第6話 銀貨の対価

男は誰もいない路地裏の下水溝の蓋をはずし

梯子を降りていく。

下水道とは縁があるな…


シクも続けておりていくと、

男はランプに火を灯し

壁にある凹凸の一部を手で押した。

ゲドさんの時と同じく

下水路には仕掛け扉が多そうだ。


押した途端、

扉サイズの壁が男の目の前で周りだし

奥へと行ける様だった。


同じ様に奥へと進むと、

そこには、前と同じような小さな部屋があり、

鎖が引き裂かれた跡と机に椅子が二つあるのみであった。


ランプを机に置いた男はシクに話しかけた。


「ここは昔、拷問に使われていた部屋だ。

ここなら普通に話ができる」


無表情の男は指をひとつ立て

「1日奴隷に興味はあるか?」とシクに尋ねた。

シクは内心喜んだが、現実味を帯びると

急に緊張が始まり、危険な仕事から逃げたくなる心を押さえた。


「その為にここに来た」


シクは震えながらも口にすると

無表情の男は舌打ちしながらしゃべり始めた。


「俺は奴隷商人との仲介をやっている。

最近の疫病のせいか斡旋するにも奴隷商人が貧民街を行くのを恐れているみたいでな

俺の様な耐性持ちが仕事にありつけるわけだ」


男の耐性持ちとはスキルの事かな?

恐らく疫病など何らかの耐性なんだろう


「依頼主から奴隷商人に1日奴隷の仕事が

増えていてな、実行する奴隷がいない状況じゃ商人の信用にかかわる。」


やっぱり仕事がなくなったわけじゃないんだ。


「貧民街にも軽く見に行ってみたが、

疫病でみんなビビっちまってる様子で

とても斡旋なんて出来なかった。」


無表情の男はため息をつく。


「今の平民街の平民達は、疫病のせいで

貧民街の住人をさらに毛嫌いしている。

そんな中で、平民街を平気な顔して

物乞いなんぞする奴は、仕事を探してる奴しかいねえ…」


男は一瞬、シクを睨みつけると

「俺はお前みたいな平民街にうろつく貧民を集めて仕事を斡旋してるんだ」

と言い放った。


良かった!

平民街に様子を見に行くのは

間違ってなかったみたいだ。


1枚の紙を男は机におくと

「この紙切れが1日奴隷の契約書だ。

もう奴隷商人からの契約魔法は符呪されている。契約前に契約内容と報酬を確認してもらいたい。断るなら今のうちに言え」


シクは契約書の内容に目を通す。


「「実行者は契約主の奴隷となり

依頼を忠実に実行する。」」

(呪いにより放棄する行動はとれない)

(その場合強制的に行動させる呪いとなる)

(実行意思があればその身を制限させる事はない)


「「実行者の奴隷期限は1日。」」

(契約した後の次の朝日がでた時点で開始となり

翌日の朝日がでた時点で終了となる。)

(実行者が契約主の依頼を完了した場合

1日期限の奴隷制限は終了となる。)

(ただし契約主の命が制約されている為

依頼完了後、実行者は報酬をもらわないという行動は取れない。)

(拒否をすれば、強制的に報酬をもらう行動をとる。)


「「実行者は契約する時点で奴隷紋を背中に刻む。」」

(依頼完了後、報酬を契約主からもらえる時点で奴隷紋は消える。)

(契約者は依頼以外の事を奴隷に命じる事はできない。)


「「契約主が実行者に報酬を渡さない場合

契約主は命を落とす。」」


「「期限内に実行者が実行の意志があるにもかかわらず、実行できない場合、実行者は命を落とす。」」


「「依頼内容を口外することはできない」」


…etc


依頼内容

貧民街の下水道に住み着く

リーダー格であるゲドを殺す事。


報酬

銀貨1枚







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