終章 出口のないバー 2
全裸の3人は、汗を滴らせながら戯れた。というより、女たちが二人掛かりで、紀彦を弄んだ。
「あら? お兄様、どうしたの? 元気ないわねー」
若葉が紀彦の一物を握って、頬を膨らませた。
「何ですって? あら、本当だ! 素っ裸の女二人が、お口も使って一生懸命ご奉仕したのに、一体どうしたのよ。あたしたちみたいなブスじゃ、その気になれないってわけ?」
緑も加わって、紀彦を責め立てる。
「いや。そんなことはない。ちょっと酒を飲み過ぎたよ。男はね、飲み過ぎると、モノが立たなくなることがあるんだ。それに、最近、糖尿の気もあるし……。二人が魅力的じゃなくないなんてことは、絶対にないさ。あれ? 魅力的じゃなくない……なんだか、こんがらがっちゃったな」
「心にもないこと、言おうとするからよ。それに藪原ちゃん、口が上手く回ってないよ。大丈夫? でも、息子さんは正直よね。若葉ちゃん、ちゃんと『百獣王精 スペシャルブレンド』飲んでいただいたの?」
「もちろんよ。美味しいって、一気に飲み干していらしたわよ。ねぇ、お兄様ぁ」
「ああ。あまり旨くはなかったがね。ただ、あれ、効いてるのかな?」
「あれが効かないなんて! あたしたち、よっぽど嫌われたようね」
「若葉、悲しい」
「おいおい。あまり無理言って俺を困らせるなよ。そら、気持ち良くしてやるからさ」
紀彦は、若葉の秘所に手を伸ばそうとした。
「ちょっと待って! こうなったら、奥の手を出すよ」
緑が宣言した。
「奥の手って、なに?」
「『
「え? また精力剤?」
「ええ。当秘宝館オリジナル精力剤の中でも最高峰の逸品よ。藪原さん、ヘビの交尾がどういうものか知ってる?」
「知らないな。俺、ヘビには興味ないから」
「ヘビはね、24時間ぶっ続けで交尾することも珍しくないタフな動物なの。男として、ヘビみたいに強くなりたいと思うでしょ? 女だって、強い男が好きよ。そこで、全世界から選りすぐった約500種のヘビのエキスを絶妙にブレンドし、それを1本にギュッと凝縮したのが、この『蛇淫精 トロッケン・ベーレン・アウスレーゼ』よ」
「さっき飲んだ……、百獣の王だっけ? ありゃぁ、ひどく不味かったな。下痢もしたしね」
「これは極甘口だから、飲みやすいはず。エキスに入っている、キングコブラ、ガラガラヘビ、サイドワインダー、ブラックマンバ、
「恐ろし気なヘビばかりだね。できれば飲みたくないなぁ。だめ?」
「飲むかどうかは、藪原ちゃんの自由ですよ。実はねぇ、あそこの扉の向こうはベッドルームなの」
緑が指さす方に、白い扉が見えた。
「ここの続きは、あそこでと思ってるんだけどなー」
媚びるような猫なで声だ。
「え? やらせてくれるの?」
「やだ! お下品ねー」
「ごめん」
「せっかくあそこへ行っても、息子さんにしっかりしてもらわないと、意味ないでしょ? そんなことになったら、藪原ちゃん、ここから生きて帰れないよ」
「おいおい。脅かすなよ。少し酔いを醒ませば、何とかなるよ」
「どうかしらねぇ。ほら、
緑は、紀彦の一物を摑んで、振ったり引っ張ったりした。
「そんなんじゃダメよ。あたしたち、息子さんに気持ち良くしてもらいたいの。でも、カチンコチンじゃなきゃ、イヤ!」
若葉も不平を鳴らす。
「もし、飲まなかったら?」
「ここでお開き。とっても、とーっても残念だけどね」
緑の言葉には、有無を言わせない響きが感じられた。
「分かった。仕方がない。飲むよ」
「はいどうぞ。冷えてますよ」
すかさず、若葉がドリンク剤の蓋を開けて、紀彦に手渡した。今度のラベルは、地が真っ黒で文字は赤い。
