第52話 マーク2
「ミラクルドッキング!」
マヨネーズ3本を確約すると、ぴよ丸は迷わずエリスと融合する。
本当に食い意地の張ってる奴だ。
「他者と一つになるなんて、凄い能力ね」
「お前ならぴよ丸の魔力の流れを感じる事が出来るだろう。それを真似して、かつ早回しでやってみるがいい」
「わかった。やってみるわ」
エリスが胡坐をかく様に座り、目を閉じた。
集中する為だろう。
「このまま成長したら、服が破けてしまうんじゃ?」
実践して成長すれば、今着ているエリスの服は絶対に小さい。
そう思って尋ねてみると――
「あ、それなら大丈夫っす。エリスちゃん大人になる事を想定して、体のサイズにフィットする魔法処理された服を着てるんで」
どうやら、エリスの中では成長する事が確定だった様だな。
気の早すぎる準備だが、無駄にならなくて良かったと言っておこう。
「お」
「おお!」
見ていると、エリスの体が薄っすらと輝き出した。
そしてその体が少しづつだが、確実に大きくなっていく。
「凄いっすよ!本当に成長してるっす!」
「ああ」
こんな事までできるとか、ほんと魔法ってホントスゲェ。
俺には実質ないに等しい力だから、それを自在に操れる奴らが羨ましくなる。
まあない物ねだりだな。
エリスの成長。
それを驚きつつも俺とミノータは見守っていた訳だが……
途中からある事に気付いてしまい、評価の風向きが変わって来る。
「えーっと……」
「何と言うか……」
エリスは確かに成長していた。
縦に。
そして――
‟横にも”
今の彼女の姿はよく言えばお相撲さん。
もしくはぴよ丸マーク2。
悪く言うと、可愛い金髪のオークだ。
想定外だったのだろう。
体格に合わせて伸縮する筈の衣服が、苦しそうに悲鳴を上げているのが分かる。
「なんだ?」
「成長してると言えば成長してるんすが……これ、エリスちゃんの求めた答えとは180度別方向なんですが……」
別方向所か、もはや別次元だろうと思われる。
「まあ結婚したくてなる姿ではない……かな」
「大人にはなっただろう?」
アングラウスが口の端を歪める。
さてはこいつ、こうなる事分かってやがったな。
「お前性格悪いな」
「お手本がぴよ丸の時点で気づくべきだと思うがな、くくく」
まあ確かに、ぴよ丸をお手本にしたらこうなるわな。
気づかない方がどうかしてると言われればそれまでだ。
「ふぅ……」
エリスの体の発光が止まり、ゆっくりと彼女は瞑っていた目を開く。
「視線が高い。それに少し体が重いわね。これが大人の重みってやつね」
いいえ、ただのデブです。
もちろん口にはしないが。
残酷すぎるから。
「ミノータ。貴方の魔法鏡で私の姿を見せて。大人の女に私の姿をね!」
「……」
エリスの言葉に、ミノータが黙って目を逸らす。
まあ気持ちは分かる。
「ミノータ、何してるのよ。早くして頂戴」
「うぅ……分かったっす。でも気を強く持ってください」
「何訳の分からない事を言ってるのよ」
ミノータの言葉に、エリスがあるのかないのか判断に困るレベルの首を捻る。
何故自分の体の違和感に気付かないのか謎だ。
まあそれだけ大人になれたのが嬉しくて、周りが見えて……というか自分の状態に気づけてないって所なんだろう。
たぶん。
「行きますよ」
ミノータが起こりうる惨劇を予想してか、細い目を瞑って魔法で水鏡をエリスの前に生み出した。
そこに移る姿を見て――
「え”っ……」
――エリスが固まる。
ピシって音が聞こえてきそうな固まり方である。
まあ念願の大人の女がぴよ丸マーク2ならそうなっても仕方がないだろう。
「……」
「……」
俺もミノータもなんと声をかけていいかわからず、黙って見守るしか出来ない。
すると暫く固まっていたエリスが動き、恐る恐る尋ねてきた。
「こ……これって、幻覚……よね?」
まあそりゃ……現実じゃないと疑うよな。
その気持ちは分からなくもない。
分からなくもないが、現実は残酷だ。
「いいや、正真正銘お前の姿だ」
アングラウスによる
エリスは両頬を手で押さえ、まるでムンクの叫びの様な表情で――
「ひょげぇあああぁぁあぁぁぁぁ!!」
――絶叫を上げてそのまま倒れて気絶した。
ナムサン。
「あっ!エリスちゃんの姿が!?」
エリスが気絶した途端、風船のように膨らんだ彼女の体が縮んでいく。
そして元の可愛らしい美少女の姿へと戻ってしまう。
俺が驚いてアングラウスの方を見ると――
「レジェンドスキルの
「そ、そうか……それは良かった」
「まったくっす。流石にあのままじゃ酷いっすから、デメリットがあって本当によかったっす」
デメリットがあってよかったな、エリス。
まあそもそもデメリットのせいでさっきみたいな姿になる羽目になった訳だから、実際は良くもなんともないんだろうが。
なんにせよめでたしめでたし……かな?
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