第12話

"花が泣いてる"

何でかわかんないけどそんな気がした。

そんで気づいたら走ってた。

かなり走ったところにある1度も来たことの無い公園に花はいた。

自販機の前でへたりこんで泣いてる。

『あ、あたしこんなときなんて声かければいいかわかんねえや』

どうしようかオロオロしてたら花が「疲れたよ、ひじりぃ」ってか細い声で言った。

聞こえた瞬間私は動いてた。

「大丈夫?」

大丈夫な訳ないのに何聞いてるんだ私のバカ。

"疲れた"なんて言葉よっぽど追い込まれないと出ないだろ。

「だいじょばない、構って」

アカン、私の中にまだ芽生えてなかった母性が...!

この小動物っぽい花が狂わせるッ...!

「いいよ、花」

必死に感情を抑えて振り絞った言葉がこれだ。

今大丈夫だよな私の顔。

性犯罪者みたいな顔してないよな?

私はもちろん、まずは花を落ち着かせたい。

今は...21時か、ファミレスはちょっとなぁ。


なんやかんや悩んで結局コンビニにきた。

まあ色んなもの売ってるしいっか。

色々買ってきた中でも1番はこれだと思って花に渡した。

やっぱ疲れた時はあったかいお茶だよな!

花はチビチビとあったかいお茶を飲みだした。

まだ涙のあとは目立つけど落ち着いてきたみたいだ。

よかった。

そしてまた2人で歩き始めた。


実は花がやばいかもってなんとなく分かってた。

私と"対"になるなら落ち着けるはずの家が最低の状況になってるハズ。

最悪な家のことを帳消しにするほどに学校を楽しもうとしているんだろうって分かってた。

前の世界で私がそうだったように。

前の世界だと花が死んだ魚みたいな目をしてばっかりだったのを私はよく見てた。

『あの目、たぶんあたしを含めて教室のヤツらが馬鹿に見えてるんだろうなぁ』

花を見て最初に思ったのがコレ。

『私はあなたたち馬鹿とは違いますよ、全部見透かしてますから』って感じでいけすかないとも思ってた。

でも気に食わないやつってなにかと目につくじゃん。

計算して、言葉を選んで、相手のレベルに合わせて対話を成立させている花。

それに気づいた時の私は脳汁がビッシャビシャに溢れてたと思う。

そこで初めて花のことを愛しいと感じた。

だから私は花に手を差し伸べる。


あ、また公園に戻ってきた。

ベンチもあるしいいか。

私と花は並んでベンチに座ってアイスを頬張る。

「どう?落ち着いた?」

「うん」

やべ、会話が続かん。

「いやー、なんか会える気がして外でたらホントに会うなんて」

「私もなんかそんな気がしてでてきちゃった」

お、おお、素直ぉ。

「マジ?花も?」

「うん、マジ」

「変なのー」

「ひじりも」

なんかわからないけど花とのやり取りが面白くて笑ってしまった。

変なツボに入ったのかな。

「ひー腹いてぇ」

やっとおさまってきた。

「でもよー、あたし今回のでなんか分かってきた」

「なにが?」

花は察しがついてないみたいだ。

頭いいのにこういうとこ鈍いよなぁ。

「この世界はあたしと花が"対"になってると思う」

そう言った瞬間、なにかが私と花の前に落ちてきた。

人?しかも女?

「それ!ちょい正解!」

落ちてきた女は急に立ち上がり私と花にサムズアップしてきた。

「「は?」」

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