<どうも妙な具合になってきたな。しかし……。えーい! 毒を食らわば皿までだ。あの扉の向こうに進むためには、これを飲むしかない>
脳裏に一瞬、モンスター・クレーマーにナメクジを食わされて障害が残った男の話が浮かんだ。
紀彦は、『蛇淫精 トロッケン・ベーレン・アウスレーゼ』を、ゆっくりと口に近付けた。今まで嗅いだことのない刺激臭が、鼻腔を刺した。
「何やらツンと来るね。本当に飲んで大丈夫?」
「だったら、飲むの止めますか? あたしが『うつぼ館』まで送りますよ」
そう言って立ち上がろうとする緑の腕を引っ張り、座らせた。
「送るって、そんなことしたら、完全に飲酒運転じゃないか。俺、まだ死にたくないよ」
紀彦はついに、『蛇淫精 トロッケンベーレンアウスレーゼ』を、息を止めて一気に飲み干した。
「ふー。確かに甘いけど、酸味も強いね」
「飲みやすいでしょ? 効き目は、すぐに出てきますよ。お兄様ぁ、頑張って若葉を可愛がって下さいね!」
しばらくして、紀彦は全身の
<こんな気分は初めてだ。ひょっとして、おかしな薬物でも飲まされたか?>
しかし、そんな不安はすぐに吹っ飛んでいった。
「さー、ベッドに行こうよ。お二人さん」
「お兄様ったら、せっかちなんだからー」
「そうよ。夜は長いんだから、うんと楽しまなくちゃ」
「それもそうだにゃー。うへへへへ」
紀彦は、緑の胸を揉みながら、乳首に吸い付いた。
「ホントにオッパイ好きなんだから。ねえ、坊や。オッパイ飲みたいの?」
「うん。ボクチャン、オッパイ大好きでちゅー」
紀彦は、右手で緑の左乳房を鷲摑みにした。その瞬間、乳首から乳汁のようなものが、いくつもの筋となって飛び出し、紀彦の顔一面にかかった。その一部は、紀彦の両目に入ってしまった。
「ウッ! これ母乳? 目に入った。目が痛くて開けられない」
「おバカさんね。そんなに力を入れるからよ。これねー、普通の母乳じゃないのよ。私、特異体質だから、母乳も強い酸性。目に入ったら潰れるよ、坊や」
「え? 大変だ! トイレで、目を洗ってくる」
「ちょっと待ちなさいよ。あたしが取ってあげるから」
緑は、舌と唇を使って紀彦の顔面に付着した乳汁を舐め取っていき、目に入った乳汁も吸い取ってくれた。
<母乳が強酸だって? そんなことって、あり得るのか? 目の痛みはだいぶ軽くなったが、これじゃあ、おちおち乳揉みもできんな>
ぼんやりしていると、若葉の手が紀彦の肩を揺すった。
「姉さんばかりじゃ、ずるい! こっちにも来てよ、お兄様ぁ」
若葉はソファに浅く腰掛け、両足をM字に広げた。
「ここに、チューしてぇ。お兄様ぁ」
秘所を見せびらかすかのように、両手の指を使って広げたり閉じたりしている。
「おー。よちよち。今行くよー」
<若葉のやつ、だいぶ催してるな>
「どれどれ。すぐに気持ちよくしてあげるからねー」
若葉の秘所に口を押し当てて、舌先を動かした。
「あ! 気持ちいい。でも、もっと強く」
若葉の腰に両手を回し、口を押し付けた。しかし、精力剤の影響なのか、体がフラフラして、手にも力が入らない。
「もっともっと!」
さらに顔を押し付けようとした、その時だった。
紀彦の鼻先にあった若葉のクレバスが、突然大きな口を開けた。時々見えていた小さな穴が広がって、たちまち
「もっと強くって言ってるでしょ!」
若葉が、両手で紀彦の後頭部を押さえ付け、物凄い力で自分の穴に押し込み始めた。
「むむむ。何だよ、これ……。乱暴はよせ。むむむ」
思いもしなかった展開に、紀彦は動転した。だが、精力剤の作用なのか、どこか現実離れしていて、自分も出演している映画をもう一人の自分が観ているようにも感じらる。
