第11話 彼女の話-3



次の日から入社初日を迎えるまで、バタバタと毎日を過ごした。


なにせ3年間も全てのことを考えず放っておいてきたのだ。


それをリセットするには相当な時間が必要だった。




まずは部屋の片付け。

放っておいたと言っても生活はしていたわけだからある程度は片付いてはいたが、なんだかそのまま新しい生活を始めるのは気が引けたのだ。


いっそ大きい家具などを買い換えたりしたかったが、家賃さえもギリギリの状態の人間なのでシーツや枕カバー、タオルなどを新調した。


そして、洋服。

以前会社に行った時に、「そんな堅苦しい格好しなくても良かったのに」と佳奈子に言われた。


商談やクライアントと会うときくらいしかスーツを着ないらしく、会社ではほとんどの人がオフィスカジュアルで通勤しているらしい。確かにスーツでビシっと決めた人もゼロではなかったがほとんどの人がデニムやプライベートでも着れそうなワンピース、パンツを着ていた。


しかし、このクローゼットにはそんな洋服はない。

スーツもあの時の1着のみ。


普通に働いていた時は3着くらいを着まわしていたのだが、この間久々に着てみたらどうにもこうにもパンツのウエストがきつかったのだ。

その夜から少しずつだけど家で動画サイトを見ながら筋トレに励んでいる。




スーツは毎朝着るものを考えなくて楽だったので別に嫌いではなかったけど、ああやっておしゃれをしながら仕事をするのが憧れでもあった。佳奈子も普段会う格好と仕事用の格好では雰囲気も違っていたし。私もそうなりたいなと少し欲張るまでには元気になっていた。




翌日は美容院に来ていた。

特に目的もなく伸ばされた艶のない髪の毛をどうにかしなければ、と入社が決まって一番最初に連絡をしたのが美容院だった。




「髪型どうしますかー?めちゃくちゃ伸ばしたんですねー」と鏡越しに目が合う。


確かに、生きてきた30年のほとんどがロングヘアだった。

特別理由はないけれど、なんとなくショートカットは似合わないと思っていた。

それに、ロングだと結ったりできたから何かと便利だった。


しかし、改めてどうすると問われると思い切ってみたいという気持ちが湧いてくる。


失恋をきっかけに髪を切る人も多いというけど、その気持ちが今は痛いくらいに分かる。もう3年前の話だけど。




いざ切ろうにもショートカットの種類がたくさんある。

細かいこだわりがあるわけではないけど、なんとなくなりたいイメージはある。

かと言ってそれを言葉で美容師さんに伝える能力などは持ち合わせていない。

ずっとロングヘアでいたのは意思を伝えないでもなんとなくそれっぽい髪型になるからという理由が大半を占めている。

どうしよう。もうロングでもいっか。

いつものように諦めて、いつものようにオーダーしようとした時、


「ここまで伸ばすの大変でしたよね、何かロングにしたい理由でもあったんですか?」と鏡を通して問われる。


理由?結婚式があって、とかってことだよね?


「あ・・いえ、特に理由とかないんですけど忙しくてなかなか美容院来れなくて・・・」となんとなく答えを濁す。


間違ってないけどここではっきり理由を伝える必要もないだろう。

すると、意外な返事が返ってきた。


「そうなんですね。なら、思いっきりショートカットにしてみるのもオススメですよ。ロングもお似合いだから無理にとは言わないですけど、このシーズンはバッサリ切りたい!っていらっしゃる方も多くて。てっきりお客様もそういう気分なのかなと思って」


