第4話 噂

それから数ヵ月、いつからか樹羅君とは何となく一緒に帰る仲となっていった。




「ねえ、霞ちゃん。2人って、どういう関係?」



ある日、みなみちゃんが尋ねてきた。




「えっ?2人って?」

「樹羅君と霞ちゃん」

「えっ!?どういう事?」

「2人が一緒に帰っている所を見た人がいて」

「そうなんだ…えっ?でも、どうして?私達って…」


「樹羅君は元々目立ってるし…同じ制服にお下げ髪と言ったら霞ちゃん以外いない!」






───そう



普通、定時制は本来制服はない所がほとんどだ。


バイトや仕事して、夕方から学校だ。


ほとんど私服や仕事先のまま来るのが定時制ならではの習慣?


規定はないけど制服で通っているけど自由な部分もある。





「私達は何となく一緒に帰ってるだけだし…それは…まあ…私は好きだけど…樹羅君は、一切そういうのないはずだから」


「分からないよ~」




「いや…絶対そうだよ。樹羅君レベルなら美人系なんじゃないかな?もしくはふわふわ~とした、なんかこう、ぎゅうっとしたくなるような」


「そうかな?」






そして、その日の帰り─────




「なあ、俺達って恋人同士に見えると思うか?」と、樹羅君。


「えっ?」


「友達から聞いたんだけど、お前彼女いるの?って聞かれたんだけど…最近、一緒に帰っている事が多いから彼女って言われてさ」


「そうなんだ…勿論、違うって言ったんだよね?」



「いや別に」

「えっ!?ちょ、ちょっと!」

「なんだよ」


「樹羅君は私みたいな女の子よりも綺麗系とか美人系とか、なんかこう、ぎゅうっとしたくなるような女の子が一緒に並んで歩くのには良いよ」


「それは、お前の勝手な想像だろ?つーか他人が、どう見ようと、どう見てようと俺だって選ぶ権利はある。つーか…お前的には好都合なんじゃねーの?」


「えっ?」





グイッと引き寄せる樹羅君。



ドキッ

至近距離に胸が大きく跳ねる。




「俺に気があんだろ?」



ギクッ


パッと掴んだ手を離す。




「ち、違…!」




帰り始める樹羅君。




「ちょ、ちょっと!」

「なんだよ!」

「私は別に樹羅君の事なんか好きじゃないから!」



「………………」



「ねえっ!聞こえてる?」

「うるせーな!耳はあるから聞こえてんだよ!」

「だったら何か……」

「なあ、お前カルシウム摂ってる?それとも女の子の日?」

「なっ…!スケベっ!バカっ!」




私は走り去った。



「おもしれー」














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