第10話 居場所

それから、その後も毎日のように樹羅君は足を運んでくれていた。




「どんだけ暇人なの?」

「暇人じゃねーし!」

「ええー!毎日来てんじゃん!」

「お前の顔を拝みに来てやってんだよ」


「はあっ!?来てやってるんだよって上から目線の言い方辞めてくれる?しかも拝みにって…酷くない?」


「別に、そんなつもりは一切ねーけど?」


「いやっ!絶っ対!樹羅君なら、あり得る!」


「つーかさー、お前、いつまでいんの?実は病院がお前の家にでもなった?」


「違います!」


「じゃあ何だよ!それだけ元気なら大丈夫じゃね?」


「それは樹羅君が私に意地悪するから!病人扱いしないじゃん!」


「病人でも怪我人でもない!どう見たって 健常者だろ?」


「本っ当っ!つくづくムカつくっ!! もうっ!毎日、毎日、意地悪とかする為に来てるなら帰って!2度と来ないでっ!」


「はいはい!じゃあ帰ろ!じゃあな、霞。また明日な!」


「だから、もう来なくて良い…」




頭をポンポンとされた。



ドキッ




「そうカッカすんなって。つーか、お前、いつまで俺の事名字?下の名前で呼べば?」


「えっ?…いや…別に付き合ってるとかじゃないし…ただの友達でクラスメイトなだけだし…」


「俺は、霞って呼んでるのに?」


「それは…そ、そのうちね!ほ、ほら帰るんでしょう?とっとと帰りなよ!」


「はいはい」




樹羅君は病室を後に帰って行った。




その後、俺は病院の看護婦に尋ねた。



「すみません」

「はい?」


「あの…あそこの○○病室の佐久羅 霞さんって患者さんは退院出来ない理由があるんですか?」


「詳しい事は分かりませんけど、先生や看護婦さんの中では、あの事件の後なので精神的なものも含め様子見てる状況ですね。それに身寄りもないみたいですし…」


「身寄り…あの…今後、彼女は…」


「私ではちょっと…上のものではないと…呼び出しましょうか?」


「あ、いいえ。大丈夫です。ありがとうございます」




俺は病院を後に帰る事にした。




次の日──────




「おい!仮病寄りの患者の佐久羅 霞!」

「は?来て早々、何?嫌な感じ!」

「お前、今後どう考えてんの?」

「何が?」

「ちょっと外。付き合え!」

「ものの言いようには言い方や頼み方…」

「良いから来い!」



グイッと私の手を掴み病室から連れ出した。


向かった先は屋上だ。




「一体、何?」

「お前、ずっと病院にいる気か?」

「それは…」

「無理に強制はしねーけど…」

「何?」

「お前にサプライズ」


「右と左、どっちが良い?」

「えっ?何?突然」

「良いから!」

「…右…」




目の前に差し出されたのは、鍵だ。




「鍵…?」

「俺の部屋のやつ」

「えっ!?」


「お前…行く宛てないみたいだし、お前さえ良ければ一緒にと思って…部屋は余ってるし」


「えっ!? ちょ、ちょっと! それは流石に…それって、つまり同居

……」


「返事はすぐにと言わないけど…俺は別に構わない。検討して。第一、病院にずっといるわけにはいかねーだろ?」


「それはそうだけど…」


「親が仲良かったわけだし、とりあえず、考えといて!話はそれだけ!」


「本当にいいわけ?」


「駄目なら言わねーし!」


「…同情とかなら辞めてよね!」


「そんなつもりはねーし!」



「……………」



「何だよ!」



私は両頬を摘ままれた。




「…いたい…」

「疑いの眼差しすんなよな!」



パッと離す。



「したくもな…」




グイッと抱き寄せられたかと思ったら、抱きしめられた。




ドキッ



「つーか…今度何かあったら困んだよ…」

「…えっ…?…樹羅君…?」



バッと離す。




「悪い…」

「…ううん…」



突然の出来事に驚くも胸がざわつき、ドキドキ加速する。



「…………………」



私達は戻る事にした。






数日後─────





ガシッ


背後から突然、ヘッドロックされた。



ビクッ



「きゃあっ!」

「なあっ!」



ドキーッ



「ま、雅斗ぉぉっっ!!」



真横にある顔に驚く私。



「…今、名前、呼んだ?」

「えっ?」

「まあ良いけど」

「…ていうか驚いたじゃん!」

「驚かない方が、おかしくね?」

「…ていうか近い…」

「そのままチューしとく?」




ドキッ


「ば、バカっ!」



押し離す私。




「で?どうすんの?決まった?」

「何が?」

「同居」



ドキッ



「ど、同居って…そんなの無理に決まってるじゃん!」

「…そう言うだろうと思ったよ。つー事で…強制退院な」

「はあああっっ!?」

「手続き済ませておいたから」

「ちょ、ちょっと!勝手な事しないで!」


「病院は、お前だけのものでも、お前のものじゃねーんだよ!いつまでもいられたんじゃ迷惑なの!」



「……………」



「お前の居場所…俺が今から作ってやるから一緒に来い!つーか…俺がそうしたいから…」




そして私は病院の病室を後に私は、彼・樹羅 雅斗に連れられ移動した。







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