第14話 タブレット
「頂きます」
卵に命を入れた後、俺は作り置きしてくれていた母の食事を食べる。
俺にはスキル【不死身】があるので食事はいらないのだが、母が用意してくれたものなのでしっかりと頂く。
「母さん、今日は帰りが遅いみたいだな」
今回の稼ぎは500万だ。
アングラウスに燃やされてなかったら800万近く行ってたはず。
まあボスのレアドロップは運が絡むのであれだが、それを除いても二日で300万。
更に高ランクのダンジョンに移れば稼ぎはもっと増える。
以前とは比べ物にならない稼ぎなので、もう母が無理をして働く必要はない。
とは言え、じゃあ明日から仕事辞めますという訳にもいかないのだ。
いくらんでもそれは無責任すぎるし、当然母はそんな真似をする様な人間じゃないからな。
食事を終えた俺はシャワーで体を洗い、着替えて自分の部屋へと戻った。
ベッドの上にはアングラウスが寝そべっており、その脇には例の卵が置かれている。
「お前タブレットなんか扱え……って、あれ?そういやうちにタブレットなんかないぞ?」
ベッドに寝転んでいたアングラウスは、その前足で器用にタブレットを弄っていた。
だが我が家にそんな物はおいていない。
こいつはいったい何処からそんな物を持って来たんだろうか?
「これは我のマジックアイテムだ」
「マジックアイテム?って事は、ダンジョンでも回線が繋がるタイプのアレか」
エターナルダンジョン探索時に、俺はタブレット型のマジックアイテムを手に入れている。
本来回線の繋がらないダンジョン内でネットに繋ぐ事が出来、普通のタブレットとして扱う事の出来るマジックアイテムだ。
それがあったお陰で、ダンジョンに居ながら俺は外の様子を知る事が出来ていた。
「あそこは退屈な場所だったからな。これを使って人間達の世界の様子を見ていたのだ」
「ダンジョン最下層でも回線が繋がってたのか?」
俺の手に入れた物はある程度進んだところで効果の範囲外になってしまい、使い物にならなくなっている。
どうやらアングラウスの使っている物は、俺が持っていた奴より超がつく程高性能な様だ。
何せあの糞長いエターナルダンジョンの最下層で使える位だからな。
「ああ、でなければ退屈しのぎにはならんだろ?とは言え、外の様子を知れたのは……まあそれはいいだろう」
アングラウスが何だか歯切れの悪い物言いをする。
こいつは謎が多いので少し気になるが、まあ聞いても答えてはくれないだろう。
どうせ勝ったら教えてやるとか言い出すのは目に見えている。
「で?何を見てるんだ?」
「
プレイヤーランキング。
プレイヤー協会が公表している、世界中のプレイヤーの強さを総合的に判断したランキングだ。
中には国の方針なんかで能力が秘匿されてたりもするらしいので、必ずしもこれが絶対の強さの指標ではないが、まあこのランキングに入ってる様な奴は基本的に強いと思って間違いないだろう。
今日会ったカイザーギルドの鳳なんかも、確かランキング100位以内に入っているSランクプレイヤーだったはず。
もし今の俺が戦っていたら、なすすべもなくボコられ続けた事だろう。
「そんな物見てどうするんだ?」
「なに、面白い奴がいないかと思ってな」
「面白い奴ねぇ……まさか目星をつけた奴の所に、喧嘩を売りに行くつもりじゃないだろうな?」
「くくく……ここに載っている様な者達では、我の相手にはならんよ。少なくとも我と同レベルか、お前の様な理不尽な能力をもつ者でなければ話にならん」
「まあそうだろうな」
Extraランクであるエターナルダンジョンのボス、アングラウスのレベルは一万だ。
それに対して、現在のプレイヤーの最高レベルは4000台と言われている。
なのでアングラウスに勝てる奴はまずいないと思っていい。
もちろん、俺の様な例外がいれば話は変わって来るが。
「我は弱者をいたぶる趣味はないのでな」
どうやら戦う相手を見繕う為に見ていた訳ではない様だ。
「そうか。それで、卵は生まれそうか?」
「我が魔力を注いでいるからな。じきに生まれて来るだろう」
アングラウスが片手で卵をペシぺシと叩く。
扱いが雑だ。
わざわざ人に命まで入れさせておいて、誤って割るのは勘弁してくれよ。
「なあ悠よ。一つ聞きたいのだが……」
「ん?なんだ?」
「このランキング二位の女――
「ランキング二位?ああ、売店か……」
売店と言うのは、十文字の二つ名――というか愛称である。
世界ランク二位の人物につくにしてはふざけた呼称ではあるが、これは彼女の配信チャンネルから来るものだった。
更に言うなら、このチャンネル名は十文字の持つスキルに由来している。
十文字昴の持つ代表的なスキル。
それはレジェンドスキル【10倍】だ。
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