第2話 ラブレター
ある日、学校に行く前────
「すみません」
2人の女子生徒が、樹羅君を呼び止めた。
≪き、気まずい…≫
私の視線の先には、私の前に立ちはだかっている。
「あ…あの…これ読んで下さい!」
2通の封書に入った手紙と思われる物を樹羅君に渡している様子が伺える。
便箋=ラブレターだろうか?
彼女達は精一杯の気持ちで頑張って手紙を書いて渡しているんだろうな~……と…私の思いも束の間。
彼女達は、サッと渡しては足早に樹羅君の前から恥ずかしさから逃げるように走り去った。
「…手紙…貰ってもな~…」
樹羅君はポツリと呟くように言った。
私も足早に横切ろうとした次の瞬間────
グイッと引き止められた。
ドキッ
≪…えっ…?≫
振り返ると同時に
「お前にやる」
「えっ!?」
私の手を掴み今貰ったと思われる手紙(ラブレター)を渡された。
「手紙、処分しといて」
「えっ!?ちょ、ちょっと…!困…!ねえっ!」
樹羅君は、私に手紙を渡し、呼び止める私に見向きもせずに去って行く。
その直後────
「かーすーみっ!」
ポンと背中を叩かれる。
ビクッ
「きゃあっ!」
「えっ!?何これ!まさかっ!ラブレターっ!?渡されたの!?カッコ良かった?」
「ち、違うっ!これ私のじゃないよ!樹羅君のラブレター」
「えっ?じゃあついに!告白を決心したの!?」
「そうじゃなくて!樹羅君が女子生徒から貰ったラブレターなの!」
「ん?つまりどういう事?あ!渡して欲しいって頼まれた?」
「違うよ!」
「じゃあ、何?」
私は説明をした。
「捨てれば良いじゃん!」
「だ、駄目だよ!てか無理だって!一生懸命に勇気出して頑張って書いた手紙なんだよ。返事は必要だろうし…」
「ライバルだよ?何、同情してんの?」
「ライバルだろうと何だろうと…これは…読むべきの手紙!」
「………………」
そして、私達は、いけないと思いつつもラブレターの封を開け中を確認。
みなみちゃんが開封したのもあるんだけど……
「ありきたりだよね。もっと心に響く言葉ないのかな?」
「…みなみちゃん…でも…ありきたりでも書いたり想いを伝えたりする事は凄いし勇気いる事だと思うよ」
「じゃあ!霞も勇気出して告白したら?」
「私は…無理…だよ」
「どうして?」
「だって…」
スッと私達の前から手紙が離れる。
「えっ?」
「あっ!」
手紙を追う視線の先には
ドキッ
「樹、樹、樹羅君っ!?」と、私。
「趣味悪いな。処分してって言ったはずだけど?」
「うん。だから…今…してる所で…」と、私
「は!?いや…普通ゴミ箱じゃねーの?」
「本当は、そうだけど…精一杯勇気出して頑張って書いたせっかくの手紙だし…読んであげないと…」
「は!?バカ?」
「えっ!?ば、バカって…」
「ラブレターって、ありきたりだ!」
「だ、だけど、伝えようって勇気出して書いた手紙を読まずに捨てるのは、どうかと思う。返事だって…良いも悪いも貰えたら読んでくれたんだって…思うし…」
「………………」
バッと手紙を取り上げる樹羅君。
「あっ!」と、私達。
「読めば良いんだろ!面倒くせーな!」
そう言って私達の前から去った。
「まだ途中だったのに」と、みなみちゃん。
「そうだね…まあ他人の者を見るのとかって良くない行為なんだろうけど…」
「それは…まあ…」
「でも…凄いよね?頑張って手紙書いて想いを伝えるって、とても勇気いることだよ」
「感心しないの!ライバルなんだからね!」
「それは…そうなんだけど…」
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