第49話 異世界転生異聞録 ※序文参照
※今回のお話の主人公はニーニャの母ネネカで彼女とニーニャの父蒼治良のお話ですが、本文に登場するキャラクターは彼女らであって彼女らではありません。
お前は何を言ってるんだ?
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私の名前は
またの名をニェボルニェカ・D・イルカナトワという、ごくごく普通のぴっちぴちの11歳独身のホムンクルスの小学生。
頭のおかしいマッドサイエンティストで『極東の緋熊』の異名を持つ父の
それが私。
そんな事はともかく、いつものようにランドセルを背負って面倒な学校へと通うべく道を歩いていた時、彼と運命の出会いを果たしてしまう。
「カッコイイ………」
それは1か月前の登校中での出来事。
滝のように流れる汗が、太陽の光でまばゆい程輝いている。
そんな何か良く分からないポーズを決めている彼を、周囲を歩く人々は不審そうな目で眺めながら絶対に関わるまいと通り過ぎ、その周囲の人々の視線の先には電信柱の影で見守っていた私も漏れなく含まれていた。
「学校に行っている場合じゃない」
私は3回コケながらも、急いで家へと舞い戻った。
「おぉ、最愛の娘よ。学校はどうした?」
「というか、膝をすりむいてるじゃないか」
「パッパが絆創膏を貼ってあげよう」
そんな父の言葉を見事にスルーして、階段を上り自分の部屋へと入るとスパコンを立ち上げた。
そして、スパコンの中で待機していた3つの
「リリ、ティラミス、リョク」
「街中の監視カメラをハッキングして、彼の映像を手に入れて」
しかし、そんな私の
「マスター。彼の画像を手に入れてって言いますけど、私達、相手の人の顔どころか名前すら分からないんですけどぉ」
そうだった。
私は押し入れから自作の『頭の中よみとおる君』を取り出すとすぐさまかぶり、彼の映像を取り出して情報をリョクたちに転送した。
「名前は分からないけど、顔情報でよろしく」
「ヴ・ラジャー」
それから10秒くらい待って『まだかなぁ』と貧乏ゆすりを始めたちょうどその頃、リョクたちから結果報告が来た。
私は、受け取った映像を写真にして部屋中の壁に貼り付けて
「そうだ、彼が住んでいるところを調べれば、いつでも陰から見守ることが出来る」
そう考えた私は、役所のサーバーに不正アクセスして彼の顔情報と一致するワイナンバー情報を入手することに成功した。
「
それからは、彼の家を覗き見る日々が続く事になる。
といっても、彼の家はすぐ隣であった。
ならば、父と母が彼に関する有益な情報を持っているかも知れない。
私は、それとなく聞いてみることにした。
「隣の家の一色蒼治良ってどんな人?」
その問いに対し、母は端的に答えた。
「頭のおかしな中年中二病患者よ」
そして、こう続けた。
「人に一切興味を持たなかったアンタが珍しいねぇ。ひょっとして、その男に恋でもしたのかい?いや、まさかねぇ………って、えっ!?マジで!?」
母の隣で新聞を読んでいた父が、それを折りたたんで口を開いた。
「いやはや、流石はホムンクルス同士、惹かれ合ったといったところか」
「よし、ここは父として威厳を示す意味でも、彼と二人っきりで話が出来る場を提供しようじゃないか」
「なぁに、安心しろ。わしも母さんも、お隣の夫妻とは顔見知りだからね」
そこは、友達じゃないんだ。
そんな事を思いながら父と母に依頼したのだった。
そして、それは次の日にやって来た。
朝起きて階段を下りると、
父が口を開いた。
「あー………すまん娘よ」
「一色さんとこの夫妻と4人で徹夜のなか眠いのを我慢しながら『秘密部屋にGo君一号』を製作したんだが、早速不具合が生じてしまってな……」
「彼を秘密部屋にではなく、異世界に転送させてしまったわい。わっはっはっは」
その報告を受けた私は、僅か30秒の間に部屋に戻って手にしたハリセンで父と母の頭をスパーンと叩いた後『秘密部屋にGo君一号』の所まで案内させて、私はそれに乗り込んだ。
「行くんなら、この子達も連れて行きな」
頭をさすりながらの母はそう言うと、リリ達が押し込められている携帯型汎用スパコンをポイっと投げ渡して来てビッと親指を立てた。
こうして、私は3つの
------
「どうだ?この自作自叙伝ビデオ、中々の出来だろ?」
居間のソファの中央で腕を組みながら父様は
「はぇ…まさか『伝説の英雄』様が異世界人だったなんて」
「そうですね。びっくりです」
自作ビデオの内容を正史だと思い込んだ
「道理で人間業とは思えない程、お強いわけですね」
それを満更ではない
「おーい、三人とも。これは作り話じゃぞ」
わしの言葉に三人は部屋中に響き渡る程の驚きの声を上げたのじゃった。
‥‥‥。
「いやぁ、流石に信じるとは思ってなかったなぁ」
父様はVHSビデオテープを手に言う。
「というか、父様。どうしてこんなビデオを作ったのですか?」
「いや、作ったのは俺じゃないよ」
「なんか
「それを、このまえ会った時に貰ったんだよ」
「実際見てみたら、そっくりでびっくりしたよ」
はっはっは、と大笑いしながら父様は言う。
「確かによく似てますねぇ。
わしの肩に乗ったリョク姉は
「でも…あれ?……確かリリちゃんとティラミスちゃんって、この
「なんじゃと!?まさか緑子姉様………」
「ええ………恐らく」
「ん?どしたの?」
わしとリョク姉が真相に気付く中、父様は首を
瑛三郎達三人も父様同様に首を傾げていた。
(絶対にここに来てから
(じゃろうな…じゃが、作ってしまったものは、もうどうしようもあるまい)
(恐らく母様は気付いておるはずじゃ。じゃから、もう、そっとしておこう)
(ですねぇ。関わりたくないですし)
「何か分かった事があるのか?ニーニャ、リョク」
「いえ…父様………それより、この二人はそれからどうなったのですか?」
「あぁ、何でもごく最近の事らしくてな。それから先はまだ無いんだ」
「だが、二人とも無事らしいぞ」
「なんでも、今は地球に帰るための資材を手に入れるためにダンジョン内で冒険しているそうだ」
「そうなんですね。何はともあれ無事で良かったです」
後日、こっそり緑子姉様に問い合わせたところ、地球の神や
「って、この話続くんですかねぇ…」
「作者次第じゃろ」
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