誰かが、後ろから紀彦の背中を押して、力ずくで穴に押し込もうとしている。緑に違いない。すぐに、肩まで穴の中に没入してしまった。
穴の中は生温かく、粘液でヌラヌラしている。暗くてよく見えないが、粘膜壁がヒクヒクと動いているようだ。
<こんなことって、ありかよ! た、助けてくれ!>
ようやく、わが身が置かれている容易ならざる事態が実感となって迫ってきた。しかし、紀彦の叫びは、もはや穴の外までは届かない。
両手で若菜の太ももを摑んで抵抗したが、二人掛かりで
紀彦は、空しく
肩と二の腕が穴の入り口を通過すると、後は早かった。ツルリと足先まで穴に入ってしまった。紀彦が履いていたスリッパは、素早く緑が取り去った。
穴は、何事もなかったように、すぐに閉じた。ただ、閉じた口からは、大量の粘液が、ブルドッグの
さすがに若葉の腹は、臨月を迎えた産婦のそれより数段大きく膨らんでいる。だが、苦しがる風もない。
「ふー。意外に、てこずらせたね」
緑はお絞りを使って、若葉の「唇」の周りを丁寧に拭いている。付着している粘液があまりに多いので、お絞り一枚では到底足りない。
「こういう時、脱毛してると楽だねぇ」
「ありがとう。あ!」
「どうしたの?」
「そこ、気持ちいい。指で触って」
「いいわよー。ここね?」
緑は、若葉の「唇」の上端付近から飛び出した「小指の先」を、粘液に
やがて、緑の指の動きが激しくなり、掌全体を使って、穴に入れたり出したりした。二人の上の口が重なり合い、舌が激しく絡み合った。すると、二人それぞれの背中から、緑色の蔓のようなものが伸びてきて、舌と同じように絡み合った。
「若葉ちゃん、可愛いよ。お
「あー、気持ち良かった。お腹は大丈夫。あいつ、静かにしてるよ。『蛇淫精』が効いてるんだね」
「え? まさか、死んだ? 死ぬのが早いと、味が落ちるからね」
「それはないと思う。時々動いてるから」
「ご苦労様。あなたはここで、しばらく休みなさい。あたし、片付けするから」
「はい、姉さん。お願いしまーす」
緑がカウンター内で片付けをしていると、ソファで横になっている若葉の叫ぶ声が聞こえた。二人は全裸のままだ。
「姉さん、ちょっと来て! あいつが中で暴れてる。痛いよ!」
若葉の膨れあがった腹の一部が、内側から突いたように盛り上がったり、それが腹の表面を移動したりしている。
「中で手足を突っ張ったり蹴ったりしているね。思ったより早く、薬が切れてきたようだ」
「このままじゃ、あたしのお腹、ミツバチ・ミッチみたいに破けちゃうよ。早くタンクに移そう」
「仕方ないね。じゃぁ、そこに寝て。あたしが奴の足を引っ張るから、思い切り息むんだよ」
若葉はカーペット敷きの床の上に仰臥して開脚した。思い切り息むと、紀彦の足先が現れた。
「一二の三で引っ張るから、同時に息むんだよ。一二の三!」
緑は紀彦の両足首を摑んだまま自分の重心を後に傾け、思い切り引っ張った。
大量の粘液とともに紀彦の体が吐き出され、床の上に転がった。意識が朦朧としているらしく、紀彦の動作はとても緩慢だ。到底、自力では立てない。全身が粘液
「ふー。世話の焼ける奴だ。早く運んじゃおう」
「はい。姉さん」
紀彦の両側に立った二人の背中から、植物の蔓のようなものが伸びてきた。蔓は仰向けに倒れている紀彦の両肩に巻き付いたかと思うと、その太さを増した。
二人は、蔓で繋いだ紀彦を牽引するようにして引きずりながら、「ベッドルーム」の白いドアに向かった。
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