戦いの始まり

第94話 SSSランク

「顔憂様の審査結果は……」


ここは覚醒者協会。

私は覚醒者として活動する為、協会へと登録の為やって来ていた。


――覚醒者プレイヤー認定を受けないとダンジョンには入れないから。


プレイヤーとしての鑑定は簡単で。

特殊なマジックアイテムに手を置くだけ。

それだけで持ってるスキルとレベルが分かるみたい。


「え?」


受付の女性が出て来た判定結果を確認して、ギョッとした顔になる。


「れ………れれれれれれれれれれ――」


そして変な顔で『れ』を連呼する。

一体どうしたんだろう?


「れ…………………………レベル5000……です。その……顔憂様のレベルは……5000です。はい」


受け付けさんが唖然とした表情で、私の顔と結果を交互に視線を移しながら測定結果を教えてくれる。


ああ……そう言えば私って、にいの一万年分の経験値を吸ってレベル5000だったんだった。

それで受付の人が驚いていたんだね。


「推定ランクは……その……SSS……そう……顔憂様はSSSランクになります!世界初です!」


途切れ途切れだった受付の人の言葉だったが、途中からそれは興奮した物に変わってしまう。


世界初って事は、どうやらレベル5000まで到達した人は私以外にはまだいないみたいだ。

ただまあ、世界初と言われても全然実感わかないけど。


まあにいの経験値を貰って勝手にレベルアップしただけなんだから、当然と言えば当然か。

私が何かした訳じゃないし。


――私は覚醒に失敗して二年以上昏睡状態だった。


覚醒不全ってやつね。

本来なら覚醒不全は覚醒できてない状態なんだけど、なぜか私はその状態でユニークスキルを手に入れる事が出来ていた。

ほんと、謎である。


で、私の手に入れたのは【背後霊ゴースト】ってユニークスキル。

特定の対象にゴーストを付ける事で相手の情報が手に入って、更に取得した経験値まで一部手に入れる事が出来るってスキルだったみたい。


これ、凄く特殊なスキルだったらしく(アングラウスさん談)。

私が死んだ後も、消える事無くそのままにいにくっ付いてずっと経験値をため込んでいたそうなの。


そう……にいの一万年にも渡る戦いの経験値を、私のゴーストはため込み続けていたんだ。

にいは私や母さんのためにずっと孤独に戦い続けてくれて、そして時を巻き戻した。


その話をアングラウスさんに聞いた時、私わんわん泣いちゃった。

お父さんだけじゃなく、にいまで私を助けるためにそんな想像を絶する苦しい思いをしてたのかと思って。


『レジェンドスキル【不老不死】の効果があったから、悠はそこまで苦しんではいなかった筈だ。何より――アレは鋼の精神の持ち主だ。だからそう気に病むな』


なんてアングラウスさんは言ってくれたけど、それでもやっぱり自分が恨めしくて、悔しくてしょうがなかった。


だけど泣いてばかりいられない。

この世界には危機が迫っていて、にいはその危機を乗り越えるための試練を今受けている。


――そう、神になる為の試練を。


だから私も頑張らないと。

にいの手助けをする為に、少しでも強くなるんだ。


ただ、アングラウスさんの言葉を疑う訳じゃないんだけど……


流石ににいがこの世界の神になるってのは、『え?ほんとに?』って思っちゃうんだよねぇ。


想像もできないぐらい凄い人(竜)だし。

あんな凄い人が私に嘘を吐く意味もないし。

多分本当の事なんだと思うけど、どうにも現実味が無さすぎて。


にい、ホントに神様になっちゃうんだろうか?


だとしたら、私は神様の妹って事になっちゃうよね。

正にびっくりだよ。

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