良かったらなんだけど、今度一緒にその子の家について来てくれないかな。」
「え?」
「私ではどうしていいかもう分からなくて。他の先生に頼むのも、ほら、司君が”他の先生にまで伝えわってるんだ”って思うかもしれないじゃない?そしたら外部の人間の方が逆に司君も心を許してくれるんじゃないかって思うの。」
「・・・。」
いきなりのお願いに返答に戸惑う。
「それに司君、一番演劇楽しそうにやってたから。トウ君と話せたらうれしいんじゃないかなって。」
「・・・。」
きのっぴが言ってる事はだいたい理解できた。
けど・・・相談にはのるって言ったけれど、あまりにも、でもある。それにいきなり不登校児の所に行って話がややこしくならないだろうか?という心配もある。
「お願いできない?」
きのっぴが不安そうな顔でこちらを見てくる。
「・・・いや、だめって事はないんだけどさ。」
「本当?!ありがとう!」
「いや、ちょ、ちょっと待って。俺は良くてもさ、ほら、その司君だって、ご両親だっていきなり知らない人間が来たら驚くでしょ。」
「それは大丈夫。司君のご両親はトウ君の事は知ってる。司君の様子を伺うためにこまめに連絡してるんだけど、その時にこういう人が来たんですって伝えてるから。」
「・・・そっか。」
「だから、ね。トウ君に解決して欲しいなんて無責任な事は思ってないから。」
きのっぴがこちらに向かって手を合わせている。なかなか断りずらい雰囲気だ。
「・・・分かったよ。けど、役にたたないかもしれないよ。あんまり期待しないでね。」
「大丈夫!一緒に来てくれるだけでありがたいから。ありがとう!」
きのっぴが笑顔になる。
この時ちょっと高校時代の事を思い出した。
何かに一生懸命になる――――――。
きのっぴは全然変わっていない。居酒屋で俺を演劇部に誘ったのもそうだけど、きのっぴのこの高校時代から変わらない一生懸命さに俺は好きになったのだ。
「じゃあさっそく明日の放課後一緒に行ってもらっていい?」
「明日・・・。」
すぐに行動するのも変わってない・・・。
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