第97話 疲れた

アルティメットスキル【聖なる戦乙女の守護ヴァルキリー】。

これはユニークスキル【背後霊ゴースト】が、レジェンドスキルを経て進化したスキルだ。


大本である【背後霊ゴースト】は憑りつけた相手の様子を見たり、経験値を少しばかりちょろまか……拝借……まあ言い方は変えても一緒か。

要は、勝手に盗むスキルだった訳ね。


で、アルティメットスキルに進化した【聖なる戦乙女の守護ヴァルキリー】は、【背後霊ゴースト】と同じで相手に憑りつけるスキルなんだけど、

ただ進化前みたいに経験値を貰うだけじゃなくて、憑りついた相手とその仲間の人達を強化する能力を持ってるの。

しかも回復魔法まで使えるおまけつき。


もうまさに別物。

流石はアルティメットスキルって所かしら。


更にこの強化には取得する経験値を激増させる効果も入っているから、アタシが頂いてる分なんて余裕でペイしてくれちゃうのよ。

完全に良い事ずくめね。


「素晴らしい……なんという素晴らしい効果だ。超新星現れるとはまさにこの事。それも世界レベルの絶対的な」


支部長が大げさに言う。

確かにレベルは高いし、アルティメットスキルは凄く便利だけど、さっきからこの人はオーバーすぎる。

実際単純な強さなら、私より十文字さんって人の方が上だってアングラウスさんは言ってたし。


「所で……かんばせさんは、もう入るギルドは決まっているのかね?君程の逸材なら、どこでも大歓迎だろう。だが君能力を最大限に発揮する事を考えた場合、日本三大ギルドに入るのがお勧めだ」


支部長さんがテーブル越しにずいっと身を乗り出して来る。


「三大ギルドは姫ギルド、迅雷ギルド、それに大和ギルドの三つを指す言葉なんだが……その中でも一番は大和ギルドだ。間違いなくここが日本ナンバーワンギドと言っていいだろう」


『馬鹿め!最強はマヨネーズじゃ!三大ギルドなど屁でもないわ!』


ぴよちゃんが訳の分からない事を騒ぐ。


そもそもジャンルが違うから、比べる事自体間違ってると思うんだけど。

いったい何がこの子の琴線に触れたというのだろうか?

本当に読めない子だ。


「私が思うに、顔さんにはこの日本ナンバーワンの大和ギルドこそ相応しい。幸い、私は大和ギルドのトップと面識がある。君さえよければ、今からでも連絡を入れようと思うのだが」


まあ途中から気づいてたけど、やっぱ勧誘だよねぇ。


一応段階を踏んではいるけど、繋がりのある大手ギルドに私を斡旋したいってのがバレバレだ。


分かりやす過ぎるよ。

隠す気なし?

それとも、大和ギルドなら私が飛びつくとでも思ってるとか?


「あのー、すいませんけどギルドの事は……」


「む、ひょっとして……もう入るギルドを決めているのかい?」


「いえ、そういう訳じゃ……」


まだギルドに入るとかそういうのは、特には決めていない。

ただ、もし入るのなら姫ギルドが一番の候補になるかな。

にいと交流があった場所だから。


「だったら、一度体験でもいいので大和ギルドに――」


「黙らっしゃい!ワシ等はマヨネーズギルドを設立するんじゃ!アイラブマヨネーズ!」


「……」


「……」


「えーっと、ぴよちゃん。さっき私がなんて言ったかもう忘れたの?」


「これは只の決意表明じゃ!決して騒いだわけではない!さらばだ!」


ぴよちゃんが融合で私の中に避難する。

いや、さらば所か一心同体な訳ですけども?


「顔さんは自分でギルドを立ち上げると?」


支部長はどうやら、ぴよちゃんの戯言を信じてしまった様だ。

いや名前の時点でそれはないって、普通気づくと思うんだけど……


え?

ひょっとしてあたしがおかしいの?


まあいいや。

長々と勧誘されるよりはかは、そう思って貰った方が話は早そうだし。


「ええ、そうなんです。ですから進めて貰って申し訳ないですけど……」


「まあそういう事なら仕方ない。これ以上の推挙は、君の迷惑になってしまうだろう」


どうやら、無理な勧誘を続ける気はないみたいだ。

まあ一応、協会の支部長さんだもんね。

引くべき所はちゃんと弁えてるみたい。


まあぴよちゃんのインパクトが強すぎて、毒気が抜かれちゃっただけかもしれないけど……


「ただ……ギルドの運営という物はそう簡単な物ではない。もし何か困った事があればいつでも連絡してくれ。相談に乗る事ぐらいなら出来るから」


支部長が私に名刺を手渡して来る。


「あ、はい。ありがとうございます」


「あ、それと話は変わるんだが……世界初のSSSランク登場を、協会では大々的に宣伝していこうかと。なので、是非記者会見への出席を頼みたいんだが」


「……」


記者会見に出席とか、滅茶苦茶嫌なんですけども?


その後、しつこく食い下がって来る支部長に断固ノーを突きつけ続け、何とかプレイヤー証を貰って帰る事に私は成功する。


……はぁ、疲れた。

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