第17話

私たちは街を5つ超えた場所にきていた。

「あの、これって」

「そう、このかがみのせかいにも端っこはあるんだよ」

望さん曰く、この"かがみのせかい"は"満足"という人間の感情で構成されているらしい。

だが、その満足にも限界はあってその結果端っこができたようだ。

非科学的な話だけど実際体感しているのだから疑いようがない。

「端っこはかがみの壁でできててね、色々試したけど壊すことは出来なかった」

「勝手にどこまでも広がってるもんだと思ってたけど

端っこがあるなんて...」

信じられんって顔をしながら聖はぺたぺたと壁を触っている。

「2人はさ、殺されかけたことってある?」

「私は特に...

聖は先生になんどか...」

「その時、花ちゃんは満足感あった?」

あの時はー

私が先生の簡単な問に答えて正解した時、大袈裟なくらい周りが騒いでた。

そして、聖は...

「まさか...」

「そう、ここで"対"が関係してくる」

望さんがいうにはこのかがみのせかいを維持するには"満足"が大きすぎても小さすぎてもダメらしい。

つまり、ちょうどいい状態をキープし続けているらしい。

あの時の私はこれ以上にないほど満足を感じていた。

だから聖に不幸を与えて調整したのだ。

「そんな"意思"みたいなものがあるんですか?」

望さんは首を横に振った。

「それはわかんない、でもこれは私の夢の内容と同じなんだ」

望さんの見た夢の話。

実はまだ全てを聞いていない。

望さんが「信じられない話が続くから1つずつ教えていく」と言ったからだ。

「じゃあ次の話しようか」

望さんは聖を呼んで夢の続きを話し始めた。

「2人はエスパーって信じる?」

?????

なんとかゲラーとかミスターほにゃららみたいな?

「ミュ〇ツーみたいなやつ?」

聖って怖いもの知らずだなぁ。

「違う違う、サイキッカーっていうか...

まあ超能力者って感じかな」

望さんの夢の内容はこうだった。

来る日も来る日も激しい後悔と自責の念で押しつぶされそうなくらい弱っていた望さんはある時、電池がみたいに突然倒れて眠ってしまったらしい。

その時見た夢にでてきたのが超能力者の人だった。

その人は初めて"かがみのせかい"からの脱出に成功した人間で、脱出の際に"思念体"と呼ばれるよくわからないものを残していったらしい。

『私のような特異な力の無いものが脱出するのは難しいだろうから』と100%善意で作られたもののようだ。

その"思念体"は望さんに、"かがみのせかい"の端っこの存在や"満足"で構築されていること、定期的に迷い人が補充されていることを教えてくれた。

その際、望さんが「干渉できるならもっと早くしてほしかった」と愚痴ると"思念体"は制限が設けられているとも言っていたようだ。

なにしろ"思念体"自体がイレギュラーな存在であり、本来は存在してはならない。

ゆえに大きな喪失感を味わい、特異点となった者の夢にしか干渉できないようプログラムされているらしい。

「てのが思念体ちゃんから聞いたこと」

途中難しい言葉ばっかりだったけど聖大丈夫かな...

聖のほうをみると案の定、口をパクパクさせながら白目を向いている。

「まあエスパーからいろいろ教えてもらったって解釈で間違いないよ

難しいことは気にしな〜い」

こういうノリは正直助かる。

私も小難しいことはよく考えるけど、本当に難しいことは正直嫌いだ。

でも気になることは聞いておきたい性分だ。

「ひとついいですか?」

「いいよ?なになに?」

「その...思念体?は美里さんにも干渉してるんですよね?

なんで美里さんは脱出しなかったんでしょうか」

聖は「なになに?どゆこと?」って顔をしているが望さんはまゆひとつ動かさずに私の目を見ている。


「気づいちゃったか」



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る