第5話 茉莉子が好きなのは、尊君!?
茉莉子の取り合いを、他の男子とする気は全くなかった颯志だったが、『天使の微笑み』を見て以来、その笑顔をもっと見たいと思うようにはなっていた。
そして、それが出来る、今一番近い男子は、同じ風紀委員の自分じゃないだろうか!?
そんな考えが、頭を過らなくはなかった。
けれど、
(本宮さんみたいな素敵な人、僕なんて相手にしないよな…)
と、持ち前のネガティブ発想で、勝手に落ち込む颯志。
それに、自分なんかが、下手に茉莉子に近づいたら、他の男子にどんな目にあわされるかわかったもんじゃない。
ただでさえ、同じ委員と言うだけで、
颯志は、入学二週間で、天国と地獄の狭間にいた。
けれど、そんな理性とは裏腹に、茉莉子への気持ちは誤魔化せなくなりつつあった。
そんな、茉莉子に、尊とわいわいしている中で、一人静かに聞き手に回っていた颯志が、誰にも気づかれないように、なるべく自然に、茉莉子に視線をやると、茉莉子はいつも尊を見ていた。
そんな茉莉子の態度に、
(やっぱり…尊君には敵わないな…。本宮さんも、尊君が好きなのかな?じゃあ…僕に勝ち目はないか…。!って!何考えてんだ!?僕!例え本宮さんが好きな相手が尊君じゃなくても、僕なんか最初から相手にされるはず無いのに…)
颯志は、自分の思考に、あれこれ突っ込みと否定を入り交え、結局は最初から、諦める選択をしてしまうのだった。
一方、茉莉子は、ふわふわしながら高校生活のスタートを楽しんでいた。
風紀委員と言っても、他の女子が嫌がるほど、茉莉子にとっては辛いものではなかったし、化粧する気も、髪を染めるつもりも、他、風紀委員に求められる規則違反のせんんを超えてしまうような事をしたい気持ちは何処にもなかったからだ。
茉莉子は、そんな風紀委員のあれこれより、一緒に風紀委員になった男子の事が気になっていた。
あの日、カイロを持たせてくれた、、武田颯志と言う人が、どんな人なのか…、それをもっと知りたかった。
何処かの少女漫画に出て来る主人公みたいに格好いい!とは言い難いが、あのカイロはとても、とても、温かかった。
あの時のカイロくらい温かい人なら、風切委員になった事がなんだか特別に思えた。
恋などした事の無い、茉莉子が、初めて興味を持った男子は、間違いなく、颯志だった。
またその一方で、男子が茉莉子に夢中なら、女子だって黙っていない。
恋に植えた女子を魅了した男子は、颯志が本人が照れるくらい太鼓判を押したあの人。
そう。
並街尊、その人だった。
尊は背が高く、バスケ部で、よく笑った。
ルックスも悪くない。
周りをうまくまとめるリーダーシップも持ち合わせていたし、ジョークもうまかった。
けれど、時々見せる真面目な態度もギャップになって、女子には受けがよかったのだろう。
しかし、意外にも、一番に行動に出たのは、茉莉子だった。
そう。
見つめていたのだ。
いつの間にか。
颯志の事を。
颯志の不器用で暖かそうな人柄、それを知って、気が付けば、颯志を目で追っていた。
しかし、、颯志がこっちを向こうとすると、咄嗟にその視線の先をある人物に向けた。
尊だ。
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