第8話

〜放課後〜


聖と花はオシャレなカフェにきていた。

「それでは今日の振り返りをしま」

「帰っていい?」

伊達メガネをかけた聖が真面目な口調で話そうとしたのを花が遮った。

「冗談です」

聖はシュンとしながら伊達メガネを外した。

「改めて今日の振り返りしよっか」

「うん」

2人は今日の出来事について振り返り始めた。

違和感だらけの駅から出ると文字が反転していたこと。

教室に入ると"他クラス"に所属しているハズの花の友人達が"同じクラス"に所属し、聖の友人達が"他クラス"所属になっていたこと。

授業に"射撃"が存在し、見た目はオモチャの拳銃に人を殺められるだけの威力があったこと。

それ以外にも細かな異変や違和感はあるが大体メインはこの辺だろうか。

「これってさ、"アレ"じゃね?」

聖が何かを悟ったような顔をしている。

「あ、アレって..?」

あまりに自信ありげな姿を思わず息を呑んでしまう。

「ああ、これは異世界転生ってやつだ!

く〜っ!夢みたいだな〜!」

思わずため息が出た。

「なんだよ、花はワクワクしないのか?

異世界だぞ!」

「転生してないじゃん、これなら転移じゃん」

「ああ確かに」

納得するんかい。

「でもさ〜、なんかリアル寄りだよな〜

異世界ならもっと突拍子もないもんでてきてもいいのに」

「異世界にしては魔物とかいないし、魔法も使えないじゃない

異世界転生ならレベルとかの要素もほしいし

武器だけはファンタジーっぽいけど」

「意外と詳しいんじゃん」

やば、口に出てた。

「ええ!?ああその...お、弟がね!」

「あ、ああそうなんだ

ふ〜ん、まあいいや」

あ、この妙に触れてこない配慮が刺さる。

「でもよー、これからどうする?」

確かに、これからどうしよう。

元の世界?では私たちはどうなっているんだろう。

戻りたいかと問われると今はどちらでも構わない気分だ。

なにより手段もなければ戻れるかも分からない。

「今はまだ何も分からないし、もう少し様子を見てもいいかも知れない」

「まあそうだよなぁ」

聖は帰りたいのかな。

「今日は帰るか」

「うん、そうしよう」

私たちはそのままカフェを後にした。

そして駅について思った。

「ねぇ、このまま電車に乗れば帰れるんじゃない?」

あまりに自然な流れだったせいで気が付かなかった。

電車に乗ってこの世界に着いたのならもう一度電車に乗れば戻れるじゃん。

「!?」

なんだその顔。

鳩が豆鉄砲撃たれたような顔で私を見ながら指を指してくる。

たぶん『そ・れ・だ・!』って言ってる。

こんな簡単なことに気づかないなんて私ともあろう者が...

私が意外とエンジョイしてたことに少し驚いた。

このまま帰るのも名残惜しい気がする。

なにか残せないかな。

そう思ってカバンに手を突っ込むとカメラが出てきた。

いつも構えるだけでシャッターを切る気になれないカメラ。

「お、カメラじゃん

いいね〜、ピースピース!」

私のカメラを見た聖が駅の鏡文字になった時刻表の横でポーズを取り出した。

なんでかな、不思議と嫌な気がしない。

「ふふ、じゃあ撮るよ」


私はその日、初めてシャッターを切った。

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