【番外編】可愛いあくびにご用心

◯月×日


ある昼下がり。


仕事をする私の膝の上で、シロとクロが昼寝をしていた。


仲良くくっついて、というかシロのもふもふにクロが埋まって一つの塊みたいになってる。


なんだろう、何かに似てる。


あ、あれだ、白と黒の勾玉が合わさったマーク。


あれ、何て言うんだっけ?


まぁいいや。


膝の上にぬくもりと幸せを感じながら作業を進めていく。


癒されながら働けるわけだから最高な環境。


適度にモフッたり撫でたりすべすべしたり吸ったりしながら休憩を入れる。


疲れるそばから回復していく。


これがいわゆる幸せスパイラル…


なんて事を考えながら伸びをした。


ずっと同じ姿勢なのと、なんやかんや膝にシロたちを乗せながらだから身体が固くなる。


けどこの幸せそうな寝顔を守るためなら全然苦にならない。


そんな事を考えてたら、シロが大きなあくびをした。


口を大きく開けて、小さいけど立派な牙がちらり。


スッ


ついついその大きく開いた口に指先を入れてしまった。


ーーーカプッ


これは猫を飼ってる人なら大概の人はやった事あると思う。


あくびをする猫の口に指を入れてしまうのはもはや条件反射と言っていい。


出来心でやったけど、後悔はしていない。


まぁ久しぶりに腕とか引っ掻かれたけど、その痛みも猫飼いにとっては幸せの証。


キャットタワーの最上階に姿を消したシロは、たぶんごはんの時間まで出てこないかな…。


キューン…?


シロが膝から降りた事で、クロが目を覚ました。


寝ぼけ眼でキョロキョロして、クロも口を大きく開けてあくびをする。


ドラゴンもあくびするんだね。


スッ


あ、反射的に指が。


キュ!?


あつっ!?


不意に口の中に指が入ってきたのに驚いたのか、久しぶりにクロが火を吐いた。


まぁ炙られたのはほんの一瞬だったし、ちょっと赤くなった程度で水膨れにもならなそう。


ああ、クロが必死に私の指先を舐めてくれてる。


ごめんね、驚かしちゃったね。


反省。


自制心を持たないと。


可愛いは正義だけど、可愛すぎるのも罪だね。


なんて。


嫌われないよう気を付けないと…。


しばらくは口に指を入れるのは自重しようと思う。

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