勘違いだったらすみません、と軽く頭を下げた。


なんだろうこの人、人の心を察知できる能力があるのかな。

私もその能力ちょっと分けて欲しい。


ヘアスタイルと全く関係ないことを考えてるとショートカットの特集がされた雑誌を数冊渡された。


まだ一言もやりたいとは言ってないのに。

恐る恐る鏡の中で目を合わせると、くしゃっとした笑顔で、


「よかったらご覧になってみてください、好きなイメージとかなりたいイメージとか言葉で伝えるの難しいと思うので」


後ろの方にはロングもあるので、と言って他のお客さんのところへ去って行った。

膝の上に乗せられた雑誌がすごく重く感じた。




しばらく戻ってきそうもないので、仕方なく雑誌を開いた。

そこには様々なヘアスタイルが掲載されており、流行りのカラーも紹介されていた。

ロングヘアではできない明るめのヘアカラーをショートカットでやる人が多いらしい。さすがに明るすぎるのは会社的にはNGだろう。

佳奈子に何か言われたわけではないけど、さすがに仕事をする場所だし、それに年齢的にも相応ではないだろう。


でも、ページを進めるたびに紙面で笑顔を見せているモデルさんたちが輝いて見えた。


お仕事だから笑っている、というのはわかっているんだけど、なんとなく自分も変われるんじゃないかと不思議と心がドキドキした。




そして、渡された雑誌を見終えた頃、美容師さんが戻ってきた。


「いいイメージのやつ、見つかりました?」と問われ、「はい、こんな感じでお願いします」と紙面を指差す。


すると、「わかりました。絶対お似合いになると思いますよ」と目の色が変わった。














「ありがとうございました。またいらしてくださいね」と丁寧に見送ってくれた。


今まで肩にかかっていたものがないとこんなにスッキリするもんなんだ。


それになんだが首元が寒い。

いつもの癖で手で髪を梳くと一瞬で空を切る。

ショーウィンドウに映る自分が新鮮すぎて自分じゃないみたい。


でも、なんだか心が弾むし、足取りがとても軽い。

このまま、予定には入れてなかったけど会社で着る洋服でも見に行こうか。

いっそコスメも新調しようかな、なんてびっくりするぐらい気分が高ぶっていた。


髪型を変えただけなのに、性格まで変わっちゃったみたい。

でも、私にはとてもいい作用だ。



家に帰るにはまだちょっと早い気もしたのでこの髪型に合う洋服はどんなものなのかを参考までに見に行くことにした。(決して口実ではない。)


洋服自体に興味がなかったわけではないが、こだわったことがなかったのでオフィスとプライベートで兼用できるような商品を扱っているブランドがどれなのか全くわからなかった。


それに、そもそも”オフィスカジュアル”とはなんなのか。

まずはそこから勉強が必要だと感じた。


まだお昼を食べてなかったので、本屋さんで雑誌を買って食べながらお店をいくつかピックアップし近くにあればそこへ行こうと考えた。しかし雑誌を買うだけなのに20分以上悩んでしまった。ファッション誌を読むのは美容院くらいだったからこんなに種類があるものとは知らなかった。それに、オフィスカジュアルと言っても可愛い感じ、かっこいい感じ、ナチュラルな感じと種類が事細かに分かれていてどれがいいのか全くわからなかった。


