「はるひな」あとがき (解説を踏まえて)
同じことを繰り返すのは、語りのリズムとして心地いい。
と、前項で申し上げましたが、「はるひな」最初の構想ではそれをやろうとしていました。
わんこのチビ。
にゃんこのシロ。
子ザルのキー太。
それぞれ順番に、それこそ「おこしにつけた~♪」と並べようかと。
当然、それは単調です。
それではページ稼ぎとしか見えないとも。
だから、止めました。
チビとシロはひなに、キー太はすえのぼうに。
動物たちも分ける形にして。
これも読み物としてのおもしろさを追求したゆえです。
ちなみに、「すえ」とつく名前は末っ子を意味するわけでなく、「トメ」などもそうなのですが、避妊とか、家族計画とかが発達していない昔には、もう子供はいらないと願いを込めて、そんな名前を付けていたそうです。
残酷といえば残酷ですが、今と昔を比べるなら、その時代背景も踏まえなければいけないという表れの一つのような気がします。
物語とは直接関係ありませんが、これもちょっと「解説」のこぼれ話としてあってもいいかなと考えれば、もう一つ。
おじぞうさまを神様ということ。
本文でもありますように「神様仏様」と昔の人はひとくくりにしていました。
無理やりのように引っぺがして、神は神、仏は仏としたのは、明治政府。
そのやり方、考え方についてはまた論じることが違うのでここでは言いません。しかし、神と仏が全くの別物であるとするのは比較的新しい思想であるとは、そこからもご理解いただけるかと存じます。
お地蔵様や道祖神が村と村の境、あるいは川に、橋に、山の入り口に。
それは総じて「
神と人との領域の境も示すものですが、それもまた仏でも神でもよかったわけです。
日本人は元々、宗教的にはおおらかだったわけです。
なので、お地蔵様であれ、道祖神であれ、あれを模したものであれ。
それに込められた願いはだいたい同じで、それを拝んで「お守りください」とするのには、神も仏も区別がなかったというわけでしょう。
願いに関しては子授け、厄病避け、守護、雨乞い、雨止めなど、多岐にわたることもまた、日本人の特色かもしれません。「塞」という言葉にあらわれているように、たいていは悪いものが自分たちの村や領域に入ってこないように、ですが。
神社で一見、つながりのないようなこともひっくるめてご利益としているのも、拡大解釈の末でもありますから。
ちょっと長く余話続きましたが、「はるひな」のことに戻って。
前項で「千夜一夜物語」にも模して、短く刻む、すえのぼうとひなと交互に、一日おきに公開したといいましたが、それも今見ると……。
一日一話ずつ見てもらえればいいのですが、通しで読むとわちゃわちゃしていて、混乱してきますね。反省。
二人主人公にするにしても、もう少しそこのやり方は考えるべきでした。
最後に。
これをいうのは反省よりも不粋なのですが、「語りの外」でいうなら、「はるひな」にも込めたものがあります。
「ひなとすえのぼうはすぐ友達になったけど、人と鬼が和解(交流)するまでには時間がかかった」
物語のなかに秘めたこと。
それは何故だったのか、ふんわりとでも考えてもらえれば……。
作者がそれを求めるのは不粋より、贅沢ですけどね。あとがきとはいえ、言ってしまうと「語りの外」を求めてしまうわけで、それもまた前項で言っていた「物語としての昔話のおもしろさの追求」とも反します。難しいですね、やはり「あとがき」でどこまで作品内容を語るかは。
今回も「解説」、「あとがき」と、長々お付き合いただき、ありがとうございました。
この「解説」「あとがき」いずれも物語とは直接関係ありません。
物語そのものを、解説もあとがきもなく、中身、内容だけで楽しんでもらうことこそ、作者としての理想です。
物語本編をこそ、よろしくお願いします。
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