第2話
"メランコリック"
私が今思ってることだ。
"憂鬱"と言う意味を持つらしい。
この前テレビで見た、しらんけど。
なんかカタカナってかっこいいじゃん。
覚えた言葉ってすぐ使いたくなるよね。
「てか聖聞いてる〜?」
私に話を振ってきたこの金髪のアホそうなギャルは咲ちゃん。
そんで他が由美と綾。
で、聖は私の名前。
てか私も金髪だし周りからはギャルに見えるか。
まあ、仕方ないか。
私は花のJK、そしてイケイケグループ(仮)に所属してる。
そう、高校デビュー成功ってやつだ。
といっても中学は根暗ガリ勉だった訳でもない。
ずっと同じ調子でやってきてそれが今も続いてるだけ。
だから自分を偽ってもないし、嘘もあんまりつかない。
そりゃ時々は嘘もつくよ、年頃の高校生だし。
だから咲の話にも「あー、聞いてなかったわ」で返してもなんも言われない。
まあ贔屓なしに見ても私がいちばんかわいいしスタイルもいいからグループを抜けられると困ると思ってる。
イケイケ1軍メンバーから花がなくなるしね。
まあこれは私が思ってるんじゃなくて周りでコソコソ陰口叩いてるのを聞いただけだけど。
ほんと女って怖いわー、やだわー。
私は咲達と話してて別に気分が悪いとかなったりしないけどね。
ほかの子みたいに悪口とか陰口言わないし。
話もしてみないで決めつけてほんと嫌になる。
声をかける勇気もない癖に粗探しだけは一丁前。
大人になったら後悔するぞ〜。
って面と向かって言えたらなぁ。
私も肝心なとこで臆病者だ。
ほかのクチナシさんたちと変わらない。
あ、そんなこんなしてたら授業始まってた。
4時間目は〜、現代文か。
この先生あたしのことなんか怖がってるんだよなぁ。
何も噛み付いたりしませんよーだ。
まあいっか、前でボソボソ言ってるだけだし。
寝よ。
「授業終わります。」
あ、終わった?
なぜか不思議と「授業終わります。」だけハッキリ聞こえるんだよな。
私の耳都合良くできてんね。
「聖〜、いこ〜?」
咲ちゃんがお昼に誘ってくれた。
「はいよー」
私もノリよく返事する。
最近は言葉を端折ることが私たちのマイブームだ。
なんか以心伝心って感じがしてかっこいい。
私たちは周りからギャルだと思われてる。
まあ髪染めてるからそう思われてるんだろうね。
だからって屋上だとか他所様の部室を占拠してランチとはいかない。
屋上は立ち入り禁止だし、部室の鍵なんてそもそも何処にあるか知らない。
現実なんてそんなもん。
憧れはあるけどリスク犯してまでやる事じゃない。
変なとこで現実的なのだ。
だから私たちは庭っぽいところでギャルっぽく食べる。
アーティストイメージを崩さないってのも大変だ。
なにも最初からここで食べてた訳じゃない。
教室にいると周りが気まずそうにしてる。
かといって食堂で食べるとなぜか上級生までそそくさと出ていってしまう。
なんにもしてないのに加害者の気分になる。
それがいやでみんなで落ち着ける場所を探した結果が庭だ。
なんてまわり環境に配慮できた女子高生でしょう。
私はむかつく感情を抑えてるけど咲達はケロッとしてる。
はあー、そのつよつよメンタル分けて欲しいわ。
自分たちが楽しけりゃ場所なんでどこでもいいし、クラスの子達も私たちが居ない方が気を抜いてお昼を過ごせるならwin-winじゃん?って事らしい。
人間できてるって羨ましい。
私はそこまでいい人になりたくないし、なれない。
自分で自分を嫌いながら私は今日も朝買ったサンドウィッチを頬張る。
そして、優雅なランチを終えて私達は居心地の悪い教室に戻って授業を受ける。
私は寝るんだけど。
放課後、咲達はバイトがあるらしくてそそくさと下校してった。
やることがあるっていいな、私も始めようかな。
だめだ、長続きする気がしない。
今の生活に不安があるわけじゃない。
学校では私とつるんでくれる友達がいる。
周りの奴らも今はあんまり好きじゃないけど話してみれば意外と面白いのかもしれない。
そう思えば学校はまだ私を楽しませてくれるかもしれないだけマシか。
問題は家だ。
引きこもりの妹と私たちに興味が無い両親。
客観的に見ても最悪な環境だ。
それを無駄にある金で無理やり覆い尽くしている。
私が歪んだのもコイツらのせいだと思いたい。
問題があるのは明白なのに見て見ぬふりを続けている。
それは私も同じだから強くは言えない。
言っても無駄だし、なにより私たち家族が全員諦めているから。
もうなにが原因かも覚えてない。
そんな居心地が悪い家でも私は帰らないといけない。
我慢して夕ご飯食べてお風呂に入って寝る。
あれ、私結構我慢ばっかしてる?
まあいっか、こんなに悩んでても明日には忘れる。
そして、悩みを思い出して我慢しての繰り返し。
はあー、やんなっちゃう。
寝よ。
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