空腹も相まって脳が機能しなくなったので、雑誌を買うのは諦めて近くのカフェで遅めのランチをとることにした。


洋服は今度佳奈子にお願いして一緒に選んでもらおう。

会社の雰囲気も考慮しながらアドバイスしてくれるだろう。

今日はちょうどファンデーションがなくなりかけてたからコスメだけ見て帰ろう。

可愛いアイシャドウとかあったら買おうかな。新作とか出てるかな。


そんなことを考えながら注文したパスタを白いブラウスに飛ばさないよう慎重に口へ運んだ。










日曜日。

明日からまた社会人としての生活が始まる。


とりあえずは初めましての人もいるだろうからしばらくはスーツで行くとして。

靴もあのパンプスでいいか。靴擦れしなかったし。

バッグも佳奈子と洋服を買いに行く時に一緒に選んでもらうとしてそれまではあのバッグで。


ファンデーションは買ったし、新色のアイシャドウとチークまで買っちゃったからそれをして。

ヘアセットは美容師さんが教えてくれたからそれを真似して。



なんだか、遠足の前日みたいな高揚感だった。

全く知らない世界に足を踏み入れるってこんな感じだったっけ。

いや、前の私だったら憂鬱で仕方なかっただろう。


どんな人がいるのかな、馴染めなかったらどうしよう、とか。

でも今はそんな不安が1つもない。

無さすぎて怖いくらい。

昂りすぎて明日熱を出さないか心配だ。


修学旅行とかの前日に熱を出して休むタイプの人、学年で1人はいた気がする。


今日は早めに休もう。

明日の準備を全て終えて新しいシーツを敷いたベッドへ潜った。


















朝、1発目のアラームですくっと体を起こすことができた。

なんならアラームが鳴る前からうっすら意識があった気もする。

幸い熱も出なかった。


朝の身支度を済ませ時間通りに家を出る。

メイクとヘアセットに時間がかかったが、早めにアラームを設定しておいて正解だった。




家から駅までの道のり。

何度も何度も歩いているはずなのにやけに眩しく見えた。


こんな朝から出かけるのが久しぶりだからかもしれないが、少なくとも自分の心の高揚感もそれに影響していると思いたい。






電車を乗り継ぎ、渋谷へ。

朝の渋谷は通勤ラッシュでごった返していた。


なんとか人混みを抜けて会社を目指す。

すると1通のメッセージが携帯に届いた。


《おはよう、入館証無いと入れないからエントランス着いたら電話して》


佳奈子からだった。

今日から一緒に働くなんてまだ実感湧かないな。

《おはよう!了解、着いたら連絡します》と返して少し早足で歩いた。




会社に到着して佳奈子へ連絡を入れた。

数分後、佳奈子の姿が見えたので手を振った。


すると佳奈子はびっくりしたような顔でヒールをコツコツと鳴らしながら近付いてきた。


え?なんか変な格好してるかな?メイク、派手だった?


「文那、髪の毛どうしたの?!」


あぁ、そっちか。すっかり忘れてた。

この髪型で会うのは初めてだ。


「あー、ずっと伸ばしててボサボサだったからさ。思い切ってショートにしてみたんだけど・・どう、かな?」


自分で決めて切ったくせに、佳奈子の反応がすごく怖くなった。

ここでロングの方がよかった、なんて言われたらどうしよう。


佳奈子の表情がみるみるうちに変わっていく。

空気に耐えきれず、あー、やっぱ長い方がよかったよね?と自らを自嘲すると彼女は全力で顔を左右に振った。


「そんなことない!すごい可愛いよ!なんか明るくなった!めちゃくちゃいいと思う!」ととんでもないくらい褒めてくれた。


佳奈子に褒められるなんて、いつぶりだろう。

いや、そんなこと今まであったかな?

