05.

今日は土曜だがお母様がいない。なんだか不思議な気分だ。今日はどう過ごそうか。ライブするか普通にゲームするか、いっそのことマンションのジムに行こうかな。

そんなことを考えている時だった。ふとテーブルの方を見るとお弁当箱が置いてあるのだ。

まずい、お姉様が置いて行ったんだ。これは届けるべきだろうか…確かお姉様は土曜日の購買は空いていないと言っていたな。多分届けるべきだろう…

今の時間は11時ぴたり。華苗高校まで確か歩いて30分くらい。自転車に乗れば10から15分くらいで着くだろう。

よし、いくか。


フードをかぶって外に出る。久しぶりに外に出るが、やっぱ日差しが眩しい。

元々インキャの俺には刺激が強すぎた。

幸い人はいないようで誰ともすれ違わない。男は珍しく、発見されただけで襲われる可能性があるので安心した。前の世界だと考えられねぇぜ。


ふと、学校について考えた。確かお姉様は女尊男卑の学校だとおっしゃっていたな。じゃあこれ送りに行ったら俺睨まれたりする…?急に怖くなってきやがった。そのことで最もやばいのはお姉様の評価が下がることだ。お姉様がもし俺の話を隠していたら…どうしよう、多分お姉様はいじめられることもあるだろう。でも多分お姉様のカリスマ性と俺のイケメンスマイルでどうにかなるだろう。


そんなことを考えていたらついてしまった。え、こんなもんだっけ。

とりあえず門から入る。


「失礼しまーす…」


小さい声だがしっかり挨拶はした。

急いで窓口まで向かう。どうやら先生はいるようだ。


「すみません…」


「はい?えっ…あっ」


あっちもなんかキョドっている。とりあえず吹部の練習場所だけ聞こう。


「吹奏楽部ってどこで練習してはりますかね…?」


「あっ、え、えっと〜…吹奏楽部のど、どのパートですか?」


「確か〜クラリネットだったと思います」


「あっ、それならそこを進んでまっすぐ行ったら3-1がありますのでそこで練習してると思いますよ」


「了解です。ありがとうございます」ニコ


「はひ…」


さっきの人、ずっとキョドってたな。まるで隠キャが女子と話してる時みたいに。


ここが3-1か。とりあえずノックする?


コンコンコンコン


「はーい…ってえ?」


そこには身長が高い、大人な女性がいた。三年生の方?しかもすごい美人。お姉様には劣るけど。


「すみません、お姉様にお弁当を届けにきたんですがお姉様いますか?」


「え、ええと、誰の弟さん?」


しまった、名前言ってなかったか。


「二条冬です。多分こちらかなと思ったんですが」


「あ、ああ!二条さんね!二条さんならバスクラだから多分3-6にいると思うわ!」


「あ、そうなんですか。了解です。ありがとうございました」ニコ


「ふぁい…」


うえええ、ミスった〜…お姉様部活の話とかしないからすごい忘れてたわ。クラリネットっていうことだけ覚えてた。やばい。

それにしてもやっぱ俺ってイケメンなんだなぁ。スマイルでどうにかなるっぽい。この顔になって本当に良かったぜ。I Love me .

そんなこんなのうちに3-6についた。


コンコンコンコン


さっきまで教室内は話声でいっぱいだったのにも関わらずノックしただけで静かになった。顧問と勘違いしてないかこれ。しかも開けてくれないし。自分で開けろってこと?


ガラガラガラ


「失礼します〜…」


うーわ別嬪さんしかいてない!

え、なにここ。天国?天使しかおらんやん。というか全員硬直してる。


「あ、お姉様〜…」


「な、なに?泰」


「お弁当を〜…」


「あ、え?お弁当忘れてたっけ!?」


「うん、家にあったよ」


「やだ恥ずかしい!ごめんね!」


これは多分足早に帰った方が良さそうだな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る