第71話 自爆
俺を押さえつけていた物が吹き飛び、体に自由が戻って地面に着地する。
「ふぅ……」
まるで燃え盛る炎が体中で暴れ回る様な感覚。
もし不死身の肉体でなければ、灰も残さず燃え尽きていた事だろう。
……ぴよ丸じゃ絶対耐えられないだろうし、まあそりゃ封印してる訳だ。
暴れ馬の様な炎を自らの力として利用出来ているのも、回帰前にこれ以上の力を扱っていた経験があったかこそだと言える。
「馬鹿な!ワシの目玉を!!」
目玉を内部から吹き飛ばし、出てきた俺に百々目鬼が驚愕の声を上げる。
「悪いけど、異世界への引っ越しのお誘いは断らせて貰う」
感覚的には5倍……いや、6倍か。
先程までの戦闘能力をSランクの下限であるレベル1000程度と考えるなら、今の俺の力はレベル6000相当と言った所だろうか。
スキルを考慮しなければ、SSSランク並みの強さ。
この状態なら、目の前の化け物とだって真面に戦えるはず。
「よもやその様な力を隠し持っていようとはな……」
「ああ、俺もびっくりだよ」
ぴよ丸には冗談抜きで感謝しかない。
家に帰ったらマヨネーズパーティーだ。
ま、俺は食わないけど。
「これでは目玉での封鎖は出来んな。面倒な小僧じゃ。どれ……まずはどの程度強くなったか確認するとしようか」
百々目鬼が超高速で突っ込んで来て、拳を振り上げる。
「はぁっ!」
奴の拳を、俺は拳で迎撃する。
ぶつかった瞬間、此方の拳が砕けた。
――が、それだけだ。
「ぬ……これは……」
さっきまでなら腕が潰され、そのまま体ごと持っていかれただろう。
だが俺の拳は砕けながらも、辛うじて百々目鬼の一撃を受け止めきった。
そんな俺の驚異的なパワーアップに、奴が驚きの声を上げる。
この状態でも、まだ相手の方が能力は上だ。
だがこれなら十分戦える。
この程度の差は、俺の【不老不死】の前では誤差に等しい。
「おらぁ!」
拳を受け止められ、隙の出来た百々目鬼の体に今度は俺が拳を打ち込んでやる。
「むう……これは油断できんな……」
攻撃が直撃し、奴の目玉がいくつか潰れその巨体が吹き飛ぶ。
だが百々目鬼の声に焦りの色はない。
あまり効いてはいない様だ。
が、あまり効かないと言うなら、効くまで攻撃しつづるけるまでの事。
何せこっちのスタミナは無限だからな。
「はぁっ!」
一気に百々目鬼との間合いを詰める。
奴の拳が飛んでくるが、それを吹き飛ばされない様に回避や受けをしながら反撃を入れていく。
「ぬ……く……不死身と言うのは本当に厄介だのう」
「ぴよ丸!ファイヤーバードだ!」
不死身を生かして熾烈に攻撃を仕掛け続けてはいるが、能力とリーチの差がある為こちらの攻撃は中々ヒットしない。
俺はリーチ差を埋めて攻撃の効率を上げる為、ぴよ丸に指示をだすが――
『ぬう……マスター、封印を解放し続けるのにいっぱいいっぱいで……他のスキルを使う余裕が……』
どうやら封印の解放中は、他の事をする余裕がない様だ。
当然ブリンクも使えないだろう。
……不味いな。
ブリンクなしだと、パワーで勝る奴に掴まれたら脱出するのが難しくなる。
その状態で謎の空間に通じている口に素早く放り込まれでもしたら、それこそ一大事だ。
「ぴよ丸。もし俺が掴まれたら一旦切ってブリンクしてくれ。それから封印解除の再開だ」
俺は百々目鬼には聞こえない様、攻撃しつつ掴まった際の指示を小声でぴよ丸に出す。
『マスター。凄く言いにくいんじゃが……封印の解放を一度止めたら……もう一回解除できるかは……正直怪しいんじゃ』
駄目か。
なら掴まれない様、細心の注意を――
いや、今の状態ならブリンクなしで脱出可能だな。
体中を突き破ろうと暴れるこの力を使えば。
試しに一回やってみるとしよう。
「ここだ!」
俺は百々目鬼の攻撃を敢えて体で受け止め、そしてその腕を掴む。
――瞬間、体の中で暴れる力の制御を放棄した。
封印解除によって生み出された出鱈目かつ、狂った様に暴れまわる力。
その力の制御を放棄すると言う事は、それは俺の肉体の崩壊を意味している。
それも只の崩壊ではない。
外に向かって力が放出される崩壊。
――人はそれを自爆と言う。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます