第9話 融合


「こんな毒瓶まで持っているなんてな、、」




ぼちゃ… ごごご




毒瓶がスライムの下水の奥へと沈んでいく。


紫色の小さな核が、落ちてきた毒瓶に気づくと素早く毒瓶に喰らいついた…


喰らいついたその小さな核は

少しずつではあるが…

強力な毒を核の力に変換し

その身体を拡大していく。


今まで死体を喰い続けたからかどうかは

わからない。

少し前、複数のスライムの核が

ひとつの核へと成長し

その身の進化に緑色から紫色へと変色した。


奇跡的に進化をとげたその核と

その小さな身体は

暴食のごとく人を食らう事に飢えていた。


人を捕食し拡大したその分体を、

一時は、とあるピエロ?に

持っていかれたものの

核だけは身を潜め…

その小さな身体は

また再び新たな毒を喰らい

まだかまだかと捕食対象を見定め

無理矢理にでもその身体を大きくしていった。







おおおああああああああ!!!!


下水の上では ひとりの少年が

大人にむけてナイフを振りかざし

まさに死闘を繰り広げていた!!


連撃につづく連撃!

少年は、ただひたすら相手の命を奪う為だけに

その刃物を相手に斬りつける。

こんなスタミナがあっただろうかと

思うほどに その身体は前へ前へと

押し進む!



しかし

ナイフの使い方をあまり知らない少年は

ナイフの使い方を知っている大人に

突けども斬ろうとも当たらない!


弾かれつづける斬撃は

少年に焦りを感じさせる。



それでも少年の感情は

相手をコロス事だけを考える。


当たれ!当たれ!アタレアタレアタ…


殺したいと力んでしまった攻撃が

わずかなスキをつくりはじめる。


「おいおい!そんな大振りじゃ!

すぐ後ろをとられるぜ!っと、」


ゲドはシクのナイフをかわすと

背後にまわり込み、

ナイフの持ち手でシクの後頭部をたたく!


っあ!




やっぱりだめだ…

俺にはゲドさんを殺せないのか…




シクの意識がもうろうとする。

しかし、すぐにシクの背中に痛みが走る!


「おまえをコロス!おまえをコロス!」

シクはすぐ立ち直り、ゲドへと刃をふるう!


「ハ!すげえな! まるでスキル持ちみたいな

戦い方をするな!けどよぉ…」


ゲドはナイフでシクのナイフをうけとめ

一瞬、軽く力を抜いて

シクのナイフを空振りにさせると、

力任せに上からシクのナイフを下に弾いた!


シクのナイフは

地面へと落とされ

反動でシクにスキができる


シクが見上げた瞬間、


ゲドはナイフの持ち手で拳を作り

そのままシクの顔面を

押し殴った!


いきなりの攻撃でシクはふらつき、

その場でふらふらと倒れた。


「…貰えるスキルがなくてもよ、経験と鍛錬で、カバーはできるんだぜ!」



ぴりっ



おおおああああああああ!!!!

シクは血反吐を吐きながらも

無理矢理身体を起こしナイフを取りに行く!



「やれやれ…」

ゲドは足元のシクのナイフを足で隠す。


「意識を刈りとれれば、

まだ何とかしてやれるとは思ったが、

やっぱ無理みたいだな…

…その苦しみから解放してやる!シク!」


う!…うがあゝあああぁぁぁ!!


ゲドの目が本気へとかわる!


ゲドは、

タックルのような姿勢で

ゲドを倒しに行くシクを受け止める。


ゲドは、ナイフを半回転させ

逆手にナイフをつかんだ。


「すまねえな…」


シクの背中にナイフを突きさす!


ぐあ!


刺したナイフを引き抜き

もたれかかるシクに

再びナイフで背中に突きさす!


ぁア!



何回かゲドがシクの背中にナイフで突き刺すと、シクは地面に倒れた。



ぐぶ…



ゲドは悲しい顔をしながら

さっき地面においた一枚の銅貨をひろい。

少年の足元に置き直した。



シクの身体から力が抜けてゆく…


「銅貨は餞別だ…シク。ゆっくりと休め」






拡大したその紫の核は、

その代償なのか、極度の空腹に苛まれる。

血の匂いを感じる。すこし手を伸ばせば

その肉にありつけそうだ…。



直後、紫の液体は、

極度の空腹により核とともに上昇し

少年の頭へとその口をあけた!


!!

ゲドが後ろへと飛ぶ!

「こいつ!やっぱりいたのか!まずいな!」


シクは紫の液体に喰われる…


ああ…


死んでいくんだな、



これで良かったのかも。







…コロセ…コロセ…




サイゴマデアキラメルナ




うるさいな!頑張ったんだから許してくれよ!

もう身体中が痛くて気が狂いそうでくるい…


…何かが自分に入り込んでくる。なんだこれ

なんだこれなんだこれなんだこれなんだこれ


ナンダコ…


突如シルのスキル紋が黒く光だす。

まるでひとつとなる感覚のような…


意識が


のっとられ…る







少年は紫のスライムを身体に吸収させると

無言で立ち上がり、

右手を前へと突き出した!


右手から

紫色の液体が直線上に伸び出す!

まるでスライムの手のようだ。


液体の手先は鋭く尖った形に変形し、

ゲドの首元へと突き刺さった!


「あ?」

一瞬、ゲドは何が起こったのかわからなかった


立って、少年を見ていたはすが、


今は首から上がない自分の身体を見ている。


その視界の地面には…




さっきシクの足元に置いた

1枚の銅貨が落ちていた。





コインがいるのは俺だったか…




ゲドの意識は暗い闇へと消えていった。












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