第8話 生きてる意味~必要とする者~

信じたいけど


どこか信じられなくて


だけど


自分の思いは正直で…


あの光景は


私の胸を締め付ける


私の脳裏に二人の姿が蘇る





「嵩矢間…アイツ…バイト来てるか?」

「…えっ…?アイツって…霞ちゃん?」

「ああ」


「…ここ1ヶ月間…体調不良とかで、バイトも休みがちだよ。店長が心配して連絡しては安否確認するようにして、店長がお弁当とか栄養考えてから持って足を運ぶも最初は顔を出してくれたけど、今はドア越し挟んでしか…話し方も以前比べたら細々しいって…霞ちゃん親元離れて一人暮らししてるって話だし…」



「…親元離れて…いや…親元離れてという感じじゃないと思う」


「えっ!?」


「アイツの両親は…いない…」

「…嘘…」


「…身寄りない独り身。俺と同じ。とにかく、アイツの所には俺が足を運ぶ。だから、嵩矢間は、アイツを責めないで、いつも通り迎え入れてくんねーかな?状況は、俺から報告する」


「…うん…綺羅君…霞ちゃんを宜しくね…」


「ああ」






その日の夜。


俺は足を運んだ。




だけど─────




事態は飛んでもない状況が待ち受けていた。






ウーー……



ウーー……




ピーポー……




ピーポー……








消防車や救急車が俺の横を通り過ぎる。


俺が向かっている先と同じ方向だ。


考えたくはないが


まさか……!?


そんな事が脳裏に過る。


俺は更に急いだ。




目的地に辿り着くと


真っ赤な炎が大きく燃え上がり広がっている。


まさかの火災現場に遭遇だ。


しかもアイツの住んでいる建物だ。


野次馬で人だかりが半端なかった。


俺は辺りを見渡す。





「…アイツ…霞は…」




姿が見当たらない。



「家の子供が、いないんです!まだ、中にいるんはずなんです!助けて下さい!」


「はい!今、向かっています!無事を祈りましょう!」





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆





「ふぎゃあ、ふぎゃあ」

「熱いよーー。ママーー」




皮膚が焼けるような熱さだ。


子供達は尚更熱いはず。


私は消火器で消そとするも、体力に限界がきていた。





──その時だ──




「誰かいますかーーーー?」



消防士さんだ。



「おーーーい」

「ここ…ここですっ!」



私は力を振り絞り口の中が焼ける感覚を感じつつも呼び叫んだ。



「いたぞ!」

「生存者3人確認!」

「子供二人と、女の子です!」

「お願いします!」



私は子供を先に渡す。



「君も来なさい!」


「私よりも子供達を先にお願いします!私は…大丈夫です!忘れ物あるから!」



私は、その場から去り始める。



「これ以上、ここにいたら危険だ!来なさい!」




その直後だ。



物や木片などが火の粉を舞い崩れ落ちる。




「早く行って下さい!母親の元へ!病院にお願いします!」

「何言って…ほら!今なら…」


「私は良いんです!身寄りのない独り身だし。もう誰からも必要とされていないから」




火の粉が舞う中、再び木片などが更に崩れ倒れ、逃げ場を失う。



私は後退りをし奥へと向かう。




「待ちなさいっ!」




呼び止められるも私は去った。






◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




「子供を女の子が…」

「すみません!女の子って…高校生くらいの女の子じゃ…」


「ええ。話によると…現場の火の粉や木片など物が倒れ逃げ場を失い、様子見、一人の消防士が彼女の後を追うよう。今、他の消防士も向かってます。何か最期を思わせるような事を言って奥へ向かったらしくて…」


「…何考えてんだよ…あの馬鹿…」



「すみません…不安をさせるような事…あの…失礼ですが…あなたは彼女の知り合いか何かで?」


「はい。クラスメイトで同級生です」

「…そうなんですね…」







数時間後────





火は火の手は小さくなり鎮火したものの



アイツは俺の前には現れなかった─────




アイツは無事なのか?



そう考えるも


アイツの姿は何処にもなく



俺の目の前には無惨で悲惨な形な状態で



火事の後を物語っていた──────



焼け焦げた臭いが辺りに広がり



ただ ただ



呆然と立ち尽くす



今 たとえ アイツが 俺の前にいなくても



俺はアイツの無事を祈るしかなかった─────




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