第57話 見舞い
ぴよ丸が卵になってから早一週間。
その間ダンジョン探索は休み、俺は毎日時間の許す限り憂の見舞いに来ていた。
え?
家でぴよ丸を見守らなくていいのかって?
あのアホは何一つ心配する要素はないからな。
出てきたらアングラウスやエリス達に勝手にマヨでもねだるだろ。
見守る価値ゼロだ。
「寝てるだけと分かっていて、毎日何時間も妹を見に来る行動は謎で仕方がないな」
ベッドの横に座り憂の寝顔を見ていると、影の中からアングラウスの分身が出て来る。
「心が落ち着くんだよ。妹の穏やかな寝顔を見てると」
まだまだ心のケアと言う問題は残っている、覚醒不全から回復して穏やかに眠る姿を見ているとホッとする。
「重度のシスコンだな」
「誰がシスコンだ」
毎日面会時間いっぱい昏睡している妹の見舞いに来ただけでシスコンとか、心外極まりない話である。
「時に……以前悠に接触して来たカイザーギルドのスカウトがこの病院に来ているぞ」
「は?」
どういう事だ?
アングラウスの結界を何とかして……とは考えづらい。
という事は、この前の滝口の時みたいな感じか。
「盗み聞きした感じだと、入院してる女の息子をギルドに入れようとしてるみたいだな。借金を理由に」
「盗み聞きとか……」
しかし借金を理由に息子を……か。
恐らく、未成年で有望な覚醒者なのだろう。
未成年と契約する場合は、親の同意が必要になって来るからだ。
「不味かったか?」
「いや、問題ない」
他ならともかく、相手はカイザーギルドな訳だからな。
「母親は困っている様だぞ。何せ、借金の為に子供を売るような物だからな」
「それって……邪魔できそうか?」
「3000万程出す気があるなら、まあ行けるだろう」
「3000万か。そらまた随分安く買いたたこうとしてるな」
ただの子供なら、確かにその額は決して安くはないだろう。
だが、わざわざカイザーギルドが勧誘する程の人材だ。
契約で10年20年縛る事を考えると、はした金と言わざるを得ない。
「行くか?」
「行くさ」
俺は正義の味方じゃないからな。
これが関係ないギルドならきっとノータッチだったろう。
だが、相手がカイザーギルドなら話は変わって来る。
あそこにはちゃんと伝えてあるからな。
借りは必ず返すって。
今回はその軽いジャブだ。
「場所は507号室だ。覚醒者も同行している様だが、まあ今の悠なら問題なかろう」
此処にいるアングラウスは妹を守るための分身だ。
なので当然俺には付いてこない。
「相手も病院で荒事なんか起こさないだろうから、そこは大丈夫だろ」
流石にカイザーギルドも病室で暴れるなんて、そこまで馬鹿な真似はしない筈。
まあ最悪荒事になっても、アングラウスが問題ないと判断したなら問題なく対処できる程度の相手だろう。
「じゃ、嫌がらせしに行って来るわ」
俺は妹の病室を出て、507号室へと向かう。
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