練兵に倣う灰滅-9-
本来帰属細胞核に活動を統制される侵蝕因子は、細胞死と共に機能を失活するはずであるが、これは因子単体の行動展開を可能とする他に、近傍に位置する有機物質や無機物質を侵襲して動力を与えることが可能である。
侵蝕対象が有機物質だった場合におけるこの侵蝕因子の単騎侵入は、
だが、そのまま死を迎えて活動終了する場合もあれば、侵蝕因子に征服された宿主が腐食反応の進行に係らず彷徨し、侵蝕能に則した厄災と言うべき
原則として侵蝕因子は有機物と無機物双方に侵襲可能とされるが、実質有機的生物を支配する傾向が強く見られる。主に、現場で確認される
相次ぐ猟奇殺人の原因はこの
連続殺人事件対策で人類の持ち得る武器が総じて無力化されるという絶望的状況ではあったが、今や第一級接触禁忌種の血液が
但し、第一級接触禁忌種の血液を介した戦闘展開は、
「ルーク先生、一つ質問があります」
「はい、ハチ君。何でしょう?」
「何故貴方達二人は、レンさんのような第一級接触禁忌種でないにも拘らず、戦闘に参加できるんですか?」
これはふと浮かんだ疑問である。第一級接触禁忌種ではない彼らには、感染リスクが必ず付き纏っているはず。にも拘らず、レンさんと肩を並べ戦線に赴くことを可能とするのは一体何が寄与しているからなのか。僕の問い掛けにルカさんは舌を巻いて、少しずれた眼鏡を直した。
「着眼点が素晴らしいですね。そんなハチに敢えて伺いますが、君は僕達二人が通常とは異なる生命種であることは認知していますか?」
「一応、第一級接触禁忌種に比肩する特別な種族であることは聞き及んでいますが」
「そう。僕達二人は、
「……はい?」
曰く、
この年齢で軍に配属された自分の境遇も不憫ではあるものの、軍のために造られた彼らの方が大いに不遇ではないか、と漠然ながらも考えてしまう。だが、彼らに同情された僕自身その情心が不要であることはよく分かっている。だからこそ、惻隠の類の言葉は掛けないようにした。
余談はさておき、問題は
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