とにかく自分の変化をこんなに褒められたことは今までないので、素直に嬉しかった。


「それに、なんかメイクも変えた?チークの色、すっごく合ってると思う」


ここまでくると、今目の前に立っている人が私の知っている佳奈子ではない気がしてしまう。


厳しくて、素直に人を褒めることができない、いつも一言多くなる。

そんな佳奈子がこんなに素直に人を褒めるなんて。


そんな彼女をただただ呆然と見つめていると、彼女も自分自身の饒舌さに気づいたのかハッとして気まずそうな顔をした。


「ごめん、あまりに文那が変わってたからつい・・」


モジモジして頰を染めた。

そんな彼女がなんともいじらしかった。


「ありがとう。佳奈子に褒めてもらえてすごい嬉しい。髪を切ったのもちょっと自信なかったし、メイクもやりすぎって怒られたらどうしようかと思ってたから」


「私が褒めるの、そんなに珍しい?」と怪訝な顔をしたので、つい笑ってしまった。


「まぁ、いいや。今日はこの間いなかった人間が何人かいるから紹介するね」


この間とは違う綺麗なピンヒールを鳴らして私を新しい世界みらいへ導いてくれた。















その日からとにかく必死に仕事を覚えた。


全く経験のない業種だったので本当に1から覚えなければならなかった。

そして1番苦労したのが、スピードだった。


前職のせいにするわけではないがその時の倍以上のスピードで進めていくことを求められた。


佳奈子には別にそんなに根詰めなくてもいいと言われていたが、その言葉に素直に甘えるのも気が引けてしまう。


なぜならほぼ全員がそのスピード感で仕事をしているからだ。


それなのに私のサポートもしてくれるし、ミスのカバーまでバッチリとこなしている。


すごい。

とにかくすごいとしか思えなかった。


今まで社会人として人並みには仕事をこなしてきてたつもりだったが、それが今とても恥ずかしいことのように思えて仕方ない。

いっそ、仕事が遅いと罵ってほしいと願うほど自分の無力さを実感した。








入社から数ヶ月後、やっと社内に1人で居ても業務をこなせるようになってきた。

まだまだやれることは少ないけれどある程度のことは任せてもらえるようになった。


今日は各々外での仕事があるようでデスクには私1人。

特に急ぎの連絡などなく落ち着いて業務をこなす。

そんな時、メールが1通届いた。




《元気?仕事は順調?もう慣れた頃かなと思って連絡したよ》




そうくんからのご様子伺いだった。

入社したてではなく、慣れた頃に連絡してくるあたりがなんとも湊くんらしい。


返事をしなければ怒られるので、

《久々だね、まだまだ覚えることはたくさんあるけど、ある程度1人でできるようにはなったよ》と自身の進捗報告をした。


すると、すぐに返事が届き、


《よかったね。文那さんならできると思ってたけどそう聞いて安心した。時間合わせるからまたご飯でもどうですか?》とあった。


ここ最近、会社と家の往復がメインだったし、休みの日も仕事に関する勉強で休日らしい休日を過ごせてなかったことを思い出す。


ゆっくり休みを満喫するのも悪くないだろうと思い、《いいね!今週の土曜とかは?》と計画を始めた。








数ヶ月ぶりのちゃんとした休日は、彼の行ってみたかったカフェからスタートした。



「文那さん、髪の毛切ったんだね!すごい似合ってると思う」


会って早々に変化に気付いてくれた。


それにしてもナチュラルに褒めるところ本当にすごいと思う。

彼氏だったらすごく幸せだろうな。


「せっかくの休みなのに、僕が行きたかったところで良かったの?文那さんが行きたいとことかやりたいこととかで良かったのに。買い物でも映画でもなんでも付き合うよ?」


どこまでも気を遣ってくれる。

これは私が年上だからとかあのことがあったからとかではなく、誰に対してもこうやって接する。


これが彼のデフォルトなのだ。

やっぱり、こういう彼氏の彼女は大変かも。


「全然大丈夫だよ、湊くんとも全然会ってなかったしおしゃべりたくさんしたかったから」


そう答えると彼は満足そうにそっか、と言ってメニューを開いた。


彼の気になっていたお店ということもあり、メニューは彼にお任せで選んでもらった。



「で、最近お仕事はどう?佳奈子さん・・だっけ?その人と一緒に働いてるんでしょ?」


店員さんに追加のガムシロを頼みつつ、会話を始める。


「そう。でも仕事内容はチームのサポート業務って感じだよ。ほとんどが営業担当で社外にいるから社内で済ませなきゃいけないものを私が代わりにやってるってところかな」


私はミルクだけを入れる。


「ふーん、なんか大変そう。前に一緒にお店に来た時すっごい剣幕で会社の愚痴みたいなの言ってなかった?仕事できない奴がどーとか、みたいな」


好みの甘さになったのか、ご機嫌でコーヒーを飲み出した。


「よく覚えてるね。佳奈子はすごく仕事ができる人だから結構やっかみを受けることが多いみたいで。あの時は佳奈子の仕事を全く理解してなかったからよくある愚痴ぐらいにしか考えてなかったけど、今彼女の仕事を間近で見るようになってから、やっかむ方がおかしいなと思うようになったよ」


