第11話 同居生活

病院を強制退院した私は、

彼・樹羅 雅斗の所でお世話になる事に─────



いわゆる同居だ。


男の子と、まさかの同居。


しかも好きな人……なんだけど─────



前とは違い複雑な気持ちでも、あるんだけど─────




「自分の部屋みたいに遠慮せずに好きに使って良いし」


「いやいや…同居人だから…そんな…ていうか…居候だね…ありがとう。ゆっくりと過ごすね」


「ああ。気軽に何でも聞きな」


「うん。分かった…ありがとう…ていうか、雅斗、彼女いるんじゃ?」


「彼女?急に何を言い出すかと思ったら…いねーし!つーか、いたら連れて来ねーよ!」


「えっ?ま、まさか!私の事で別れたとかじゃないよね?」


「はあっ!?つーか、お前、なんか勘違いしてね?彼女って誰の事言ってんだよ!?」


「えっ…?だ、誰って…凄い美人な人で…」


「俺の彼女候補、一人しかいねーから」


「ほら!やっぱりいるんじゃん!私の居場所作るとか言って……」




グイッと引き寄せる。




ドキッ



「なあ、マジ誰の事、言ってんのか知んねーけど」


「…だ、だって…美人な女の人…連れて歩いてるの見たし…私が入院する前……」




スッと離れる。



「…美人な女の人ね~…」



「………………」



「…彼女に…誤解されたらかなわない…」




両頬を摘ままれた。




「…彼女はいねーよ!美人な女はイトコの妹だ!誤解してんじゃねーよ!バーーカ」



パッと離す。




「ば、バカって…つーか…えっ?…い、妹…?」

「そう!い・も・う・と!分かったか!バ霞」

「…なっ!ば、バ霞って……」

「つーか、前に言ったじゃん!俺はお前の事、考えてるからって…」



ドキッ



「…それは…」



頭をポンとされた。


ドキッ



「つー事で、霞、お前、俺を独り占めだな」




ドキッ



「ひ、独り占めって…」

「事実じゃん!」

「…それは…」

「つー事で、改めて宜しくな。霞」


「独り占めとか、そういうのは、ともかくとして…うん…宜しく…雅斗…」




それから同居生活が始まったんだけど───



お互い口喧嘩の絶えない日々。


だけど、日々、それも慣れてきて、当たり前の毎日になってきていた。





同居を始めて1ヶ月──────




「霞ーーっ!起きろーーっ!」



バッと布団を剥ぎ取られた。



「んー…朝から…何…?」



私は寝ぼけ眼で、剥ぎ取られた布団を再び体にのせる。




「起きねーと襲うぞ!」



「………………」




私の上に乗ってきているのが分かった。



「ちょ、ちょっと…」



グイッ


私の両手を押さえると私の上に股がった。




ドキーッ



「ま、雅斗!わ、分かった!お、起きるから降りて!」




雅斗は降りた。



「出かけるぞ!」

「えっ!?」

「さっさと着替えろ!」

「で、出かけるって…私と?」

「お前以外誰がいんの?」


「いやいや…私となんか…」

「ほとんど部屋にいるから体に悪い!太陽の光りを浴びろ!」

「雅斗、一人で行きなよ」



両頬を摘ままれ、パッとすぐに離した。




「私は居候だからさ、可愛い子とかさ美人な子が、雅斗には合ってるし、私なんかが…」


「…霞は…今…どうなわけ?」

「えっ?」

「俺の事」


「それは…今は…」

「すぐに答えられないって事は複雑な感じ?」

「…うん…そう…かな…?ごめん…えっと…」


「気にすんなよ。別に良くね?今を楽しめば良いし。ほら!待ってるから着替えて着な」


「う、うん…」




そう言うと雅斗は部屋を後に出て行く。



「あっ!うん。とは言ったものの…」



私達は出かける事にした。



街を、ブラつき昼食を食べる事に。



店内に入り、席につく。




「お前、何する?」

「ランチメニューで」

「もっと食べたら?」

「いや…太る」

「太ったら?」

「えっ?ひ、ひどっ!」


「太った、お前も見てみたい」

「雅斗っ!喧嘩うってる?」

「喧嘩して、お前が勝てるわけねーだろ!?バーカ」

「なっ…!」



私達は売り言葉に買い言葉で取り敢えず注文をし話をしていた。


注文の品が届き食べる。


食事を済ませ、ゆっくりしていると私は妙に周囲の視線を感じていた。





「…雅斗」

「何?」

「そろそろ…」



私達は店を出る事にした。




「もう少し、ゆっくりすれば良いのに」

「…視線感じてたの」

「お前が可愛いって?」

「バカ!私なわけないでしょう!?雅斗だよ」

「俺が可愛いって?」


「雅斗が可愛いって…カッコいいの間違いでしょう!?それだけ目立ってる証拠でしょう?」


「そんな俺に、お前告白したんだもんな~」

「それは…でも…今は…」



「………………」



「まあ、色々あったんじゃ複雑にもなるか」




そして、その日の夜。



「ねえ、雅斗。私、ずっと、ここにいるわけにはいかないよね?」

「えっ?」


「だって、ここは雅斗の住んでる所だし、私はただの同居人で居候だし。いつか彼女が出来たら結局、私の居場所ないわけないじゃん」


「…霞…?」

「1日も早くアパート見付けるから」

「別に全然良いけど」


「…えっ?…そ、そんな事、出来ないよ。結局、男と女で、ただの友達に過ぎなくて同居人なんだし。まあ、もし、恋心が再燃したら、変わるかもしれないけど…」


「別に追い出す気ねーし!身寄りねーし。親も仲良かったんだし。そんな事、お前が考える必要ねーから」


「雅斗の人生なんだよ?私がいたらいけないよ。親が仲良かったっとか、そんな理由」


「気にしすぎ!気遣うの辞めろよ。とにかく!この話は終わり!」






















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