海竜草

わもま

海竜草

これは、昔の話なんだけどね

「過去の有名人の現在は?」という主旨の取材をしてたいた時に、昔オリンピックで世界新記録を出して、金メダルを取ってその後、世間から姿を消した選手がいたんだよ。その人は今どこで何をしているか必死に探したんだけど、なかなか見つからなくて、諦めかけてた時に、似た人を昔見たって情報があったんだ。

そこは海沿いの田舎で、聞き込みをしていると、他所者があまり来る街ではなくて、十年前くらいに移り住んできた人がいるからその人ではないかと言う話だったんだ。

だからその人に会いに行くことにしたんだ。

なんでも、街の人が言うには、無愛想で海沿いの家で暮らしているが、ほぼほぼ姿を見ることはなく、どうやって生活しているのかも不明という話だった。

その人の家を訪れても、反応がなく、暮らしている感じもしないので、もう今は居ないのかなと思って諦めて帰ろうとしたら、海で泳いでる人がいて、まさかと思って見てるとこっちに近づいてきて、

俺に何か用か?と聞いてきたんだ。

顔は少しは老けてはいるが、その選手で間違いなく、企画を伝え、今どんな生活をしているのかを聞いたんだ。

そしたら、今まで人とは会わないようにしてきたが、これも運命だ、話してあげようと言われた。

しかし話せるのは30分だ。30分が過ぎたら話の続きは次の日にしてくれ、それでも良いか?

と言われて、その時は何を言ってるのか意味不明だったんだけど、話を聞けるならと了承した。

そしたら静かに語り始めた。

「俺は、まぁ知ってると思うが、水泳選手だった。

オリンピックに出場し、未だに破られていない世界新記録も作った、だがそれには代償があったんだ。

ちょうど水泳選手として頭角を現し始めた時に、遠征で訪れた街の路地裏に小さな店があって、なぜか魅かれてそこに入ったんだ、そしたら見たこともない物が沢山置いていて、店主はお爺さんで、何か欲しいものはありますか?あなたが望むものがこの店は手に入るよと言ってきて、冗談で、速く泳げるようになりたいがそれに役立つモノはあるかな?と聞いたら、なぜ速くなりたいんだ?水泳選手なのか?と聞かれたから、そうだ、いずれはオリンピック選手になるつもりだと言ったら、そうかピッタリなものはあるんだが、今はちょっと用意できない、三年後なら用意できるからその時に覚えてたらおいでと言われたんだ。そして、そのあと順調に成長し、オリンピック強化指定選手にも選ばれたが伸び悩んでいた。その時ふと思い出したんださっきの話を、ちょうど遠征で同じ街に行くことがあって、しかも三年経っていたし、店があるかどうかも分からないがそこに行ってみると、店があって、店主が俺を見るなり、お!来ましたね!待ってましたよ。と言ったんだ。

覚えていたのかと不気味に思ったが、すぐに箱を渡してきたんだ。その箱には固い石みたいな物が入っていて、これは海竜草という特殊な草なんだ。

これを溶かして飲むと水の中を自由に動けて息継ぎもする必要がなくなる。しかしこれにはリスクがある。水の中を自由に泳げるようになるが、それは同時に地上から縁を切るということになる。

徐々に地上に居れる時間は短くなり、最後は地上じゃ息ができなくなってしまう。

その時俺はとても追い詰められていたんだ、この話も普通に聞けば嘘だし、リスクとかを考えてもオリンピックに出たいという気持ちが強かったんだ。

藁にも縋る思いでこれをくださいといって売ってもらったんだ。

それを飲んで俺は世界新記録を出し、チヤホヤされ、まさに有頂天だった。あの店主が言ってた話など忘れていたんだ。すると飲んで一年経った頃呼吸が辛くなる事が増えてきて、プールでの練習中は大丈夫なんだが、陸に出ると息が苦しくなるというのが続いて、あの時店主に言われたことを思い出したんだ。そこから徐々に水にいる時間が少しずつ増え、今はもう、一日に30分ぐらいしか地上に入れない。もう俺は海から出れなくなる。ここにあなたが来たのは運命だから、この話をしようと思ったのさ。

と言って、そのまま海に帰っていった。

次の日も訪れて話を聞いていたんだが、それが数日続いた後、彼は海に帰ってそのまま帰ってこなくなってしまったという事があったんだよね。


何でこの話をしたかというとね、ここにある箱に海竜草があるんだが、要るかい?

最後の日に、実は海竜草を見つけたと彼から貰ったんだよ海竜草

今年はオリンピックの年だし、ちょうど明日は代表選考会でしょ?期待の星のあなたにあげようかと思ってね。


するとオリンピック期待の星は海竜草を受け取り帰っていった。多分あの感じだと海竜草を飲むだろう。





実はこの話にはもう一つ続きがあって

その男が、「店主から追加で言われて事があったんだ。あなたがもし海竜草を海で見つけてきたら、その海竜草を誰かに渡し、次の飲む人がいると、その海竜草の効果がなくり次の人に移ると言われたんだ。しかし、それは地上に出れなくなってからじゃないと効果は発揮されないと言われたから、俺が海から帰らなくなったら誰かに渡して欲しいんだ、この海竜草を、、この話の見返りとして宜しく頼む。」と言われて、数日彼と話すうちに、情が湧いたので、海竜草を渡してあげたが、彼が地上でもう一回生活できるようになるのか、明日あの田舎町に行ってみよう。

















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