本当にそう思う。

あの時は佳奈子の性格が問題なのでは?なんて思っていたけど今は違う。


彼女の働きぶりは本当に尊敬する。

同じ仕事をする上で男性だからとか女性だからとか関係ないと思いたいけど、どうしてもそれを比べられてしまうのは昔も今もさほど変わらないと思う。


それでもそんなことを気にせず仕事をこなしていく彼女の姿は同じ女性として憧れない方がおかしいくらいだと思う。


くだらないことを言う前に彼女と同じ量の仕事をこなしてみろ、と私が言ってやりたくなる。


「そうなんだ。僕多分その佳奈子さんって人に嫌われてる気がするけど文那さんが今も仲良くやれてるならいいや」


と最初に届いたパフェをスプーンでつつき始めた。


「湊くん、佳奈子に嫌われてるの?」


そんな雰囲気全く感じなかったけどな。


「いや、あれはどう見ても嫌われてるでしょ。昔の話はあんまりしたくないけど、あの時4人で飲みましょうって言ってすぐ帰っちゃったでしょ?本当に翌日も朝から仕事があったのかもしれないけど、あれ僕のことが嫌で帰らせちゃったんだなって思ったよ」


表情を変えることなくパフェを食べ進め、


「だから僕のせいで文那さんが佳奈子さんと気まずくなっちゃったらどうしようって心配してた」と漏らす。


確かに佳奈子は人見知りなところがあるし、とっつきにくいところがあるのは否めないけど、さすがに初対面で嫌いと判断するような人ではないと思う。

でもふと、あの時の会話を思い出す。


そういえば、「あの人だれ?」的なことを言われたんだった。


でもそれは私がちゃんと湊くんを紹介しなかったからだと思ってたけど・・・

なんか違ったのかな?

でも、あれ以来佳奈子が湊くんのことを聞いてくることもなかったし、当然私も話すことはなかったからきっと湊くんの思い違いだろう。



「そういえば、文那さんがおしゃべりしたいことってなんだったの?」


パフェを食べ終わり次のオーダーが届くのを待つ。


この一瞬であの大きさのパフェを平らげたのか。

男の子ってすごいなとどうでもいいことで感心していると、フルーツがたっぷり乗ったスフレ系のパンケーキが到着された。


「あー、そんな大したことじゃないんだけどね。ふと湊くんのこと、ちゃんと聞いたことなかったなーって」


ふわふわプルプルのパンケーキを取り分ける手が止まった。

あれ、なんか変なこと言っちゃったかな?

すると、またすぐに動き出したが何も返事がもらえない。


怒らせたかもと心配になり、

つい「なんかごめんね、気にしないで」と謝る。


すると、

「別に僕怒ってないよ?なんでもかんでも文那さんはすぐに謝りすぎ」と今度はちゃんと怒られた。


「今文那さんに言われるまで、自分の話してたと思ってたからびっくりしたの。確かに僕の話、全然したことなかったね」


はい、と言って私の分を取り分けてくれたパンケーキを渡してくれた。


「そっか・・てっきり怒らせちゃったのかと思って。すぐ謝るのは私の悪い癖だね、ごめん」と言うと、


「ほらまた謝る〜」と2度目のお叱りを受けた。


「別に隠してたわけじゃないし、話すのが嫌とかそーゆーんじゃないよ。ただ、どっから話したらいいのかなーって思って」


フォークとナイフを使って器用にパンケーキを一口大にカットする。


「僕喋るの下手だから無駄に長くなるし聞いててもつまんないと思うけどそれでもいい?」


首をコテン、と傾けて問う。

これが”あざとい”というやつか。



「自分から聞いたんだから、途中でもう飽きたとか言うのやめてねー?」


食べ切れる気がしない量のパンケーキを、私は彼の話を聞きながらゆっくり食べることにした。

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