第31話 希望の光
私が覚醒したのは16歳の時だ。
その際に手に入れたレジェンドスキル【10倍】は、明らかに破格の効果を持っていた。
「……」
そして破格であったがゆえに、そのデメリットは致命的な物となっている。
寿命が10分の1になるという。
そしてそれを知った当時の私は、当然だが絶句した。
何せ自身が30まで生きられないと宣告された訳なのだから、当たりまえの事である。
「よし!決めた!」
数日。
両親や友人に相談できず、学校も休んで茫然自失で過ごした私は一つの答えに辿り着く。
嘆いた所でどうにもならないのなら。
長く生きられないのなら。
――それならば激しい閃光の様に生きよう、と。
誰にも負けない程、輝く人生を送り。
そして世界に私を、
そう決めた私は自分の事を両親や友人達に話し、そして学校をやめる。
短い人生をプレイヤーとして駆け抜けると決めた私には、もう必要なかったからだ。
「是非うちに!」
「いやいや我がギルドに!」
攻略者協会に登録すると、凄い数の勧誘があった。
寿命が短いとはいえ、破格の効果を持つレジェンドスキル持ちはそれだけで彼らには魅力的に映ったのだろう。
だが私はそれらを全て断っている。
少ない人生を周りに合わせていたのでは、目指す頂には駆け上れないと思ったからだ。
「はぁ!」
初めてのダンジョン探索に挑み、そこで遭遇した魔物をユニークスキルで生み出した剣で切りすてる。
少し緊張したが、全く問題ない。
レジェンドスキルによる圧倒的なステータスもあったが、祖父が剣術家かぶれで子供の頃から剣術を習わされていたのが大きかった。
まさかいやいややらされていたあれが、こんな形で役に立つとは思いもしなかった事だ。
ソロプレイヤーとしての活動は順調に進む。
やはりレジェンドスキル【10倍】の効果は素晴らしい。
ステータスの爆増。
レベルアップのしやすさ。
1を聞いて10を知る様な学習能力。
さらにこの【10倍】は、レベルアップ時のスキル習得率にも影響していた。
レジェンドスキルやユニークスキルと違い、通常のスキルはレベルアップ時に取得出来る様になっている――レアアイテムのスキルブックを使っても習得出来るけど。
一般的にスキル取得はレベル30から40に一つ程度の割合と言われているが、【10倍】はその通常スキルの取得率も10倍にしてくれていた。
お陰で私は、3から4レベル上がる度にスキルを取得する事が出来ている。
ソロだとやる事が多いので、大量のスキルを取得できるのは本当にありがたかった。
汎用性が大幅にあがるから。
そしてダンジョンでの狩りに馴れて来た私は、ユニークスキルの【分身】を使って自らを動画に収め、配信サイトであるヨロチューブに投稿しだす様になる。
自らの生きた証を残すために。
因みに、チャンネル名は私の代名詞とも言えるレジェンドスキル【10倍】をもじって売店となっている。
ダンジョン探索は好調。
順調にレベルとランクが上がっていき。
チャンネル登録者ももりもり増えていく。
更に、Aランクダンジョンボスからレアドロップである特殊なタブレットを入手し、それ以降ライブ配信にも手を出すと登録者は鰻登り状態に。
投降動画は数あれど、高ランクダンジョンのライブ配信と言うのは殆どないのが大きかった様だ。
プレイヤー生活4年。
気づけばチャンネル登録者数は2000万人を超え、私は協会の発表している世界ランキングでは2位に名が乗る様になる。
生活も充実しており、正に順風満帆だった。
「うぅ……はぁ……く……はっ!?夢か……」
だが、時折私は悪夢にうなされる様になる。
自分が死ぬ夢だ。
どれだけ順調だろうと、私の残りの人生は恐らくもう5年も残ってはいない。
刻一刻とタイムリミットが近づくにつれ、悪夢を見る頻度が増えていった。
……怖い。
今消えても、これだけ有名になったのだからみんな私の事をきっと暫くは覚えててくれるだろう。
それにこのまま順調にいけば、後1、2年もあれば私が最強のプレイヤーになる事だって可能な筈だ。
絶対無二は無理でも。
それでも、ある程度満足できる結果と言えるだろう。
そこに不満はない。
だがやはり怖かった。
死ぬのが怖くて怖くて仕方がなかった。
「泣き言言ってもしょうがないよね」
私はそれまで以上に、一心不乱にダンジョン攻略に打ち込む。
死への恐怖を振り払う様に。
当然そんなものは誤魔化しでしかない。
それでも私は走り続けるしかなかった。
――でもそんな私に、一筋の光明が差す。
「みんなー、Sランクダンジョン迷宮の攻略を見てくれてありがとー!」
それは迷宮と呼ばれるSランクダンジョン攻略後の、視聴者からのコメントに含まれていた。
「後で編集した動画も上げるから――ん?」
『レジェンドスキルのデメリットを消す方法が見つかった』という物だった。
レジェンドスキルのデメリットが消せる。
それは衝撃的な情報だった。
もしそれが本当だったなら、私の残りの寿命を延ばす事が出来る。
「よし!行くしかないよね!」
ひょっとしたら、ガセ情報の可能性もある。
でもここで動かないなんて選択肢はない。
私は早速顔悠というプレイヤーの情報を集め、彼の元に突撃するのであった。
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