第7話 覚悟の代償

無表情の男は言う。

「この内容を契約前に実行対象にもらすのはオススメしないぞ。裏ではお前には想像できないくらいの権力者から恨みを買うことになる。契約するか?」


シクは驚きの表情を隠せない。


ゲドさんに報告しようか?

そんな事をしたら、自分が殺されるかもしれない。

そもそもリーダーであるゲドさんは、

衛兵の中でも顔が知られている。

疫病の原因である下水道のリーダーで

目立ってるから、殺したいって人が

多数はいるって事だろうか?


ゲドさんは他人と言えば他人だが

情けをかけてもらったりもした。

心が痛む!ふざけるな!できるわけがない!

断って違う依頼を聞けばいい。

疫病の影響で仕事は多いと言っていた。


シクが男に尋ねようとした時、

男はシクの顔色に気づいたのか

続けざまに言い放った。

「ちなみに断ってもいいが、次はあると思うなよ?悪いが依頼内容を見て断った時点で

お前の顔や特徴を同業に教える。素性もある程度調べさせてもらうぜ。そう何個も依頼内容を明かすと信用にかかわるからな」


まずいな…

断って他のやり方で銀貨を稼ぐ方法を見つけるか?

恐らく2度目の1日奴隷はできなさそうだ。

そもそもゲドさんを殺す事なんてできるのか?失敗すればすべてが終わる。

それとも、またあの生活に戻るのか?

覚悟を決めたんじゃないのか?

弱虫。


シクはいろんな葛藤を整理しようと

目を閉じる。


ごめんゲドさん…


これまで、生きる事だけを考えて

ここまで生き残ってきた。


偽善はやめよう…



「契約しよう」

再び目をあけた、シクは男にそう答えた。


無表情の男は初めて笑う。

「悪くない。安心しろ、お前みたいな弱い人間でも戦える様にこちらも考えてある」


シクは自然と震えてる手を

両手で握って隠す。


男はポケットからひとつの小瓶を取り出す。


「即死の毒で即効性がある。静かに寝ている時に飲ませればいい。ただし起きてる奴が近くにいるなら注意しろ 叫ばれて対処が難しくなるぞ」



「最悪逃げられ 1日たてば呪縛でお前は死ぬ」





シクと男は

お互いに契約書に書かれている事を

口にして唱える。


すでに奴隷商人が

呪文をほどこしている契約書は、

青い光をはっすると

名前の所に実行者 奴隷のシクと表記された。

そしてその下には

契約主 奴隷商人代行ルドルフ

と無表情の男の名前が表記されていた。

そして青い光は青い炎へとかわり

消えていく



「ぁぁああああ!!!」

シクの背中に黒い奴隷紋があらわれていく

気絶しそうな痛みが襲うと

シクは地面に倒れこんだ。



意識がなくなる中…

ルドルフはシクに話しかける。

「目が覚めたら実行開始だ。終わったら再びここに戻ってこい。金を渡してやる。」







おき…



おきろ!



頭にピリっとした痛みが襲う。

目が覚めるとルドルフの姿はなかった。


背中の痛みはない。


すると頭の中で声がする。


「目が覚めたか?悪いがあまり2人でいる所は見られたくないからな、ここから移動させてもらった。」


ルドルフさんの声だ!

「何?頭で声が聞こえる!どうなってる?」


頭で再び声がする。


「奴隷魔法の一種でな、契約主は

頭の中で奴隷と話す事ができる。奴隷の視界も

見れる。あくまでも契約主が話したい時と見たい時に限定されるが…まあ監視だな」


「じゃあ、こちらからは話しかけれないんですか?」

シクは頭の中で、しゃべってみる。


「その通りだ。あくまで契約主と奴隷の立場があるからな。一方的な魔法だ。定期的に監視してるから成功したら金は払ってやる。安心しろ。」


ルドルフはそう言うと

少し怒った声でシク頭の中に再び話し出した。


「俺の名前をみたかもしれんが…

基本、頭の中以外では名前を呼ぶな。わかったか?」


お互いリスクがあるから当然だな

「わかったよ。名前は呼ばない」


ふと、シクは机に毒が入った小瓶をみる。


「今、朝日がのぼってる。明日の朝日がのぼるまでの契約だ、その小瓶で早く殺すんだな」


ルドルフがそう言い放つと、再び頭の中でピリっとした痛みがこみあげ

「ルドルフさん?」と頭の中で聞き直しても

声は聞こえなくなっていた。








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